新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
特にリュウジは、そんな自分が見て来たもののカッコイイの集合体みたいな物です。
ネルフ司令室にて、警報が鳴り響く。
「3分前に、マウナケア観測所で補足。現在、軌道要素を入力中」
「目標を、第3監視衛星が光学で捉えました。最大望遠で出します!」
その様が、巨大モニターに映ると、司令室内にどよめきが上がる。
「光を歪める程のATフィールドとは、恐れ入るわね」
その頃、リュウジは3人のパイロットを車に乗せ、ネルフへ送っている最中であった。
『教官。ISSからの望遠映像です』
「ありがとう、剣崎。……高雄、第3新東京市の避難状況は?」
『今までの使徒襲来もあってか、すでに避難は完了しつつあります』
「良くも悪くも、慣れが出てきたな」
『ですが、すでに政府高官も、市民も、ほぼ避難完了しつつあります』
「ありがとう。また連絡する」
そう言って、リュウジは剣崎、高雄との連絡を切る。
「ねぇ、これって……」
アスカは、リュウジのタブレットに流れる映像を見て、恐る恐るきく。
「ああ、ISS、国際宇宙ステーションからのライブ映像だ」
「ど、どうやってそんなもの!」
「企業秘密だ。葛城さんにも言うなよ?」
ISSからの映像を、各国の衛星を経由し、NASAで集約した映像を、剣崎がリュウジに送った映像であった。
(まったく、今度は宇宙空間からか。またもやシンプルな手を使ってくる)
だが非常に有効な手段であるとも言える。
通常兵器では、倒すことは愚か、軌道修正すら不可能。そのままネルフ本部へと自分ごと落下する。
単純だが、有効な対処が難しいと言わざるを得ない。
「おじさん。こんなのどうやって……」
「これからそれを考える。君たちは、その結果を、エヴァを使って実行するわけだな」
かく言うリュウジも、まず頭によぎったのは、
「撤退」
の二文字である。送られてきたデータを見ての正直な感想がまず、『迎撃不可能』であったからだ。
だがそれが通じる相手では無い。
迎撃ができなければ、滅びが待っている。
「なによ。お手上げって訳?」
「悪いな、俺の専門は、昔も今も、人との戦争だ。だがどんな状況でも、ベストを尽くすさ」
その時、再び着信音が響く。
「碇です」
『急ぎなさい。敵は待ってくれないのよ?』
電話向こうで、ミサトからの催促がかかる。
「申し訳ありません。ですがもう間も無くです。……では」
そう言うと、リュウジは携帯を切り、
「悪いな3人とも。到着したら、君たちはいつでも出撃できるよう、準備していてくれ」
対向車線の渋滞を他所に、ネルフ本部へと急ぐため、さらにアクセルを踏み込んだ。
※
作戦会議室にて、報告や意見の具申が行われていた。
「マギのバックアップは、松代に頼みました」
「で、どうするつもり?」
「いくらエヴァと言ったって、空が飛べる訳では無いですし」
「こんなベラボーな相手じゃ、手の打ちようがありませんよ」
会議室内においても、言葉こそ出てないが、『撤退すべき』という空気が出てきており、そのせいか、世界の危機だと言うのに、どこか弛緩した雰囲気となっていた。
その時、作戦会議室の扉が開き、
「戻りました」
「ご苦労」
リュウジが入室し、ミサトが声をかける。
「状況は概ね把握しています。宇宙空間での撃破は不可能、軌道修正も難しいですね」
「……碇三尉。あなたの見解は?」
ミサトがリュウジに意見を求めると、作戦会議室中の視線が、彼に向けられた。
その時、リュウジもその弛緩を敏感に感じ取った。
「……セオリー通りならば、撤退するしかないでしょう」
その言葉に、会議室は、
「言い辛い言葉を言ってくれた」
と、どこか胸を撫で下ろしているようであった。
「戦闘において、迎撃不可能な空爆が、いつ、どこで敵が行ってくるのかがわかっているならば、すぐさま撤退するのが賢明です」
その言葉を受け、リツコが立ち上がる。
「葛城一佐。現状を考えれば、リリスをすぐに松代へ移せば……」
「しかしながら……」
だが、リュウジがリツコの言葉を遮る。
「……敵の目的がリリスとの接触である以上、ここで迎撃するより他にないと考えます」
「どうして!松代に移せば……」
「仮に松代に移せたとしても、落下地点も松代に移る可能性があります。そうなった場合、松代と、第3新東京市、どちらが迎撃に適しているかは、言わずもがなです」
先の戦闘において、理由は不明だが、使徒はリリスの存在を感じ取り、本能的に行動していた。
であれば、リリスをどこに移そうと、結局は迎撃するより他にないのだ。
「葛城一佐。敵の落下を許せば、我々に未来はなく。滅びを良しとしないのであれば、徹底抗戦より他に無いと考えます」
リュウジ自身がそう断言する。
そして、その言葉を受け、
「結構。もとより使徒殲滅が我々ネルフの責務です。であるならば、今あるもので、その責務を全うします」
「「「「「は!」」」」」
ミサトの号令によって、一気に弛緩した空気が引き締まった。
「マヤ」
「はい!」
「使徒のあらゆるデータを洗って、落下軌道、落下地点の予測をできる限り正確に算出。青葉、日向両名も、協力するように」
「「は!」」
ミサトが各自に指示を出す中、リツコはリュウジに視線を向け、リュウジもそれに合わせると、共に作戦室を後にした。
※
「あなたも良くやるわね、自分より二十歳も歳が離れたミサトをあそこまで立てて」
マヤの手が塞がっているので、リュウジは自然とリツコの指示の下、エヴァの最終調整を手伝う事になり、リツコの部下と共に、コンソールを超速で叩いていた。
「当然じゃ無いですか。軍事組織において、優先されるのは、年齢よりも階級です。それが規律を生み、動きを円滑にするんです」
「初対面の時からは考えられないわ、あんな気迫で銃口を向けてきた男が、今や私やミサトの下働きだものね」
リツコには、銃を突きつけ、覚悟を問うてきた凄まじい気迫を見せた男が、未だに隣で自分の指示に従っているのが信じられなかった。
「私ではご不満ですか?」
「あなたの働きに不満はないわ。あなたが下働きしてるのが不満なの」
リュウジが仕事上とは言え、ミサトは愚か、年若い職員たちにまで低頭姿勢なのは、リツコにしても、納得いかない部分がある。
「その話は兄にしてください。私には、なんの権限も無いんですから」
「それだけじゃ無いでしょう?さっきだって、ミサトの考えを汲み取って、ああまで言いきったんでしょう?」
「私は、葛城さんから、戦う意志を感じとり、それを汲み取ったに過ぎません。そして戦う意思表示をしたからには、葛城さんには、何か作戦があるんでしょう」
「作戦ね。あまり期待はできないわよ?」
「だとしても、私はあの人に従います。それが例えどんな愚策だったとしても」
ここまでミサトに実直に従っているのは、ゲンドウへの敵愾心があるのも否定できない。
だがそれ以上に、ミサトと言う人物を、自身の持ちうる限りを駆使して、助けたい思いがリュウジにはあった。
「それが、補佐すると言うことです。大丈夫、必要とあれば、必ず私に声をかけますよ」
そう言い切るリュウジの真っ直ぐさに、リツコはため息を漏らす。
「……ミサトが、使徒殲滅に拘るのは、私怨よ。だとしても、あなたは彼女に従うの?」
「私怨……?」
そう聞き返すリュウジに、リツコは意外そうな顔を浮かべる。
「聞いてなかったの?あの子が
そんなリツコとは裏腹に、リュウジは、
「ええ、特に聞いてません」
まるで気にしていないかのように返答した。
「ハァ……呆れた。人が良いにも程があるわ」
「私も、私怨を完全に肯定するつもりはありません。ですが、私とて、ここにいるのは個人的な理由ですよ?人のことは言えません」
『シンジがいるから』リュウジが最初にネルフ入りを決めたのは、それが理由である。
「私に言わせれば、正義だの大義だの、そんな理由で戦う方が信用できません」
「でも、ミサトは作戦指揮をする立場よ?」
「自分の指揮に従う者達の命を預かる覚悟があるならば、戦う理由は何でも良いですし、いくつあっても良い。何より、時に憎しみは、絶望に勝つ力になる」
「そうかもしれない。でも憎しみに囚われて、冷静な作戦指揮ができなくなれば、元も子もないじゃない」
「そうなった時は、私が止めます。力づくでも……」
相変わらず、側から聞いていれば、青臭いことを言うが、
「たいしたものね、あなたは……」
リツコは呆れつつも、リュウジに嫉妬にも似た、尊敬の念を感じていた。
果たして、自分はミサトに対して、ここまでの信頼ができていただろうか。そしてまだそこまで長い月日を過ごした訳でも無いのに、なぜこの男はここまでミサトに信頼を置けるのか。
あまつさえ、リツコのことですら、リュウジは信頼している。同じく長い付き合いでは無いのに。
そんなリュウジに対して、ミサトもリツコもいつのまにか信頼を寄せている。無論リュウジの優秀な能力故だが、それを培ってきた経歴からは考えられないほどの人の良さが、それを助長する。
「一種の処世術のようなものです。私はそんな、たいしたことはありませんよ」
「謙遜は、過ぎると卑屈に映るわよ」
「この歳になると、卑屈ぐらいがちょうどいいんです」
軽快に会話をしつつも、作業を素早く進める。
そんな中、
「センパイ。少し、良いですか?」
エヴァの調整室のドアが開き、
「あら、マヤじゃない。どうしたの?」
マヤが入室してきた。それに日向や青葉も続いて入ってくる。
「すいません、赤木博士、少しご相談に乗っていただきたくて……」
日向が申し訳なさそうに、お辞儀をしながら言う。
「実は、先程葛城一佐に、指示された分析結果提出したのですが……」
青葉がことの詳細を説明する。
ーーーーーーーーーー
およそ十分前、作戦会議室
「なにこれ、これが分析結果?」
ミサトがいつになく、厳しい口調で3人を叱咤していた。
「ですが、現状の目標のデータが少なすぎます。とてもじゃありませんが、これ以上は……」
「そうは言うけど、これ、さっき算出した予測とほとんど同じ内容よね?こんなのを出すんなら、あなた達に指示した意味なんてないじゃ無い。私は、先のデータより、正確なデータを出してもらいたいの!」
マヤの言い訳を、ミサトは厳しい口調で遮った。
「厳しいことを言うようだけど、こんなのマギに数値を入れれば誰でも算出できる。私が欲しいのは、多角的に分析した、少しでも正確な予測よ?いつまでも、杓子定規にコンソールを叩いて、分析した気になっているようじゃ困るわ」
そう言って、ミサトは提出された分析結果を、3人に突き返した。
「もう一度、しっかり使徒のデータを洗って、分析結果を提出しなさい。できないと言うなら、この仕事は他に回します」
ーーーーーーーーーー
「葛城一佐の仰ることももっともですが……」
「伊吹ニ尉が言った通り、目標のデータがないに等しい状態です」
「この状況下で、これ以上の詳細な予測なんて、どうすればいいか……」
困り果てた三人は、リツコに相談に来た、という顛末である。
側から見れば、無茶振りに見える。なにせ未だに使徒は大気圏外で、強力なATフィールドがジャミングとなって、映像以外、まともに情報を得られない状況なのだ。
かと言って、このまま指をくわえていては、広大な落下予測範囲を、半ば勘で迎え撃つという、パイロットに無茶振りをする状況になる。
「そうね、またこの結果を提出すれば、『他の人』に仕事がいきそうね」
リツコは意地悪そうに、横目でリュウジを見ながら言う。
「……赤木博士。その言い方だと、私にプレッシャーをかけてるように聞こえるんですが……」
「あら、誰もあなたにお鉢が回るなんて、言ってないわよ?」
「……その方が、いいですよ」
軽快なリュウジとリツコのやりとりとを、マヤが沈んだ口調で遮った。
「マヤ?」
「だってそうじゃないですか。碇三尉……いえ、リュウジさんは私なんて足元にも及ばないほど優秀で、何でもできて……。今だって、私なんかいなくても、リュウジさんのお陰で、エヴァの最終調整も順調に進んでいますし」
マヤとしても、目の前にいる、自分より階級が下で、それでいて倍以上も歳上の男にコンプレックスを抱えていた。それが、この状況下で一気に噴出した。
「私は、リュウジさんのように万能じゃありません。かと言って、この人ほど子供たちの為に体を張ることもできない」
命令無視してまで、シンジを助け、自ら囮になってまで、レイのサポートに徹した。
そんな男は、あまつさえ自分の代わりにリツコと共に、エヴァの最終調整までやってみせている。
静かな慟哭をしているかのようなマヤの様子を、後ろに控える、青葉と日向も、半ば同じような思いを感じながら聞いているようであった。
「リュウジさんが分析すればいいんです。そうすれば、間違いないですよ」
マヤが吐き出し切った見てとったリュウジは、静かに立ち上がり、
「……いいですか?」
と言って、彼女が持っていた分析結果を受け取り、パラパラと数ページ読むと、
「確かに、私ならこんな結果を、葛城一佐には出しませんね」
それだけ言うと、マヤに返した。
「すいません。赤木博士、少しの間、席を外します」
「ええ、お願い」
「3人とも、ついて来てください」
そう言って、リュウジは3人と共に、部屋を後にした。
※
無言のまま、一行は司令室にあるマギの元へ訪れた。
「伊吹ニ尉。あなたのIDを貸していただけますか?」
「え?どうして……」
「後で説明します」
そう言うと、リュウジはマギのコンソールを叩き出した。
「まず、断っておきますが、葛城一佐は、あなた方ならできると判断して、この仕事を任せたんですよ?」
「え?」
「上に立つからには、自分の指示を受ける部下の能力を把握し、その上で作戦を立てたり、任務を任せる」
そこまで言うと、コンソールを叩いていた手を止め、
「指揮官とはそう言うものです。どうか、葛城一佐の判断が間違いでないと、実証して見せてください」
そう言うと、3人に数枚の書類を渡した。
「……!!リュ、リュウジさん!これって」
「私なりに出した、落下軌道、落下地点の予測です。時間がありませんから、予測結果だけは、3人にお渡しします」
リュウジが出した結果は、未だに的を絞れているとは言えないが、それでも3人が出した予測の半分以下まで絞れていた。
「どうやって、こんな……」
「それを、あなた方で考えてください。私が、何をもって、この予測を出したか。無論、当てずっぽうじゃないですよ?」
つまり先に答えだけを3人に見せ、そこに至るまでを、考えさせる腹積りなのだ。
「この結果は、伊吹ニ尉のIDを使って出しましたから、データ上はあなたが出したことになってます。ですので、このまま提出しても、葛城一佐に私が算出したことはわかりません」
要は、黙って提出したっていい、という訳である。
「そ、そんなの悪いです」
「そう思われるなら、是が非でも、この答えに辿り着いてみせてください」
そう言われても、3人には皆目見当がつかない様子であった。
だがここで手取り足取り教えたところで、何も意味はない。時には突き放す事も、優しさとなるのだ。
「先ほども言いましたが、時間がありません。パイロットたちはいつでも出撃できる状態。エヴァの調整もまもなく終わります。葛城一佐がどのような作戦を考えているかは存じませんが、少なくともこの予測をもとに作戦を立てるつもりなのでしょう。その上で、よく考えてください」
そう言うと、リュウジは一足先に、その場を後にする。
(いかん、いかん、どうしても世話を焼きたくなる。年寄りの悪い癖だ)
自分のまだ半分も歳をとっていないあの3人を見ると、色々と余計な説教などをしたくなってしまう。過干渉してしまえば、それは自己満足にすぎない。
(俺の役割は、足りない部分を補いながらも、少しの手助けと、見守る事だ)
(いずれ、俺が必要なくなり、あるべき所へ帰れれば、それでいい)
それまでは、少しでも若い彼らのいい手本となることができれば、年齢を重ねた甲斐があるというものだ。
今回はオペレーター3人と、リュウジをより、絡ませてみました。年齢を重ねると、若い方と話せるだけでも嬉しくなるんですよね。
勿論、性的な意味合いじゃないですよ?
ご意見、ご感想お待ちしております。
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これからも、応援よろしくお願いします。