新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
この物語は、作者なりに、シンジ君を家族として愛し、大人として接してくれて、尚且つあのマダオに一言二言ぶつけられる。
そんなキャラクターが一人でもいればいいな、と思い見切り発車ではありますが、投稿いたしました。
長い目で見ていただければと思います。何卒よろしくお願いいたします。
プロローグ
夕方4時半。
そろそろ甥が帰って来る時間で、ちょうどよく店もひと段落し、5時閉店の準備をし始めていた。
その男の定食屋は程よく繁盛し、男一人と甥一人で生活するには十分な稼ぎを出せた。
最もここは彼一人の家であって、その甥はここが本当の家というわけではなかった。
その甥は本来帰るべき家があり、この男の家には、ここにいたいから、と言う単純な理由でもう五年も入り浸っていた。
そしてその男も、別段気にせずその甥、碇シンジを受け入れていた。
そして本来帰るべき家の人間も、何か言って来ることはなかった。
男にとって、シンジは掛け替えのない唯一の家族だったし、あんな目にあって尚、一緒に居てくれていることを考えると、相当今の生活は恵まれていると感じる。
「ただいま、おじさん」
「おう、お帰り。怪我してないか?」
「大丈夫だって、もう14歳だよ?」
「怪我や病気に年は関係ない、どちらも突然襲いかかって来る。だから…」
「何かあればすぐ報告、でしょ」
そう言って、シンジは店の二階に上がっていこうとする。
「シンジ、少しいいか?」
その背中に声を掛ける。
「…実は手紙が来た。君宛に、俺の兄から」
そう言われて、シンジは気づく。
「父さんから?」
「ああ、俺が知る限りでは終ぞ、知らせの一つも寄越さなかったあいつが、今になって何を思ったか知らんが」
そう言ってシンジに渡す。
シンジは一応中を開け目を通す。
暫く時間がかかると思いきや、すぐさま裏返して文面を見せられる。
「あいつはお前のことなんだと思ってんだ?」
流石に怒りがこみ上げてきた。
そこにはただ一言、
「来い」
だけであった。
「ちなみに手紙はここに送られてきたんですか?」
「いや君の家に届いたのを、わざわざ俺に渡しに来たよ」
わざわざと言うほど距離が離れてるわけでもないが。
「そもそも兄は俺が日本に戻って来たことも知らないからな」
「まぁ、そんな気はしてましたよ」
「それにあいつとは、昔から馬が合わなかった。アイツも昔から周りと関わらないやつだったからな。俺にとっちゃ結婚したことだって、驚天動地の出来事だった」
大袈裟なジェスチャーをしながら、彼は店先の暖簾を片付ける。
「おじさんはどう思います?会いに行くべきだと思います?」
「決めるのはお前だ、俺はそれを尊重する。だが…」
自分でもいまだに似合ってない、と自覚している割烹着を、カウンター席にかける。
「俺は行くべきではないと思う。なんの確証もないが、今更親子としてやり直そうと考える奴じゃないからな。大方、お前に何かさせようって魂胆だろ」
「そう、ですよね…」
彼がシンジに言った言葉は本心からだ、だが他にも理由がある。
特務機関ネルフ。
それが今兄の所属している、と言うより統括している組織だ。
一応国連の組織であるが、機密情報が多すぎる。そんな所に自分の甥を向かわせるのは碌なもんじゃない、とも思っているからだ。
「…もう一度、会ってみたいんだな?」
「そ、そんなこと!!」
「迷っているのは俺に遠慮してるからだ。今まで面倒を見た俺に不義理を働いてるんじゃないかって」
布巾で机を拭く叔父を見ながら、シンジは敵わないなと痛感する。
彼にとって、この叔父は一人の大人として自分の面倒を見てくれ、自分を一人の男として見てくれる唯一の存在だった。
詰まる所、目の前の叔父を、父と思い今日まですごしてきた訳だ。
そんな叔父のことを考えると、父親に会いに行くことはもとより、父親や母親について聞くことも憚られたのだ。
「何度も言うが、俺のことは気にするな、お前はお前のやりたいようにすれば良い。もっとも…」
持っていた布巾を洗い、手の水滴を払うと、彼はシンジの目を見る。
「お前が言う通り、もう14歳だ。お前の行動にも、責任が伴ってくる。俺の言いたいことはわかるな?」
シンジはすぐさま頷く。
詰まる所、自分が何をどう感じるか、どんな結果が生じるか。シンジ自身に責任が降りかかってくると言うことである。
「自分で選んだことは、自分で落とし前をつける。それができるのが大人の条件だ。まぁ、それを完全に俺もできているとは言い難いがな」
それに、と付け加えながらシンジの肩に手をかける。
「その責任を、これから大人になろうというお前が、全部背負いこむ必要はない。そもそも、人一人が背負いきれる物など、高が知れている。だから、お前が行くなら、俺も行かせて欲しいんだ」
「おじさんも?」
驚いた表情のシンジに、ああとだけ彼は返す。
「この店は?どうする気なんです?」
「しばらく休みにしたって別に問題ないさ。もともと、俺の気まぐれで始めた店だからな。それに今更だが、3年前に俺も一緒に行くべきだった」
以前に一人で母親の墓参りに行かせた時、彼はともに行くべきだった、と思う。
その時のことをシンジは話さなかったし、彼も聞こうとは思わなかった。
だからこそ兄、碇ゲンドウが何を考えているのか、シンジをどう思っているのか、そして、ネルフで何をしようとしているのか。彼には何もわからない。
「だから、今度は一緒に行かせて欲しい。どうなるかわからない以上、お前一人で行かせて、後悔したくない」
「おじさん……」
「…悪いな、自分勝手で」
14歳という多感な時期に、大人の自分がここまで構うのが良くないこともわかっている。だが長年の彼の
「特殊な経験」
が一人でシンジを行かせるのはよくない、と告げていた。
だがシンジは、自分の目を見て、微笑んでくれた。
「なんでおじさんが謝るのさ。むしろお願いします。父さんのこと、多分僕よりは詳しいでしょ?」
「とは言っても、俺も最後にあったのは、君が生まれる前だから、15年ぶりになるがな」
その時には義姉にも一度会った。それこそ一度会えば忘れられないほど強烈な女性だったのを、今でも覚えている。
「それじゃ早速…」
そう言うと、彼はお品書きしているボードの文字を消し、
『誠に勝手ながら、家庭の事情によりしばらく休業いたします。悪しからず』
と書き、外に張り出した。
「今日中に荷物をまとめておこう。明日には第3新東京市に出発だ」
「はい」
そうしてシンジは仕組まれた運命により、その叔父、リュウジは唯一の肉親のため、第3新東京市に向かう。
飽くまで作者の解釈ですが、シンジ君は決して人間嫌いではないと思うんです。周りに信頼できる大人がいなかっただけだと思うんです。
そんな人が一人でもいれば、別の世界線の彼のように、明るい少年になれるのではないか。
その為に考えたキャラが碇リュウジです。