新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
シンジ君は原作より明るい少年として書きたいと思います。
もっとも新劇場版ですと、破までは結構明るくなっている気がします。
「「来るんじゃなかった」」
炎天下の中、二人は同時に呟いた。
シンジは電話を切りながら、リュウジは缶コーヒーを飲みながら。
「どうする?これから」
「シェルターに行きましょう。ええっと、ここからだと近いのは……」
シンジが周辺のマップを確認しているのを尻目に、リュウジは兄が送ってきた手紙と、入っていた写真を見た。
「…いやシンジ、できればネルフに行った方がいいと思う」
「え?でも……」
「詳細はわからないが、ネルフは曲がりなりにも軍事組織だ。ならこの辺りの建物では一番安全だと思う」
「ジオフロントですよね?でもどうやって……」
その時、シンジの目には暑さで歪む景色の中に幻が映った。
「…どうした?」
「あ、いえ何でも。うわ!!」
突如発生した爆音にシンジは耳を塞ぎ、リュウジは音の方向に鋭い視線を向ける。
(何だ?この感覚……)
何か巨大な物体の気配と、懐かしい硝煙の匂いを感じ、
「来い!」
シンジの手を引き、自身の後ろに下げた。
鋭く睨むその先には、山の合間から複数のVTOLが現れ、何かに照準を合わせているように見える。そして……
「何だありゃ……」
黒い人型の何か、としか彼には言えなかった。
「お、おじさん!!ここヤバイですって!やっぱりシェルターに!!」
「そうらしい!」
すぐさま荷物を抱え、その場から二人は駆け出した。
(あれと関係があるのか?兄がこの子を呼んだのは…)
背後ではVTOLからの攻撃を受けているそれが、逆に一機を墜落させ、
「なんなんですか!?あれ!!」
「俺も聞きたい!」
フワリと浮かぶと、墜落したVTOLの上に着地し、
「不味い!!」
爆音がする直前に、リュウジはシンジを抱え路地裏に飛び込んだ。
「なんなんだ、まったく」
「おじさん!血が…」
爆風はしのげたが、飛び込んだ際に、怪我をしたらしい。観るとシンジの白いシャツにも血が染み込んでいる。
「不味いな。結構切った」
その直後、激しいエンジン音が二人の耳に響くと、
「ごめーん!お待たせ!!」
その路地裏の出口の真ん前に停車し、助手席をこちらに向けて開けているその女性を確認すると、
「すぐ出せ!」
シンジを抱えて、助手席に飛び込んだ。
言われるが早いが、運転手の女性、葛城ミサトはすぐさまアクセルをめいいっぱい踏み込んだ。
「あなた、シンジくんの保護者?」
「兼付き添いだ」
「悪いけど、あなたはネルフ本部には連れて行けません!」
「とりあえず!ここから離れましょうよ!!」
「それもそうね。捕まって!」
ハンドルを激しく切りながら、爆音はどんどん遠くなっていく。至近距離にいた怪物の気配も遠ざかっていくのを感じる。リュウジは抱えていたシンジを後部座席に座らせながらも、その目は、変わらず鋭く怪物の方を見ている。
「VTOLが離れていく?」
先ほどまで怪物の周囲を飛んでいたが、蜘蛛の子を散らすように離脱していく。
「不味い!N2地雷を使う気だわ!!」
その言葉の意味するところにリュウジの表情も硬くなる。
「どこか遮蔽物に止めないと…」
「もう遅い。すぐに止めて衝撃に備えろ!」
リュウジはシートを倒しシンジを引き寄せると、停車させたミサトの頭も庇いながら伏せた。
「ちょ、ちょっとあんた…!っぐぅっっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
直後凄まじい衝撃が駆け抜け、ミサトの車が石ころのように転がった。
転がりながらもリュウジは考えを巡らす。
N2兵器は彼が知りうる限り、もっとも強力な威力の兵器だ。
(もし、それに耐えたとしたら?)
それは現在人類が持ちうる兵器では、まず倒せないことを意味する。
漠然としているが、その嫌な気配を彼は感じていた。
その考えを巡らせているうちに、衝撃は収まったようだった。
「シンジ、無事か」
「なんとか。口の中シャリシャリしますけど」
俺もだ、と言いながらリュウジは横転した車内を見渡す。
「あぁ、申し訳ない。いきなり抱きかかえるような真似をしてしまい」
「いえ、緊急時ですもの、仕方ないわ」
しばらくして、三人はようやく車内から脱出し、
「「「せえのっ!」」」
横転した車を戻した。
「ええっと、その、葛城さん?」
「ミサト、でいいわよ。よろしくね。碇シンジ君。と、なたは……」
「碇リュウジです。彼の父の弟。叔父に当たります」
「へぇ〜、シンジ君の叔父。……て、ちょっと待って!シンジ君の父親の弟って……」
リュウジの言葉の意味するところに、流石の彼女も驚きの表情を浮かべる。
「ええ。つまりは碇ゲンドウの弟です。兄がいつもお世話になっております」
軽くリュウジはお辞儀をしながら、ミサトの表情を見る。
「気にしないでください。こっちはただの、定食屋のオヤジです」
若干ミサトの表情が、硬くなっているのを見てそう言うが、いきなり上司の弟が現れたら、多少は緊張するのも無理ないことである。
だがそれよりも、ミサトには気になることがあった。
「あの……失礼ですがおいくつですか?」
「へ?あぁ、兄とは年子なので、今年で47ですが、何か?」
(4、47!!)
その驚愕の表情に、
「やっぱり、驚きますよね」
シンジだけが察した。
「そ、そうよね!私の感覚おかしくないわよね!」
「何ですか。二人して……」
「ミサトさんも、とてもおじさんがアラフィフに見えないってさ」
「何を言う。年相応だ」
側から見れば彼の見た目はそれこそ、ミサトと同い年か、少し年上、と言った具合である。実際ミサトも少し年上ぐらいに思っていたのだ。
「ちなみに時間はあるんですか?我々を迎えに来る時間すら、かなり遅れていたようですが?」
「そうだわ!ごめんシンジ君、時間がないの。急いでくれる?」
「いいですけど。おじさんはどうなるんですか?」
「え?」
「さっき、おじさんは連れていけないって」
そうだった。とミサトはリュウジを見て思い出す。
「貴方のお立場はお察しします。その上で、私は兄に会いに行きたいんです」
「その、碇司令とは……」
「15年来、会っていません。ですから、今回はいい機会だと思いまして」
「いい機会?」
「ええ。ですがまぁ、……」
そうい言うと、リュウジは半壊しているミサトの車を見て、
「取り敢えず、動くか確かめません?」
その後、ミサトとリュウジは車をできる限り点検、確認し、運転には問題ないと結論づけ、ネルフへ急行した。
※
「大丈夫なんですか?私をネルフに入れて」
ネルフに到着し、内部を移動しながら、リュウジはミサトに問う。
「他のシェルターに連れて行く時間もない、その腕の怪我も満足に治療できていない、その上での判断です。それにこう言ってはなんですが、それなりに融通を通せる立場にもおりますので、ご心配なく」
リュウジはミサトの襟を見る。
(この歳で二佐か、エリートかつ努力家だな)
と思われるが、
「ミサトさんさっきここ通りましたよ」
シンジによるツッコミが入る。
「あ、あっれぇ?おかしいわね」
「誰か連絡取ったりした方がいいんじゃ……」
「だ、大丈夫、大丈夫。確かこっちに行けば」
「そこは先ほど、行きましたね」
「うぐ!」
リュウジからもつっこまれる。
「私の記憶が確かなら、まだこの辺りで通ってないのは、この先の左の通路ですが」
「そ、そうよ。ちょうどそこに行こうとしていて……」
そしてその先にあるエレベーターを見て、
「これよこれに乗れば大丈夫」
大丈夫か、とシンジ、リュウジ両名は同時に溜息をついた。
だが一応は、正解であったらしく、急に止まった階にて、開いたエレベーターの入り口に金髪の白衣を着た女性が待ち構えていた。
「遅れた挙句、部外者を入れるなんて。何を考えているの、葛城二佐」
「ごめんリツコ!それがさぁ……」
ミサトはリツコの耳に顔を近づける。
(シンジ君の付き添いなんだけど、碇司令の弟だって言うのよ)
小声のミサトのその言葉に、さすがのリツコも目に驚きが浮かぶ。
(碇司令の?そんな話聞いたことないわよ)
(でしょ?一応シンジ君は叔父さんって言ってるけど、諜報部からは、叔父と暮らしてるなんて報告なかったし)
そこまで聞いてリツコも合点がいった。
この謎の叔父さんが、本物かどうか。本物であれば、適当な理由をつけて、後で追い返せばいい。もし偽物であれば、
(あの第三の少年に近づいた理由を問いただす、と言う訳ね)
(そ、もし他のシェルターにおいてきて、雲隠れでもされたら厄介かなと思って)
こう言う時のミサトの咄嗟の機転の利きは、リツコも流石だと思う。
(わかったわ、いい判断よミサト)
(まっねー。取り敢えず行きましょ)
確かめるには碇ゲンドウ、本人に会わせるのが一番である。
「お待たせしました。貴方が碇シンジ君ね。赤木リツコよ」
よろしく、とシンジに手を出す。シンジも挨拶を返し、握手をする。そして、隣にいたリュウジにも、
「赤木リツコです。いつも碇司令にはお世話になっています」
「こちらこそ、あの無愛想な兄がお世話になっております」
(……若いわね)
リュウジに対するリツコの第一印象は、ミサトと同じであった。
「あら、怪我をなさってるんですか?」
応急処置した右腕が、リツコの目に入った。
「大したことはありません。ああ、シンジの服についているのは、私の血ですから、ご心配なく。それよりも、早く兄に合わせてください」
確かにシンジのワイシャツには、少なくない血が付着している。だがリュウジは、時間もないんでしょ、とゲンドウの元に連れて行くよう促す。
「ええ、こちらです。付いてきてください」
そうして一行は、ゴムボートに乗り何か液体の上を移動したり、薄暗い階段を登ったりしながら、更に暗い部屋にたどり着いた。
そして突如照明が点灯すると。
「うわ!!なんだこれ!」
「…………」
シンジは驚き、リュウジは無言のままそれを見つめる。
(まさか、正気か?)
それを、紫を基調にカラーリングされた巨大なロボットの顔、を見つめながら、リュウジは一つの考えを巡らす。
「人が作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機」
目の前に異様な存在感を出す、エヴァンゲリオンの説明をするリツコの話を聞きながら、
(これが、兄とユイさんが研究開発したもの?)
人伝に夫婦で研究し、義姉がその事故で亡くなった事は聞いていた。
(これを造る事故でユイさんは亡くなった?それとも……)
「久しぶりだな、シンジ」
息子にとっては3年ぶり、弟にとっては15年ぶりの声が響く。
「父さん!」
シンジは目線を上げた先に、3年ぶりの父が映る。
「なんだよ、その髭は」
そこにシンジとは対照的な、実に落ち着いた声が、兄にとっても15年ぶりの声が聞こえた。
「お前、まさか!」
「久しぶりだな、ゲンドウ」
先ほどの息子にかけた言葉を、兄の名を当てはめて返す。
こうして、兄弟は再会した。
リュウジの来歴も、追い追い描いていきたいと思います。
ご意見、ご感想、お待ちしております。
誤字脱字ございましたら、お知らせください。
何卒、よろしくお願いいたします。