異聞帯No.EX BC.1046 仙界封神歴史 ■■■ ”歴史の道標“   作:クリサンテモ

1 / 5
序章

 それはまだ人類が自然を恐れていた神秘蔓延る時代。

 

 「うーむ、釣れんのう。」

 

 大きな岩場の上、清流に釣り糸を垂らして座っている青年は、欠伸をしながらそうボヤていた。

 

 「そりゃそうっすよご主人。そんな針じゃ魚は釣れないっすよ。とうとう頭がおかしくなちゃったすか?」

 

 青年の横で呆れたような声が一つ。尤も、その声の主は人間ではなかったが。カバともなんとも言い難いその霊獣は呆れたように話かける。

 

 「とうとう、とはどういう意味だ。スープーよ。」

 「言葉通りの意味っすよ。皆さんが戦争の準備で色々忙しい中であんたはこんなグータラと... ちょっとは働こうと思わないんすか。」

 「わしは働くのが大嫌いだ!」

 「堂々と言いやがったすよこの人!」

 

 青年は真面目な顔でそう言い放って水面に顔を戻す。

 

 「まあ、流石にいいかげん行かんとまずいか。」

 

 そう言って青年は釣り糸を水面からあげる。当然、魚はかかっていなかった。横に置いていた、()()()()()()()()()()を手にとって立ち上がると、彼は空を見上げた。その瞳の先には何もない。

 

 「? どうしたんすか? ご主人?」

 「いや、なんでもない。さあ行くぞ、スープー。」

  

 幻獣の背に跨って、道士は空に飛んでいく。この先に待ち受ける熾烈な戦いを予見して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってそこは北海で浮遊し続ける魔術組織の一つ、彷徨海・バルトアンデルス。そのエントランス一帯に築かれた汎人類史最後の砦、ノウム・カルデア。

 ブリテン異聞帯を攻略したノウム・カルデアは改めて異星の神が潜伏していると見られる第七異聞帯の攻略に向けて準備を整えているところである。

 その中央管制室に彼らは呼び出されていた。

 

 「藤丸立香、到着しました。」

 「同じくマシュ・キリエライト、到着しました。」

 

 汎人類史最後のマスター、藤丸立香

 デミ・サーヴァント、マシュ・キリエライト

 

 「ええ、よく来てくれました。お二方。」

 「急な呼び出しでごめんねー。藤丸君、マシュ。」

 

 アトラスの霊子ハッカー、シオン・エルトナム・ソカリス

 カルデア技術顧問、レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

 「これで全員集まったかな。」

 「うむ、では説明を頼んだぞ、シオン君。」

 

 カルデア経営顧問、シャーロック・ホームズ

 カルデア新所長、ゴルドルフ・ムジーク

 

 「何か問題でも起きたんですか?」

 

 藤丸立香は日課となっている筋トレをしていたところだったのだが、緊急を知らせるアラームが鳴ったことで急いで管制室までやってきた。このアラームが鳴り響いた時は必ず厄介事が起きた時である。そのため、今回は何が起きたのかと問いかける。

 

 「ええ、それでは私から説明させていただきます。」

 

 そう言ってシオンは世界地図をモニターに映し出す。かつては各地に異聞帯の反応があったのだが、今では南米の一つのみになっているはずだった。

 

 「これは...!」

 「 中国に異聞帯の反応が...!」

 

 そう。かつて攻略したはずの中国異聞帯があった場所。そこに光の円の反応ができていたのだ。

 

 「シオンさん、これは。」

 「ええ、異聞帯の反応です。」

 

 シオンはそれを異聞帯だと断定する。

 

 「これが観測されたのは半日前。ですが、その予兆はありませんでした。」

 

 そう言ってモニターの画面が切り替わる。そこには中国には何もなかった。

 

 「こちらが半日前の状況です。この時点では特に何の反応もありませんでした。ですが。」

 

 そう言って映像が動き出す。すると小さな点が中国に出来たや否や、突如拡大してあっという間に現在の規模にまで拡大した。

 

 「これは... この異聞帯は突然現れたということですか!?」

 「ええ、マシュの言う通りこの異聞帯は微小特異点のようなものが出来たと思ったら一気にここまで拡大しました。当然内部の様子も分かりません。南米異聞帯に注力したい我々としても、いつ爆発するかわからない異聞帯を放っておくわけにはいきません。そのため、我々はこの異聞帯の切除を急務として判断しました。」

 「現状、この異聞帯がどのようなものかは完全に不明だ。第三異聞帯の秦と同じかもしれないし、まったく別物かもしれない。ただ一つ言えることは汎人類史を取り戻そうとする我々にとって脅威であるということだけだ。」

 

 真剣な顔でモニターを見つめるシオン。ホームズがそこに補足を加えた。

 

 「皆さんには6時間後にシャドウボーダーに乗って仮称、新中国異聞帯に向かっていただきます。何か疑問などはありますか?」

 「ホームズもわからないの?」

 

 そう言って藤丸はホームズの方を見る。この名探偵なら何かしらわかることもあるのではないかと思っての言葉だった。

 

 「残念ながらわたしとしても推察材料が不足し過ぎているからね。実際に見てみないとなんともいえないかな。ただ...」

 「ただ?」

 「いや、なんでもないよ。まだ不確証すぎるからね。」

 

 藤丸はまたかと思う。この名探偵はいつもこうだ。しかし、彼がそう言うのはいつものことだし、必要な時はしっかり口にしてくれるとこれまでの旅でわぁっている。そう納得してありがとうとホームズに言ってモニターの方に向き直った。

 

 「私も一ついいでしょうか?」

 「ええ、もちろんなんでもオッケーです。」

 「ありがとうございます。それでは異星の神に何か動きはあるのですか?」

 

 今は南米に潜伏しているという異星の神を思い出す。地球白紙化の黒幕にしていつか救わなければならない人。異聞帯も彼女によって用意されたものだった。だが、今更新たに異聞帯を発生させる目的が見えない。南米異聞帯になんらかの不都合が起きたのだろうかとマシュは考える。

 

 「いえ、現状異星の神に動きは見られません。南米異聞帯に潜伏したままです。」

 「まあ、行ってみないとってことだね。少なくともずっと動きがない南米異聞帯よりも何をしでかすかわからない新中国異聞帯の方が危険だと私たちは考えるけどね。」

 「ありがとうございます。シオンさん。ダ・ヴィンチちゃん。」

 

 そう言って一歩下がるマシュ。ひと段落ついたとみたゴルドルフは一回咳払いをするとまとめに入る。

 

 「ともかくだ。何もわからない。しかし放置もできない。故に、我々はこの異聞帯を早々に切除する。作戦決行は6時間後。皆忘れ物はせず時間通りシャドウボーダーに集合せよ。それでは、一旦解散!」

 

 これはあり得なかった番外の異聞帯。神代の時代、仙道が猛威を振るった古き中国。

 

 異聞帯(ロストベルト)No.EX 異聞深度E

 BC.1046  仙界封神歴史 ■■■

       歴史の道標

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。