新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

10 / 72
劇場版に換算すると、まだ開始30分ぐらいなんですよね。

サクサク進められれば良いんですが、どうしてもペースがあげられないです。


序-新たなる生活-

「……私です。ええ、こんなことになって、申し訳ありません」

 

『いや、気にしなくていい。頼んでいた件は、高雄に引き継いでもらった』

 

「高雄に?」

 

『ええ、勝手で申し訳ないが……』

 

「いえ、彼なら適任です。完全に外の人間ですし、ユーロの伝手も彼ならよく知っている」

 

『高雄もそう言っていた。なので、貴方には、しばらくゲンドウの元で、今まで通りにしていてほしい』

 

「わかりました、あなたは?」

 

『しばらくは、与えられた役目をしっかり果たすつもりだ。現状では、先に仕掛けた方が不利になる。ならば……』

 

「その間に、得たい情報を得る、と?」

 

『その為のキーパーソンを、あの人は用意してくれた』

 

「それが、その真希波マリだと?」

 

『何かあれば、頼れる人と聞いたからな。実際、優秀な人物だ』

 

「面識があるのですか?」

 

『…逆に、無いと言った覚えはないが……』

 

「……貴方には敵いませんよ、教官」

 

『まぁ、黙っていたのは悪かった。申し訳ない』

 

「いえ、情報が漏れる可能性を考えれば……」

 

『悪いが、私はそんなヘマはしない』

 

「……失礼しました」

 

『だからこそ、貴方だけが、このやり取りを知っている。……どう利用するかは、自由です』

 

「え?」

 

『この意味がわからないほど、貴方は愚鈍では無いはず』

 

「ですが!そんなこと……」

 

『何度も言ったはずです。私はもう、貴方の教官ではない、と。……私をも利用してみせなければ、ゲンドウに取り入ることは出来ない』

 

「……なぜ、そうまでして」

 

『私の志を、誰かが受け継いでくれるとわかっているから。無論、死ぬつもりはないが、死を恐れることはない』

 

「貴方は生き残るべき人です。貴方は、多くの人を導いてくれる」

 

『……俺が導くのは、死だ』

 

「私は生きています。高雄も……」

 

『……すまない。これからも頼みます。では』

 

「ええ、ご武運を。……あ、あと」

 

『うん?』

 

「シンジ君に伝えてください。ありがとう、と」

 

 

『多少不具合でも、第5の使徒にまた役立てばよい』

 

「ご心配なく。初号機の実戦配備に続き、弍号機と付属パイロットも、ドイツにて実証評価試験中です」

 

『3号機以後の建造も、計画通りにな』

 

『ネルフとエヴァの適切な運用は、君の責務だ。くれぐれも失望させぬように頼むよ』

 

『さよう、使徒殲滅はリリスとの契約の、ごく一部にすぎん』

 

『人類補完計画……その遂行こそが我々の究極の願いだ』

 

「分かっております。全てはゼーレのシナリオどおりに」

 

『……碇、本当にそのつもりなのかね?』

 

「……どういうことでしょう」

 

『とぼけるな。君の弟、碇リュウジのことだ』

 

『左様。この5年間、ネルフはもとより、我々ゼーレの目すら、奴の存在を認知する事が出来なかった』

 

『最も厄介なのは、奴が我々の存在を知っているのかどうかも、判然としない事だ』

 

「奴は何も知りません。エヴァの存在すら知らなかったのですから」

 

『それだけでは無い。表の世界とはいえ、奴のパワーバランスに与える影響力は計り知れん』

 

『そうだ、奴の弟子や教え子は世界中にいる。我々の手の者の中にもだ』

 

『よいか碇、奴の手綱を確実に握っておけ。それが出来なければ、わかるな?』

 

「……っ。承りました」

 

 

シンジとリュウジは病室を出て、景色を眺めながら、蝉の音を聞いていた。

 

「さて、これからの生活のことなんだが……」

 

「え?帰るんじゃないの?」

 

「使徒はまだ来るらしい。ネルフ側としては、お前にパイロットとして、ここにいてほしいとのことだ」

 

「そう……ですか……」

 

それを聞いて、シンジは少し緊張した。今になって、自分はエヴァに乗って、使徒と戦ったという、非現実感が、自分の恐怖心に現実であると迫ってきたのだ。

 

「何度も言うが、乗らなくていいんだぞ」

 

「……その言葉だけでも、嬉しいよ。おじさん」

 

家族の為に、自分は闘う。いつも僕を守ってくれた人を、今度は僕が守る。そう自分に言い聞かせるように、シンジは拳を握りしめた。

 

「…………」

 

リュウジは何も言うことができなかった。

ただ一つわかるのは、シンジに、守ると決めた存在に、こんな張り詰めた表情をさせてる時点で、自分はどうしようもないということである。

 

「……わかった。これ以上止めるのは、失礼になるな」

 

「失礼だなんて……」

 

そんな時、どこからかドアの開く音が響いた。二人は音のする方向を見ると、ベッドが一つ、こちらに移動してきた。

 

「あ、あの子……」

 

「……綾波レイ」

 

「綾波……レイ?」

 

「ああ、最初の適格者。お前が第3の少年で、彼女は第1の少女。試作のエヴァがここにはもう一機あるらしく、その専属パイロットらしい」

 

二人はそのまま移動していく、ベッドを見送った。

 

「……なぁ、シンジ。つかぬ事を聞くが、あの子に見覚えないか?」

 

「え?……いや、無いですけど」

 

「そう、か……」

 

そういえば、シンジにはユイさんの記憶がない。ならば綾波レイに見覚えがないのも通りであろう。

 

(だが何故だ?顔すら知らないのは、何か作為を感じる)

 

「……おじさん」

 

「ああ、すまん。変なこと聞いて。ま、同じパイロット同士だ、仲良くな」

 

「うん。やってみるよ」

 

その後、シンジは検査を受け端的にいえば、

 

「異常なし」

 

の判を押され、そのまま退院となった。

 

「ま、とにかく。何もなくてよかった」

 

二人は病院のラウンジに移動して、アナウンスを聞きながら待機していた。

 

「……それで、ここでの生活なんだが……」

 

「おっ待たせ〜。二人とも」

 

その声に、二人はミサトを視界に捉えた。

 

「……この方にお世話になります」

 

そう言ったリュウジの、手だけが紹介するようなジェスチャーをした。

 

「……え?」

 

「そゆことだから、よろしくね、シンちゃん」

 

 

「はい?!?!」

 

今この人はなんと言った?

 

「ですから、同居。一緒に暮らすんです」

 

時はゲンドウのオフィスから出て、その直後に戻る。部屋の外でリュウジは、一回り以上も年の離れたミサトに同居の提案を受けていた。

 

「だから、なんでそんな突飛な話になるんですか」

 

「考えてもみてください。仕事上は私の副官をしてくれれば、監視はできます。では日常生活はどうですか?別々に暮らしててできますか?」

 

「まぁ、無理ですね」

 

「でしょう?ならば、同居するのがもっとも手っ取り早いじゃないですか」

 

「いや、理屈ではそうですが。貴方はどうなんです。いきなり得体の知れないオヤジと同居というのは」

 

「自分で言うのもなんですが、もうそんなこと気にする純情さは消え失せてます。ご心配なく」

 

そう言ったときのミサトの眼が、どこか遠くを見ていたのは勘違いではあるまい。

 

「そうだ。なんだったらシンジ君も一緒に住みましょう」

 

確かにそうできればありがたいのは言うまでもない。

 

「シンジ君が、ここにパイロットとしていてくれるなら、その監督も直属の上司である私の仕事です」

 

 

「……と、言うことでな」

 

「意外に押しに弱いんですね、おじさんって」

 

「いや、まぁ、な……」

 

その直前の出来事で、少しナイーブになっていたのは黙っていた。

 

「というわけで、今夜は新たな同居人の歓迎会として、パァーッといくわよ」

 

行きましょ、とミサトは二人を誘って、自身の車へと向かった。

 

(今日はダメだな。年下に気を使わせてどうする)

 

ゲンドウとやりあって、結局は何も出来なかった。それを見ていたミサトは、彼女なりにリュウジに気を使ってくれている。

 

「それなら、お礼も兼ねて、僕とおじさんで何か作りますよ」

 

「そういえば、リュウジさん定食屋だったわね。でも、シンジ君も料理できるの?」

 

「ええ、色々教わりましたよ。おじさんから」

 

これはシンジにとって、いい刺激になるかもしれない。

 

(いつまでも、俺に……いや、俺がベッタリしている訳にはいかないからな)

 

シンジはいつかは、自分の元を巣立っていくし、それが正しいと思う。

そに為には、一層いろんな人と触れ合い、見聞を広げてほしい

 

「それじゃ、食材を買って、それから、ちょっち寄り道するわよ」

 

「寄り道?」

 

「ええ、見せたいものがあるの。リュウジさんも、いいですね?」

 

「ええ、行きますか」

 

夕方にさしかかろうという時刻に、3人は車で近場にあるスーパーに立ち寄った。

曲がりなりにも、飲食店で腕を振るっていたリュウジと、その店を学生の本分を阻害しない程度に手伝っていたシンジは、見た目が良さそうな野菜や、人工肉を品定めし、ミサトは、

 

「おっ待たせ〜」

 

と言って、大量のビールを買い込んでいた。

 

「リュウジさんも飲みますよね?」

 

「まぁ、人並みには……」

 

「そうこなくっちゃ。一人飲みも悪くはないんだけど。やっぱ相手がいたほうが楽しめるのよね〜」

 

加えてプロの料理が楽しめるとあって、ミサトはテンションが高めである。

 

「あ、そろそろ時間だからさっさと会計済ませましょ」

 

「時間?」

 

「そ、さっき言った寄り道よ」

 

そうして一行は会計を済ませ、ミサトの言う寄り道の展望台のように、見晴らしのいい場所で車を止めた。

 

「どう?いい眺めでしょ?」

 

「夕日が、ずいぶん綺麗に見渡せますね」

 

改めて、リュウジは第3新東京市を、一望した。

 

要塞都市。と言っても、それはリュウジにとっては、いびつな様相を呈していた。考えてみれば当たり前であった。これは、対人戦の要塞都市ではなく、対使徒戦用の要塞都市であるからだ。

彼にしてみれば、それは違和感として映る。

 

(今後の戦いにおいて、俺の知識などあてにはならないか)

 

かと言って、それをよしとする気もないが。

 

「……時間だわ」

 

ミサトの言葉とともに、サイレンが鳴り響く。

 

「すごい!ビルが生えてく!」

 

シンジの言葉通り、雨後の筍のごとく、大量のビルがまさに生えてきた。

 

「これは……圧巻だな」

 

流石にこの光景には、リュウジも感嘆の声をあげた。

 

「これが、使徒専用迎撃要塞都市、第3新東京市。私たちの街よ。……そして、あなたが守った街」

 

使徒が来れば、逆にこのビルを収納すれば良い。そう考えると、単純だがよく出来たシステムである。

 

「シンジ君。貴方にこれを見て欲しかったの。貴方が守ったものを」

 

「……ごめんなさい。ミサトさん」

 

「え……」

 

「ぼくは、ぼくが守りたいものの為に戦っただけです。……この街や、みんなの事は、……正直、頭にありませんでした」

 

「シンジ君、それはなにも……」

 

「いえ、それも自分勝手な僕を隠す言い訳かも知れないです」

 

リュウジへと、シンジは俯きながら体を向ける。

 

「おじさんや、あの子を守りたい、なんて言ったけど、……ぼくは、……ただ生き残りたいが為に、ただ無我夢中だったのかも知れません。……死にたくないっていう、そんな自分勝手な想いだけで、ぼくは……結局」

 

自分はこの人のおかげで、強くなった。そう思っていた。だがそんなものは幻想で、臆病で、卑怯な自分は、何も変わってない。そう思うと、シンジは情けなくなり、アスファルトに、涙が溢れる。

 

「シンジ……強くなったな」

 

気づけば、リュウジはしゃがみこみながら、シンジの両肩を持っていた。

 

「おじさん?」

 

「生きるという意思は、最強の武器となる。どんな絶望的な状況でも、生き抜くという強い意志こそが、その状況を切り抜ける切り札となるんだ」

 

その意思を持っていたシンジに、リュウジは心から尊敬の念を送る。

 

「俺ができる事は、お前に戦う技術を教えることと、戦闘のアドバイスぐらいだ。だからこそ、自分を強くするのは、自分の心次第だ。……シンジ、お前は俺より、遥かに強くなった。お前自身が、そうあろうとする限り、お前はさらに強くなれる」

 

この言葉が、果たして正解となるかはわからない。いや、戦わせたくないといいつつ、こんなことを言っている時点で、最大の矛盾が発生している。

だがリュウジは、シンジに、自分を誇って欲しかった。

 

「お前は、俺の誇りだ」

 

「……うん、あ、ありがとう……おじさん」

 

だが少なくとも、今のシンジを励ます事はできた。リュウジの胸で、シンジはしばらく、涙を流した。

そんな二人を、ミサトは複雑な表情で、ただ見ているしかなかった。

 

 

「……なぁ、シンジ」

 

「……何?おじさん」

 

「俺は騙されたのかな、葛城二佐は、『住んでいる部屋』に案内してくれたんだよな」

 

「奇遇だねおじさん。僕もそう思ってたよ」

 

「よかった。……じゃあ、ここなんだと思う?」

 

「ゴミ置場、に見えます」

 

「……やっぱり騙されたのかな」

 

「二つの可能性があります」

 

「うん」

 

「一つは、ミサトさんが本当に僕らを騙した」

 

「二つ目は?」

 

「考えたくないし、失礼だとは思うけど、……ミサトさんが片付けられないおn……」

 

「うるっさいわねぇっ!!そーですよ!!どうせ私は片付けられない女ですよ!!!悪うございましたね!!!」

 

涙目になりながら、いや、半泣き状態でいい年した女が、喚き散らす。

 

そしてその『ゴミ置場』前に、買ったものを抱えながら立ち尽くす、リュウジとシンジ。

 

「「ハァ……」」

 

二人のシンクロ率100%のため息がこぼれた。

 

「これでは埒があかん。シンジ、かたづけるぞ」

 

「了解です」

 

そういうが早いが、二人は食材を、ひとまず冷蔵庫へとしまおうとするが、

 

「こらまた……」

 

つまみと、ロック氷、そして大量の、

 

「ビールばっか」

 

大丈夫なのだろうか、この人の肝臓。

 

「シンジあの人は片付けられない女なだけじゃない。日常生活がだらしないおn……」

 

「ちょっと!!さっきから貴方たち私に恨みでもあるわけ?!?!」

 

ついにガチ泣きとなる。

 

そんなミサトなどないものと思い、二人は片付けにかかり、慣れているのか、一時間もしないうちに、『ゴミ置場』は消え失せていた。そしてその間、ミサトはあまりの手際の良さにただ茫然としていた。

 

「燃えるゴミとかは、明日出すとして、瓶、缶はさっきのスーパーで資源回収してたから、そっちに明日持ってこう」

 

回収日を待っても良かったが、リュウジもシンジもあるだけで、

 

「目障りだ」

 

と言って憚らない。

その一言で、ミサトはまた泣いた。

 

「私とシンジで夕飯の支度してますから、葛城さんは、先風呂入っちゃってください」

 

「いや、何かお手伝いを……」

 

その先をリュウジは言わせなかった。

 

「葛城さん。貴方料理は?」

 

「あの、その、……インスタントなら」

 

「包丁を、最後に握ったのは?」

 

「ナ、ナイフなら、訓練で……」

 

「私は『包丁』と言ったんですが」

 

「……お風呂、先にいただきます」

 

「よろしい」

 

このやり取りを見てシンジは思った。

 

(おじさん、ミサトさんの親もやることになるな)

 

先程のリュウジは一昔前の、ホームドラマで、嫁ぎ遅れただらしない娘を叱る『母親』のようであった。

 

 

ミサトはこれまでの一連の出来事に、湯船に浸かりながら、思考を巡らせていた。

 

(碇司令の弟。正体を完全に掴めたわけではないけれど、悪い人ではない。むしろ、私たちより健全な……いえ、私なんかよりよほど狂気の世界に身を置いていたはず。なのにあれ程の健全な思考を持っている)

 

それは逆に狂気の沙汰、といえるのではないか。

 

(でも、守ってくれることのない、正常な大人、何が何でも守ろうとする、狂った大人。どっちをシンジ君が必要としているかなんて、考えるまでもないわよね)

 

仮に、自分に子供ができたとして、リュウジのように子供を深く愛せるだろうか。

 

(その為に、大嫌いな兄に、あそこまで懇願した……)

 

ゲンドウになりふり構わず懇願する、リュウジの姿がミサトの脳裏に焼き付いていた。

あの二人が、兄弟としてどんなふうに過ごしてきたかは、わかるはずもない。

それでも、二人の関係が、

 

「犬猿の仲」

 

であることは間違いない。

そんな兄に、シンジに為に、愛するものの為に、あそこまで必死になっていた。

 

(あんな風に、父親に愛されてたら……)

 

ミサトにとって、父親という存在には、いいイメージは無い。自分の父親が、決していい父親ではなかったからであるが、だからこそあんな風に、撫でてくれたり、抱きしめられた記憶は無い。

 

(でもあの人も、最後は私だけをポッドに……)

 

なぜ父は、最後に自分を助けたのか。ミサトはリュウジがゲンドウに言ったことを思い出す。

 

『俺はシンジを、愛してる。そして、是が非でも守る。これはユイさんとの約束でも、お前がネグレクトしているからでも、俺の罪滅ぼしでもない。俺の純粋な願いだ。……その為なら俺は何でもする。覚えとけよ』

 

リュウジの純粋な願い。シンジを守りたいという願い。

父も、そうだったのだろうか。

純粋に、自分を守りたかったのだろうか。

リュウジを見ていると、自然とそう思えてきた。

 

「……そう、だったら……いいな」

 

 

「それでは、お手を拝借」

 

「「「いただきます」」」

 

そうして、出来上がった料理が並び、3人が食卓を囲む。

 

「おいしっ!この生姜焼き」

 

「ありがとうございます。人工肉でも、味付けでなんとかなるもんですよ」

 

「ミサトさん。これ、僕が作ったフルーツサラダです」

 

「うまっ!さっぱりしてなおかつフルーツのおかげでジューシーだわ」

 

この街に来て、と言うより、ミサトが一人で暮らすようになってから、自宅でここまでまともな食事を取ったのは初めてかもしれない。

 

「いや〜ビールが進む進む」

 

「飲みすぎないでくださいよ。ベロンベロンに酔うのは。私はともかく、シンジの前では勘弁してください」

 

そう言いつつも、リュウジもビールを煽る。

 

「だ、大丈夫ですって。それぐらいは心得てますから」

 

だがそこで、ミサトははたと気付く。

 

「大丈夫ですか?あまり箸が進んでないですけど」

 

まだ食事が始まったばかりであるが、ミサトやシンジと比べても、あまり口に食べ物が入っていってなかった。

 

「歳のせいか、どうも食欲が減退してまして」

 

「歳のせいって、見た目はまだまだ若いってのに」

 

「それに私もアラフィフですから、体には気をつけているんです」

 

そう言って、野菜などの方をリュウジは口に運んでいる。

 

「ああ、遠慮しないでください葛城さん。さ、シンジも食え」

 

「うん。あ、この野菜炒めうまくできた」

 

「どれどれ〜。あらホント、野菜がシャキシャキ!」

 

そうして、みるみるうちに、料理は消えていき。束の間の団欒を3人は楽しんだ。

 

「ごちそうさまでした」

 

「「お粗末さまでした」」

 

「シンジ、落ち着いたら、さっさと風呂入って寝ろ。今は、体を休めとけ」

 

「わかってる、後片付け僕も手伝うよ」

 

「いいから、休んどけ」

 

「ならアタシが……」

 

「葛城さんも、休んでてください。遠慮しなくていいですから」

 

リュウジは流しに立ち、後片付けを始めた。

 

「なら、先ボクお風呂入っとく」

 

「そうしなさい。風呂は命の洗濯よ」

 

そうしてシンジが風呂場へと入っていって、

 

「うわああああぁぁぁーーーーーー!!!」

 

いきなり叫び声が響く。

 

「ミ、ミ、ミ、ミサトさん!!お、おお、おじさん!!」

 

「なに?」

 

「どうした?」

 

かと思えば、全裸のシンジが突如リビングに飛び出してきた。

 

「ああ……ああ、あっあ…」

 

その目の前を、小さな影が通り過ぎていく。

 

「あれ?」

 

「ペンギン?」

 

「ああ、彼?温泉ペンギンという、鳥の仲間よ」

 

(温泉ペンギン?)

 

そのペンギンは、シンジとリュウジをひと睨みすると、彼の個室?に入っていった。

 

「あ……あんな鳥がいるんですか!?」

 

「15年前はね、いっぱいいたのよ。名前はペンペン。縁あってうちにいる、もう一人の同居人」

 

「シンジ、……前隠して、さっさと風呂入れ」

 

「へ?……うわっ」

 

恥じらいながらも、シンジは風呂へと入っていく。

 

「私も、久しぶりに見ましたよ。ペンギンなんて」

 

「ま、そもそもセカンドインパクト前でも、一般家庭にはいませんでしたしね」

 

「……そうか、シンジは海を知らないんだな」

 

 

深夜、一人リュウジはベランダのデッキチェアに腰を下ろし、葉巻を燻らせていた。

 

「……何か、御用ですか?」

 

「え!?いえ、その……」

 

ミサトであった。

 

「ごめんなさい。窓が空いてたものだから……」

 

「ああ、申し訳ない。これをやるのに、室内は匂いがこもりますから」

 

咥えていた葉巻を、リュウジは手に持ち直しミサトの方を見た。

 

「眠れないんですか?」

 

「ええ、もう10年ぐらい寝れてません」

 

「え?」

 

いきなりの言葉に、ミサトは狼狽える。

 

「以前秘密裏に受けた人体実験のせいで、歳は取らなくなったし、食欲も減ったし、眠れなくなった……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!ほ、本当何ですか?」

 

あまりのミサトに慌てように、リュウジは、

 

「ハハハ、冗談ですよ。本気にしないでください」

 

思わず吹き出してしまった。

 

「そ、そのての冗談をあなたがいうと、冗談に聞こえませんよ」

 

「失礼しました。ですが、眠れないのは本当です。所謂PTSDって奴でして」

 

「あ、そ、それは……」

 

ミサトは、思わず悪いことを聞いてしまったと感じた。

湾岸戦争以来戦ってきたことを考えると、トラウマの一つや二つ、抱えてないわけがない。

 

「失礼しました。余計な詮索を……」

 

「葛城二佐。敬語は不要です。私はあなたの直属の部下になるんですから。私なんぞに敬語を使っては、部下が混乱します」

 

「で、ですが……」

 

「普段からも不要です。それこそ、日常生活から慣れないと、いざという時、思わず出ちゃいますよ」

 

リュウジは葉巻を灰皿に置くと、ミサトを正面に見据える。

 

「あなたは作戦部長です。丸まった背中を部下が見れば不安になります。私を顎で使うぐらい、しっかりと構えていてください。それが、何より部下を安心させますから」

 

「……分かったわ、リュウジ。改めて。これからよろしくね」

 

「ええ、こちらこそ」

 

そうして、二人は握手を交わした。

 

「無理して眠ることはないと思うけど、せめて体を休めてね。夜風も体に毒だから」

 

「ええ、これが終わったら、戻りますよ」

 

リュウジは再び葉巻を手に取り、ミサトを見送った。

 

(……ふぅ、なんとか誤魔化せたか)




段々と、読んでくださる方が増えてきて本当にありがたいです。これからも、よろしくお願いします。

ご意見、ご感想お待ちしてます。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですが、お知らせ下さい。

何卒よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。