新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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外伝を含めて、30話まで来ました。

なんだかあっという間ですね。

更新も、話の進行もゆっくりですが、これからもよろしくお願いいたします。


破-異変の引き金-

アメリカ、ネバダ州。

ネルフ第2支部消滅。

 

「T+10。グラウンドゼロのデータです」

 

「……ひどいわね」

 

知らせを受け、ミサトたちは作戦会議室へと集まっていた。

 

「ATフィールドの崩壊が衛星から確認できますが、詳細は不明です」

 

「やはり4号機が爆心か……。うちのエヴァ、大丈夫でしょうね?」

 

「4号機は……」

 

「……エヴァ4号機は、稼働時間問題を解決する新型内蔵主機の、テストベッドだった。視察した人物からも、ある程度裏はとれているわ」

 

「……剣崎キョウヤね。無事だったの?」

 

「ええ。偶然にも、この事故が起こる数時間前に、視察を終え、ここを後にしているわ。生き残りながらも、その様を最も間近で見た人物。これから、彼の尋問が始まるわ」

 

「私にさせてくれない?」

 

「ダメよ。碇指令から、彼に尋問するよう命令が出てるから」

 

「……彼?」

 

「碇指令が直々に指名したそうよ?まぁ確かに、彼にとっては教え子らしいから、手の内は知り尽くしてるでしょうし」

 

ミサトはこの時、初めてリュウジ(部下)剣崎(旧友)の関係を知った。

 

 

『ビーーー!』

 

ブザー音が響くと、扉が開き尋問室にリュウジが入る。

その先には、机に座った剣崎キョウヤがいた。

 

『よく無事だったな、剣崎』

 

『恐れ入ります。教官』

 

その様を、ミサトをはじめとする一同が、マジックミラー越しに見守る。

 

「あの、先輩。剣崎さんが教え子って、どういうことですか?」

 

「戦自に、碇三尉が再編成特別顧問として招聘されていたときの教え子なのよ、剣崎君は。……ほら、これが二人の経歴」

 

そう言ってリツコは、二人の経歴をマヤに渡す。

 

「碇三尉は、その時諜報部隊特別教官でもあった。その時の愛弟子の一人だった、と言うわけね」

 

ミサトが知らないだけで、恐らくリュウジの教え子は、このネルフにも数人いるのだろう。

 

(当たり前か、リュウジさんの闇は、私が知っているよりかなり深いんだから)

 

最近は鳴りを潜めているが、セカンドインパクト以降の世界構成に、碇リュウジは大きく関わっている人物なのだ。彼の網は、彼女の知らないところまで及んでいるのだろう。

 

(もしかして、何か知っているの?リュウジさん……)

 

『言っておくが、優しい尋問官も、怖い尋問官もいない。ただ、俺だけだ』

 

リュウジはそう言うと、持ち込んだファイルを広げる。

 

『ええ』

 

『まずは、お前の所見を聞きたい』

 

『報告書にもまとめましたが、新型内蔵主機の暴走事故。と考えます』

 

『これから、参号機がアメリカ政府(ホワイトハウス)から押し付けられるが、その危険性はどう考える』

 

『検査結果が安全と、今のところ判断されている以上。私からは何も言えません』

 

『お前に権限がないのは百も承知だ。間近で、あの事故を見たお前の意見を聞きたい』

 

そう言われ、剣崎は黙る。

だが、

 

『そうか、解った……』

 

それがリュウジにとって答えとなった。

 

『……あなたにも、何も権限はないでしょう』

 

『だからと言って、このままでいいとは思わない。やれるだけのことはやる』

 

広げていたファイルを戻し、リュウジは立ち上がる。

そしてブザー音が鳴り、リュウジは尋問室を後にした。

 

「碇三尉?」

 

すぐさまミサトが駆け寄る。

 

「これ以上は無駄です。奴は何も話さんでしょう」

 

持っていたファイルを、リュウジはミサトに渡し、立ち去ろうとする。

 

「あなたの教え子なんでしょう?」

 

それをミサトが制止しようと、肩を掴む。

 

「剣崎は、決して口を割りません」

 

リュウジはミサトの手を掴むと、力づくで離す。

 

「私がそう訓練したんです。お解りでしょう?そもそも、剣崎は何も知らない」

 

「どうして、そう言い切れるの?」

 

「一通りの苦痛には耐えれても、あいつの心の揺れ動きは把握しています。そこに乱れは一切なかった。私の所見は、こと、この事故に関して、剣崎キョウヤは、視察と言う形で巻き込まれた。ただそれだけです」

 

リュウジがここまで断言するところを見ると、剣崎に関しては間違いはない、とミサトは自分の中で結論付けた。

だが、

 

「……いいわ。では、あなたはどうなの?碇三尉」

 

「なんですって?」

 

「何か知ってるんじゃないの?」

 

「どうして私が、この事故の原因を知っているというんです?」

 

「いかに剣崎君があなたの教え子だとしても、あなたが素直に碇指令の命令通り、剣崎君の尋問をしたからよ。なにか、確かめたかった、もしくは気づいたからじゃないの?」

 

「……何度も言いますが、この事故の原因は知りません。本当です」

 

リュウジとしても、原因など知る由もない。それは紛れもない事実である。

 

「……原因が解らない以上、いかにアメリカ政府(ホワイトハウス)から押し付けられたとはいえ、参号機の受け入れは、私は承服できません」

 

「それは、我々ではどうにもできないわ」

 

「クソッ!」

 

リュウジが珍しく、いら立ちを隠そうとせず、悪態をつきながら、その場を後にした。

 

「ちょっと!碇三尉!」

 

まだ聞きたいことがあったミサトは、廊下でリュウジを引き留める。

 

「……参号機と言い、ダミーシステムといい、どうしてこう得体のしれないものを立て続けに受け入れなければいけないんです」

 

そこで、ミサトは周囲を見渡し、声を潜める

 

「……それこそ、あなたの力で、どうにかできないの?」

 

リュウジも考えなかったわけではない。

考え込もうとするが、リュウジとしてはすでに答えはでていた。

 

「……かなりの根回しが必要です。アメリカ政府(ホワイトハウス)だけじゃない、ユーロや、ロシア政府(クレムリン)中国政府(ペキン)まで巻き込む必要があります。無論日本国政府(首相官邸)も。……できないとは言いませんが、時間がかかります」

 

とどのつまり、バチカン条約に加盟している主要国に、根回しをする必要があるのだ。時間があれば可能であるが、そうさせないように、敵は瞬く間に手を回してきた。

リュウジは拳を眉間のしわに当てる。

 

「今回の事件は異様です。これを発端として、参号機の受け入れやダミーシステムの導入が急ピッチで進んでいます」

 

「……そうね。既に上から、アスカをテストパイロットとした、参号機の起動実験をするよう指令が来ている。弐号機の封印処理も明日行われるわ」

 

「アスカを?あんな得体のしれないガラクタに、アスカを乗せるっていうんですか!!?」

 

四号機の惨事を考えれば、とてもじゃないが危険すぎると言わざるを得ない。

 

「危険すぎます!アスカの命をなんだと思ってるんですか!!」

 

「剣崎君も言ってたでしょう!?現状参号機に異常はない!……それにこの指令は、ネルフの上層組織、ゼーレからの直々のものらしいわ。私は勿論、碇指令ですらどうすることもできない……」

 

(どうしてそこまでして、アスカを参号機に?……アスカの出生に関係しているのか?)

 

ここにきて、リュウジがゼーレの存在を把握していなかったのが裏目に出てしまった。

リュウジもゼーレの調査を進めてはいるが、冬月の情報と未だ大差ない。いうなれば、ゲンドウと知りうる情報は大差ないのだ。

ゲンドウが未だにゼーレの思惑を把握していない以上、リュウジもまた然りである。

だがここで、リュウジは一つだけ解ったことがある。

 

(ここまで急ぐ理由は、俺にこれ以上計画を掻き回されたくないからか……)

 

リュウジに何の手も打たせまい、としている。

おそらく水面下で、着々と準備を進めてきたのだろう。それを、この事故を契機に、一気に推し進め、

 

『成す術なし』

 

にリュウジを追い込んできたのだ。

 

「起動実験は、いつです?」

 

「3日後よ……」

 

「3日……」

 

(やられた……まさか、これ程の奇襲を仕掛けてくるとは……)

 

「お願い。何か知っているなら教えて!」

 

苦悶の表情を浮かべるリュウジに、ミサトは何とか力になりたかった。

 

「……言えません」

 

だがリュウジは、ミサトの両眼をまっすぐ見つめ、それを拒んだ。

 

「……お願いです。……どうか、何も聞かないでください。……あなたを、巻き込みたくないんです」

 

そう言って、リュウジはゆっくりとミサトから離れ、その場を後にした。

このリュウジの決断が、のちに彼に最悪の事態をもたらすことになる。 

 

 

剣崎が尋問室を出ると、

 

「久しぶりね、剣崎君」

 

ミサトが待ち構えていた。

 

「お久しぶりです。葛城一佐」

 

嘗ての旧友との再会としては、あまりに無機質な挨拶だった。

 

「奇妙なものね、同一人物が、あなたの師匠であり、私の部下となってる。ネルフに来て、旧友とこんな奇妙な関係ができるとは思わなかったわ」

 

「……何かお聞きになりたいようですが、教官に話した以上の内容は、私は何も知りません。あったとしても、私にはあなたに話す権限もありません」

 

剣崎が、先に釘をさす。

 

「変わらないわね、その無愛想なところ。でも、そんなあなたが、碇三尉だけには、少しだけど感情を見せていたから、安心したわ」

 

先程のリュウジとのやり取りを見ていたミサトは、リュウジが剣崎にとってよい師匠であったのだと安心していた。

だからこそ、

 

「だからお願い。碇三尉の、リュウジさんの力になりたいの。少しでもいいから、何か知っているなら教えて」

 

剣崎なら、リュウジを助けたいと思う気持ちを理解してくれる。そう思った。

 

「……なにか勘違いしているようですが、私とて、教官の目的は知りません。need to knowの原則、葛城一佐もご存じでしょう」

 

「それは……」

 

だが剣崎は、全く応じようとしない。

 

「それに、私は今碇指令のもとで任務を受けて、動いている身です。あの人は恩人ですが、もう私の上司ではありません」

 

「なら、命令があれば、あなたはリュウジさんを殺すの!?」

 

剣崎の無機質な返答に、ミサトは語気を強める。

だが、

 

「ええ、そう命令されれば」

 

剣崎の表情は崩れない。

 

「……そう。解ったわ。でも、旧友として言わせてもらうけど、納得できない任務なら、拒否する権限があるし、そうすべきだわ。何が大切なのか、何が正しいのか、リュウジさんから薫陶を受けたあなたなら、それができるはずよ」

 

「何が大切で、何が正しいのかは、時代によって、大きく変化します。そんな中で、私のような駒が信じるべきことは、任務だけです」

 

「剣崎君!」

 

「だからこそ、誰の駒になり、使い捨てられていくのか。それだけは自分で決めます。……それでは」

 

その場を立ち去ろうとする剣崎に、ミサトは何も言えなかった。

 

 

翌日、エヴァの格納ドックにおいて、弐号機の封印処理が行われた。

それを、アスカはどこか遠い眼で見ていた。

 

「……すまん。アスカ」

 

「なんでリュウジが謝んのよ」

 

その後ろから、リュウジが申し訳なさそうに声をかけた。

 

「むしろ当然じゃないの?未だに、弐号機の権限はユーロにあるんでしょ?」

 

「もっと時間があれば、根回しができたんだが……」

 

「ああもう!リュウジらしくない!」

 

勢いよくアスカが振り返り、リュウジに詰め寄る。

 

「別にいいじゃない!参号機が来るんだから、戦力的には問題ないはずだし、テストパイロットもアタシになったし」

 

「アスカ!今からでも遅くない。頼むから、テストパイロットを拒否するんだ。あんな得体のしれないもの、君が乗るべきじゃない」

 

リュウジはせめて、アスカが拒否してくれればと思うが、結果は芳しくない。

 

「得体が知れないからテストするんでしょうが!別に使徒と戦うわけじゃないし、アタシにかかれば、お茶の子さいさいよ。それに……」

 

アスカの表情に、若干の影が堕ちる。

 

「テストパイロットを拒否したら、たぶんユーロに戻される。……ここには、アンタや、みんながくれた、居場所があるの。……それを、守りたいの」

 

そして、リュウジの服の裾を強く、強く握る。

 

「お願い。……ここにいたいのよ」

 

「……アスカ」

 

リュウジは思わずアスカを抱きしめた。

 

「すまん……俺は……」

 

同じことを繰り返す。そんな自分を、リュウジは心から軽蔑した。

 

(なんで、いつも俺はこうなんだ。愛情の残酷さは、解っているはずなのに……)

 

「何も言わないで。大丈夫だから。ね?リュウジ」

 

だがアスカはポンポンと、47歳とは思えない、丸まった男の背中を優しくたたいた。

そして、シンジがこの人を守りたい、と言う思いが、少しだが理解できた。

 

「それに、何かあったら、リュウジが守ってくれるんでしょ?」

 

その言葉に、リュウジはハグからアスカを離す。

 

「ああ。約束したからな、当日は俺も赤木博士の補佐で向かう。それで、さっさと片付けよう。そして……」

 

リュウジは懐から、三人からもらった招待状を取り出す。

 

「来週には、みんなで食事会だ」

 

「そうよ。楽しみにしてなさい」

 

「ああ。期待してる」

 

そういって、アスカの頭を優しく撫でた。

 

 

(まったく。リュウジも情けないわね。たかが起動実験で、何びくびくしてんだか)

 

そう思いながらも、先ほど抱きしめられた感触や、撫でられた温かさは悪くはないと、アスカは感じていた。

そう思いながら、エレベーターに乗ると、

 

「「あ」」

 

レイと乗り合わせた。

 

「式波さん。あの……」

 

「何よ、アンタまで気を使うことないわよ」

 

そう言って、アスカはレイの横に並ぶ。

 

「むしろ、暫くアンタとシンジに、食事会の準備任せることになるんだから、アタシの方が謝るべきでしょ」

 

その言葉に、レイは眼を丸くした。

 

「……何よ」

 

「フフ。何でもない。大丈夫、私と碇君で何とかするから」

 

アスカは、フン、とソッポを向く。

 

「ねぇ、式波さん。ききたいことがあるの。いい?」

 

「……何よ、藪から棒に」

 

レイはアスカに体を向ける。

 

「あなたは、碇君のこと、好き?」

 

アスカの顔が一気に染まった。

 

「な、な、な、……!!何きくのよ!!!いきなり!!!」

 

「ずっと、考えてたの。エヴァに乗る必要がなくなって、その世界で、碇君と生きていけるとしたら、って……。あなたはどう?どう感じる?」

 

レイの圧に、アスカは若干押されるが、

 

「あ、アンタはどうなのよ」

 

なんとか聞き返す。

 

「私は、とてもうれしくなるの。使徒が来なくて、平和な世界で、碇君と、お料理作ったり、一緒に学校行ったり、……それだけで、心が温かくって、フワフワするの。でもね……」

 

レイの眼が、アスカの瞳を射抜く。

 

「碇君と話している式波さんも、うれしそうなの」

 

「なっ!!」

 

アスカは否定したかったが、レイの眼と、シンジとの会話を回想してしまったことで、それが出来なくなってしまった。

 

「だからききたいの。あなたが、碇君をどう思ってるのか」

 

だが、アスカは俯いてしまう。レイのシンジへの思いを、目の当たりにしてしまったからだ。

 

「……アンタのその気持ち、シンジのことが、好きってことでしょ?」

 

レイはアスカの質問に、ゆっくりとうなずく。

 

「でも、式波さんと一緒に、お料理したり、学校で過ごすのも、私は楽しいの。だから……」

 

レイは、アスカの手を取った。

 

「あなたが、碇君のことを好きだと、私もうれしい」

 

「……レイ」

 

レイの余りにまっすぐな思いに、アスカは思わず彼女の名前をよんだ。

そうしている間に、アスカの目的の階に到着した。

 

「ごめんなさい、式波さん。でも私、どうしても聞いてみたくて……」

 

「いいわよ、別に……」

 

そして、アスカがエレベーターを降りたとき、

 

「……ありがと」

 

と小さくつぶやいた。




今回の話の全容としては。

ゼーレが、リュウジに計画を荒らされる前に、

『巻いていこう』

という展開でした。そろそろ、破も中盤に差し掛かります。

ご意見、ご感想お待ちしております。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがお知らせくださると幸いです。

これからも応援何卒よろしくお願いいたします。
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