新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
でも執筆も進めたい、でも映画館に行きたい。
そんなせめぎ合いのため、最近少し投稿が遅れ気味です。申し訳ないです。
ちなみに先日は立て続けに二本も見ましたwww
戦いが終わり、シンジは着替えを終え、シャワー室のベンチに座り込んでいた。
そして、終わった途端に彼に襲いかかる後悔の念と、必死に向き合っていた。
守りたいと思いながらも、その感情が強過ぎるあまり、我を忘れ、命令を無視し、あの二人を危険に晒した。
その後悔が、恐怖をも生み、シンジを苛んだ。
「シンジ、入っていいか?」
ドアの外から、叔父の声がする。
シンジはハッとする。
返事をしたくない、リュウジになんといえばいいのかわからない。ミサトになんと言って謝ればいいのかわからない。
「シンジ?大丈夫か?」
「…………はい」
リュウジに居留守など、通用するわけがない。シンジは観念したように、静かに返事をし、
「……入るぞ」
ゆっくりとリュウジは入室する。
「大丈夫か?怪我ないか?」
「……大丈夫だよ。……過保護なんだから」
「戦闘後だ、心配させてくれ」
今にしてみれば、何時も叔父は自分の心配をしてくれている。時には煩わしく感じたものだが、今はとてもそれがありがたく感じ、尚且つ、自分の罪の意識を鮮明にさせた。
(……いっそのこと、……罵ってくれればいいのに)
「ま、報告は受けてる。心的外傷なし、精神汚染もなし、てな。だが、お前の口から、大丈夫かどうか聞きたかったんだ」
よかった、よかった、とシンジは頭をポンポンと叩かれ、
「あの二人も無事だ。使徒にも勝った。……そして、お前が無事で、本当によかった……ありがとう」
優しく、彼の胸に抱き寄せられた。
それは、何時も彼がくれる温もりだった。それが、優しく、かつ残酷にシンジを包んだ。
「なんで……」
「うん?」
「なんで……優しくするんだよ!」
たまらなくなり、シンジは温もりを振り払うと、立ち上がり、後ずさった。
「ぼくは、命令を無視したんだ。あの二人を危険に晒した。間違えたら死んでたかもしれないのに!ぼくは守りたいものを、台無しにしてしまうところだったのに、なんで!!……」
シンジはヘタリ込む。
全身が、何かに貫かれるように、彼の心を苛んでいた。温もりすら、今のシンジには、苦しみとなった。
「なんでぼくに……、優しくするんだよ」
嗚咽が混じった声で、叔父にシンジは懇願した。ぼくはやはり強くなんてない、貴方の温もりを受ける権利なんてない。だから、
「優しく……しないで……」
だがリュウジは容赦しない。
リュウジは屈むと、ヘタリ込むシンジの肩に、そっと手を置いた。
「よくわかるよ。今のお前は、誰かに罵倒して欲しくて、誰かにブン殴って欲しくて、どうしようもない。そうだろう?」
シンジは、ゆっくりと頷いた。
「なら悪いが、俺はお前にそんなことはしない。罰が、罪の意識を忘れないためのものならば、今は優しくすることが、何よりの、お前の罰になる」
リュウジは、シンジの目を見据える。
言葉だけでなく、心からも伝えなければならない。
「それに、お前は自分がやったことをしっかり反省してる。もししてないのなら、俺だってブン殴ってたかもしれんが、そうじゃないだろ?それとも上辺だけか?」
「ち、違うよ!」
「ならいい。反省してるのなら、あとはお前自身で、気持ちに決着をつけろ。反省は大事だが、それを引きずると、迷いにも繋がる。その迷いは、戦闘における判断を鈍らせる。わかるな?」
「……はい」
自分の気持ちに踏ん切りをつけるのは、簡単なことじゃない。それはわかるが、自分自身にしかできないことだ。優しくはするが、リュウジはここではシンジを突き放す。
「どうだ?もうやめたいか?」
シンジは何度も首を横に降る。
「そうか。……そうだよな。ここでやめるぐらいなら、そもそも最初からエヴァになんざ乗らなければいい。……だが、お前はエヴァに乗った。お前が、お前自身が守りたいもののためにだ。なら、今更降りれないな」
「はい」
「なら自分で乗り越えろ。それが出来なければ、……お前はお前自身を殺すことになる。いいな?」
それが出来なければ、この先、生き残る事など出来はしない。
それがシンジ自身にしか出来ないならば、リュウジが出来るのは、飽くまで見守ることだけだ。
「さて、しばらく休んでろ、俺はお前の同級生を、先に送ってくる」
「うん……」
「帰ったら、お前が食いたいもん作ってやる。何がいい?」
「……唐揚げと……里芋の煮っころがし」
「オッケー、了解だ。じゃ、ゆっくりしてろ」
シンジの頭をワシャワシャと撫で、リュウジは部屋を出た。
ドアを閉めると、その横には壁に寄りかかったミサトが待っていた。
「ありがとう。碇三尉」
「あとはお任せします。私は……」
リュウジはその場を後する、
「ええ……」
……事は出来なかった。彼女の声が、引っかかったのだ。
「……大丈夫ですか?葛城二佐」
「大丈夫よ?どうしたの?」
平静を装っているが、ミサトも思いつめているのが、見て取れた。
「……葛城二佐。余計なお世話かもしれませんが、私が貴方の副官となったのは、なにも、人事や、兄からの隠れ蓑にするためだけじゃありません。……貴方が、私より優秀な指揮官になれると思っているからです。ですから、どうか気を落とさずに」
では、というと、今度こそ、その場を後にする。
リュウジは、ミサトを自分のようにはしたくなかった。
子供達を守れず、死なせてしまった自分のようには。
かつての自分と、同じ境遇にいるミサトを助ける。その為には、今の役職はうってつけだ。
(貴方も助けてみせますよ。葛城さん)
※
一方のミサトは、いきなりリュウジに言われたことが、頭の中で反響していた。
(……リュウジさん。貴方……)
リュウジのような存在は、今までミサトの周囲にはいなかった。
むしろ、碇ゲンドウや、冬月副司令を除けば彼女は年長者の部類となる。尚且つ、作戦責任者という立場である以上、気軽に相談できる存在はいなかった。
そこに現れたる碇リュウジは、自分以上の経験や知識、能力を持っている。
(……期待に応えなきゃ)
そんな人が、自分をサポートしてくれている。ならば、まず自分が為すべきことをせねばならない。
「シンジ君?いいかしら?」
「え?あ、はい!どうぞ」
ミサトはそのままシャワー室に入った。
「あ、あの……ミサトさん。その……ごめんなさい。…申し訳ありませんでした!」
その途端、シンジはミサトに深々と頭を下げていた。
(……いい子ね。本当に)
頭を下げながら、その肩が震えているシンジを見て、ミサトは心の底からそう思った。
「シンジ君。……はい」
「え?」
シンジが顔をあげると、ミサトはスポーツドリンクが入ったカップをシンジに差し出していた。
「……少し、話さない?」
「は、はい……」
「ありがと。シンジ君と、こうして二人で一度話してみたかったの」
座って、とミサトは座りながら、シンジにも座るよう促す。
「まず、命令無視の件だけど、今回は厳重注意。次回から気をつけるように、いいわね?」
「はい、以後気をつけます」
「そんな硬くならないで、貴方まだ14歳なのよ?何の訓練も受けずに、気持ちのコントロールなんてできないわ。だいの大人でも、いざとなればパニックになることも少なく無いの。だから次、気をつければいいわ」
ね?というとミサトはシンジの肩を、軽く叩いた。
「……あの、聞いてもいいですか?」
「なに?」
「その、なんていうか……、ミサトさんから見て、ぼくってパイロットとしてどうなんですか?」
「どうって?」
「その、腕前というか、技術っていうか……、とにかく、エヴァにちゃんと乗れて、戦えてるのか、わからなくて」
「おじさんはいつもよくやったとか言ってくれるけど、本当にそうなのか、自分ではよく分からなくて、……だから、その、ミサトさんから見てどうですか?え、遠慮なく言ってください」
ミサトは、思わず、
「そんなこと気にしてたの?」
と言いそうになるが、なんとか自分の中に引っ込める。
シンジはあれだけの戦果や、訓練スコアを出しておきながら、未だに自分のパイロットとしての実力に疑問を持っている。
だがどう見ても、シンジは優秀なパイロットである。世界で初めて、実戦でエヴァを操り、既に二回も使徒を殲滅せしめた。その戦果はこのネルフ本部ではもとより、他の支部でもその戦績や訓練スコアが公開されて、まさにエースパイロットだと言われ、評判にもなっているらしい。
「シンジ君。リュウジさんは間違ってないわ。貴方は良くやってるし、非常に優秀なパイロットよ。自信持って」
「本当ですか?」
「嘘言ってどうするのよ。そりゃあ、まだ荒削りなところもあるし、今回の命令無視もあるから、訓練しなければならない事はあるわ」
「でもね、貴方は訓練もされてないのに、初めてエヴァに乗って、操縦してみせた。あの時の近接戦闘なんて、私なんか真似できないわよ」
「あれは、おじさんの動きを、思い出してっていうか、イメージしたというか……」
「それをいきなり実戦で繰り出せた時点で、相当凄いことなのよ?どう見ても、誰が見ても、貴方は優秀よ。自信持っていいわ」
「……ありがとうございます。ずっと不安だったんです。ちゃんと戦えるか、守りたいものが、守れるか。……おじさんは優しいから、よくやったって言ってくれるけど、……気を遣わせてるんじゃないかって、勘ぐっちゃって」
「無理ないわよ。分からない事だらけだものね。もっとも、私もまだまだ手探り状態だから、偉そうなこと言えないけどね」
そう言って、ミサトは天井を見上げる。
「凄いわよね、リュウジさんって。ずっと、こんな経験をしてきて、それでも折れずに、戦い続けてる」
「そうですね。ぼくはとても、あんな風に成れるとは思えないですよ」
「ふふ、私もよ」
ミサトはシンジの方に視線を向けると、共に目が合い、
「「フフッ」」
二人の共感が、笑いを誘った。
「聞いてよ、シンジ君。あの人敬語とか、さん付けすると怒るのよ?他の部下に示しがつきませんって」
「アハハッ!おじさんらしいや」
「初めてよ、年上に敬語使って怒られたなんて。……あ!」
「どうしたんですか?」
「お願いシンジ君。さん付けしたのリュウジさんには黙ってて」
「そう言いながら、今もさん付けしてる」
「え?あ、ホントだわ。てか無理よ、いきなりあんな人を呼び捨てなんて」
「それについては同情します」
二人が気づかぬうちに、和やかな雰囲気がそに部屋に満ちていった。
※
同時刻
「えっと、鈴原トウジ君?」
「は、はい!」
「と、相田ケンスケ君で良かったかな?」
「はい……」
リュウジはこの二人を、自宅まで車で送っていた。
「君らの親御さんから厳しい叱責があると思うから、私からは何も言いません。……あぁ、申し遅れました。私はリュウジ、碇リュウジと申します」
「碇っちゅうと、その転こ…、いや、碇君のお父さん?」
「いえ、叔父です。彼の父は、私の兄で、碇ゲンドウと言います。もっとも、この5年間は、私が保護者をさせてもらっていましたが」
「そ、そうでっか……」
父親で無いことは分かったが、結局は、そう大差ない存在であることがわかり、トウジは気まずくなる。
「どうかしましたか?」
「その…謝りとうて。……わいは、その、碇君を殴ってもうて、そのう……」
「……知ってますよ」
「え!?」
「報告は受けてます。君は妹が戦闘に巻き込まれて、それでシンジを殴った」
「す、すんませんでした!わしは……」
「優しいんですね」
「へ?」
「妹想いで、今時珍しい。……大事にしてあげてください。妹さんのこと」
鈴原トウジとシンジのことに関して、リュウジは報告は見ているが、何も思うところはなかった。
子供同士の喧嘩に、大人が出るべきではないし、シンジは、殴られるだけのことをした、とリュウジは考えている。
それを覚悟しろ、とリュウジは言っていたのだから。
「ですが、君の方が、シンジに対して萎縮してしまったそうですね?」
「……正直、ビビりました。なんちゅうか、あの眼を見て、これが、エヴァパイロットに選ばれたやつか。わいらなんかとは全然ちゃう。そう思うたんです」
「あの、えっと碇さん!」
「リュウジで結構ですよ。相田君」
「あ、じゃあ、リュウジさん。碇君は、何か訓練を受けてたんですか?エヴァに乗るための」
「いえ、何も受けてないんですよ。適性があるとかで、いきなり兄に呼び出されて、いきなり乗せられたんです。……たしかに、最終的にはシンジが乗ることを自ら決めましたが、本当に、訓練なんて受けてないんです」
「そう、ですか……」
「おいケンスケ。お前まさか乗ってみたいとか言うんちゃうやろな?」
「最初は、乗ってみたいって思ったよ。でも、碇のあんな様子みたら、そんな考え吹き飛んだよ」
「……せやな。あいつも、怖い思いしながら、戦ってたんやもんな」
「……どんな様子でしたか?シンジは」
「え?いや、なんちゅうか、戦いが終わると、わいらに抱きついてきて……」
トウジは、リュウジにシンジの戦闘後の様子を話した。
急に泣き出して、逆に自分達がシンジを慰めたことが、トウジの中に、とても強い印象を残していた。
「それを見て、シンジも、わいらと同じ、14歳なんやと思いました。何も特別なことなんざあらへん。……ただ、怖がりながら、一生懸命に戦ってるっちゅうのが、よう分かりました」
覚悟をしていても、実際に戦いにおいて、その覚悟通りに自分を置いておく事は難しい。それは決して臆病だとか、軟弱だからではない。人が皆感じて当たり前の、恐怖がそうさせるのだ。
「そうですか……ありがとう。鈴原君、相田君」
「「え?」」
シンジが恐怖をしっかりと感じているということが、リュウジには嬉しかった。自分のように、恐怖心が、狂気によって染め上げられて欲しくなかったのだ。
「教えてくれて、ありがとう。その上で、一つ頼んでいいですか?」
「……なんですか?」
「どうか、シンジと友達になってください。
……こんなこと、そもそも頼むことではないけれど、どうか、お願いします」
自分には、正直言って友と言える、対等な存在はいなかった。慕ってくれる部下や弟子はいたが、友人ではない。
友人がいれば、いつか、なんらかに形で、助けになってくれるかもしれない。
リュウジはそうして、二人を送っていった。
※
「お待たせしました……って、どうした?」
リュウジはトウジと、ケンスケを送ってきた後、再びシンジとミサトの元へ戻った。
のだが、どこかミサトの表情は暗かった。
「ご苦労様、碇三尉」
「ええ……、で、帰る準備は?」
「大丈夫だよ、おじさん。帰ろう、もうお腹ぺこぺこ」
「おう……、それで二人に断りなしで悪いんだが……」
そういうと、リュウジの後ろから、一つの影が現れた。
「彼女も、夕飯に誘っていいかな?」
綾波レイであった。
ダメ元で誘ってみたら、無言ではあるが頷いてくれた。
「もちろんだよ!綾波、何か食べたいものある?」
「……分からないわ。でも……」
「でも?」
「お肉は苦手……」
「わかった、おじさん」
「それじゃ、里芋の煮っころがし以外に、なんか作るか。そんじゃ、この後スーパーよるぞ。……葛城二佐?」
「ええ、行きましょうか」
ミサトは、どこか心ここにあらずという表情であった。
(……シンジ君)
明るい表情でリュウジやレイと話すシンジが、余計にミサトの心を苛んだ。
原因は、リュウジが戻ってくるまでの、シンジとの会話にある。
おおよそ、15分前。
「……ミサトさん。一つ頼んでいいですか?」
和やかな会話が続く中、シンジがミサトに真剣な表情を向けた。
「……何かしら?」
「今日の戦闘で、ぼくは感情が先走って、自分を抑えられませんでした」
「シンジ君。それはさっきも言ったけど……」
「勿論、ぼくもなんとか感情に飲まれないよう、訓練します。……でも、ミサトさんが言うように、もしかしたら気持ちのコントロールが出来なくなって、暴走してしまうかもしれない。そしたら、エヴァも暴走するかもしれないですよね?」
そう言われて、ミサトは否定できなかった。
「……シンジ君、そうならないように、皆頑張ってる。だから……」
「でも、可能性は、ゼロじゃ無いんですよね?」
そのシンジの表情に、ミサトは正直に言うしかなかった。
「そうね、ゼロでは無いわ。申し訳ないけど、エヴァに関しては、私も知らされて無いことも多いの」
「……ミサトさんは、おじさんに、エヴァの格納ドックで言われたこと、覚えてますか」
「ええ、覚えてるわ」
忘れられるはずがない。
もしエヴァが暴走し、その秘めたる力が解放されれば、世界を守る力が逆に牙を剥き、世界を滅ぼすかもしれない。あの時のミサトは、そんな考えなど、及びもしていなかった。
ーーーシンジが人類を滅ぼすような結果になった時、あんたらはその責任をおえるのか!?それともシンジにすべての責任を押し付けるか!!?ーーー
ーーーどちらが良い悪いの話じゃ無い!そのどちらかを選ぶ覚悟はあるのか!?どうなんだ!!ーーー
「ミサトさん。もしそうなったら……、どうか躊躇せずに、ぼくに責任を押し付けてください」
一瞬、ミサトの時が止まった。
「な……何を言ってるの?シンジ君……」
「……ぼくは、ぼくの守りたいものの為に、戦ってるだけです」
「それは、前聞いたわ」
守りたいものの為に、シンジは戦う決意をしたそれはミサトも承知の上だ。むしろ人一人に、世界の命運など、そう背負えるものではないのだから、シンジの、純粋な守りたいと言う思いを、ミサトは優先させて欲しかった。
「もしその思いが暴走して、本当に世界が滅んだら。みんな、ぼくを恨まずにはいられないと思うんです。その恨みを、他の人に肩代わりなんてして欲しくない」
「シンジ君、だからって……」
「だって、ぼくがエヴァに乗ることを選んだんです。好き勝手、守りたいものの為に戦って、挙げ句の果てに暴走して、世界を滅ぼして、それで何も知りませんなんて、そんなのいやですよ!」
「……もしその責任を、ミサトさんや、おじさんが肩代わりすることになったら、……そう考えると苦しくてたまらないんですよ……」
「……一理あるとは思うわ。でも、あなたが一番危ない思いをしてるのよ?多少の我儘は……」
「そんなの、他の人には通用しませんよ」
結果が世界滅亡なんてことになれば、過程など意味はない。
当たり前だ、普通の人はシンジがどれだけ必死に戦ってきたかなど知る由もないのだ。
だがミサトは知っている、シンジがどんな思いで戦っているか。守りたいと言う思いが、どれだけ強いか、そして、この少年がどれだけ優しいか、
「どうしてそこまでするの?……リュウジさんのため?それともレイ?」
だから、聞かずにはいられなかった。この子の何が、こうまで覚悟を決めさせるのか。
「……ぼくって運がいいんです。おじさんは、ぼくをいつも気にかけてくれるし、綾波は、あんな体で、ぼくの代わりに戦おうとしてくれた、それにミサトさんみたいに、優しい人が、……ぼくのために涙を流してくれる」
そう言われて、ミサトは初めて自分が泣いているのに気がついた。
「あれ?い……いや!なんで!」
「そんな人たちの為に、ぼくはぼくのできることをしたい。それに、自分でしたことには、自分で落とし前をつける」
そうでしょ、とシンジはミサトの顔を覗き込みながら言う。
「……ミサトさん。このことは誰にも言わないでください。おじさんにも、言わないで欲しいんです。そのかわり、今日おじさんのこと、さん付けで呼んだこと黙ってますから。ね?」
ミサトはその時のシンジの笑顔を、直視できなかった。あまりにも、眩しすぎたのだ。
シンジとのやりとりが、ミサトの中で何度も蘇る。
(シンジ君に、全て押し付ける?……ダメ、絶対ダメ!子どものしたことに責任を持つことが、大人の役割でしょう?だったら……)
「葛城二佐?本当に平気ですか?」
リュウジがミサトの心配をするが、
「ミサトさんも、少し疲れたみたい。おじさんが運転してあげたら?」
「いえ、大丈夫よ。ちょっと考え事してて……」
「よければ、後で相談乗りますよ?」
そう言われ、あのことをリュウジに話そう。……と、思うが。
シンジの表情が、懇願しているように見え、
「大丈夫よ。さ、パアーッと飲みましょうか。レイも、行きましょ」
「ハイ」
何も言えなかった。
ここでアルコールに逃げる自分の癖を、ミサトは初めて恨んだ。
※
ユーロ空軍
訓練室
一人の少女が、食い入るように初号機と第四使徒の戦闘映像を見ていた。
手元には、初号機の格闘訓練シュミレーターの結果とそのデータの書類が、破けそうなほど、強く握られていた。
「なんなのよ、この動き……」
碇シンジの情報は、この少女の耳にも入っていた。マルドゥック機関により選出された、第3の少年。碇司令の息子。
初号機発搭乗時は、全くの素人で、実際最初はまともに動かすこともできていないことは、見て取れた。
厳しい訓練を受け、エースパイロットとなった自分とは雲泥の実力差がある、はずだった……、
「ふざけないでよ!私の努力はなんだって言うのよ!!」
そんな自分を差し置いて、今や碇シンジこそが、エースパイロットとして、このユーロ空軍でも話題になっている。
「絶対に何かある!じゃなきゃ、こんな操縦に、訓練スコアなんて説明がつかない!」
少女は訓練を受けているからこそ、近接戦闘の技術が碇シンジの方が優っていると理解していた。
だからこそ、納得できなかった。自分の十八番たる、接近戦が、親の七光りで選ばれた素人パイロットより劣っていることが。そしてその事実が、彼女のシンジへの憎悪を掻き立てた。
「見てなさいよ。化けの皮はがしてやる……」
少女が握る書類は、ついにその握力に負けた。
「碇……、シンジイィ……!」
少女の名は、式波・アスカ・ラングレー。
ユーロ空軍大尉にして、エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット。選ばれた第2の少女である。
このシンジ君。覚悟がどんどんガン決待っていってしまいます。
この先シンジ君が笑顔でいながら、どんどんボロボロになっていきそうで、勝手に構想して、勝手に泣いている、
「気持ち悪い」
と言われそうな私がいます。
主人公に、なんとかしてもらおうと思います。
ご意見、ご感想お待ちしております。
誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがご報告ください。
何卒、よろしくお願いいたします。