新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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前回お知らせしました通り、今回から破に入ります。

破は前半までの日常パートが大好きなんですが、後半から一気に鬱になる展開がかなり滅入ります。


破綻の章
破-知らぬが故に-


「……無事か?マリ」

 

『これはこれは、私の目的に巻き込まれた大人第一号こと、碇教官ではないですか』

 

「こっちとしては感謝してるよ、巻き込んでくれて。初実戦は、首尾よく終えられたようだな」

 

『伍号機は蒸発しちゃったけどね……』

 

「俺が教えたことは役立ったか?」

 

『全然。クソの役にも立たず終わった』

 

「結構。人殺しの技術など、役立たない方がいい。それに使徒に関しては、まだ俺は門外漢だからな」

 

『それでも、随分ご活躍のようで。流石は、ユイさんが認めた人だにゃ~』

 

「……そのユイさんが、君にすべてを託した。だから君は、俺をいいように駒にすればいい」

 

『……ありがとうございます。それと、第三使徒の生のサンプルを確保、あなたのデータと後で照合してみる』

 

「助かる。もっとも、それとも違う気がするがな……」

 

『もし違うなら、最悪の状況にもなるし、最高の状況にもなる』

 

「……マリ、俺は何も知らないし、何も聞かない。ただ、君のことは信頼している。好きにすればいい。俺はもう、そうしているからな」

 

『了解。それじゃ、姫のことよろしく~』

 

そこで、通信は切れた。

 

(さて、これからお姫様に拝謁仕るか)

 

携帯をしまいながら、リュウジは目的の場所へと、弐号機の輸送機の中の暗い通路を進んでいく。

もうすぐ日本へと到着する、というところでようやく弐号機専属パイロットと面会がかなったのだ。

ミサトに、弐号機の受け取りと、第二の少女護衛の任務を受けたはいいが、ごたごたのせいで、それが遅れに遅れたのだ。

最初こそ、ユーロ空軍としても、どこの馬の骨が来たのか、という舐めきった態度だったのだが、蓋を開けてみれば、

 

「‘まさか、ああああ、あなただとは’」

 

と初めてドイツ語を話したかのような具合で、輸送機の機長が真っ青になっていた。

かつての上官が、いきなりお使いで現れたので、向こうは完全にパニックになってしまったのだ。

リュウジとしてはことを大きくしてほしくなかったので、

 

「‘いらぬ気遣いです。現在私は、あなた方の上官ではありません’」

 

と流暢なドイツ語で、責任者を言い含めるので精いっぱいだった。

 

(ったく、いつまで俺を教官扱いする気だ?ここの連中は)

 

ユーロで一番優秀だったのは、それこそさっきまで会話していた実年齢不詳の彼女しか思いつかない。

あくまで、リュウジが教えた者だけであるが。

 

「失礼します」

 

そうこうしているうちに、目的の部屋にたどり着き、リュウジはノックしていた。

だが、

 

「………」

 

返事はない。

 

「……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。ネルフ本部よりまいりました。入ってもよろしいでしょうか」

 

「……ハァ、どうぞ」

 

「失礼いたします」

 

そうして、黄色いワンピースを着た少女の後姿に、リュウジは敬礼した。

 

「ネルフ戦術作戦部作戦局第一課、課長補佐……」

 

「ミサトは?てっきりミサトが迎えに来るもんだと思ってたんだけど」

 

「葛城一佐は、本部での所要のため、私に任務が下った次第です」

 

「そ、……で?あんたは?」

 

「碇リュウジ三尉であります。何卒、よろしくお願いいたします。式波・アスカ・ラングレー大尉」

 

ふーんと、冷めた目でリュウジは目の前の少女、アスカに品定めするように見られる。

 

「あんた、歳は?」

 

「47、ですが」

 

「……意外に歳食ってるわね。ま、アンタみたいな人がいいだけのオヤジじゃ、年下に顎で使われたって、何とも思わないか」

 

「というと?」

 

「あんた、バカァ?いい歳して、年下の女上司のお使いしてるのを何とも思わないわけ?」

 

つまるところ、アスカには、リュウジがいい歳にもかかわらず、ミサトのような年下に立場を追い抜かれている、さえない中年にしか見えていないのだろう。

 

「それにあんた、ファミリーネーム、碇って言った?」

 

「はい」

 

「確か、ネルフ本部の司令官も、碇よね」

 

「ええ、碇ゲンドウは、私の兄ですが……」

 

「成程、兄の七光りで、なんとかネルフに入れてもらってるってわけね。恥ずかしいとは思わないの?」

 

加えて、リュウジは身内のコネで辛うじてネルフにしがみついている窓際族、というレッテルまで追加された。

 

(……こういう扱いを受けるの初めてだ)

 

自身の経歴や、ネルフ内での血縁関係が因果ともなり、三尉という比較的下の立場が関係ないほど、リュウジは畏敬の念を持たれてきたため、アスカのような侮蔑の念を向けられたのは初めてであった。

 

(う~ん。叱った方がいいかもしれんが、自分の経歴をひけらかすのはあまり好きじゃない)

 

自身の経歴など、レイやシンジに比べて毛ほどの価値もないと思っているリュウジは、アスカの物言いを訂正する気にはなれなかった。

 

「あ、そうだ。一つ聞きたいことがあるんだけど?」

 

「なんでしょうか?」

 

「アンタ、初号機パイロットとも親戚ってことよね?」

 

「ええ、そうですが……」

 

今度はシンジの話題か?と思いきや、

 

「そいつに、噂の伝説の軍人が、教官としてついてるらしいじゃない。どんな人なの?」

 

(ん?)

 

と、声に出かかったが、リュウジは心に抑え込み、そして考える。

シンジに『教官としてついている』人物が、自分以外にいただろうか。リツコなどがエヴァの操作やスペックの説明をすることはあるが、彼女は『伝説の軍人』ではない。

そして、リュウジが知る限り、『伝説の』と名を馳せたほどの軍人は、自分以外にはいない。(自分で思うのも恥ずかしいが)

 

(まて、つまりこの子は……)

 

シンジの叔父である自分と、シンジに教導している自分が、同一でなく、まったく別人であると思い込んでいるようであった。

更にリュウジは、

 

「……ちなみになんですが、どんな噂なんですか?」

 

『伝説の軍人』の『噂』が非常に気になっていた。

 

「どんなって、親の七光りで選ばれたド素人のパイロットを、エースパイロットに育て上げたんでしょ?しかも、世界中の軍隊で、教官をしてて、そのせいで世界中の軍隊はその人に頭が上がらないとか」

 

ミサトがこの場にいたら、

 

「後半は大正解」

 

と言いそうだが、リュウジとしては『尾ひれもいいところだ』と言いたいところである。

 

「ま、当然よね。初号機パイロットは私の出した格闘シミュレーターのスコアを、ダブルスコアで更新したんだから。それぐらい凄腕の教官がついてないと、そんなことありえっこないもの」

 

(自身のプライドを守るための、一種の自己防衛か……)

 

資料で見ていて知ってはいたが、アスカは弐号機パイロットとして、シンジやレイ以上の訓練を積んできていた。

そんな自分より、凄まじい戦歴や訓練スコアを出しているシンジ。その理由は、超凄腕の教官がいるから。

 

(そして、そんな伝説の軍人が、目の前のただ人が好さそうな、窓際族のはずがない。そんなところか)

 

もっとも、リュウジは伝説など煩わしいとしか思ってないが。

 

「で?どうなのよ。特別に、アンタみたいな使えないやつの感想でもいいからさ。どんな人なのか教えなさいよ」

 

リュウジとしては、アスカの言っていることは的を得ていると考えていた。

自分の経歴など、大したことは無いと考えているし、ネルフにいられるのも、ゲンドウがリュウジにネルフ内の地位を与えたからであるのは紛れもない事実だからだ。

だからこそ、

 

「口先だけですよ。あなたが期待しているような男ではありません」

 

と己の感じている己を、ありのままに話した。

 

「……あんた、そんなんだから、その歳になってもうだつが上がらないってのがわからないの?」

 

アスカの侮蔑の視線が、より強くなる。

 

「と、いいますと?」

 

「救いようがないわね、あんた。……他の人がどう思うかは知らないけど。私は、本人がいないところで、その人の悪口を言うような人は、最低だと思ってる。つまり、アンタは最低ってことよ」

 

おわかり?という風に両手を上げるようなジェスチャーをする。

 

(難はあるが、芯のあるいい子だ)

 

卑怯なことは嫌いで、自分にも他人にも厳しい。

己を律することで、己のプライドを守っているとも言えるが。

 

「ま、アンタに聞いたのが間違いだったわね。兄の七光りにしがみ付いているような奴が、まともな評価なんて、出来るわけないか」

 

(そして俺への今現在の酷評も、今まで律してきた己と比較して、緩慢と生きているように見えるからか)

 

そしてプライドで守っている物、いや隠しているものが、

 

(さみしさ……、か)

 

誰かに褒められたいが、そう懇願するのは今まで築き上げたものが台無しになる、それを隠すためにプライドをもつ。他人への思いの裏返しから、厳しい態度を取る。

そんな彼女のプライドを確固たるものにするのが、『伝説の軍人(リュウジの幻想)』に認められることなのだろう。

 

「ちょっと!あんた聞いてんの!?」

 

「ああ、申し訳ございません。考え事をしてました」

 

「はぁ!?アンタ舐めてんの!?人が話してる時に。そんな態度だから、アンタは兄の七光りで、ダメオヤジなのよ!」

 

アスカは目に見えて不機嫌となり、既にリュウジを視界に入れるのも辟易としているようだった。

 

「もういいわ、挨拶すんだでしょ。アンタみたいな使えないやつ、見てるとイライラすんのよ。早く出ていって」

 

「かしこまりました。……ですが、一つだけよろしいでしょうか?」

 

「なに?」

 

「本人がいないところで、その人の悪口を言う。それは最低な行為であることは、同意しますが、断言します、その男は、あなたを必ず幻滅させます」

 

「……どうして」

 

「伝説なんて、碌なもんじゃないですから」

 

リュウジが敬礼し、部屋を後にしようとした時、突如けたたましい警報音が鳴りひびき、

 

『‘相模湾沖にて、第七使徒を確認!非常事態宣言発令!’』

 

使徒の出現が放送される。

 

(来たか。もうすぐ到着って時に)

 

それと同時に、リュウジの真後ろの扉から、軍人が一人入室した。

 

「‘失礼いたします。タスク02が発令されました。弐号機をスクランブルさせます。ご準備を!’」

 

「‘了解。すぐに向かうわ。ああ、後それと……’」

 

アスカはリュウジを指差し、

 

「‘この無能を私の視界に入らないよう、どっかに連れてって’」

 

溜息交じりにそう言い放つと同時に、入ってきた軍人の表情が一気に青くなった。

 

「‘ししし、式波大尉!この人は……’」

 

リュウジの正体を言いかけたので、リュウジはアスカに見えないように、人差し指を口に当て、

 

「しー……」

 

何も言うな、と釘を刺した。

 

(これから戦闘だってのに、余計なことを吹き込んじゃまずい)

 

「ま、光栄に思いなさい。ネルフ本部でいの一番に、本物のエヴァンゲリオンと、本物のパイロットの初陣を間近に見れるんだら」

 

リュウジが退くと、さも当然という風に、アスカは堂々としたたたずまいで、部屋を出る。

 

「……式波大尉」

 

その直前に、リュウジはアスカに声をかけた。

 

「必ず生きて帰ってください、それが何よりの戦果です」

 

アスカは後姿のまま、

 

「チッ」

 

と隠すことなく舌打ちを響かせた。

そして、リュウジに一気に詰め寄った。

 

「‘生きて帰ってください?そんなこと、アンタみたいにただ生きているだけの人間に言われたくないわよ!あんたは兄みたいに司令官でもなければ、甥のパイロットみたいに命貼ってるわけでもないくせに、よくそんな口きけたもんね!’」

 

そこまで言われても、なおリュウジは何も言わなかった。そばに控える嘗て教導した軍人にも、一瞬だけ目線を送り、『何も言うな』と再び釘をさす。

 

「顔見りゃ解るわ。罵倒されてるのは解ってる。でも言い返せない。何言ってるか解らないから。14歳の小娘に、47歳の自分が何も言い返せないのよ?アンタの人生、所詮そんなもんってことよ。そんなやつが、歳とってるからってだけで、偉そうな口きかないで。虫唾が走る」

 

そう言って、アスカは踵を返し、弐号機の元へと去っていった。

 

「‘なぜですか。なんで何も言わないんです?『生きて帰ること。それが何よりの戦果』あなたのもっとも大切な教えじゃないですか。それを、いくらなんでも……’」

 

「‘私の経歴など、子ども達の過酷な運命に比べれば、所詮そんなものでしかありません。彼女の言っていることは、何も間違っていない’」

 

自分の正体は、この戦闘が終わってから解ればいい。今は余計なことに気を取られずに、生きて帰ることに集中してほしかった。

 

「‘ところで。私を、戦闘がモニターできるところまで、案内してくれますか?’」

 

「‘はい、教官’」

 

リュウジは未だに教官呼ばわりされ、かつての部下の後ろをついていきながら、顔をしかめていた。

 

 

ここでもリュウジは何も権限はないが、指令室兼コックピットに通される。

 

「‘弐号機、発進準備よろし’」

 

「‘超電磁洋弓銃、準備よし!’」

 

弐号機の戦闘準備が、着々と進む中、通されはしたが何も権限のないリュウジは、その様子と、武器のリストを眺めていた。

 

「‘他の武器の準備は?’」

 

「‘してはいますが、パイロットがこの武器を要求しておりましたので’」

 

これから発進されるというより、上空から降下することと、敵使徒のあり得ない構造から、滑空しつつ、敵のコアを一気に叩くつもりなのだろう。

 

(なら他にも使い勝手がよく、威力のある武器もあるが……)

 

リストを見ると、特に他の武器の調整不足や、アスカが特別不得手としている、というわけでもないようであった。

 

(ま、何はともあれ、お手並み拝見だな)

 

リュウジは切り離された弐号機を、モニター越しに見ていた。

まるで振り子時計のような使徒にむけ、滑空する弐号機の姿が露わになる。

 

「‘これがエヴァンゲリオン弐号機’」

 

「‘ええ、零号機、初号機のデータから、実戦用に作り上げられた機体です’」

 

話には聞いていたが、基本スペックの数値だけ見れば、確かに性能は現存するエヴァの中では最新鋭の機体であろう。

 

(それを、初実戦で、いきなり空中戦での投入。機体スペックだけでなく、何よりパイロットの技量が求められる状況だ)

 

そして、超電磁洋弓銃も弐号機めがけ投入され、空中でそれをすぐさまキャッチした。

だが直後、一気に敵から無数の触手のようなものが、追尾するように攻撃を仕掛けてくる。

 

(すべて見切るか。攻撃予測と、空間把握能力が高くなければできない芸当だ)

 

一度つかんだ武器を離しながらも、身をひるがえしながら避け続け、再度得物を掴み、露わになっているコアに一撃で当てて見せる。

倒したかに見えたが、すぐさま使徒はその体を再形成する。

だが、その様を見ても、すかさず連続して矢を連射する。

 

(デコイであることも気づいている。攻撃も的確。確かに相当の腕前だ)

 

総合的なパイロットとしての能力は、シンジやレイより上であろうと、一目見ても明らかなほどである。

リュウジが見ているその間にも、弐号機は自身が放った矢にむけ、宙返りしながら狙いを定めた蹴りを命中させ、打ち込んでいた矢を次々と押し込む。

 

(中和も同時に行っている。ATフィールドへの対応も完璧か)

 

そして、無防備になったコアを一気に貫いた。

 

「‘どうですか?あなたから見て’」

 

戦闘が終了し、モニターが切れると、そう尋ねられた。

 

「‘能力はある、物おじしない度胸もある、だが……’」

 

「‘だが……なんです?’」

 

「‘……いや、これは本人に直接言うべきだな’」

 

リュウジは弐号機と、弐号機専属パイロット、式波・アスカ・ラングレーの、ネルフ本部配属承認の書類を受け取り、サインをした。

 

(ようこそネルフへ)

 

機体が高度を下げ始めたので、リュウジも降りる準備をするべく、指令室兼コックピットを後にした。




リュウジは決してアスカに罵倒されて喜んでいる訳じゃないです。

訂正しようとしたら、タイミングを逃しちゃっただけです。
でも「あんた、バカァ?」をいきなりリュウジに言ってもらえて、個人的には満足です。

ご意見、ご感想お待ちしております。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがご報告ください。

これからも、応援よろしくお願いいたします。
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