新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
サクサク進められれば良いんですが、どうしてもペースがあげられないです。
「……私です。ええ、こんなことになって、申し訳ありません」
『いや、気にしなくていい。頼んでいた件は、高雄に引き継いでもらった』
「高雄に?」
『ええ、勝手で申し訳ないが……』
「いえ、彼なら適任です。完全に外の人間ですし、ユーロの伝手も彼ならよく知っている」
『高雄もそう言っていた。なので、貴方には、しばらくゲンドウの元で、今まで通りにしていてほしい』
「わかりました、あなたは?」
『しばらくは、与えられた役目をしっかり果たすつもりだ。現状では、先に仕掛けた方が不利になる。ならば……』
「その間に、得たい情報を得る、と?」
『その為のキーパーソンを、あの人は用意してくれた』
「それが、その真希波マリだと?」
『何かあれば、頼れる人と聞いたからな。実際、優秀な人物だ』
「面識があるのですか?」
『…逆に、無いと言った覚えはないが……』
「……貴方には敵いませんよ、教官」
『まぁ、黙っていたのは悪かった。申し訳ない』
「いえ、情報が漏れる可能性を考えれば……」
『悪いが、私はそんなヘマはしない』
「……失礼しました」
『だからこそ、貴方だけが、このやり取りを知っている。……どう利用するかは、自由です』
「え?」
『この意味がわからないほど、貴方は愚鈍では無いはず』
「ですが!そんなこと……」
『何度も言ったはずです。私はもう、貴方の教官ではない、と。……私をも利用してみせなければ、ゲンドウに取り入ることは出来ない』
「……なぜ、そうまでして」
『私の志を、誰かが受け継いでくれるとわかっているから。無論、死ぬつもりはないが、死を恐れることはない』
「貴方は生き残るべき人です。貴方は、多くの人を導いてくれる」
『……俺が導くのは、死だ』
「私は生きています。高雄も……」
『……すまない。これからも頼みます。では』
「ええ、ご武運を。……あ、あと」
『うん?』
「シンジ君に伝えてください。ありがとう、と」
※
『多少不具合でも、第5の使徒にまた役立てばよい』
「ご心配なく。初号機の実戦配備に続き、弍号機と付属パイロットも、ドイツにて実証評価試験中です」
『3号機以後の建造も、計画通りにな』
『ネルフとエヴァの適切な運用は、君の責務だ。くれぐれも失望させぬように頼むよ』
『さよう、使徒殲滅はリリスとの契約の、ごく一部にすぎん』
『人類補完計画……その遂行こそが我々の究極の願いだ』
「分かっております。全てはゼーレのシナリオどおりに」
『……碇、本当にそのつもりなのかね?』
「……どういうことでしょう」
『とぼけるな。君の弟、碇リュウジのことだ』
『左様。この5年間、ネルフはもとより、我々ゼーレの目すら、奴の存在を認知する事が出来なかった』
『最も厄介なのは、奴が我々の存在を知っているのかどうかも、判然としない事だ』
「奴は何も知りません。エヴァの存在すら知らなかったのですから」
『それだけでは無い。表の世界とはいえ、奴のパワーバランスに与える影響力は計り知れん』
『そうだ、奴の弟子や教え子は世界中にいる。我々の手の者の中にもだ』
『よいか碇、奴の手綱を確実に握っておけ。それが出来なければ、わかるな?』
「……っ。承りました」
※
シンジとリュウジは病室を出て、景色を眺めながら、蝉の音を聞いていた。
「さて、これからの生活のことなんだが……」
「え?帰るんじゃないの?」
「使徒はまだ来るらしい。ネルフ側としては、お前にパイロットとして、ここにいてほしいとのことだ」
「そう……ですか……」
それを聞いて、シンジは少し緊張した。今になって、自分はエヴァに乗って、使徒と戦ったという、非現実感が、自分の恐怖心に現実であると迫ってきたのだ。
「何度も言うが、乗らなくていいんだぞ」
「……その言葉だけでも、嬉しいよ。おじさん」
家族の為に、自分は闘う。いつも僕を守ってくれた人を、今度は僕が守る。そう自分に言い聞かせるように、シンジは拳を握りしめた。
「…………」
リュウジは何も言うことができなかった。
ただ一つわかるのは、シンジに、守ると決めた存在に、こんな張り詰めた表情をさせてる時点で、自分はどうしようもないということである。
「……わかった。これ以上止めるのは、失礼になるな」
「失礼だなんて……」
そんな時、どこからかドアの開く音が響いた。二人は音のする方向を見ると、ベッドが一つ、こちらに移動してきた。
「あ、あの子……」
「……綾波レイ」
「綾波……レイ?」
「ああ、最初の適格者。お前が第3の少年で、彼女は第1の少女。試作のエヴァがここにはもう一機あるらしく、その専属パイロットらしい」
二人はそのまま移動していく、ベッドを見送った。
「……なぁ、シンジ。つかぬ事を聞くが、あの子に見覚えないか?」
「え?……いや、無いですけど」
「そう、か……」
そういえば、シンジにはユイさんの記憶がない。ならば綾波レイに見覚えがないのも通りであろう。
(だが何故だ?顔すら知らないのは、何か作為を感じる)
「……おじさん」
「ああ、すまん。変なこと聞いて。ま、同じパイロット同士だ、仲良くな」
「うん。やってみるよ」
その後、シンジは検査を受け端的にいえば、
「異常なし」
の判を押され、そのまま退院となった。
「ま、とにかく。何もなくてよかった」
二人は病院のラウンジに移動して、アナウンスを聞きながら待機していた。
「……それで、ここでの生活なんだが……」
「おっ待たせ〜。二人とも」
その声に、二人はミサトを視界に捉えた。
「……この方にお世話になります」
そう言ったリュウジの、手だけが紹介するようなジェスチャーをした。
「……え?」
「そゆことだから、よろしくね、シンちゃん」
※
「はい?!?!」
今この人はなんと言った?
「ですから、同居。一緒に暮らすんです」
時はゲンドウのオフィスから出て、その直後に戻る。部屋の外でリュウジは、一回り以上も年の離れたミサトに同居の提案を受けていた。
「だから、なんでそんな突飛な話になるんですか」
「考えてもみてください。仕事上は私の副官をしてくれれば、監視はできます。では日常生活はどうですか?別々に暮らしててできますか?」
「まぁ、無理ですね」
「でしょう?ならば、同居するのがもっとも手っ取り早いじゃないですか」
「いや、理屈ではそうですが。貴方はどうなんです。いきなり得体の知れないオヤジと同居というのは」
「自分で言うのもなんですが、もうそんなこと気にする純情さは消え失せてます。ご心配なく」
そう言ったときのミサトの眼が、どこか遠くを見ていたのは勘違いではあるまい。
「そうだ。なんだったらシンジ君も一緒に住みましょう」
確かにそうできればありがたいのは言うまでもない。
「シンジ君が、ここにパイロットとしていてくれるなら、その監督も直属の上司である私の仕事です」
※
「……と、言うことでな」
「意外に押しに弱いんですね、おじさんって」
「いや、まぁ、な……」
その直前の出来事で、少しナイーブになっていたのは黙っていた。
「というわけで、今夜は新たな同居人の歓迎会として、パァーッといくわよ」
行きましょ、とミサトは二人を誘って、自身の車へと向かった。
(今日はダメだな。年下に気を使わせてどうする)
ゲンドウとやりあって、結局は何も出来なかった。それを見ていたミサトは、彼女なりにリュウジに気を使ってくれている。
「それなら、お礼も兼ねて、僕とおじさんで何か作りますよ」
「そういえば、リュウジさん定食屋だったわね。でも、シンジ君も料理できるの?」
「ええ、色々教わりましたよ。おじさんから」
これはシンジにとって、いい刺激になるかもしれない。
(いつまでも、俺に……いや、俺がベッタリしている訳にはいかないからな)
シンジはいつかは、自分の元を巣立っていくし、それが正しいと思う。
そに為には、一層いろんな人と触れ合い、見聞を広げてほしい
「それじゃ、食材を買って、それから、ちょっち寄り道するわよ」
「寄り道?」
「ええ、見せたいものがあるの。リュウジさんも、いいですね?」
「ええ、行きますか」
夕方にさしかかろうという時刻に、3人は車で近場にあるスーパーに立ち寄った。
曲がりなりにも、飲食店で腕を振るっていたリュウジと、その店を学生の本分を阻害しない程度に手伝っていたシンジは、見た目が良さそうな野菜や、人工肉を品定めし、ミサトは、
「おっ待たせ〜」
と言って、大量のビールを買い込んでいた。
「リュウジさんも飲みますよね?」
「まぁ、人並みには……」
「そうこなくっちゃ。一人飲みも悪くはないんだけど。やっぱ相手がいたほうが楽しめるのよね〜」
加えてプロの料理が楽しめるとあって、ミサトはテンションが高めである。
「あ、そろそろ時間だからさっさと会計済ませましょ」
「時間?」
「そ、さっき言った寄り道よ」
そうして一行は会計を済ませ、ミサトの言う寄り道の展望台のように、見晴らしのいい場所で車を止めた。
「どう?いい眺めでしょ?」
「夕日が、ずいぶん綺麗に見渡せますね」
改めて、リュウジは第3新東京市を、一望した。
要塞都市。と言っても、それはリュウジにとっては、いびつな様相を呈していた。考えてみれば当たり前であった。これは、対人戦の要塞都市ではなく、対使徒戦用の要塞都市であるからだ。
彼にしてみれば、それは違和感として映る。
(今後の戦いにおいて、俺の知識などあてにはならないか)
かと言って、それをよしとする気もないが。
「……時間だわ」
ミサトの言葉とともに、サイレンが鳴り響く。
「すごい!ビルが生えてく!」
シンジの言葉通り、雨後の筍のごとく、大量のビルがまさに生えてきた。
「これは……圧巻だな」
流石にこの光景には、リュウジも感嘆の声をあげた。
「これが、使徒専用迎撃要塞都市、第3新東京市。私たちの街よ。……そして、あなたが守った街」
使徒が来れば、逆にこのビルを収納すれば良い。そう考えると、単純だがよく出来たシステムである。
「シンジ君。貴方にこれを見て欲しかったの。貴方が守ったものを」
「……ごめんなさい。ミサトさん」
「え……」
「ぼくは、ぼくが守りたいものの為に戦っただけです。……この街や、みんなの事は、……正直、頭にありませんでした」
「シンジ君、それはなにも……」
「いえ、それも自分勝手な僕を隠す言い訳かも知れないです」
リュウジへと、シンジは俯きながら体を向ける。
「おじさんや、あの子を守りたい、なんて言ったけど、……ぼくは、……ただ生き残りたいが為に、ただ無我夢中だったのかも知れません。……死にたくないっていう、そんな自分勝手な想いだけで、ぼくは……結局」
自分はこの人のおかげで、強くなった。そう思っていた。だがそんなものは幻想で、臆病で、卑怯な自分は、何も変わってない。そう思うと、シンジは情けなくなり、アスファルトに、涙が溢れる。
「シンジ……強くなったな」
気づけば、リュウジはしゃがみこみながら、シンジの両肩を持っていた。
「おじさん?」
「生きるという意思は、最強の武器となる。どんな絶望的な状況でも、生き抜くという強い意志こそが、その状況を切り抜ける切り札となるんだ」
その意思を持っていたシンジに、リュウジは心から尊敬の念を送る。
「俺ができる事は、お前に戦う技術を教えることと、戦闘のアドバイスぐらいだ。だからこそ、自分を強くするのは、自分の心次第だ。……シンジ、お前は俺より、遥かに強くなった。お前自身が、そうあろうとする限り、お前はさらに強くなれる」
この言葉が、果たして正解となるかはわからない。いや、戦わせたくないといいつつ、こんなことを言っている時点で、最大の矛盾が発生している。
だがリュウジは、シンジに、自分を誇って欲しかった。
「お前は、俺の誇りだ」
「……うん、あ、ありがとう……おじさん」
だが少なくとも、今のシンジを励ます事はできた。リュウジの胸で、シンジはしばらく、涙を流した。
そんな二人を、ミサトは複雑な表情で、ただ見ているしかなかった。
※
「……なぁ、シンジ」
「……何?おじさん」
「俺は騙されたのかな、葛城二佐は、『住んでいる部屋』に案内してくれたんだよな」
「奇遇だねおじさん。僕もそう思ってたよ」
「よかった。……じゃあ、ここなんだと思う?」
「ゴミ置場、に見えます」
「……やっぱり騙されたのかな」
「二つの可能性があります」
「うん」
「一つは、ミサトさんが本当に僕らを騙した」
「二つ目は?」
「考えたくないし、失礼だとは思うけど、……ミサトさんが片付けられないおn……」
「うるっさいわねぇっ!!そーですよ!!どうせ私は片付けられない女ですよ!!!悪うございましたね!!!」
涙目になりながら、いや、半泣き状態でいい年した女が、喚き散らす。
そしてその『ゴミ置場』前に、買ったものを抱えながら立ち尽くす、リュウジとシンジ。
「「ハァ……」」
二人のシンクロ率100%のため息がこぼれた。
「これでは埒があかん。シンジ、かたづけるぞ」
「了解です」
そういうが早いが、二人は食材を、ひとまず冷蔵庫へとしまおうとするが、
「こらまた……」
つまみと、ロック氷、そして大量の、
「ビールばっか」
大丈夫なのだろうか、この人の肝臓。
「シンジあの人は片付けられない女なだけじゃない。日常生活がだらしないおn……」
「ちょっと!!さっきから貴方たち私に恨みでもあるわけ?!?!」
ついにガチ泣きとなる。
そんなミサトなどないものと思い、二人は片付けにかかり、慣れているのか、一時間もしないうちに、『ゴミ置場』は消え失せていた。そしてその間、ミサトはあまりの手際の良さにただ茫然としていた。
「燃えるゴミとかは、明日出すとして、瓶、缶はさっきのスーパーで資源回収してたから、そっちに明日持ってこう」
回収日を待っても良かったが、リュウジもシンジもあるだけで、
「目障りだ」
と言って憚らない。
その一言で、ミサトはまた泣いた。
「私とシンジで夕飯の支度してますから、葛城さんは、先風呂入っちゃってください」
「いや、何かお手伝いを……」
その先をリュウジは言わせなかった。
「葛城さん。貴方料理は?」
「あの、その、……インスタントなら」
「包丁を、最後に握ったのは?」
「ナ、ナイフなら、訓練で……」
「私は『包丁』と言ったんですが」
「……お風呂、先にいただきます」
「よろしい」
このやり取りを見てシンジは思った。
(おじさん、ミサトさんの親もやることになるな)
先程のリュウジは一昔前の、ホームドラマで、嫁ぎ遅れただらしない娘を叱る『母親』のようであった。
※
ミサトはこれまでの一連の出来事に、湯船に浸かりながら、思考を巡らせていた。
(碇司令の弟。正体を完全に掴めたわけではないけれど、悪い人ではない。むしろ、私たちより健全な……いえ、私なんかよりよほど狂気の世界に身を置いていたはず。なのにあれ程の健全な思考を持っている)
それは逆に狂気の沙汰、といえるのではないか。
(でも、守ってくれることのない、正常な大人、何が何でも守ろうとする、狂った大人。どっちをシンジ君が必要としているかなんて、考えるまでもないわよね)
仮に、自分に子供ができたとして、リュウジのように子供を深く愛せるだろうか。
(その為に、大嫌いな兄に、あそこまで懇願した……)
ゲンドウになりふり構わず懇願する、リュウジの姿がミサトの脳裏に焼き付いていた。
あの二人が、兄弟としてどんなふうに過ごしてきたかは、わかるはずもない。
それでも、二人の関係が、
「犬猿の仲」
であることは間違いない。
そんな兄に、シンジに為に、愛するものの為に、あそこまで必死になっていた。
(あんな風に、父親に愛されてたら……)
ミサトにとって、父親という存在には、いいイメージは無い。自分の父親が、決していい父親ではなかったからであるが、だからこそあんな風に、撫でてくれたり、抱きしめられた記憶は無い。
(でもあの人も、最後は私だけをポッドに……)
なぜ父は、最後に自分を助けたのか。ミサトはリュウジがゲンドウに言ったことを思い出す。
『俺はシンジを、愛してる。そして、是が非でも守る。これはユイさんとの約束でも、お前がネグレクトしているからでも、俺の罪滅ぼしでもない。俺の純粋な願いだ。……その為なら俺は何でもする。覚えとけよ』
リュウジの純粋な願い。シンジを守りたいという願い。
父も、そうだったのだろうか。
純粋に、自分を守りたかったのだろうか。
リュウジを見ていると、自然とそう思えてきた。
「……そう、だったら……いいな」
※
「それでは、お手を拝借」
「「「いただきます」」」
そうして、出来上がった料理が並び、3人が食卓を囲む。
「おいしっ!この生姜焼き」
「ありがとうございます。人工肉でも、味付けでなんとかなるもんですよ」
「ミサトさん。これ、僕が作ったフルーツサラダです」
「うまっ!さっぱりしてなおかつフルーツのおかげでジューシーだわ」
この街に来て、と言うより、ミサトが一人で暮らすようになってから、自宅でここまでまともな食事を取ったのは初めてかもしれない。
「いや〜ビールが進む進む」
「飲みすぎないでくださいよ。ベロンベロンに酔うのは。私はともかく、シンジの前では勘弁してください」
そう言いつつも、リュウジもビールを煽る。
「だ、大丈夫ですって。それぐらいは心得てますから」
だがそこで、ミサトははたと気付く。
「大丈夫ですか?あまり箸が進んでないですけど」
まだ食事が始まったばかりであるが、ミサトやシンジと比べても、あまり口に食べ物が入っていってなかった。
「歳のせいか、どうも食欲が減退してまして」
「歳のせいって、見た目はまだまだ若いってのに」
「それに私もアラフィフですから、体には気をつけているんです」
そう言って、野菜などの方をリュウジは口に運んでいる。
「ああ、遠慮しないでください葛城さん。さ、シンジも食え」
「うん。あ、この野菜炒めうまくできた」
「どれどれ〜。あらホント、野菜がシャキシャキ!」
そうして、みるみるうちに、料理は消えていき。束の間の団欒を3人は楽しんだ。
「ごちそうさまでした」
「「お粗末さまでした」」
「シンジ、落ち着いたら、さっさと風呂入って寝ろ。今は、体を休めとけ」
「わかってる、後片付け僕も手伝うよ」
「いいから、休んどけ」
「ならアタシが……」
「葛城さんも、休んでてください。遠慮しなくていいですから」
リュウジは流しに立ち、後片付けを始めた。
「なら、先ボクお風呂入っとく」
「そうしなさい。風呂は命の洗濯よ」
そうしてシンジが風呂場へと入っていって、
「うわああああぁぁぁーーーーーー!!!」
いきなり叫び声が響く。
「ミ、ミ、ミ、ミサトさん!!お、おお、おじさん!!」
「なに?」
「どうした?」
かと思えば、全裸のシンジが突如リビングに飛び出してきた。
「ああ……ああ、あっあ…」
その目の前を、小さな影が通り過ぎていく。
「あれ?」
「ペンギン?」
「ああ、彼?温泉ペンギンという、鳥の仲間よ」
(温泉ペンギン?)
そのペンギンは、シンジとリュウジをひと睨みすると、彼の個室?に入っていった。
「あ……あんな鳥がいるんですか!?」
「15年前はね、いっぱいいたのよ。名前はペンペン。縁あってうちにいる、もう一人の同居人」
「シンジ、……前隠して、さっさと風呂入れ」
「へ?……うわっ」
恥じらいながらも、シンジは風呂へと入っていく。
「私も、久しぶりに見ましたよ。ペンギンなんて」
「ま、そもそもセカンドインパクト前でも、一般家庭にはいませんでしたしね」
「……そうか、シンジは海を知らないんだな」
※
深夜、一人リュウジはベランダのデッキチェアに腰を下ろし、葉巻を燻らせていた。
「……何か、御用ですか?」
「え!?いえ、その……」
ミサトであった。
「ごめんなさい。窓が空いてたものだから……」
「ああ、申し訳ない。これをやるのに、室内は匂いがこもりますから」
咥えていた葉巻を、リュウジは手に持ち直しミサトの方を見た。
「眠れないんですか?」
「ええ、もう10年ぐらい寝れてません」
「え?」
いきなりの言葉に、ミサトは狼狽える。
「以前秘密裏に受けた人体実験のせいで、歳は取らなくなったし、食欲も減ったし、眠れなくなった……」
「ちょ、ちょっと待ってください!ほ、本当何ですか?」
あまりのミサトに慌てように、リュウジは、
「ハハハ、冗談ですよ。本気にしないでください」
思わず吹き出してしまった。
「そ、そのての冗談をあなたがいうと、冗談に聞こえませんよ」
「失礼しました。ですが、眠れないのは本当です。所謂PTSDって奴でして」
「あ、そ、それは……」
ミサトは、思わず悪いことを聞いてしまったと感じた。
湾岸戦争以来戦ってきたことを考えると、トラウマの一つや二つ、抱えてないわけがない。
「失礼しました。余計な詮索を……」
「葛城二佐。敬語は不要です。私はあなたの直属の部下になるんですから。私なんぞに敬語を使っては、部下が混乱します」
「で、ですが……」
「普段からも不要です。それこそ、日常生活から慣れないと、いざという時、思わず出ちゃいますよ」
リュウジは葉巻を灰皿に置くと、ミサトを正面に見据える。
「あなたは作戦部長です。丸まった背中を部下が見れば不安になります。私を顎で使うぐらい、しっかりと構えていてください。それが、何より部下を安心させますから」
「……分かったわ、リュウジ。改めて。これからよろしくね」
「ええ、こちらこそ」
そうして、二人は握手を交わした。
「無理して眠ることはないと思うけど、せめて体を休めてね。夜風も体に毒だから」
「ええ、これが終わったら、戻りますよ」
リュウジは再び葉巻を手に取り、ミサトを見送った。
(……ふぅ、なんとか誤魔化せたか)
段々と、読んでくださる方が増えてきて本当にありがたいです。これからも、よろしくお願いします。
ご意見、ご感想お待ちしてます。
誤字、脱字等ございましたら、お手数ですが、お知らせ下さい。
何卒よろしくお願いします。