新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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お盆休みが終わる前に、何とかもう一話投稿できました。

そのせいか、いろいろと詰め込み過ぎて長くなってしまいました。


Q-己の一部-

「……任務報告」

 

「………」

 

「繰り返す……任務報告」

 

「………」

 

『パンッ!』

 

平手がリュウジを弾く音が、暗い一室に響いた。

 

「任務を……報告しろ」

 

半ば貼り付けにされているリュウジに、碇ゲンドウの顔が迫る。

 

「……第三の少年を確保。外傷はなし」

 

「当然だ」

 

ゲンドウはそう言うと、リュウジの首を締めながら、無理やり自分と視線を合わさせる。

 

「お前は、このために生かされた。わかるな?」

 

「……はい」

 

そしてゲンドウは乱暴に、リュウジから手を離す。

 

「故に、もはや用済みの貴様を殺すことに、私は何のためらいもない。にもかかわらず、お前は生きている。この意味が解るな?」

 

「……はい」

 

そういうと、貼り付けにされているリュウジを覆うように、ガラスのケースが被さる。

それを見たゲンドウは、その場を後にしようとする。

 

「……今日、私を見た人間が……、私を、リュウジと呼びました」

 

その言葉を聞いたゲンドウは、足を止めた。

 

「……私は、……リュウジなのですか?」

 

ゲンドウは踵を返し、リュウジを見る。

 

「……お前が何者か、それはお前が良く解っている筈だ」

 

「……はい」

 

「……なんだ?」

 

「……駒です」

 

「誰のだ?」

 

「……貴方のです」

 

「では聞く……お前はリュウジか?」

 

「……いいえ」

 

リュウジの虚ろな目は、より闇をました。

それを見たゲンドウは、再びその場を去るべく歩き出した。

それと同時に、調整槽の中にLCLが満たされていった。

そして部屋を出ると、冬月が待ち構えていた。

 

「……どうした?」

 

「……パリが奪還された」

 

「考えていたより早いな」

 

「ヴィレではない。別の組織だ」

 

「……なに?」

 

冬月の言葉に、ゲンドウにも若干の驚きが現れた。

 

「行方不明になっていた、参号機と四号機の合成された機体が使われている……我々のシナリオにも、ゼーレのシナリオにもない事態だ」

 

「だが、パリの奪還は予定調和だ。違うか?」

 

「それはそうだが……」

 

「ならば、今我々が動くことはない。仮に奴の仕業だとしても、もはや契約の時は目前だ」

 

そういうと、ゲンドウは冬月を置いて、その場を後にした。

冬月はと言うと、打って変わって、ゲンドウが出て行った部屋に入った。

 

「……そう遠くないな、リュウジ君。我々の、第三局目は……」

 

LCL調整槽内で眠っているリュウジをその眼に映しながら、冬月は静かに呟いた。

 

 

「はっ……」

 

シンジは目を覚ますと、ゆっくりと上体を起こす。自分が病室のような部屋におり、ベッドで寝ていたことを確認すると、目の前にいる人影に気が付く。

 

「……綾波?」

 

シンジが見慣れた、白を基調としたプラグスーツとは正反対の黒いプラグスーツを着ていたが、そこには確かに綾波レイがいた。

 

「綾波!!」

 

シンジはベッドがら飛び降り、レイに抱き着いた。

 

「よかった!君は、君は無事だったんだね?」

 

そして一層、強く抱きしめた。

 

「ボクは……君を守れたんだね」

 

そして改めて、シンジは目の前のレイを見た。

 

「守った?……何が?」

 

そう言われたシンジの表情が固まった。

 

「何がって……、14年前、第十の使徒に取り込まれた君を、ボクは……」

 

「……知らない」

 

レイの無表情に、それが決して悪ふざけではないことが、シンジにも解った。

 

「……言ったじゃないか。君と……一緒に生きようって、君が、好きだって」

 

「……すきって、なに」

 

そんな、とシンジの口から出かかったが、なんとか笑顔を振り絞った。

 

「……大丈夫だよ。生きていれば、生きていれば何とかなる。忘れたっていいんだ、一緒に、また思い出を作っていこうよ」

 

そして、再び優しく抱きしめる。

 

「大丈夫。君のことは、ボクが守るから」

 

自分に言い聞かせるように、何度も大丈夫とシンジは呟いた。

ただ、レイは何のことか解らず、終始キョトン、と言う表情を浮かべていた。だが、気付けば、レイはシンジの背中を優しくさすっていた。

 

「……ありがとう。綾波」

 

「…………こっち、ついてきて」

 

その言葉に従い、シンジは病室を出て、ゴンドラに乗り込む。

そして、見覚えがありながらも、変わってしまった光景が目に映っては、また次の変わってしまった光景が映っていく。

 

(そんな……これが、ネルフ本部だなんて)

 

これも、自分が世界を滅ぼしたためなのか。その一端を目の当たりにしたシンジは、言葉を失った。

嘗て三体ものエヴァが格納されていたドックも、最初に初号機を見て、父と3年ぶりに再会した場所も、さみしさが支配しているばかりだった。

 

「……本当に、世界は崩壊したんだ」

 

今更になって、自分がどれだけとんでもないことをしてしまったのかを実感した。

 

(皆からあんな扱いを受けたのだって当然だ。……いや、本来ならあの場で殺されたっておかしくなかった。このチョーカーだって……)

 

そういって首に手をかけたが、そこには装着されたはずのチョーカーがなかった。

 

「あれ?そういえば……ね、ねぇ」

 

シンジは前を歩くレイに声をかけた。

 

「この首についてたチョーカーは、君が外してくれたの?」

 

「違うよ」

 

すると、第三者の声が、シンジの耳に届いた。

 

「リュウジさんが、ここに来る前に外して、破壊したんだ」

 

そこには、目鼻立ちが綺麗に整った、銀髪の少年が立っていた。

 

「おじさんが?……そう言えば……」

 

そこでようやくシンジは思い出した。

いきなり目の前に現れた叔父が、自分をいきなり気絶させたことや、気が付けばアスカとミサトを殺そうとしていたこと。虚ろな目で、アスカに銃口を突き付けていたことを。

 

「ここにいるの?おじさんは……」

 

「彼女と共に船に乗り込んだ人物が、君の言うおじさんなら、彼はここにいるよ」

 

「……そっか」

 

リュウジにも、この14年間に何かがあったのかもしれない。でなければ、ミサトやアスカにあんなことをするはずが無い。

そう考えていると、目の前の少年が近づいてくる。

 

「……そういえば、君は?」

 

「ボクはカヲル、渚カヲル。君と同じ、運命を仕組まれた子供さ」

 

「えっと……。ボクはシンジ、碇シンジ、よろしく、渚君」

 

そういって手を差し出したシンジに、カヲルは目を丸くした。

 

「……どうしたの?」

 

「いや……。カヲルって呼んでくれないかい?シンジ君」

 

そう言って、カヲルは握手に答えた。

 

「解った。よろしく、カヲル君」

 

「さ、ボクも案内するよ。こっちだ」

 

そう言って案内されたのは、真っ暗で、視界が全く聞かない部屋だった。

 

「ここは?……何も見えないよ」

 

そのシンジの言葉に反応したのか、照明が点灯し、いくつもの巨大な管に繋がれた、カプセルのようなものが靄の中から現れた。

 

「これは……一体」

 

「新たなるエヴァンゲリオン。……その第13号機だ」

 

スポットライトが、人影を照らし、

 

「父さん?」

 

それが己の父であることを、シンジに認めさせる。

 

「時が来たら、その少年と、このエヴァに乗れ」

 

「……カヲル君と?」

 

「……話は終わりだ」

 

そう言って、ゲンドウは立ち去ろうとするが、

 

「……いやだ」

 

シンジの静かな拒絶に、足を止めた。

 

「ボクは、父さんのためには、エヴァに乗らない」

 

シンジはゲンドウを見据えて、力強く言い放った。

 

「ボクが14年前にエヴァに乗ったのは、父さんの為じゃない、世界を守る為でもない。ボクが守りたい人を守るためだ。その結果が、こんな有様なのは、許されないことだとは思う。でも父さんも、世界のために戦ってきた訳じゃないんでしょ?だったら、父さんの都合なんかじゃ、ボクは絶対にエヴァに乗らない」

 

そこに、もはや父の顔色を窺う、気弱な少年の姿はなかった。

己の、確固たる意志を持つ、碇シンジと言う一人の男がそこにはいた。

 

「……そうか」

 

だからこそ、ゲンドウは用意周到であった。

 

「……なら、もはやこいつは必要ない」

 

その時ゲンドウの横に、何かがせり上がってきた。

それはLCL調整槽であり、その中には、

 

「おじさん?」

 

眠っているリュウジが見て取れた。

 

「お前に13号機に乗ってもらうのは、確かに私の目的のためだ。それが成就されない以上、これも最早用はない」

 

その直後、調整槽内が沸騰したかのように、気泡に満ちていき、帯電しているかのような音が響き始めた。

 

「なにを……」

 

「……っ……!!」

 

すると、リュウジが激しく痙攣を始めたかと思うと、

 

「ぐぅっ!?ぅうっ!!ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

悲痛な叫びが、シンジの耳をつんざく。

リュウジの見るも絶えないその姿に、シンジはたまらず目をつぶり、顔を背けた。

そして、葛藤した。このまま自分が拒否すれば、ゲンドウの思い通りにはならない。そしてリュウジは、恐らく洗脳されている。であったとしても、アスカやミサトを殺そうとした。通常のリュウジではないとしても、自分の大切な人を殺そうとした。

歯を食いしばり、シンジは懸命にリュウジの叫喚に耐えた。

 

「――――もうわかったよ!!!」

 

だが悲鳴にも似た懇願を、シンジはせざるを得なかった。

シンジにとって、リュウジは余りに、心の大きな一部となりすぎていたからだ。

 

「わかったから……わかりましたから………、あなたの、言う通りに…しますから」

 

そしてシンジは敗北を認め、膝と、両手を地についた。

それはあたかも、暴虐の王に人質を取られ、忠誠を尽くす戦士を彷彿とさせた。

 

「エヴァに、……乗りますから。……何でもしますから。……おじさんを、殺さないで」

 

シンジは震える声で、そう言った。言わざるを得なかった。

だがそのシンジの姿を見てもなお、

 

「……話は終わりだ」

 

ゲンドウは、冷たく言い放つと、その場を後にした。

 

「ぅう……うう……」

 

「……シンジ君」

 

涙が止まらないシンジの肩を、カヲルは優しく抱くしかなかった。

 

 

ヴンダー、ブリッジ内にて、元ネルフメンバーや、他のヴィレのメンバーが、先程の記録映像を見ていた。

リュウジによってミサトの腕が折られる様子や、リュウジの拳と蹴りの雨に、アスカが成す術なく一方的に打ちのめされる様子が、記録されていた。

特に、ヴィレに入った、まだ幼さが残る、北上ミドリ、多摩ヒデキ、鈴原サクラは、あまりに凄惨な映像に、直視できていなかった。

特にサクラは、リツコが、

 

「このままじゃ、あの二人は殺される」

 

の意味をいやと言う程理解した。

 

「……もういいでしょ!」

 

ミドリがこれ以上映像を見るのが我慢できず、無理やり映像を止めた。

 

「で、そろそろ教えてよ!疫病神を連れ去った、こいつは何者なの!?」

 

無論何者かを知っているのは、この場では、高雄、マリ、アスカ、ミサト、リツコ、日向、青葉、マヤの、元ネルフメンバーと、彼の教え子である。

だが映像を見ても、彼らは口を閉ざしているばかりであった。

 

「ねえってば!!」

 

ミドリが食い下がるが、それでも誰も答えられなかった。

彼らは決して、凄惨な映像に打ちのめされているわけではない。

嘗て理想とし、憧れていた、碇リュウジの変わり果てた姿に、ショックを隠せないでいるのだ。

 

「……どう、思う……」

 

青葉がやっと声を上げた。

リュウジを知る他の誰かが、この映像に映る男が、リュウジじゃないと、否定するのを願っているかのようだった。

 

「……顔は、……紛れもなく、……リュウジさんだと思います。マギコピーも、99.0%、碇リュウジと言う分析結果です」

 

マヤがなんとかそう答える。

 

「だけど……、14年前に、リュウジさんは……」

 

「使徒に浸食されていることを考えれば、生きていたとしても不思議じゃないわ」

 

日向の疑問を、リツコがなんとか冷静に返す。

 

「実際、パターン青も微弱ながら艦内から検出されている。時間をかけてネルフに無理やり再生されて、その間に洗脳紛いのことをされて、戦闘意識のみが残った状態……と言ったところかしらね」

 

そして、情報が少ないながらも状況を鑑みて、リツコが分析する。

 

「でも、もしかしたら、クローンとかの可能性も……」

 

「……それはない」

 

高雄がマヤの言葉を否定する。

その高雄の言葉に、マリも同意するように頷いた。

 

「ボスの戦闘技術は、ボスのクローンを作ったからと言って、再現できるもんじゃない。長年の実戦を経て、培われたものだ」

 

「クローンに記憶を埋め込むことは出来る。でも、その通りに技術を発揮できるわけじゃない。あの高度な戦闘技術は、長年の戦闘経験がなきゃ無理だにゃ」

 

高雄とマリは、映像内のリュウジの戦闘の様子から、本人にほぼ間違いないという見解だった。

 

「あの……高雄機関長。そろそろ教えてください。この人は、何者なんですか?」

 

ヒデキがいつもの高雄と違う様子をみて、恐る恐る問うた。

 

「……碇リュウジ。ネルフ最高司令官、碇ゲンドウの弟で、第三の少年、碇シンジの叔父だ」

 

リュウジのことを知らない、ミドリ、ヒデキ、スミレ、は驚いた表情を浮かべた。

 

「なら、こいつも敵ってことでしょ?何があったか知らないけど……」

 

「少し黙ってろ。北上」

 

そこに青葉が口を挟んだ。

 

「なんなんですか!私は、あの疫病神と、その家族に、人生滅茶苦茶にされたんですよ!!だったら、こいつも……」

 

「この人が生きていれば、世界はこんなことにはならなかったんだ!!」

 

「青葉!!」

 

さらに、高雄が声を張り上げる。

 

「……お前も頭冷やせ」

 

そこで、青葉はハタと気付いた。

そして首から折られた腕をつる、ミサトが無言でモニターを見ているのが視界に入り、

 

「申し訳ありません」

 

静かに謝罪した。恐らく、ミサト本人が、一番そのことを痛感しているからだ。

 

「……事実よ。高雄機関長」

 

だがミサトは重い口を開いた。

 

「艦長……」

 

「14年前、ネルフ、ゼーレに対抗しうる力を、この男は持っていた。彼が死んだからこそ、碇ゲンドウも、ゼーレも、計画を再開することができた。それは紛れもない事実」

 

「ですが、今は敵となっています。それもまた事実ではないですか?」

 

スミレは冷静に、ミサトに具申する。

 

「……そう簡単に、割り切れるもんじゃないんだよ」

 

高雄が頭を抱えながら、静かに呟いた。

 

「この艦にいるベテランには、俺や真希波を含め、長年この人の教えを受けた人間が少なくない。……特に艦長と式波は、ボスの最後の弟子だ」

 

高雄の言葉に、ミサトとアスカにそれぞれ視線が向く。

 

「……言っとくけど、それであいつに躊躇して負けたなんて思わないでくれる?」

 

沈黙を守っていたアスカが、口を開いた。

ミサトと違って、『呪縛』を受けた彼女は、怪我が残りつつも、早くも完治しつつあった。

 

「単純に、こいつの戦闘能力にアタシが及んでないだけ。それこそ、今のリュウジに勝てるとしたら……」

 

そう言いながら、アスカは映像を進め、

 

「……こいつでしょ?」

 

ジュニアとリュウジが戦う映像が流れる。

 

「直接戦ったんでしょ?どうだったのよ」

 

今度はアスカが高雄に質問した。

 

「……見た目通りの年齢じゃないだろう。でなければ、これ程の戦闘技術は説明できない」

 

「アンタは?マリ」

 

今度はエヴァ同士で直接戦ったマリに問う。

 

「ホントかどうか解んにゃいけど、エヴァの搭乗二回目ってのを真に受けるなら、アタシにも姫にも勝ち目ゼロだにゃ」

 

「いったい、あのエヴァはなんなんですか?新しく作られたんでしょうか」

 

ヒデキが、疑問を呈する。

 

「リツコ、分析の結果は?」

 

「反応は、四号機のものと酷似していたわ。だけど、私の記憶が正しければ、参号機のパーツも多く使われているように見える。恐らく、四号機をベースとし、参号機を複合させた機体、4+3号機、と言ったところかしらね」

 

「つまり、スペック的には、弐号機以上、八号機未満、と言うわけね」

 

「ええ、加えてこの機体から、重力制御の反応があった。空を飛んで見せたのも、重力制御機構を搭載しているから、と推察される。どれほどの性能かは、分析途中だけど、見ただけでは、自在に機体を飛ばすことができるように見える」

 

「で、それを私の目の前で飛ばして見せた、あのガキは?」

 

マリの質問に、リツコは首を振った。

すなわち、正体不明と言うわけだ。

 

「でも、現時点において、碇リュウジと正面切ってやり合えるのは、この少年しかいない」

 

「なら、悔しいけど、こいつを探して、リュウジの相手をしてもらいましょ」

 

「なんでこんな得体のしれない奴を探さなきゃいけないのよ、碇リュウジが強いってのは解ったけど、数で戦えば……」

 

「なら、その人数分の死体袋が必要だニャ」

 

北上のド素人意見を、マリがため息交じりに否定した。

 

「……どうしてよ」

 

「人に向かって、引き金を迷いなく引けなければアウト。アンタにそれできんの?」

 

「バカにしないで。訓練じゃあ……」

 

訓練、と言う言葉に、マリは吹きだした。

 

「真希波、少し押さえろ」

 

「だ……だって……、そんな真顔で……訓練て……」

 

高雄がマリを諌めるが、マリは笑いが止まらない。

 

「北上。練度の問題もあるが、何より碇リュウジがどういう存在か、お前らはまだ理解していない」

 

沸点に差し掛かっているミドリを諌めながら、高雄は話し始めた。

 

「14年前。既にボスは、使徒に浸食されていた。恐らく、体自体は既に使徒その物だろう。そしてその浸食されたボスは、この地球上において、最も優れた戦闘技術を身に付けた人物だ。―――つまり……」

 

「アタシと同じく人間サイズの使徒で、アタシ以上の威力を持つ最悪の兵器、ってことでしょ」

 

アスカが冷めた表情で静かに呟いた。

 

「……それを、ゲンドウ君は自由に操れる、その気になれば、この船ごと壊滅させられる。今の教官を敵に回すってのはそういう事なの。生半可な人数をぶつけても、全滅するだけ」

 

マリがいつになく真剣な表情に戻り、リュウジと事を構える危険性を指摘した。

 

「確かに、今の教官に対抗するなら、癪だけどこのガキを探すのが最適。かといって、それだけにかまけてられない状況なのも確かだニャ」

 

「ええ、既に第三の少年がネルフの手に落ちた今、最悪のケースを想定しなくては」

 

リツコは暗に『フォース・インパクト』を止めることも、決して疎かにできないと言っているのだ。

 

「すぐさま、4+3号機の行方を捜索、それと並行して、ネルフの動向監視を厳とします」

 

ミサトの号令のもと、その場は解散となった。

 

 

「大丈夫かにゃ?」

 

一足先に部屋に戻っていた、口うるさいルームメイトに、アスカは心配されていた。

 

「アタシの体のこと、あんた知ってんでしょ?」

 

「ん~ん~、そうじゃなくって、心の方」

 

そう言われたアスカは若干たじろぐ。

相変わらず、目の前の戦友は勘が鋭かった。

 

「映像見たよ~、よかったじゃん。大好きなシンジ君が、体張って守ってくれたみたいで」

 

「うるさい……」

 

「憎まれ口叩いたのも、シンジ君への罪悪感の裏返しでしょ?」

 

「やめて」

 

「教官があんなになってたのはショックだけどさ。シンジ君も、教官も、絶対アスカこと恨んでなんかないよ」

 

その言葉にアスカは、

 

「アンタに何が解るってのよ!!!」

 

マリの真横に拳を突き立てた。

それでもマリは涼しい顔のままであるが。

 

「アタシは……アタシが、起動実験の時、リュウジのいう事を聞いてれば、リュウジは死ななくて済んだのよ。身体を張って、アタシなんかとの約束を守ったせいで、……リュウジは……」

 

崩れそうなアスカを、マリは優しく抱きしめた。

 

「シンジが、アタシが大好きな人が守りたい人が、目の前で死にかけてた時、……アタシは、何もできなかった……」

 

今の自分が呪いを受けたのは、リュウジの忠告を無視したせいだ。

シンジが連れて行かれたのは、自分が不甲斐無いせいだ。

悔しいのに、悲しいのに、今の体からは、最早涙は出ない。

 

「アスカ……教官は、最後になんて言った?」

 

「……愛してる……ありがとうって……」

 

「シンジ君は、アスカを見捨てなかったから、連れていかれた。アスカのこと恨んでたら、そんなことしないんじゃない?」

 

マリに言われずとも、アスカはリュウジやシンジが、自分を恨むことは無い、と思っている。

だが、

 

『アスカ。……愛してる。……ありがとう』

 

『―――お前、誰だ』

 

同じ声で、同じ顔に言われた真逆ともいえる言葉に、アスカの受けた衝撃は壮絶なものだった。

そして、そんな変わり果てたリュウジを見たシンジの胸中は、どれほど辛いものか。

それでもシンジは、

 

『やめろ!!』

 

アスカを守ろうとリュウジに立ち向かったのだ。

守りたいと言っていた叔父に挑み、アスカを守ろうとしたのだ。

 

「アタシ、……シンジに酷いこと言っちゃった」

 

「なら、シンジ君を取り戻して、謝ろう。きっと許してくれるよ」

 

「リュウジは……もとに戻るかな……」

 

「教官がどれだけ強いか、アスカも良く解ってるでしょ?だから、大丈夫」

 

この時、マリは異なる覚悟をしていた。

 

『……いざという時は』

 

『わかってます。介錯は、是が非でも私がします』

 

『それもあるが……どうか……』

 

『シンジ君の事ですね?大丈夫、任せてください』

 

かつてリュウジとした会話を思い出しながら。

 

(もし……教官が元に戻らなければ、あの人の命は、絶対に私が絶つ)

 

リュウジを殺すのは、他ならぬ自分だ。

シンジにも、アスカにもそんなことはさせない。

アスカを優しく抱きしめるマリの眼には、静かな殺気が宿っていた。




間もなく投稿を始めて一年になるんですね。

なんだかあっという間でした。

初めて二次創作とはいえ、物語を書いてみましたが、本当に難しいです。

そんな私のつたない物語を、読んでくださり、評価してくださる方がいるのは、本当にうれしい限りです。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも応援、よろしくお願いいたします。
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