新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
私としても、かなり思い切った展開にしてます。
それは突如襲来した。
『監視対象物は小田原防衛戦に侵入』
『未確認飛行物体の分析を完了。パターン青、使徒と確認』
それをモニターで確認したリュウジは、あまりの非現実的なそれに驚嘆していた。
「これが第六の使徒?」
何がきても驚かないつもりでいたが、その形状や、突如防衛線に侵入してきた使徒には、改めて自分の常識が、
「まったくもって通用しない」
ということを痛感させられていた。
「葛城二佐。すぐに富士山麓キャンプの米軍が、無人攻撃機のスクランブルをかけられます」
「ダメだ。時間がない、初号機を緊急出撃させる」
リュウジの進言を、ゲンドウが司令室に入りながら却下した。
「待ってください。危険です。敵の攻撃方法や、コアの位置も不明です。現状においては、まず威力偵察を行うことを具申します」
リュウジはすかさず、待ったをかけた。既に防衛線を突破されつつあるが、いきなりの本戦力投入は、現状においても、彼の経験からしてみれば危険極まりない行為に思えたからだ。
「どの道、エヴァでしか使徒には対抗し得ない。余計な犠牲を出す必要はない」
「無理にエヴァンゲリオンを運用すれば、それこそ余計な損害が生じる可能性もあります。まずは多角的に相手の分析を行うべきです。敵の情報が皆無の状況では、出撃は自殺行為です」
「現状を考えろ、既に敵はこちらの直上まで進行しつつある。こちらの本戦力での即時対応をしなければならん」
リュウジの必死の訴えも、ゲンドウはまるで意に介さない。
「……碇三尉。敵の発見が遅れ、既に後手に回りつつある。あなたの気持ちはわかるけど、今は威力偵察ができる時間の余裕は無いわ」
ミサトもゲンドウの緊急発進に賛同しているようであった。リュウジの言い分も理解できるが、敵の本格的な攻撃が始まれば、偵察どころではないのも確かであろう。
「ならば、即時対応可能な無人攻撃機だけでもすぐに出すべきです。敵の進行速度を見れば、それから初号機を出撃させても遅くは無いはずです」
それでもリュウジは食い下がった。
早急な対応は重要ではあるが、今までの経験が全く通用しなさそうな相手に、彼としては例え多少の損害を受けても、情報を少しでも引き出すべきと考えているからだ。
「お前が臆病風に吹かれるのは構わん。だが今は早急な対応が必要な事態だ。議論の余地はない」
「私が今日まで生き残れたのは臆病だったからです。あなたのように、早急に、そして勇敢に出撃し、死んだ者を何人も見ました。そして今、その勇敢な対応で死にかねないのは……あなたの息子です」
後悔先に立たず。それは今この場において、リュウジが最も痛感している。例え他人から嘲りを受けようとも、死ねばそこで終わる。
「碇三尉……、敵目標がここまで進行している以上、時間の猶予はない。悪いけど、兄弟喧嘩は今はよして」
だがミサトの切り捨てるかのような言い回しに、流石のリュウジも、癪に触った。
「……お言葉ですが、こと戦闘に関して、私は私情を挟んだことは一度たりともありません。私は飽くまで……」
「碇三尉。あなたには、なんの権限もないの。……状況を察しなさい」
「その上で私は申し上げているのです!」
その空気を、リュウジとて把握していた。
恐れと呆れがないまぜになった、その場の空気を。
有り体に言えば、
(また、兄弟喧嘩か……)
(時と場合をわきまえてくれ……)
(こっちの身にもなって欲しい……)
そんな、
「兄弟喧嘩は、いい加減にして欲しい」
というセリフが、今、司令室には充満していた。
『おじさん。僕なら大丈夫』
「シンジ、俺は何も意固地になって言っているわけじゃない」
『でも、余計な犠牲を出したくないのは、僕も父さんに賛成だよ。……僕が直ぐに倒せば、問題ないんでしょ?父さん』
「その通りだ。聞いたな、葛城二佐初号機を出撃させろ」
「くっ……、葛城二佐!」
シンジまで出撃を躊躇しない状況に、リュウジはまとわりつくような、
「嫌な予感」
をより一層感じ取り、ミサトに懇願する。
「目標は、芦ノ湖上空に侵入」
「エヴァ初号機、発進準備よろし!」
だが、着々と初号機の発進準備は進んでいき、
「発進!」
初号機は出撃した。
「……せめて、いざとなれば即時撤退をさせてください。死ねば元も子もないんです」
その懇願に、答えるものはなかった。
そして、
「目標内部に、高エネルギー反応!」
「何ですって!!」
「緊急停止は出来ないんですか!!このままじゃ的になる!!」
「急に止めれば、それこそ大損害になるわ!」
「そんな事言ってる場合じゃない!!」
だが時既に遅し。
初号機が敵に眼前に晒される。
「シンジ!!!避けろ!!!!」
「え?」
突如使徒はコアを中心に変形をし、強力なエネルギーを初号機に向け発射した。
『グアああああ!!!グゥぅうう!!!』
警報音とシンジの呻き声が司令室に響いた。
「シンクロ率をミニマムまで落として」
「防護アーマーを展開!!急いで!!!」
だがそれを嘲笑うかのように、更に形態変化をさせ、
「防護アーマー融解!!!」
更に超強力な熱線を初号機に向けて発射した。
「迎撃中止!!初号機の回収急いで!!!」
「ダメです!カタパルト融解!!作動しません!」
その間にも初号機は攻撃にさらされ続ける。
『ウグゥッ!!グウゥゥ……』
シンジは必死に耐えていた。全身を煮えたぎるLCLに晒されながらも、全身を焼かれながらも耐えていた。
「パイロット保護を最優先、プラグ緊急射出急いで!」
「ダメだ……」
ゲンドウが残酷にもミサトの命令を却下した。
「何故です!!」
「今パイロットのコントロールが無くなれば、ATフィールドが消失し、エヴァに深刻なダメージが出る。……最も憂慮すべき事態になる…キャッ!」
だがその時、ミサトは半ばリツコの説明を聞いていなかった。
いや、聞くことができなかったのだ。リツコの後ろから歩いてくるリュウジの、あまりの殺気で。
リュウジは、リツコをその手で横に払うと、マヤの席へと近づく。
「ヒッ……!」
その殺気にマヤは耐えられず、椅子から落ちてしまう。
そんなマヤに目もくれず、リュウジはコンソールを叩いた。
「エントリープラグ射出!!」
「なっ!リュウジ!!」
それと同時に、シンジの耐える呻き声は消えた。
「初号機は!!?」
「ATフィールド消失!!このままでは!!!」
「爆砕ボルト点火!!機体を緊急回収!!!急いで!!!!」
そうして爆発音が響くと、辺り一体の区画と共に、初号機は落下していった。
一先ずは難を逃れることができた。
「シンジ君は?」
「無事です。バイタル異常なし、すぐに回収班を向かわせます」
「初号機は?」
「損傷率は73%。幸いコアは無事ですが、修復には相当な時間がかかると思われます」
初号機の被ったダメージの余りの深刻さを物語るアナウンスが、司令室に響く。
「リュウジ!貴様!!」
ゲンドウが怒りをあらわにして、リュウジに詰め寄る。
「お前は、自分が何をしたかわかっているのか!?」
「……大人としての義務を果たしたんです。子どもを守るという義務を」
先程の殺気が嘘のように、リュウジは静かに答えた。
「いい加減にしろ!貴様の家族ごっこのせいで、初号機を失いかけたんだぞ!!」
「……随分とエヴァに……、初号機にご執心ですね」
そして怒りをあらわにするゲンドウとは裏腹に、リュウジは若干の笑みを浮かべていた。
「……貴方が大切なのは、世界ではなく、人類でもなく、ましてやシンジでもない。初号機そのものなんですね」
「キサマッ!!」
ゲンドウの怒りは収まらず、ついにはリュウジの胸ぐらを掴んだ。
「よせ、碇!」
冬月が止めに入ろうとするが、リュウジが手で遮りながら、それを制した。
「……逆にお聞きしますが、我々が何をしたのか理解していらっしゃるんですか?」
「我々?」
「そう、私、貴方、そしてここにいる全員です」
辺りを見渡すリュウジの表情に、笑みは消え失せていた。
「シンジの仕事は、使徒に勝つことです。彼は常にその為に全身全霊をかけている。ならばせめて我々、命令する立場にある者は、その手助けをする為に全身全霊をかけるべきだし、それが上官としての義務なんです。……今回、我々はそれを怠った。それを理解していらっしゃるんですか?」
リュウジは胸ぐらを掴むゲンドウの手首を少し握った。
「ぐ!?」
あまりの痛みに、ゲンドウは思わず手を離すが、リュウジは離さなかった。
「冷静に敵を分析し、必要な情報を掴み、前線で戦うパイロットの被害を最小限にする。……それが子どもを戦わせている、我々の最低限度の義務だろうが!!」
そう言い放ちながら、リュウジはゲンドウを解放した。
「それを怠った結果が、今の現状です。だというのに、あなたは口をひらけばエヴァ!エヴァ!エヴァだ!!」
そして、今度はリュウジがゲンドウに詰め寄った。
「恥ずかしくないんですか?……私は恥ずかしい。義務を果たさなかったことも、あなたが兄であることも!」
仇でも見るかのように、ゲンドウはリュウジを睨みつけるが、リュウジも憎悪の視線をゲンドウに向ける
「私の処罰はご随意になさってください。初号機の損傷は、私の責任です。その上命令無視だ。拘束なり、射殺なりしていただいて結構です」
そう言うと、リュウジはゲンドウの横を通り過ぎていく。
「……シンジを殺して生きていくぐらいなら、自分が死のうが、世界が滅ぼうが、あのポンコツが壊れようが、私にはどうでもいいことですから」
そう吐き捨て、司令室を後にした。
それをゲンドウは変わらず、睨みつけていた。
「碇……」
「……放っておけ、奴には付き合いきれん」
重苦しい空気が流れるが、
「……さ、敵の情報を……いえ、私たちの義務を果たしましょう」
ミサトがなんとか口を開くと
「ミサト、碇三尉は結果的には正しい進言をしていたわ、だけど命令を無視し、初号機への深刻なダメージを与えた張本人であることは変わらない。然るべき処置を……」
「わかってる、別に贔屓する気なんてないわよ。……でも……、いえ、何でもないわ。さ、私達の仕事をするわよ!」
ミサトは思わず出かかった言葉を、何とか飲み込んだ。
(爆砕ボルトを、私が早く爆破するよう命令していたら……)
リュウジは命令無視をしてまで、シンジを助けることもなかったのだ。
そんな考えが過ぎると、リュウジの言葉が急に湧き出て、
-丸まった背中を部下が見れば不安になります-
自分を奮い立たせるのだ。
※
緊急処置室の前に、リュウジはまんじりともせず、ただ立っていた。
幸いシンジの命に別状はないようだったが、予断を許さない状況であった。
「…………」
緊急処置中の明かりが、未だに赤々と灯っているのを、ただただ見ていた。
「碇三尉」
その後ろから、ミサトが声をかける。
「やっぱ、ここにいたのね」
そう言われても、リュウジは振り向かなかった。
「そうよね、あなたはいつでも、シンジ君のために戦ってきた。ネルフに入る時も、碇司令に言ったものね、シンジ君を是が非でも守るって、その為なら何でもするって。……それに、あなたはいつも正しかった。私はそれを……」
「葛城二佐……、日頃の行いは、思わぬ形で帰ってくるものですね」
「え?」
「私が、日頃から、兄に敵愾心など持たなければ、司令室が、あんなありえない雰囲気になることなどなかった。……全ては、私の日頃の行いの悪さ故です。責任は、私にあります」
そう言って、リュウジはミサトに頭を下げた。
「赤城博士はお冠でしょう。自分の管轄である初号機が、大損害を受けたんですから」
「ええ、あなたには責任をとってもらうことになるわ」
「はい、承知しております」
拘束だろうと、何だろうとリュウジは受け入れる覚悟だった。自分はそれだけのことをしたのだから。
「……十分後。作戦会議を始めるわ、あなたも来なさい」
「え!?」
「あなたがした事、きっかり責任持ちなさい。その代わり、私達も全身全霊で義務を果たす。……その為に、あなたの力を貸しなさい。命令よ」
「……ハッ」
その言葉に、リュウジは返礼をする。
「ま、後でなんか処罰があるかもしれないんだけど。全て終わってからよ。今は人手が足りないから」
行くわよ、と言ってミサトはその場をさり、リュウジもそれに続いた。
※
「奴の狙いは、ここネルフ本部への直接攻撃。それも超アナログな方法で」
ミサトのいう通り、十分後に戦術作戦部作戦局第一課にて、作戦会議が開かれた。
「敵の掘削は、既に第三層まで進入しています」
「今日まで完成していた二十二層。全てのカクモ式装甲帯を貫き、本部直上への到着時刻は。明朝午前零時零六分五十四秒」
「後十時間ちょっち、ってわけね。初号機の状態は?」
「起動可能の状態にするのに、最低でも二十四時間は必要だわ」
「初号機は当てにできないか、零号機は?」
「レイのパターンに合わせながら、急ピッチで、調整作業中です。後数時間で、形にはできそうです」
「頼みの綱は零号機ってわけね。次、敵の分析結果を報告」
「先の戦闘データから、目標は一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます」
「近接戦闘は、不可能というわけね。ATフィールドはどう?」
「健在です。防御時に肉眼で確認できるほど、強力なATフィールドが展開されています」
「マギによる計算データでは、目標のATフィールドをN2航空爆雷による攻撃方法で貫くには、ネルフ本部ごと破壊する分量が必要との結果が出ています」
「松代のマギ二号も、同じ結論を出したわ。現在日本政府と、国連軍がネルフ本部ごとの、自爆攻撃を提唱中よ」
「黙らせます。ご安心ください」
「頼むわ……。さて、正直いうと、お手上げ状態だわ」
現在運用可能なのはほぼぶっつけ本番状態の、零号機しか使えない状況である。
まさにお手上げ状態。
初号機と零号機が揃っていれば、幅は少しでも広がっただろうが、ないものはねだれない。
「接近ができない以上、なんらかの手段で、超長距離からの射撃を行えば」
日向が提案するが。
「一撃で沈められればいいけど、外せばアウトね」
リツコが、問題点を指摘する。
「敵の加粒子砲を少しでも防ぐ手立てがあれば、そう言った手段もあるけれど、現状では一撃で仕留められなければいけない。あまりにリスキーだわ」
ミサトもその考えが無かったわけではないが、現状においては、ほぼ急拵えの零号機とレイには酷な要求であった。
「ですが、時間がありません。接近戦が不可能となると、そのに一撃にかけるか、本当に自爆覚悟で、N2爆雷を使用するしか……」
「……よろしいですか?」
そんな中、リュウジが両目を手で覆いながら挙手した。
「……私は……、飽くまで接近戦を提案します」
リュウジの想定外に発言に、作戦会議はどよめいた。
「ごめんなさい碇三尉。もう一度言ってくれるかしら?」
ミサトも、リュウジの発言に耳を疑った。
「飽くまで、零号機による接近戦を提案します」
「碇三尉、聞いてなかったの?一定距離内の目標を、敵は加粒子砲で自動排除してくるのよ?」
「……ですが、もし……、もし、接近できるとしたら、どうですか?勝機はありませんか?」
無論それができれば渡りに船である。
「でも、どうやって……」
「……申し訳ありませんが、ここまで言っておいて私も確証はありません。この前提が間違えていれば、全ては一気に瓦解します」
リュウジの今まで見たことのない、張り詰め、追い詰められた表情から、かなりの覚悟の元、進言していると、ミサトは感じた。
「構わないわ……、言いなさい」
ミサトは藁にもすがる思いでありながらも、碇リュウジであれば、と思わずにはいられなかった。
「……こいつは何故、掘削しているのか、それがわからなかったんです」
その言葉にだれもが首を傾げた。何を言ってるんだ?という空気まで出始める。
「直接ネルフ本部への攻撃。それが奴の狙いである以上、掘削もその為では……」
日向が一応答える。
「ならば真下に向かって、直接加粒子砲を撃てばいいはず。なのにそれをしないことが、私にはわからなかった」
ミサトやリツコも含めて、そう言えば、と言う表情を浮かべ、敵の情報資料をめくる。
「そこで考えたんです。しないのではなく、できないのだとしたら。できないのだとしたら、その理由は何かを。……こんな時大切なのは、我々の敗北は何か、そして敵の勝利とは何かを考えることです」
そこまで言って、ミサトもリツコもリュウジの予測した考えに至った。
「私はまだ新参者なので、この下に何があるのかは知らされていませんが、以前葛城二佐は仰った、『この地下にある物』が使徒の目的であると。ならば、敵の加粒子砲の火力が、その目的のものを損傷しかねない為、わざわざ丁寧な掘削作業をしている。つまり、目標の真下。……正しくは使徒と、地下にある物を結ぶ一直線上。そこからであれば、使徒に接近できるかもしれない。そう考えました」
「リツコ!」
「検証する必要はあるけど、可能性は高いわ!」
「無論、私の推察でしかないですし、他の対抗手段を敵が持ち合わせている可能性もあります。ですが少なくとも、あの高火力の加粒子砲は、撃てないのではないかと思います」
リュウジとしても、半ば希望的観測から、意見を述べた。普段ならば絶対しない行為だ。だからこそ、彼は知りたかった。
「この根拠を裏付ける為にも、教えていただけませんか?この地下にある物を」
「……そうね、貴方にも教えるべきね。……リツコ、さっきの件検証進めておいて」
「了解。さぁ皆!敵の情報の洗い直しと、零号機の調整、急ピッチで進めるわよ!」
リツコの号令に、職員が一斉に答え、それぞれの役目を果たしに向かう。
「それじゃ、碇三尉。ついてきて」
ミサトはリュウジを伴い、地下へと向かっていった。
ここまで読んでいただいただけでも本当にありがたいです。
そうです。エヴァの、特に序における最重要要素、ヤシマ作戦がありません。主人公のせいで。もうファンの方からしてみれば、極刑ものです。
ですが、リュウジであれば、あそこでシンジを助けないのはあり得ない。では助ければどうなるか。少なくとも初号機はラミエルと戦えなくなる。そしてヤシマ作戦は出来ない。
と、いうことになりました。
何度も言います。読んでくださって本当にありがとうございます。
ご意見、ご感想、お待ちしております。
誤字脱字ございましたら、お知らせください。
何卒、よろしくお願いいたします。