新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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総合評価が2000ポイントを超えました。

皆様にご評価いただき、厚く御礼申し上げます。

本当に嬉しいです。ありがとうございます。


破-浸食- 後編

ずっと、期待しないで生きてきた。他人にも、世界にも。

 

だからこそ、自分一人で生きていくために、誰も必要としない、強い身体と心を持つ。

エヴァに乗るため、自分の存在価値を自分で勝ち取るために。

そうすれば、誰かが褒めてくれる、認めてくれる、居場所をくれる。

 

でも、そんなことはなかった。

誰も褒めてくれない、認めてくれない、居場所なんてない。

 

この寂しさを抱えながら、私はエヴァに乗り続けなければならない。

 

『よく解ってんじゃない』

 

『……アタシ?』

 

『そう、アタシよ』

 

『なんで?なんで誰も認めてくれないの?』

 

『アタシに、エヴァに乗る以外の価値がないからよ』

 

『……違う。シンジは、アタシを好きって言ってくれた』

 

『レイが好きなことは、否定しなかったじゃない』

 

『レイは、アタシと過ごすのを楽しいって言ってくれた』

 

『アタシが消えれば、あいつはシンジを独り占めできる』

 

『リュウジは、アタシに生きてほしいって言ってくれた!』

 

『アタシをエヴァに乗せるための方便に決まってるでしょ?』

 

『違う!!』

 

『それを証拠に、アタシを助けに来ないじゃない』

 

『それは……』

 

『アタシも解ってたんでしょ?あんな約束、アタシに取り入るためのただの言葉に過ぎないって』

 

ああ、そうだ。結局、他人にも、世界にも、期待しない方がいいんだ。

解ってたことじゃない。

 

「…………ヵ」

 

結局、誰も私のことなんて、心から褒めてくれない。

 

「……ァ…ヵ」

 

誰も、私のことなんて、温かく撫でてくれない。

 

「……ァスカ」

 

誰も、私のことなんて、抱きしめてくれない。

 

「……アスカ」

 

解りきってた、ことじゃない。

 

「…アスカ」

 

誰よ、もう、眠らせてよ。

 

「アスカ。俺だ」

 

「……え?」

 

そこには、優しい微笑みを向けてくれる人がいた

 

「……助けに来た」

 

「……ウソ……どうして……」

 

「約束しただろう?……君を守る。何が何でも」

 

そう言って、微笑みながら、私を優しく撫でてくれた。

 

「よく頑張ったな。アスカ」

 

「リュウジィ……」

 

急に込み上げてきた涙で、クシャクシャな顔の私を、優しく抱きしめてくれた。

 

(ああ……、そうだ。……ずっと、…ずっと、欲しかったものは、この人が…最初にくれたんだ)

 

私は、リュウジの胸に、顔を寄せ、その温もりに安らぎを感じた。

 

この時、私は忘れていた。

 

世界は、いつも、残酷に、私を、裏切り続けることを。

 

 

『おじさん!どうして……』

 

勿論、シンジにとってアスカが助かったのは喜ばしいが、いきなりの叔父の登場にはそれ以上に驚いてしまっていた。

 

「何も複雑なことはしちゃいないさ。参号機(こいつ)になんとかしがみついて、よじ登って、エントリープラグに侵入しただけだ」

 

だがリュウジはこともなげに答える。

その間に再度ワイヤーガンを駆使しながら、アスカを抱きかかえて、初号機を降りていく。

 

『そ、そんな、サラッととんでもないこと言わないでよ……』

 

シンジの言葉に、聞いている全員が頷いたであろう。

聴けば小学生でも理解できる、単純明快な理由である。

だが理解しやすさとは裏腹に、リュウジがやってのけたことは、難しいですむ芸当ではない。それを思いついたところで、瞬時に行動に移せるような生易しい行為ではないからだ。

尤も、リュウジとて、起動実験寸前まで、参号機に生身で張り付きながら、つぶさにチェックを繰り返していたからこそ、こんな自殺行為ともいえる芸当ができたのである。

 

「にしても、シンジはともかく、レイまで命令無視するとは……、冷や冷やしたぞ?」

 

そんなリュウジも、傍受していた通信から、シンジとレイの決断を驚きながらも、その胆力を心底称賛していた。

 

「まったく、誰に似たんだか……」

 

『碇三尉から、命令無視の仕方を教わりました』

 

『ボクも』

 

レイもシンジも言葉にはしなかったが、

 

(アンタが言うな)

 

という思いが一致していた。

 

「まずい、このままじゃエヴァパイロット全員グレるかもしれん。知れたら、葛城一佐に殺される」

 

そんなリュウジの思いもむなしく、

 

『聞こえてるわよ、碇三尉』

 

上司にはもちろん事の顛末は筒抜けである。

 

『ハァ……あとで聞きたいことが山ほどあるから、逃げるんじゃないわよ?いい!?』

 

少々ドスが効いたミサトの声に、

 

「……了解です」

 

リュウジは観念した。

 

『……だけど、まずは教えて……、アスカは無事なのね?』

 

「……ええ、現在呼吸や脈拍は安定しています。使徒の浸食が今後どう影響するかはわかりませんが……、アスカは無事です」

 

その言葉に、指令室は歓喜に沸いた。

シンジやレイも、リュウジにそう改めて言われたことで、安堵の表情を浮かべる。

 

「ですが、まずはあたり一帯の封鎖を早急に行ってください。浸食タイプの使徒による汚染が考えられます。加えて、初号機、零号機のエントリープラグをロックしてください。そうでもしないと、シンジもレイも、無理やりにでもアスカに駆け寄って抱き着きかねないですから」

 

そうなっては、今度はシンジやレイも浸食されかねない。

リュウジは冷静に二次災害を防ぐよう、ミサトに具申する。

 

『解ったわ。……それで、あなたは大丈夫なの?碇三尉』

 

「……そのことについて、お話があります」

 

ミサトからのその質問は、避けては通れないことなど、リュウジは百も承知だった。

彼は、アスカを助けると決めた時、自分の秘密を隠し通すことはもうできないと、覚悟していた。

 

「今回の件において、私への影響はほぼありません。断言できます」

 

そこに迷いなどなかった。自分の秘密と、アスカとの約束。どちらが大切かなど、比ぶべくもなかった。

 

『なら、ATフィールドを展開したのは、アスカなの?』

 

「いえ、私です。今回の件より遥か前から、私は既に使徒の浸食をうけています」

 

さらなる衝撃が、周囲に伝播した。

もしかしたら、リュウジがエントリープラグからアスカを助け出した以上のものであったかもしれない。

 

『ふ、ふざけないでよ、おじさん。こんな時に……』

 

そう言いながらも、シンジとて理解していた。

叔父は、こんな場面で冗談を言うような人物ではない。

また、こんな場面で嘘をつく必要もないのだ。

 

「11年前です。セカンドインパクト発生源の調査のため、人間が行動できるようにするために、様々な実験が行われました。私が受けた人体実験も、そのうちの一つです。当時は詳細を知らされなかったのですが、最近になってようやく、それが使徒との同化実験であることが判明しました」

 

リュウジが視線を移すと、横たわったアスカも驚愕の顔を彼に向けていた。

 

「……黙っていたことは謝罪します。詳しいことは、戻りましたら説明します。ですが、とにかく今は子供たちの回収を急いでください。……お願いします」

 

『ま、待ってよおじさん!一体、どういう……』

 

『解ったわ。すぐに向かわせる』

 

ミサトはシンジの言葉を遮ると、すぐさま通信を切った。

リュウジも、シンジが自分に聞きたいことがあることは予想できたが、今はアスカのことを優先するべく、電源を切った。

 

「リュウジ……」

 

「どうだ?アスカ、体調は変化ないか?」

 

だが当のアスカも、その表情を見れば、リュウジに聞きたいことがあるのは見て取れた。

 

「はぐらかさないで!今のはどういう事なの?」

 

「……言葉通りだ。俺は……俺の体は、純粋な人間じゃない。夜は眠れない、見た目も年を取らなくなったどころか、若返り始めてる。最近じゃ、食事も受け付けなくなってきた。……ただ、それだけだ」

 

「それだけって……なんでそんな淡々としてられるのよ。……このままじゃ……」

 

だがアスカはそれ以上言えなかった。

なぜなら自分も、浸食を受けたからだ。

自分も人ならざる存在になる。そうハッキリ言葉にするのが急に怖くなってしまった。

 

「アスカ。身体や、見た目は問題じゃない。言ったはずだ、大切なのは、(ここ)(ここ)だ。周りがどう思うか、どう見るかは関係ない。俺は、シンジを、レイを、アスカを、心から愛してる。そして、是が非でも守る」

 

そういうと、リュウジは優しくアスカを撫でる。

愛し、守りたい存在が、そこにいる事を確かめるように。

 

「俺から、その思いがなくならなければ、自分の体なんか、どうなったっていいんだ」

 

その言葉は、アスカを苛んだ。

恐らくシンジやレイも、この言葉を聞けば同様だろう。

自分に生きてほしいと願う人が、ともすればその願いのために死を覚悟している。その覚悟がひしひしと伝わってきてしまったからだ。

 

「大丈夫。俺はまだ死ねない。まだ、やらなきゃいけないことがあるから……」

 

リュウジが立ち上がると同時に、金属がはじけ飛ぶような衝撃音が響いた。

気付けば、リュウジの胸元に何かが突き抜けたような跡ができていた。

そこから、赤い染みが徐々に広がっていく。

 

「え……」

 

何が起きたか解らないまま、アスカはリュウジが倒れるのを目の当たりにした。

気が付けば、血しぶきがアスカの顔にかかっている。

 

「……リュウジ?」

 

「……アスカ、無事…か?」

 

なんとか上体を起こすと、リュウジは自身の血にまみれながらも、アスカに覆いかぶさった。

 

「な、なんで?」

 

「……こ、えを……発てるな。コホッ」

 

いかに使徒の浸食をうけていると言っても、リュウジが致命傷を受けていることはアスカも理解した。にもかかわらず、リュウジはアスカを守る行動をとる。

その間にも、リュウジの血が、アスカの紅いプラグスーツを赤く染める。

 

「だめ、リュウジ、死んじゃう」

 

「かも、しれん……だが、お前まで、死なせるわけには……」

 

「安心してください。殺す命令が出ているのは、あなただけです」

 

そこに、ゲテモノの様に巨大なライフルを構えた第三者が現れた。

 

「は、……ハハ。対戦車、ライフルか……。兄は、俺を殺すのに、随分と手間をかけたな」

 

「碇司令は、敵性存在であることを隠していた不穏分子を殺す命令を私に下しただけです。そのために、私が用意しました」

 

そう言いながら、ライフルを捨てると、今度はデザートイーグルを構える。

 

「俺を超えたな……。それを構えて、気配を……察知させないとは」

 

アスカを殺される心配がないとわかると、リュウジはなんとか体を仰向けにし、剣崎へと顔を向けた。

 

 

「何が起こったの!?」

 

指令室でも、初号機のモニターから、ミサトは事の異変を察知していた。

 

『銃声です!おじさんが撃たれた!!』

 

シンジも倒れたリュウジを目の当たりにし、

 

『ミサトさん!開けてください!!助けに……』

 

「全員動くな!!」

 

沈黙を保っていたゲンドウが、シンジの声を遮った。

それと同時に、諜報部の人間が指令室になだれ込み、ミサトをはじめとする職員に銃を突きつけた。

 

「碇司令!一体なにを!?」

 

「これより動いたものは、碇三尉と同じく敵性存在と断定する」

 

「な……」

 

ミサトもいきなりの展開に言葉を失うが、徐々に理解し始めた。

リュウジは使徒の浸食を受けていた。それを秘匿していたことを理由に、始末をつけるつもりなのだ。

 

「待ってください!何の裏付けもなく、彼の言葉をうのみにするのですか!?」

 

「既に、裏付けは出来ている」

 

ゲンドウは分厚いファイルを、ミサトに投げてよこした。

 

「冬月がリュウジに接近し、その秘密を引き出した。赤木博士のラボにも、同様のデータが存在していた。『彼女を脅して』自分の体を調べさせていたのだ」

 

ファイルに目を通しながらも、ミサトはそんなことはありえないと断言できた。

 

(ここまでするの?弟でしょう?)

 

そして、こじ付けてまで、(リュウジ)を殺そうとするゲンドウの狂気に戦慄した。

 

『とうさん!やめて!!お願い!!ミサトさん!!』

 

『碇司令!!お願いです!!何もそこまで……』

 

「初号機と零号機のLCL圧縮度を限界まであげろ」

 

だがゲンドウは、この機を逃すつもりなどない。

今こそ一番の障壁を消す、千載一遇のチャンスなのだ。

 

「早くしろ」

 

「……はい」

 

マヤが消え入りそうな声で返事をし、震える手でコンソールを操作した。

 

『ぐはっ……』

 

『うぐぅ……』

 

シンジとレイの呻き声が響き、二人の懇願が止む。

今この瞬間、全てがリュウジを殺すべく、物事が動いていた。

 

 

リュウジはなんとかATフィールドを展開しようとするが、

 

「無駄です、いかにあなたでも、致命傷を受けた今では、時間稼ぎにもならない」

 

剣崎のデザートイーグルが、頼りないATフィールドを物理的に破壊した。

 

「ハハ……、ゴホッ!確かに…、俺を…殺すとしたら、ゲン…ドウは、お前を使うだろうな」

 

「そういう事です」

 

既に、リュウジの視線は焦点が定まっていない。

更に、致死量と思われるほど出血しており、意識を保っているのが奇跡ともいえる状態であった。

 

「……まぁ、……お前、なら。悪く、ない」

 

リュウジは、もう見ることは出来ないが、銃口が自分に向いていることを悟った。

だがその時、今度はアスカが、リュウジに覆いかぶさった。

 

「やめて。……お願い」

 

「退いてください。君を殺す任務は受けてない」

 

「ア、スカ……ど、くん……だ」

 

既にリュウジは、言葉を発するのが精いっぱいであり、彼女をどかそうにも、体がいう事をきかない。

 

「お願い……この人を…殺さないで」

 

アスカは眼に涙を浮かべながら、剣崎に懇願した。

万全の状態であれば、剣崎であろうが殴りかかっただろうが、今の彼女は、リュウジに覆いかぶさり、剣崎に願い縋るしかなかった。

 

「この人は…、初めて、私を見てくれた人なの。……初めて、私を撫でてくれた人なの。……私に、『生きろ』て、言ってくれた人なの」

 

彼女にとって、初めて、自分を心の底から愛してくれた大人であり。そして、命がけで助けてくれた、本当に信じられる大人であった。そんな人が、目の前で奪われていく。

 

「お願い。……何でもするから……、だから、この人を、私から、奪わないで……」

 

アスカは、覆いかぶさりながら、リュウジを離すまいと、彼を懸命に抱きしめる。

止まることの無い血に、どうか止まってと懸命に願った。

だが無情にも、剣崎はアスカをリュウジから引きはがす。

 

「いや……リュウジ、リュウジィ……」

 

そして、スタンガンを彼女の首筋に当てた。

薄れゆく意識の中で、アスカはしっかりと聞いた。

 

「アスカ。……愛してる。……ありがとう」

 

ついに、アスカは意識を手放した。

そのアスカを、剣崎は優しく地面に横たえさせた。

 

「……時田さんから伝言です。火星はほぼ全壊ですが、地球と合わせれば、不可能ではないとのことです」

 

「……なら、赤木博士に……伝えろ……。水星に、……引き続き、種を蒔いておいてくれと」

 

「了解」

 

そして、引き金を引いた。

何度も。

 

「……碇司令。ターゲットの始末。完了しました」

 

『ご苦労。回収班を送る』

 

 

冬月は、一人で廊下を歩いていた。

 

(本当に……これでよかったんだな。リュウジ君)

 

これ程までに、ゲンドウが強硬手段に出るとは思っていなかった冬月は、自分が行った行為が正しかったのかどうか、リュウジに心の中で、答えが出ない問いをした。

ゲンドウに、リュウジから協力要請を受けた事、彼が人体実験を受けた情報などを、冬月はリークした。

だがそれは他ならぬ、リュウジの協力の条件であった。

あの夜。リュウジに話を持ちかけられたとき、そのまま彼の受けた人体実験のデータを受け取り、ゲンドウに協力を持ちかけられたことを話すよう依頼されたのだ。

 

『あとは、私からの合図があるまで、兄に付き添ってやってください』

 

リュウジが冬月に頼んだのはそれだけだった。

だがその結果が、リュウジの死となったことに、冬月は、

 

(もしかしたら、リュウジ君もここまで碇が行動を起こすとは思っていなかったのでは……)

 

と、不安にならずにはいられなかったのだ。

その時、冬月の携帯が鳴った。

 

「どうした……なに!!??」

 

冬月は報告を受け、驚愕せざるを得なかった。

まだ判然とはしないが、どこか確信めいたものがあった。

やはりすべては、リュウジの計画通りだったのだと。

 

「リュウジ君の遺体が、消えた?」

 

冬月は決心した。

どうなろうとも、時を待つと。

 

 

「助かった、剣崎。これであの人の依頼を遂行できた」

 

『私が受けた任務は、教官の殺害だけ。輸送のことは任務外だ』

 

「全ては、碇三尉の手のひらの上なのか、それとも緊急事態ゆえの処置なのか」

 

『あの人の考えは、我々の及ぶところではない』

 

「そりゃそうだ、で?お前さんはどうする?」

 

『教官からの指令に変更はない。碇司令の命令に、最後まで従う』

 

「そうか……俺は暫く身を隠す。あの人から、一隻だけだがちゃんと情報ももらえたしな」

 

『そうか、ならNHGシリーズの確保は任せた』

 

「ああ、死ぬなよ。剣崎」

 

『……お前こそ死ぬな。葛城一佐のためにも』




と、言うわけで、主人公死亡と相成りました。

今は、申し訳ありませんが、これ以上は言えません。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですが、お知らせいただくと幸いです。

これからも、応援よろしくお願いいたします。
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