新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
ですのでいつもより短めです。
松代での異変は、すぐにネルフ本部の知るところとなった。
「被害状況は!?」
「不明です。爆発発生以降、現地との通信は途絶えています!」
「すぐさま現地の封鎖!各省庁への伝達を急いで!!」
指令室ではミサトがすぐさま陣頭指揮に入っていた。
「事故現場南西に、未確認移動物体を確認!」
「パターンは?」
「オレンジです。使徒とは確認できません」
「マギも、判断を保留しています」
「解析を続けろ」
この緊急事態に、その陣頭指揮に冬月も加わっていた。
その時、せりあがる指令室の席に鎮座しながら、ゲンドウが入室する。
「第一種戦闘配置」
「碇指令?」
「総員、第一種戦闘配置だ。正体不明の移動物体の進行予想ルートに、初号機、零号機を配置。なお初号機にはダミープラグを至急換装させろ」
「碇、本気か?赤木君もいないこの状況では、危険ではないか?」
「同意します。いきなりの実戦投入は、あまりにリスクが高すぎます!」
だがゲンドウは、眉一つ動かさない。
「どのみち、実戦で使えなければ話にならん。今は緊急事態だ、使えるものは何でも使う」
ミサトは釈然としない面持ちだが、リュウジのようにゲンドウに真向から刃向うことなどできず、
「……作業急がせて!」
命令に従うより他になかった。
「……現場の救出活動はどうなっている?」
「そちらは問題ありません、赤木博士らの無事は確認できています。……ただ」
「どうしたの?」
「……碇三尉と、諜報部の剣崎さん。二人の所在が不明です」
青葉の報告に、ミサトの表情が曇る。
(大丈夫、この二人なら、きっと……)
ミサトは、そう自分に言い聞かす。実際にこの二人はネルフ内でも、もっとも生き抜くすべに長けている。自分があれこれ考えても、詮無きことだ。
だがそう解っていても、嫌な予感が纏わりついてしょうがなかった。
※
黄昏の田園風景が広がる中に、異質な二つの巨大な影が鎮座する。
『シンジ君、レイ、聞こえる?』
「「はい!」」
『先ほど偵察部隊との通信が途絶えた。未だに移動物体の正体は掴めていないけど、こちらに向かっている以上、十中八九、使徒と考えられます。目標を確認次第、攻撃を開始します』
「「了解!」」
両機が待機しているのを、ミサトは指令室で確認しながら、あたりの地形を見下ろす。
「シンジ君はそのまま待機、レイは山陰に隠れて、目標をやり過ごしたら背後をとって」
『了解』
その命令を聞きながら、シンジは不安が拭えないでいた。
『あの……ミサトさん』
シンジなりに、不安の声を押し殺しながら、
「なに?」
『アスカ達は、無事なんですか?』
どうしてもそう聞かずにはいられなかった。
「……今は、余計なことは考えないで、作戦に集中しなさい」
『……はい』
だが、かく言うミサトも、緊張が拭えないでいた。
なんとか顔に出さぬよう努めてはいるが、リツコも、リュウジもいない状況での作戦指揮は、否が応でも、彼女の不安をかさ増しさせた。
だがそんな彼らの、不安も、緊張も、差し迫る脅威は待ってはくれない。
「正体不明の移動物体、東御付近で映像を捕えました!主モニターに出します!」
山間から現れたその陰に、どよめきが走った。
「……やはり、これか」
「まさか、……参号機」
最悪の状況に、一瞬ミサトは呆気にとられるが、すぐさま表情が引き締まる。
「参号機との通信は!?」
「応答ありません!!」
「呼び続けて!緊急停止信号を発信!エントリープラグ緊急射出!!」
「ダメです!信号受け付けません!!」
「エントリープラグ周辺が著しく浸食をうけており、このままでは物理的にも、射出することは困難です」
だが立て続けに出した指令は、ことごとくが徒労に終わった。
「パイロットは!?」
「反応を傍受できません。ですが……」
「……どうしたの?」
「……たった今、パターン青を検出しました」
せめて、アスカの状況を把握しようとするが、それすら状況が悪化している知らせにしかならなかった。
「現時刻を持って参号機を破棄、監視対象物を第九使徒と識別する」
そんなミサトたちの苦痛など歯牙にもかけず、ゲンドウは躊躇せずに敵として対処する命令を下す。
「待ってください!まだ中にパイロットが……」
「使徒殲滅が最優先事項だ。例外はない」
ミサトの懇願にも、聞く耳を持つわけがなく、
「シンジ、レイ、あれは使徒だ。倒せ」
子ども達にも、無慈悲に命令を下す。
『……父さん。ごめんなさい、その命令は聞けない』
『碇君?』
その時、シンジの眼は静かに、エントリープラグ内から、迫りくる参号機を見つめていた。
『何を言っているシンジ。これは命令だ。お前は従う義務がある』
「それは、アスカを殺すってことでしょ?なら、ボクはそんな命令きけない。アスカと約束したから。必ず守るって」
シンジは先ほどまで感じていた不安が、ウソの様に感じなくなっていた。アスカの安否を知るという意味では、最悪の状況である。だがその状況が、逆にシンジ自身に何をするべきか、覚悟を決める引き金となった。
今の彼には、迷いも、恐れもなかった。
『よく聞けシンジ。敵は対象に浸食するタイプだ。テストパイロットも浸食されている可能性が高い』
「アスカも使徒になってるってこと?」
『そうだ。我々の敵だ』
「……そんなの関係ないよ」
『シンジ君……』
余りの落ち着いたシンジの声に、ミサトは若干の狂気を感じた。
なぜなら、
「……そうか、解ったよ。あの時、おじさんがボクにエヴァに乗らなくていいって言った気持ちが、……今、解った」
その物言いが、リュウジによく似ていたからだ。
そしてシンジは、心で理解した。
リュウジがあの日、世界ではなく、シンジを躊躇なく選んだ、その理由を。
「たとえ、世界が助かったって、そこにアスカがいないんなんてやだ。ボクだけは、そんな世界、望まない」
そのために、リュウジはシンジを選び、レイやアスカに生きろと言った。
その思いにシンジは触れることができた。それは同時に、シンジにリュウジの
「……貴方だけじゃないわ。碇君」
そのとき、レイがシンジに微笑みかけた。
「綾波?」
「私も、式波さんを助けたい」
レイにとって、アスカも含めた三人が揃わないと意味がないのだ。
この三人で、これからも生きていきたいと感じているから。
「だから、一緒に助けましょ?碇君」
このシンジに向けられた笑顔こそ、リュウジにはないものだった。
この狂気に染まったとき、リュウジの周りには、誰もいなかった。だがシンジは違う、彼を思い慕う者達がいる。
「ありがとう、綾波」
尤も、それが救いとなるか、より濃い闇へ落ちることになるかは解らないが。
『……そうか』
ゲンドウは、心の中で歯噛みした。そして彼の狂気も、ついに牙をむく。
「零号機を緊急停止、戦闘が終わり次第早急に回収しろ」
「碇指令!?」
突然のゲンドウの命令に、ミサトは困惑する。
「仰っている意味が解りません!」
「碇。どうする気だ」
「初号機はパイロットとのシンクロを全面カット。制御をダミーシステムに切り換えろ!」
「お待ちください!!確かに彼らは命令を無視しています!!ですが!せめてアスカの救出を試みてからでも……」
「子供のお遊びに付き合っている暇はない。やれ!」
余りの横暴にさすがにミサトも声を荒げるが、
「……はい」
オペレーターたちが総司令官の命令を無視できるはずもなかった。
「……碇、お前まで、何をそう焦っている」
「解らないのか冬月。世界を恐れぬシンジでは、初号機の覚醒は、ユイの覚醒はない」
言葉には出さないが、それがリュウジの影響と考えると、ゲンドウはハラワタが煮えくり返る思いだった。
そしてその影響を、レイまでもろに受けている。以前リツコが、ゲンドウに言った通りのことが起こったのだ。
(……やはり、今しかないな)
ゲンドウは電話を取出し、どこぞへと連絡を取った。
※
突如として動きを止める、零号機と初号機。
「え……?」
「なんだよこれ、ミサトさん?とうさん!?」
互いに外部との通信が出来るのみであり、それ以外はまったく稼働しなかった。
「碇君?一体……」
「解らない……え?」
だがシンジにだけ、レイとは違う変化が起きる。
エントリープラグ内が、赤黒いノイズに染まると、後方より、シンジに覆いかぶさるように、見たこともない装置が、シンジの両手を固定し、彼の視界を遮る。
『なんだよこれ!とうさん!!』
だが指令室にいるゲンドウは、シンジの声が聞こえていないかのように無表情である。
「碇司令!まだ間に合います。やめてください!!」
「葛城一佐。今作戦における指揮権限を剥奪する。後は、私が直に指揮を執る」
そしてミサトの再度の懇願も、ゲンドウは聞き入れなかった。
「……碇司令」
そして、無慈悲にも横暴なる権限で、その機会すら奪われた。
「主管制システム、切り替え終了」
「全神経回路、ダミーシステムへの直結完了」
「ダミーシステムでの稼働限界時間。最大208秒です」
「システム解放。攻撃開始」
その言葉と共に、初号機の眼が赤く染まり、口部が解放される。
耳障りな、咆哮をあげると、初号機が一気に参号機へと飛びかかった。
「……なにが」
丁度零号機の目の前の地点で、初号機はいきなり襲いかかった。その尋常ではない様相にに、レイは言葉を失った。
参号機は、いきなり距離を高速で詰められたがために、反応できず、初号機の膝蹴りもろに食らうと、そのままマウントを取られた。
再度耳障りな咆哮が響く。
そのまま初号機は、三号機の首を絞める。三号機はなんとかそれを振り払おうとするが、びくともしない。両肩部分を変形させ、腕として伸ばし、こちらも初号機の首を締めようとするが、それを意に返さず、初号機は更に両手に力を籠め、
今度は耳障りな、骨の砕けるような音が響いた。
それと同時に、三号機は一気に全身の力が抜けたかのように、四腕も、両足も、こと切れたように地面に落ちた。
「もうやめてよ!!とうさん!ミサトさん!!」
初号機はその首を握ったまま、立ち上がると近くの山に向かって叩きつける。
最早動けなくなった三号機だが、初号機は再度マウントを取ると、両の手で、交互に殴りつけた。何度も、何度も……
「お願いです!碇司令!!止めてください!!」
レイもあまりの光景に懇願するが、ゲンドウが動く気配はない。
その間にも初号機は、参号機の体を引きちぎり、食いちぎり、あたり周辺にその肉片や装甲をまき散らしていく。
「……これが、ダミーシステムの力」
ミサトは権限を剥奪されながらもなんとかしようとしていたが、目の前の光景にただただ呆然と知るしかなかった。
マヤに至っては、口を押え、眼を背け、堪えるしかできなかった。
『ゴメン、……アスカ。ゴメン……ボクは……君を』
指令室に、シンジの声が響く。アスカへの赦しを請い、悲嘆にくれる声が、操縦桿を動かす音と共に広がる。
そして、初号機が参号機を貪る音が止んだ。
替りに、頭上から金属がきしむ音が聞こえだした。
「……なんだ?何の音だ?」
「……いや、止めて」
視界が遮られているシンジは一瞬わからなかったが、レイはその様子がすぐさま視界に入った。
初号機が、エントリープラグを咥え、それを砕こうとしていた。
「やめろおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
そして、聞き馴染みのある音が響いた。
「……え?」
それは、時にこちらの攻撃を遮り、敵からの攻撃を防ぐ音だった。
「……AT……フィールド……?」
突如としてATフィールドが出現した。エントリープラグを覆うように。
表情が変わるはずもないが、初号機すらいきなりのことに呆気にとられているように見えた。
そして、その隙を突くかのように、エントリープラグのハッチが吹き飛ぶ。
と同時に、中から超スピードでワイヤーが飛び出し、初号機の右肩のウェポンラックに絡みつく。
そして、眼にもとまらぬ速さで、影がエントリープラグから飛び出し、初号機の右肩に着地した。
「……はぁ。死ぬかと思った」
その影はそう呟くと、絡まったワイヤーを、ワイヤーガンに収納し、静かに立ち上がった。片腕に、アスカを抱きかかえながら。
「悪かったなシンジ。すぐ脱出するつもりだったんだが、なかなかそうもいかなかった」
「おじさん!!!!」
その影、碇リュウジは、優しくシンジに微笑みかけた。
個人的にはラストシーンを書いていて、リュウジが立ち上がった時に、かってにアベンジャーズがアッセンぶるBGMが流れましたwww
今回は難産でした。
後編も出来る限り早く投稿したいですが、また時間がかかることになると思います。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
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これからも応援よろしくお願いします。