新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
理由は二つありまして、一つは仕事が繁忙期なのと、もう一つは本当に作戦名に迷ってたんです。冗談でもなんでもなく、悩んでました。
案を出してくださった方もいたのですが、どうしても納得できず、結果、
作戦名なしで行きます。
散々引っ張って申し訳ありません。
リュウジがシンジの病室を目指しているとき、彼の携帯が鳴った。
「時田さん?いきなりの連絡は困ります」
『それは重々承知しています。ですが、どうしてもあなたに調べていただきたいことがあります』
そう言われては、リュウジも実験機を借りた手前、
(断る)
とは言えなかった。
「私にできる事であれば」
『はい、その実験機の重力制御機構と、JAを、なぜかネルフが欲しがる動きを見せているのです』
「なんですって?」
いまさらなぜあの二つを、とリュウジも不審に思った。
きなくさい、とまではいかないが、何か裏があるように思えてならない。
『しかもこの件に関しては、ユーロネルフがやたらと干渉している節があります。それも不審に思う理由になってまして』
「わかりました、ですが、今回の作戦。私が生き残れる可能性は限りなく低い。ですので信頼できる者に調べさせます。よろしいですか?」
『……本当に、あの『棺桶』を再び飛ばすんですか?』
「むしろ私以外に誰があれを飛ばせると?重力制御の経験があるものは、私しか残っていません」
『ですが……』
「あなたに迷惑はかけません。『棺桶』もなんとかそちらにお戻しする。それでいいでしょう?」
『……わかりました。無理を言いますが、調査の件も、なにとぞ』
「わかりました」
『ご健闘を祈ります』
リュウジは携帯を切り、電話をかける。
「……剣崎、俺だ。今大丈夫か?」
『なんでしょう?教官』
再び教官呼ばわりされたことに、少し顔をしかめるが話を続ける。
「以前頼んだユーロの伝で、調べてほしいことがある」
『内容は?』
「ユーロネルフと、日本重化学工業共同体のあいだでのインテリジェンスレコードを調べてほしい」
『随分と漠然としていませんか?』
「ユーロネルフが、日本重化学工業にモーションをかけた理由も含めて全部だ。そして申し訳ないが、今回の作戦で、俺の生き残る確率は限りなく零だ。もしもの場合、あなたが直接日本重化学工業の代表に、結果を伝えてほしい」
「……解りました。善処します」
そう言って剣崎は電話を切った。
ゲンドウの執務室で。
「碇三尉より、ユーロネルフへの調査依頼が入りました。日本重化学工業との諜報記録を調べるようにとのことでした」
「わかった」
「剣崎君。君はひとまずリュウジ君の依頼を遂行したまえ。こちらからの指示は追って伝える」
「かしこまりました」
剣崎は頭を下げ、執務室を後にした。
「どう思う?碇?」
「このまま奴が調査を続ければ、弐号機の強化パーツと、NHGシリーズの建造計画にたどり着くだろうな」
「ああ、まさか重力制御機構の実験にまで携わっていたとはな」
人類補完計画の要として建造予定の四隻の艦艇。
その存在を、もっとも知られたくない存在に、知られることになる。
「その気になれば、リュウジ君はこの建造計画をつぶせるのだぞ?それだけの力ももっている」
「建造計画の奴への露呈は、我々の宿願の露呈となるかもしれん」
「彼のことだ、全容は掴んでいなくとも、その存在や概要はもう知っているかもしれんぞ?以前もユーロに赴任していた記録もある。そして向こうには、『イスカリオテ』がいる」
冬月自身は知る由もないが、彼の予想は当たっていた。
リュウジ自身もまだ知る由もないが、知らずうちに、計画の核心へと迫っているのだ。
「リュウジ君の人脈の広さを考えれば、あり得んことではないぞ」
「あせるな、冬月。まだ泳がせておけ」
「何を悠長なことを言っている。本当に手遅れになるぞ?」
「だが奴を消すにはそう簡単にはいかん。それはお前も理解しているはずだ」
冬月とて、それは理解している。
むしろ、命のやり取りという側面においては、リュウジの方が何枚も上手だ。
「だからこそ、今の段階では奴には役立ってもらう。我々は是が非でも、あと八体の使徒を倒さねばならん」
「すべては、そこから、か……」
「そしてその間に、ゆっくりと奴を取り囲めばいい、急いては感づかれる。それだけは避けねばならん」
だがそもそも論として、
「もっとも、今回の作戦で、リュウジ君は死ぬ可能性が高いがな」
と冬月は思わずにはいられなかった。
「いや、奴は死なんよ」
そんな冬月をよそに、ゲンドウは憎む相手が、生き残ると断言した。
「なぜだ……」
「この程度で奴が死ぬなら苦労はしない。楽観視をせずに、今のうちから計画を進めておかねばならん」
兄だからこそ、自らの手で弟へ引導を渡す。これだけは、例え使徒だとしても、ゲンドウは譲る気はなかった。
※
同時刻、リュウジはシンジの病室へとたどり着いていた。
中に入ると、先客が一人、
「レイ?」
声をかけられ、レイは振り向く。
「君が付き添ってくれていたのか。ありがとう」
レイはリュウジを見ると、すぐにシンジに視線を戻し、うつむく。
「シンジは?」
「命に別状はないそうです。今は眠っているだけで、直に目を覚ますだろうと」
「そうか、よかった」
リュウジはレイと向かい合う形で、シンジの傍らに立つ。
「ごめんなシンジ、こんな目に遭わせて」
シンジの頭を優しくなでるのを、レイはただじっと見ていた。
「あの……、碇三尉」
「ん?どうした?」
「その……、わからないことが」
「……言ってごらん」
レイが若干言葉を詰まらせるのを見て、リュウジは腰を据えて聞こうと、近くの椅子に腰かける。
「その……碇君が重傷を負ったと聞いて、……なんだか、その……」
「……落ち着かなかった?」
「はい……それに、この辺りが、チクチク、しました」
そう言いながら、レイは自身の胸に手を当てる。
「なのに、ここにきて、碇君を見たら、……それを、感じなくなりました」
明らかに、今のレイは戸惑っていた。初めての感情に、自分がどう向き合えばいいのか解らない様子だった。
「なんで、私はこんな風に、感じるんでしょうか」
「……レイ、申し訳ないが私が教えることはできない」
「なぜ、ですか?」
「私が教えたら、君はその教えにこだわることになりかねない。自分で答えを見つける意味は、その答えを信じられることと、自分で見つけた答えだからこそ、違う答えがあるかもしれないと、別の考え方ができることです」
シンジが好きだから、というのは容易いだろう。だがそれをリュウジがいう事は、レイのためにはならない。
何より、好きには様々なものがある、恋愛、信愛、博愛、様々な感情から派生する相手に感じる光の面の感情なのだ。好き、イコール、恋愛だけではないのだ。
「レイ、どうかな?君がシンジに何を感じているのか、それを考えて、探してみないか?」
「私が、考える?」
「そう、それだけで、きっと新しい自分を見つけられるはずだ。そうして、見つけた新しい自分も、その過程で見つけたものも、全て君のものだ」
「よく、解りません」
「……なら、想像してごらん?使徒が来なくなって、エヴァが必要なくなった。もう君たちは闘う必要はない。そんな世界で、シンジと生きていける……、どうだ?」
レイは言われた通りに考える。
エヴァがいらない世界、かつてリュウジに言われたときは深く考えることはなかったが、なぜか、今回は深く考えてみた。
「………」
無言のまま、表情も変わらないが、どこかレイの纏う雰囲気が温かいものになっていった。
「そこまで考えられるなら、答えはきっとすぐ見つかる。だがここで、すぐ答えを出す必要はない、ゆっくり、これから生きていく中で、見つけられればいい」
リュウジは安心していた。レイの、人としての感情がしっかりと育っている。まだその感情に戸惑うこともあるだろうが、それもすべてひっくるめて、レイを人間らしくしてくれるからだ。
「あなたも、碇三尉も、一緒にいますか?」
「え?」
「あなたも、一緒に、生きていけるんですか?」
「もちろん。君がいいなら……」
「本当……ですか?」
「……なぜ、そんなに聞くんです?」
レイにしては珍しく、執拗な質問だった。
「葛城二佐から、作戦を聞きました。あきらかに、碇三尉の役割のほうが、危険です」
レイなりに感じていたのだろう。この作戦が、リュウジへの負担が大きいことを、もしかしたら、リュウジが死ぬかもしれないということを。
「……君は、私が……、私がもし死んだら、どう思う?」
レイは、死というものをどう感じるのだろうか。そんな考えから、リュウジはその質問をした。いつか、誰かの、もしくは自分の死に、直面しなければならない時が来るからだ。
「誰かがいなくなることが、よく解りません。……けど、碇三尉の、里芋の煮っ転がしは、また食べたい、です」
いつか招待した、夕食の味を、レイがまた食べたいと言ってくれた。
それは、曲がりなりにも、リュウジにも生きていてほしいという意味でもあり、自分のことも心配してくれている。
だからこそ、リュウジはレイに真摯に向き合う。
「ありがとう、レイ。なら、生きて帰れたら、また是非ご馳走させてくれ。シンジと一緒に沢山おいしいものを作るから」
レイは、黙ってうなずく。
「だが、はっきり言う。君も気づいている通り、私が死ぬ可能性の方が遥かに高い。だから『生きて帰る』という約束は、申し訳ないができない」
その言葉に、レイが纏う温度がどんどん下がっていく。
それに気づきながらも、リュウジはつづけた。
「私が約束できるのは、『最後まで生きることを諦めない』という事だけだ。この約束だけは、たとえどんな絶望的な状況になったとしても、決して破らない。たとえ、眼の前に避けられぬ死が迫ってきたとしても。最後まであがく」
死ぬ危険は計り知れない。だがリツコにも言ったが、リュウジは死ぬ気など毛頭ない。
そのことだけは、レイと約束したかった。
「申し訳ない。私は隠し事ができるタチではない、だから正直に言うしかない」
リュウジの隠し立てのない言葉を聞き、レイは言いようの無い気持ち悪さを感じ始めていた。
レイ自身が、リュウジが死ぬかもしれない、と漠然と感じた不安より、本人がはっきりと『死ぬ』と口にしたことが、リュウジが死ぬという現実をより鮮明に突き付けてきたのだ。
(なぜ、鼓動が早まるの?……なぜ、ズキズキするの?)
「……綾波?」
そんな時だった、彼女は思わず声のした方へと顔を向けた。
「碇、くん……」
シンジが眠りから覚め、その無事な表情を向けてくれたことが、いくらか、レイの心を軽くした。
「どうしたの?綾波……」
「え?」
「すごく、悲しそうだよ?」
そう言われ、レイは初めてその感情を知った。
(悲しい……、これが?悲しんでるのは、私?)
「……おじさん、綾波に何言ったの?」
シンジはリュウジに聞きながらも、彼の表情から、おおよその見当はついていた。
「シンジ、俺は……」
「悲しませること言ったんでしょ!綾波を!」
「落ち着け、シンジ」
「なら説明してよ!今の状況を」
「わかった。落ち着いて聞いてほしい」
リュウジは何も隠すことなく説明した。
エントリープラグを、ゲンドウやミサトの命令を無視して、強制射出させたこと。
それにより初号機のATフィールドが消滅し、初号機が大破し、現状修復中であり、今回の作戦には間に合わないこと。
そして、リュウジが建てた作戦を、
「待って!だめだよ!ボクだってわかる、この作戦がどれだけ危険か!」
「ああ、俺が生きて帰れる可能性は限りなく低い」
リュウジは現実的に、合理的に考え、その考えを隠すことなく、シンジとレイに話す。安易な希望を持たせたくないのだ。
「どうしておじさんが!」
「俺のせいで初号機は大きな損害を被った。その責任は取らなければならない」
「責任って。おじさんは正しかったじゃないか!偵察を最後まで主張してたし。それを無視したのは、父さんとボクだ!!」
「それでも、俺は出撃を止めなかった。一番偵察の重要性を知っていながら、結局は何もしなかったんだ。決して許されることではない。それに、命令無視は事実だからな」
シンジははたと気づく。
(ボクが、おじさんの言葉を受け入れていれば……)
自分のまいた種だ。その尻拭いを、リュウジはしようとしている。
そう思われても仕方がないが、子どものしたことには、大人が責任を持たなくてはならない。そんな、
(当たり前のこと)
のために、リュウジは囮役を買って出たのだ。
「シンジ、自分を責める必要はない。お前はあの時、全力でお前の使命を果たそうとしただけだ。今までもそうしてくれたおかげで、俺もレイもこうして生きてる。人類が滅びの瀬戸際にいる中で、これは奇跡なんだ。その奇跡を、お前は二度も起こしてくれた。ありがとう」
そう言って、シンジを優しく抱きしめた。
「シンジ、一つ頼んでいいか?」
「…………」
無言のまま、シンジはリュウジの胸の中で一度だけ頷いた。
「俺が生きて帰ってきたら、また一緒に生きてほしい。我がままで、自分勝手なのはわかってるが、それが今の俺の一番の望みなんだ」
「……おじさんは、い、いっつも……自分勝手じゃん」
「……そうだな。ありがとう、俺の我がままを聞いてくれて」
シンジを抱きしめながら、リュウジはレイをみた。
「レイ、こっちへ」
その言葉に従い、レイは二人へ近づくと、シンジと一緒にリュウジに抱きしめられた。
「キミに、いま俺があげられるのは、
でもどうしても、リュウジはこうしたかった。レイに人の温もりを、どうしても肌で感じてほしかったからだ。
「ありがとう、レイ。キミも、俺の我がままをきいてくれて」
レイのことも、シンジのことも考えない、一方的な
自分のことしか考えてない、最低の行為だと自覚しているが、リュウジは知ってほしかった。
シンジとレイを、自分がどれだけ愛しているかを。
そのかわり、この二人を苦しめることになるかもしれない。恨まれるかもしれない。でもそれでいい、
(生きていればいい。生きていれば、なんだってできる)
リュウジは願った。どうかこの優しい魂をもつ二人が、いつの日か、やすらぎを得ることを。
※
作戦開始二時間前。
即席で宛がわれた、実験機の発着場にで、ミサトとリュウジはいた。ミサトはいつもの格好だが、リュウジは実験時に着ていた黒とグレーの、プラグスーツほどではないが、体にフィットしたスーツを着ている。肩には白いショルダーガードが付いたデザインだ。
「準備はいいの?」
「はい、お心遣いありがとうございます」
リュウジはそう言いながら、葉巻を取出し、吸い口をカットすると、
「……マッチを忘れた」
「かっこ付かないわねぇ」
「すいません、いつもは胸ポケットに入れてるんですが」
迂闊にも着替えたがために、マッチを置いてきてしまったのだ。
「ほら、ライターでいい?」
「この際、贅沢は言いませんよ」
ミサトが持っていた、ライターの火に、葉巻をあてがう。
「……ありがとうございます」
くゆらせながら、リュウジ実験機を愛おしそうになでた。
「棺桶……」
「え?」
「こいつの渾名です。初期実験の段階で、十機あったんですが、その半分がすぐに墜落。その後も三機が重力暴発を起こし、残った二機で南極に行き、戻ったのは私だけでした」
「そんないわくつきなのに、随分と気に入ってるのね」
「ええ、何故かこいつは、俺だけは殺さなかった。死んでもいいと思っていた、俺だけを。―――この棺桶が、俺に『生きろ』と言ってくれたような気がしたんです。そのおかげで、シンジに会えた。だから、俺にとっては恩人のような存在なんです」
事前に危険であることを知っていた、数少ない実験の一つだった。責任者の時田さんは、何度も、
「命の保証はできない」
と言っていた。それでもなお、その報酬につられたものは多かった。そんな中で半ば自殺のために参加した自分だけが生き残ったのだ。
一方のミサトは少し驚いていた。
「生きてこそ」
が身上であるリュウジが、自殺願望があったとは知らなかったからだ。
「あなたにも、そんな時期があったのね」
「人には物語があります。今、こうしてあるのも、その物語を生きて語り継いできたからです。―――あなたにもあるでしょう?」
「ええ」
「こいつにも、ここにも、もしかしたら、今上で一生懸命掘削している奴にも、物語があるのかもしれません。そして、生き残った者は、その物語を受け継ぎ、語り継いでいく。―――それも、生き残った者の義務の一つです」
「そして、上に立つ者は、その多くの物語を、背負っていかなければならないのね」
「ええ」
「……わかったわ。もしもの時は、私が受け継ぐわ」
「お願いします」
自分でいいのか、とミサトは思わずにはいられなかったが、目の前の、部下であり、師でもある男は迷わず、自分に、
「お願いします」
と言ってくれた。
その時、ミサトの携帯が鳴る。
『ミサト、零号機の準備完了したわ』
「武器の方は?」
『セーフティーゾーンへの配置が、間もなく完了するわ』
「了解、私もこれからそちらに向かうわ」
ミサトは携帯を切ろうとするが、
『まって、そこに碇三尉はいる?』
「ええ、一服してるわ」
『かわって、シンジ君が話があるって』
「了解―――碇三尉!シンジ君から」
葉巻をくわえるリュウジに、ミサトは携帯を渡す。
「……シンジ」
『おじさん。……約束できないのは解ってる。でも、生きて帰ってきて、それが、何よりの戦果だから』
「ああ、解ってる―――シンジ、レイはこれが初陣だ。お前が、レイをサポートしてやってくれ。この世界で、エヴァの実戦経験があるのは、お前だけだからな」
『わかってる。まかせて』
「頼むぞ、シンジ」
リュウジは携帯を切り、ミサトに返す。
「いいの?シンジ君と、もっと話すことはないの?」
「これでいいんです。話したいことは話せましたから」
これから、生死をかけた戦いに向かうということを感じさせない程、リュウジは幸せそうに葉巻を味わっていた。
「言っときますが、死ぬ気は毛頭ないですよ。自殺願望があったのは当時の話で……」
「わかってるわよ、それにこう言っちゃなんだけど、あなたが死ぬところ想像できないのよね」
ミサトは、もしリュウジを殺すとしたら、エヴァを使うかN2地雷で吹き飛ばすしかないと思っている。この作戦が、どれだけ危険かは把握してるが、使徒ごときに、碇リュウジが、
「殺せるはずがない」
と、何の根拠もなく信じてしまう。
「それ、赤木博士にも言われましたよ」
「リツコに?ならますます死ぬとは思えなくなってきたわね」
溜息をつくように、リュウジは紫煙を吐き出す。
「私はあなたの中でどういう存在なんですか」
「世界を裏で操っている最強のバケモノ」
思わずリュウジはむせた。
「なんですか、そろってバケモノ扱いして」
「あら、やっぱりリツコもそう思ってたの。なら確定ね」
理由は違うが、ミサトとリツコ両方にバケモノ扱いされ、反応に困るリュウジだが、何故か悪い気はしなかった。
「バケモノに成り果てても、私は守りたいものを守ります」
「そうね、そのためなら、あなたはなりふり構わないものね―――もう行くわ、レイに最後のブリーフィングもしないといけないし」
「お願いします」
葉巻をくゆらせるリュウジを後に、ミサトは指令室へと向かう。
※
第六使徒、本部直上到達予想時刻役十五分前。
「零号機、発進準備!」
ミサトの号令のもと、着々と出撃準備が進んでいく。
「レイ、聞こえる?」
『はい』
「間もなく、目標はジオフロント内へと侵入してくる。まずは射撃武器を用いて、出現したコアを攻撃。だけど、まだ調整が充分ではないから、正確な射撃は難しいと言わざるをえないわ。でも、焦らず、落ち着いて狙ってちょうだい」
『了解』
「予想では、2分49秒の時間がある。遠、中、近距離攻撃を段階的に駆使して攻撃して」
『碇三尉との連携は?』
「重力制御機構の影響で、こちらとの通信はできないの。あなたは落ち着いて、目標を殲滅することだけを考えて―――それと、加粒子砲ほどではないけど、零号機への攻撃も有り得るわ。そのために、超電磁コーティングした盾を用意してるわ。いざとなればATフィールドで防御できるけど、こちらも攻撃するためには、解除する必要がある。その際には、その盾を利用して」
『了解』
「これより、零号機をジオフロント内予定場所に配置」
「了解。目標との会敵まで、およそ9分」
「囮は?」
「テイクオフを確認。準備完了のようです」
同時刻。実験機機内
「予定通りなら、あとおよそ9分か」
VRでジオフロント内の確認をしながら、リュウジは重力飛行をテストしていた。
エネルギー充電の時間を考えると、事前にテストすることができず。以前のテスト時の感覚を、あと十分足らずで思い出す必要があるのだ。
「重力反転テスト、開始」
前後上下左右の急速な反転を繰り返す。
従来の戦闘機では不可能な動きを、彼が言った通りほぼタイムラグなしでして見せた。
「よし、問題ない。次に、重力加速テスト、開始」
今度はタイムラグなしで、音速を超える。
常人であれば耐えられない負荷が、リュウジに加わるが、使徒との同化実験を受けた彼は耐えることができる。
「当時は、この体になったことを恨んだが。今となっては、ありがたいことこの上ない」
そのまま、リュウジは目標到達予想地点まで飛ばす。
そしてVR越しに、零号機が予定地点で待機しているのを確認した。
「予定まで、一分を切ったか」
通信ができないため、機体内の時計を確認し、リュウジは待機する。
自分だけが隔離された空間にいる。もうシンジや、他のみんなとも話すことはできない。話すには、この作戦を生き残らなければならない。
「なにが、話したいことは話せた、だ」
今になって、伝えたいことが次から次へと溢れてきた。シンジにも、レイにも、ミサトにも、リツコにも。
ならば、
「生き残るしかない。単純な話だ」
そして、
目標先端が、ジオフロント内に侵入した。
もう少しで、序が終わります。
早いものでもう十二月です。
年内に、何とか破に突入したいです。
ご意見、ご感想お待ちしております。
誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがご報告ください。
これらかも、よろしくお願いいたします。