初めに自己紹介でもしておこうかしら。誰かが必要としているかもしれないしね。
もし誰も必要としていないのなら……そうね、これはただのひとり言だから気にしないで。
私は古手梨花、魔女よ。魔法なんて使えないけどね。私はただ普通の人よりも長く生きているだけ。
どれくらい長く生きているのかっていうと、軽く百年は越えている。でも、その生はかなり歪なものだから、実際には私の姿はまったく変わらないままだけれど。……じゃあほんとうはいくつなのかって? くすくす、それは御想像にお任せするわ。がっかりされても嫌だし、逆に喜ばれても……何か変な感じだもの。
とにかく、私はずっと子供の姿のまま、同じ時間、同じ時を何度も繰り返し生き続けてきたの。
昭和五八年――六月。その年のその月に私は必ず死を迎える。そのたびにこの生はリセットされて、またやり直しになる。
それは私の『力』じゃないけれど、それを望んだのは私。そうやって私は、幾度となくこの
そんなことをして何の意味があるのかって思うでしょうね。
簡単なことよ。私は自分の死という運命をくつがえしたいだけ。まだ見ぬ昭和五八年の七月にたどり着きたいだけなのよ。私自身と、大切な仲間たちと一緒に。
死を迎え、新たな生をやり直すたび、世界はそれまでとは違った様相を見せることがある。それは小さな変化(たとえばその日誰かが何かをしたとか、たまたま何かが起こったとか)から連鎖的に広がる世界のもう一つの可能性。『
それはあるいは私にとってサイコロの六の目に相当する幸運であり、あるいは一の目に相当する不幸でもある。その組み合わせによって、すべてがまったく同じ世界になるなんてことはありえないの。同じような日々、同じような展開、同じような結末はたくさんあっても、すべてがそのまま同じだったことは一度もないわ。
でも、もしそうじゃなくて、繰り返す世界がまったく同じだったとしたら……私はとっくに希望を捨てて、諦めていたと思う。
だってそうでしょ? そんな世界は誰にも耐えられない。すべてがあらかじめ決まった予定表の通りに、ただ淡々と進むだけの退屈で味気のない世界だなんて、考えただけで気が狂ってしまいそうじゃない。
たとえ大筋としては同じ結末に至ったとしても、その過程には変化が必要で――また同時に、その変化こそが結末を変えてしまうほどの強い影響力をもつことを、私は切望していた。
何度朽ち果てようともそのたびに転生し、見慣れた未来を通過することを耐え忍びながら、今度こそは今度こそはと希望にすがり、そして裏切られ続けてきた。それが私――古手梨花という魔女の終わらない物語。
けれど、そんな一見すると無為に思える生にもようやく終わりが見えてきた。今回よみがえった世界では、私は自身の『確実なる死』まで二週間足らずという極短の期間しか与えられていない。それが今回にとどまらず、このまま徐々に間隔が短くなり続けたとしたら、いずれ私は死の間際にしか転生することできなくなるだろう。
そうなったら……終わりだ。
私は自分の死に追いつかれるか、その前に絶望してこの魂ごと消滅する。
これまではそんなこと考えもしなかった。延々とただ繰り返していれば、そのうち何とかなるものと思っていた。けれど、百年かかっても成功は得られず、代わりに得るのは失敗と徒労感ばかり。これからはそれに制限時間というオマケまでついてくるわけだ。
リミットまでに死の運命をくつがえす――それが今の私に課せられた最大の難問だった。