新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
もしかしたら、しばらくだいぶ更新ペースが落ちると思われます。
月面タブハベースにおいて、エヴァンゲリオンMark6の頭部に、渚カヲルは立ち、プラグスーツを身にまとった。
「運命は……結局は変わらなかったのか……」
変わらぬ円環の物語。
その中で抗い続けた彼は、再度戦いに身を投じようとしていた。
「時が来たね」
強大な力を持つゼーレや、ゲンドウに匹敵する力をもってしても、その運命を知らなければ、結局は勝つことは出来なかった。
なればこそ、運命を知る自分自身が、奮起するしかないのだ。
※
けたたましく警報が鳴る中、指令室ではそれに引けを取らない程、オペレーター達の悲鳴にも似たアナウンスが途切れることなく響く。
「目標!現在進行中!!」
「旧小田原防衛線!突破します!!」
その中で、玉座に鎮座するかのようなゲンドウと、そのわきに控える冬月は、その趨勢を見守るかのように静かだった。
「最強の拒絶タイプか……厄介だな」
その時、ミサトも指令室に入った。
「総力戦よ!要塞都市全ての迎撃設備を特化運用!!」
「横須賀第四米軍基地より、攻撃機出撃許可の要請です!!」
「戦自より、イージス艦からの迎撃攻撃の許諾要請!!」
「いちいち許可なんて取らずに、さっさと攻撃しろって伝えて!!」
「「了解!!」」
第三新東京市の迎撃装備と、米軍と戦自の総力を持って、第十使徒の足止めをして、エヴァンゲリオンの出撃の時間をなんとか稼ぐ。
「零号機の出撃準備!弐号機は封印を解除して、初号機と同じくダミーシステムに切り替えて準備させて!!」
シンジが目覚めておらず、アスカも出撃できない状況から、ミサトは止むをえずダミーシステムを使用しての出撃の指示を出す。
「それが……」
だが、ミサトの指示を聞いたマヤが、歯切れの悪い返事をする。
「……どうしたの?」
「零号機と初号機の準備は問題ないですが……」
「弐号機は既に封印を解除され、出撃準備が何者かによって、ほぼ完了している状態よ」
弐号機の状態をモニターしていたリツコと青葉が、怪訝な表情で報告する。
「なんですって?一体誰が……」
「その……先ほど、弐号機からメッセージが」
マヤが自身のコンソールに来たメッセージを、ミサトに提示する。
『Now I have a Mark2!HO-HO-HO.From employer of the legendary soldier』
「弐号機は頂いた。ホーホーホー。……伝説の軍人の雇い主より。……なにこれ?」
「さぁ……。相互リンクがカットされていて、これ以上は何とも……」
この状況で何とも間の抜けるようなメッセージだが、『伝説の軍人の雇い主より』の文言を見て、確証はないが、
(……恐らく、リュウジさんの関係者)
と、ミサトは結論付ける。
リュウジが保険として準備していたパイロットなのか、それともこの『雇い主』による勝手な行動なのかはわからないが、この切迫した状況では、それを追及している時間などない。
「エヴァによる地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロントに配備!零号機も出撃準備でき次第、すぐに援護に回して!!」
零号機の出撃準備が着々と進む中、第十使徒は総攻撃をものともせず、進撃を続ける。
※
「…………そうか、やはり俺は死ねないか」
何もない空間で、リュウジは意識を感じた。
『そりゃそうですよ。たかが出血多量と、心肺停止程度で、今のあなたは死にません』
「……ついに会えたな、俺に埋め込まれた使徒に」
そして、知っていたかのように、自分以外の声に反応する。
『初めまして、と言うのは違いますね。もうかれこれ11年の付き合いですし』
「で?俺はついに乗っ取られるのかな?」
『それは無理です。今の僕は、魂のかけらしか存在しない。それに、そもそもそんな必要はない。僕と貴方の願いは同じなんですから』
そして、その人影をリュウジはその目に映す。
だがその顔までは、何故か窺い知ることができない。
『貴方はすごい。これまで僕は、何度も彼を助けようとしてきましたが、結局は何もできなかった、何も変えられなかった。でもあなたのおかげで、彼は……シンジ君は変わった』
※
レイは零号機のエントリープラグ内で、ついに出撃の時を迎えていた。
(私が死んでも、代わりはいる。だとしても、最後まで、私は、生きることを諦めない)
これまでの使徒とは桁違いの強さであることから、レイも覚悟を決めていた。
だが、それは死ぬ覚悟ではない、守りたい人を守る覚悟であり、その人のもとへ帰るための、生きる覚悟であった。
その覚悟ができているからか、いつも以上に、自分の心は冷静であった。
かといって、この覚悟が生半可な気持ちでは示せないことも、よくわかっていた。
『最後まで生きることを諦めない』
と約束してくれた人は、レイ以上に強かったにもかかわらず、戻ってくることはできなかった。
(こんな気持ちだったのね。あの時の、碇三尉は……)
死ぬかもしれない中で、生きる覚悟を決める。リュウジは常にそうしてきた。恐らく、囮を買って出た時も。
それがどれだけ困難なことか、それを約束すると口にすることは、今のレイでさえ、憚られる思いだった。
「葛城一佐」
『なに?レイ』
「弐号機には、誰が乗っているんですか?」
『ごめんなさい。相互リンクが切られていて、こちらからは何もわからない。でも、一通だけ、メッセージが来たわ。何でも、パイロットは『伝説の軍人の雇い主』らしいわ』
「!…それって……」
『ええ。私もあなたと同じこと考えてる。だから、信頼していいと思う』
傍から見れば、信頼できる要素など皆無だが、二人はリュウジならば、何か保険を残していてもおかしくない。と考えられた。
その考えが、レイの想いをより一層強くした。
死んでもなお、リュウジは自分たちを助けようとしている。
なら生きている自分たちは、なおのこと生きるべくあがかねばならない。
(碇君、式波さん、……)
共に生きたい仲間を思い浮かべ、
「……行きます」
レイは決戦へと赴く。
※
「このままだと、シンジはどうなる?」
『サードインパクトを起こしてしまう。そして、滅びた世界の中で、彼は……』
「君は、それを止めたいんだな?」
『……止めたい。そして、助けたい』
「だが、出来ない。どうすればいいか解らない。そんな状況か?」
『ボクでは、何回やってもダメなんです。ただ、運命を知っているだけのボクでは、何回やっても、彼を助けられなかった』
「……いままで戦ってきた使徒とはやはり違うな。君は何者だ」
『……タブリス、現時点における『最後』の最後の使徒です』
※
「目標!ジオフロント内に侵入!」
「エヴァ零号機と弐号機に会敵します!!」
その様を、ミサトは憮然とした態度で見据える。
「……頼んだわよ、レイ」
そして、弐号機に乗っている、例の雇い主。
(もし、リュウジさんから直々に戦闘技術を教わったエヴァパイロットだとすれば、あるいは……)
初搭乗時のシンジですら、初戦における使徒に対して、接近戦を有利に進めることができた。
正体は解らないが、いきなり弐号機に乗れるほどのエヴァパイロットで、リュウジの教え子であれば、勝てるかもしれない。
レイは、既に臨戦態勢にある弐号機の背後で、数多く配置されている武器の中から、パレットライフルを装備する。
そして、本部との通信をきり、
「弐号機の人、聞こえる?」
「…………」
弐号機へと呼びかけた。
「……貴方が何者かはわからない。でも、碇三尉から訓練を受けた人だと思う。だからこれだけは答えてほしいの」
レイにとって、いやリュウジから教えを受けた者には、一番の教えであり、最も難しい課題。
「生きて帰る事……」
「……ハァ〜。それが、何よりの戦果、でしょ?」
思った通りの返答が来たことで、レイの表情に若干の笑みが浮かんだ。
「もうそれ耳タコだよ。あの人が死んだ後にまで、聞かされるとは思わなかった」
ウンザリとした口調でマリは返答するが、それと同時にリュウジの笑顔が浮かんできた。
戦闘前に、リュウジはほぼ必ず、笑顔でそう言ってきた。
そしてその笑顔を見ると、どんなに絶望的な戦況であっても、
「生きて帰れる」
と何の根拠もなしに、確信できた。
「よかった。……今は何も聞かない。だから、生きて帰ったら、ゆっくり貴方のこと、教えて。弐号機の人」
そういうと、レイはやがて使徒が侵入してくるであろう場所へ、照準を合わせ臨戦態勢を取る。
「……真希波……マリ」
「え?」
「私の名前。……弐号機の人、なんて、一々言いにくいでしょう?だから、名前だけは教えておく」
嘗て、自分が憧れていた人が、一度だけ髪を結ってくれた時、そう呼んだ名前で、マリは自己紹介した。
「ありがとう、真希波さん」
そしてレイの言葉は、その人の笑顔までフラッシュバックする。
その思いを託してくれた憧れの人と、何も言わずにその思いを遂げるために、傀儡となってくれていた恩師。
(ま~ったく。我ながら、女々しいにもほどがあるにゃ)
だが悪くなかった。その二人のおかげで、自分は今ここにおり、レイがここまで強くなって自分の横にいる。
「……既に最終防衛ラインを突破された。ここでアタシ達が止めなきゃ、本部がお釈迦。いいかにゃ?」
「了解」
そして、直上に侵入を果たし、ゆっくりと降下してくる使徒に対して、
「目標、補足」
「攻撃開始ぃ!!」
開戦の火ぶたは、切って落とされた。
※
「……シンジを助けたいなら。君を受け入れるしかない、と言う事かな?」
『今のあなたは死んではいませんが、肉体を行動させることは出来ません。あくまで、魂がまだ死んでいないというだけです』
「受け入れれば……」
『ええ。ボクに……使徒になります』
「いいだろう。やってくれ」
そう即答したことに、思わずタブリスはたじろいだ。
『いいんですか?あなたはそれで……』
「それしか方法がないのなら、やってくれ」
『それでもすぐには無理です。先ほども言った通り、魂のかけらしかないボクでは、相当の時間が……』
「何年かかってもいい。君の力が必要だ、タブリス」
※
「やっぱ、距離が遠すぎる。接近するから、援護ヨロシコ!」
「了解」
レイはそう言うと、弧を描くように移動し、距離を取りながら射撃攻撃を続行する。
「よっと」
そしてマリは、足元に会ったウェポンケースから、ニードルガンを取り出す。
「即席のタッグ戦だけど、いい感じだ…にゃ!!」
そして一気に使徒へと肉薄し、
「ゼロ距離ならば!!」
肩のニードルガンも含めて、一斉に打ちかけるが、全てATフィールドに阻まれ、
「くぅっ!!」
そのATフィールドを一点に反転させられ、一気に吹き飛ぶ。
吹き飛んだ弐号機に対して、使徒が追撃を加えようとするが、
「させない!」
今度はレイが打ちかけながら、使徒へと接近戦を挑む。
レイとて、それが無謀なことは解っているが、弐号機への攻撃を僅かでも逸らすつもりなのだ。
使徒は煩わしいとばかりに、ベルトアームであしらおうとするが、レイは射撃を併用し、攻撃の軌道を僅かだか逸らし、被弾を回避し、
「そこ!」
浮遊している使徒の下に滑り込みながら、真下からありったけを打ち込む。
無論、ATフィールドに全て遮られているが、
「うぉりやあああああ!!」
その間に体勢を立て直したマリが、再び肉薄し、
「隙ありいいぃぃ!」
一気にコアに向けて、プログレッシブナイフを突き立てようとするが、コアの強固な防御膜で防がれてしまう。
「しまっ!!」
そして弐号機に向けて、今度は使徒がゼロ距離で目から破壊光線を放つ、だが、
「え?」
間一髪で、零号機に吹っ飛ばされ、難を逃れる。
「レイ!!」
だが代わりに零号機が被弾し、もんどりを打って吹っ飛んでしまう。
辛うじて防御していたようだが、
「返事して、レイ!」
マリからの呼びかけには反応がない。
「コイツ〜。私の可愛い妹弟子によくも……」
一方、指令室では、
「零号機は!?」
「損傷率軽微!ですが、パイロットに意識が有りません!!」
レイの状況を確認するも、戦況に芳しくなさから、重たい空気が張り詰める。
「初号機は!?」
その打破の為に初号機の準備を急がせるが、ミサトの言葉の後すぐにブザー音が響く。
「どうしたの?」
「さっきから何度やっても、ダミーとの接続ができないわ」
その表情から、リツコですら原因が解らないのが見て取れた。
「このままでは、初号機は……」
マヤの芳しくない表情を見て、ミサトは表情が晴れぬまま指示を出す。
「とにかく作業を続けて、それと零号機パイロットの意識回復!急いで!!」
現時点では、初号機は頼れないと判断し、今ある戦力で対応する。
「……冬月。少し頼む」
それを半ば傍観していたゲンドウが、徐に立ち上がり、指令室を後にする。
「やれやれ、使うっきゃないか……」
そしてマリは、どっこいしょと、弐号機のエントリープラグ内で立ち上がる。
「……悪いね、レイ。教官の教え、私も守れないかもしれない」
眼鏡を直しながら、マリは使徒を見据え、
「モード反転。裏コード、ザ・ビースト!」
その言葉と共に、弐号機の変異が始まる。
拘束具が外れ、人を捨てた姿へと徐々に変貌していく。
「レイ……あんたほど……、あ、タシ、つ、よくないから、さ……。生きる、覚悟……最後まで、持てない……。そのかわり……」
プラグ内で言いようの無い苦痛と、高揚感と、闘争心と、そう言ったすべてがマリの感情を戦闘へと特化させていく。
そしてマリの眼が怪しく光り、ともに弐号機の獣化形態が解放されていく。
「人も、命も、全部捨ててでも、こいつを……」
そして、跳びあがると同時に使徒のATフィールドを破りながら再び肉薄する。
「倒おおおおおぉぉぉぉす!!!」
※
『……なんでボクを信用するんですか?本当は、あなたを乗っ取るかもしれないのに』
「それができるなら、当の昔に乗っ取ってる。それに、シンジを助けたい思いにウソはない。なら、別に乗っ取られたっていい」
『曲がりなりにも、ボクは使徒です。なんでそう言えるんですか』
「……君の眼だ」
『え?』
「どうしようもなく、途方に暮れている。助けたい大切な存在がいるのに、途方に暮れている。戦場で、よく子供を連れた親が、そんな眼をしていた。非科学的だが、今の君はまさにそんな感じだ」
『……すごいな、あなたの言う通りです』
「だから、君を助けたい。それがシンジを助けることにもなる。ま、そのために君の力を借りるんだから、助けるとは、少し違うな」
そう言って、リュウジはタブリスの肩に手を置く。
「俺を侵食してくれ。それが、どうなるかはわからないが、その力で必ずシンジを助ける」
そして、タブリスのぬるい涙が頬を伝った。
※
「う……うぅ……」
レイはプラグ内でようやく目を覚ます。
「……ハッ!マリ!!」
レイの視線の先では、まだ弐号機は立っていた。
満身創痍の状態で。
「お、お目覚め、かにゃ?」
「マリ!」
レイは直ぐに理解した、どう戦ったかは解らないが、自分に攻撃が及ばないように、マリは自分を守っていたのだ。
「……どうして」
「は、ハハ、……理由なんて、ないよ。……なんとなく、かにゃ」
レイが無事なのを確認したかのように、マリとの通信が途絶え、弐号機が倒れ伏した。
「くっ!」
その弐号機に、使徒が止めを刺そうとしたのを見て、レイは今度は弐号機を抱きかかえて横にとんだ。
その間も、レイは使徒を睨み付けている。
そして、
「……葛城一佐、聞こえますか?」
『レイ、無事なのね?』
「ハイ、ですが……」
『わかってる、あなた一人では勝ち目はない、だから……』
「私が時間を稼ぎます。この人も含めて、みんな避難してください」
そういいながら、弐号機を緊急回収口に優しく横たえた。
『何を言っているの!?命令よ!!今すぐ退却しなさい!!』
「碇君と、式波さんを頼みます。それと、皆さんもご無事で」
『待ちなさ……』
レイは相互リンクを切り、素手で使徒と、いや眼の前に迫りくる死と対峙する。
(『生きて帰る』という約束は、申し訳ないが出来ない)
(私ができる約束は、『最後まで生きることを諦めない』という事だけだ)
そして改めて、リュウジと嘗て交わしたあの約束の困難さを、身を以て実感する。
「マリ、ごめんね。せっかく私のこと守ってくれたのに。……ありがとう」
そして、使徒へと挑む。
「レイ!!やめなさい!!レイ!!!」
指令室では、ミサトが悲鳴にも似た声で、レイへ通信を送るが、まったく応答はない。
その間にも、零号機は目を思わず逸らしたくなるような戦闘を続ける。
「零号機!両腕破損!!」
「腹部を貫かれました!!もう持ちません!!!」
それでも残った脚を使いながらも、懸命にあがく。
「……レイ」
だが、結果は誰が見ても明らかであった。
その両足すら、無残にもベルトアームで刈り取られるかのように切断され、行動不能となる。そのまま身動きのできない零号機が、半ば締め上げられるように持ち上げられ、使徒の頭部と思わしき箇所がグロテスクに開くと、そのまま捕食されてしまった。
「初号機は!?」
「ダミーシステムのコンタクトが未だできていないわ。言いたくないけど……状況は最悪よ」
だがその最悪な報告の間にも、
「目標の攻撃!第3基部に直撃!!」
「最終装甲版融解!!」
「零号機を捕食したことにより、目標の信号が零号機に書き換えられています!このままでは、自爆機構が作動しません!!」
さらなる最悪へと、状況は刻一刻と変わっていく。
そして、ミサトが、
『パン!』
いきなり自身の頬をはたく。
そして、
「リツコ、アスカをいつでも連れ出せるよう準備して」
「ミサト?」
「せめて、アスカとシンジ君は死なせないようにするわ。それが、レイの願いでもある」
「かといってどうする気?このままサードインパクトが起これば……」
「初号機のエントリープラグに乗せて、地底湖に沈める。それが恐らく一番安全だから」
今考え付く限りの手で、子供たちを生かす手立てをミサトは指示する。
「……よろしいですか?冬月副指令」
「君らはどうする?」
問われた冬月が、ミサトを含めたこの場にいる全員に問うた。
「……子供たちを生かすために、最後まで務めを果たします」
それを代表するように、ミサトは判然と答えた。
返事こそないが、他の職員の眼も、それに従うことを物語っていた。
「好きにしたまえ」
「ありがとうございます」
ミサトはそう言うと、シンジの病室へ向かうべく、指令室を後にした。
※
『プラグ位置、固定不能!』
『ダミーシステム、接続信号を拒絶!』
『ダメです!リセットが効きません!』
「続けろ。もう一度308からやり直せ」
初号機のケージでは、ゲンドウがなんとかダミーシステムの接続が繰り返されていたが、まったくもって結果は振るわない
「何故だ!何故私を拒絶する?ユイ……」
『碇司令』
その時、ケージ内にゲンドウを呼ぶ声が響く。
ゲンドウが目をやると、そこにはストレッチャーに横たわったシンジを運んできたミサトであった。
『……既に弐号機、零号機は大破しました。申し訳ありません』
そう言ってミサトは深々と頭を垂れる。
『報告も聞いております。ダミーシステムの接続ができていない今、初号機の起動は不可能と思われます。そして、敵目標がリリスへと到達するのも、既に時間の問題です』
そして、頭をあげると、どこか達観した表情でゲンドウを見据える。
『……遺憾ながら、ここまでです。我々の、敗北です』
ゲンドウとて、初号機が起動しない今、いや、ユイが目覚めない以上、これで終わりであると頭をよぎっていた。
「なぜシンジを連れてきた」
『第二の少女とともに、初号機に乗せて、地底湖深くに沈めます。現状では、これがサードインパクトが起こった際に、生き残る可能性のある唯一の方法です』
そういうと、ミサトはシンジを抱きかかえ、エントリープラグ接続部へと歩いて行き、シンジをゆっくりとエントリープラグに乗せた。かつて、父が自分だけを脱出ポッドに乗せた時の様に。
「……なぜそうまでする」
『……いまさらですが、貴方の弟さんの様に、子供たちを守る思いが芽生えたのかもしれません。尤も遅すぎたようですが』
ミサトはエントリープラグを閉めると、ゲンドウに再び視線を向ける。
『碇司令……時期尚早だったようですね』
「……何がだ」
『弟さんを、リュウジさんを殺したことがです。……今でも思わずにいられないんです。あの人がいれば、勝てたかもしれない、って……』
先程ミサトが自分の頬を叩いたのは、そんな甘ったれた考えを自分の頭から叩き出すためだったのだが、一度思ってしまうと、拭うことなど不可能であった。
「もしもの話など無意味だ。すべては、起こるべくして起こる」
『……そうですね。ならば、この子ももしかしたら、生きるべくして、生きていけるかもしれません』
ミサトは愛おしそうに、エントリープラグを撫でる。
『葛城一佐!目標が、ターミナルドグマ第七層を通過!間もなく指令室まで到達します』
その時、青葉から通信が入り、いよいよという時が来たことを二人は察した。
「非戦闘員は退避!アスカは?」
『今、赤木博士が向かっています!』
その時、
「……え?」
ミサトの横で、勝手にエントリープラグが挿入された。
ゲンドウが操作したのかと思い、視線を向けるが、彼も思わぬ出来事に、若干の驚きの表情を浮かべていた。
「……一体」
そして、今まで全く起動する様子を見せなかった初号機が、徐々に動き出していった。
「まさか……シンジ君!?」
『ミサトさん、とうさん、逃げて!』
シンジの声が響き、初号機が遂に起動した。
場面が目まぐるしく変わり、読みづらかったかもしれません。
戦闘中は、エントリープラグ内、指令室とよく変わる上に、リュウジの精神状態というか、魂の状態の描写も入れましたので、さらに目まぐるしくなってしまいました。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
誤字脱字などございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。
これからも応援よろしくお願いします。