新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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最近書けば書くほど、こうじゃない、ああじゃないとドツボにはまっていっています。

シナリオは決まっているのに、描写が納得いかない、それの繰り返しです。

これがスランプというやつなのでしょうか。

お待たせして誠に申し訳ありません。


Q-エゴとエゴ-

ヴンダーがパリへの進路を取っている道中。

ブリッジにて、高雄は食事をとりながら、思考を巡らせていた。

 

(剣崎。お前はどうして、あの時ボスを殺した……)

 

未だに解せなかった。

いかにリュウジより、

 

『ゲンドウの指示に従え』

 

と厳命されていたとはいえ、唯一の恩人ともいえるリュウジを、剣崎はどうして殺したのか。

恨んでいないと言えばウソになる。高雄にとってもリュウジはボスと慕う恩師だ。いかに剣崎と親交があったとは言え、その恩師を殺されて恨まなかった訳がないのだ。

 

 

(だが、それで殺さなければ、ボスからの命令を無視したことになる。剣崎にとって苦渋の決断だったことには間違いない)

 

そんな高雄だからこそ、剣崎の苦悩を感じ取り、同情する思いも内在していた。

だがその苦悩を微塵もだすことなく、剣崎は鮮やかにリュウジを殺して見せた。それができたのも、剣崎が最もリュウジから戦闘技術を色濃く受け継いだからだと思うと、高雄は複雑な心境だった。

 

(そしてそれが、俺と剣崎の差、か……)

 

別にリュウジは剣崎を贔屓にしていたわけではない。むしろ、彼は教え子の中で、優劣をつけるようなことはまったくと言っていいほどなかった。

だが事、戦闘技術と言う側面においては、自分と剣崎との差は否が応でも感じてしまう。そしてそれを駆使するための精神も、剣崎は自分より数段上であった。

リュウジの強さはもはや言うまでもないが、剣崎の強さも自分と比べれば段違いなものであった。

 

(ボス、俺は……)

 

「オッサン!」

 

そしてその声で、高雄は思考から引き戻された。

 

「さっきから呼んでたんだけど」

 

高雄の横には、ミドリが立ち、飲料水を突き出していた。

 

「ほら、オッサンの分」

 

「あ、ああ、スマン」

 

頭を掻きながら、高雄は苦笑いを浮かべ、飲料水を受け取った。

 

「しっかりしてよね。『最近』ずっと上の空じゃん」

 

「悪い、悪い。気をつける」

 

ミドリはわざわざ、

 

「最近」

 

と、言葉を濁してくれた。

高雄が上の空になっているのは、あからさまに先の一件が原因なのだが、それを直接言わないのは、ミドリなりに高雄を気遣ってくれているからである。

 

(俺も歳とったな……)

 

「あの……高雄機関長」

 

すると今度は恐る恐ると言った表情で、ヒデキが声をかけてきた。

 

「その、……聞きたいことがあって」

 

「……ボスのことでか?」

 

「……はい。リュウジって人が、強いのは解ったんですが、でもなんでこの人が殺されるまで、ゼーレも、ネルフも動けなかったんですか?」

 

「私も気になってました」

 

スミレもヒデキの疑問に同調した。

 

「碇リュウジが、戦闘面において非常に優れた人物であることは、よく解ります。ですが、戦闘における強さと、権力のような、組織的に大規模な勢力の強さは別です」

 

「そう、それです。どんなに強くたって、ゼーレのような組織には対抗できないんじゃないか、って思ったんです」

 

そのことか、と高雄は言いながら回答した。

 

「単純な答えさ、ボスは、そう言う力も持っていたと言う事だ」

 

サラッと高雄が言ってのけたことに、周囲の眼が見開いた。

高雄にとっては余りに当たり前なことだったので、そこまで説明をしていなかった。だが、落ち着いて考えてみれば、裏から人類、ひいては世界を牛耳れるほどの組織に対抗できる力を、一個人がもっているということは、確かに異常な話ではある。

 

「まってよ!あり得ないっしょ!そんなの」

 

だからこそ、ミドリはそう声を荒げた。

 

「そんなの、一体どうやって」

 

ヒデキも、自分の疑問の答えが、突拍子もないものだったので、さらなる疑問を持っていた。

 

「始まりは、セカンドインパクトだった。当時世界は混乱の極みだった、……ま、今もそうだが、その時はまだ、辛うじて国家が組織として残っていた。だが、残っているだけで、まともに機能などしていなくてな、それがより、世界を混迷に陥れた」

 

その中においても、上の連中は相変わらず、責任の擦り付け合い、貶め合いに盛んで、崩壊は既に時間の問題であった。

そこでリュウジは漁夫の利を狙った。当時、決して威張れる立場ではなかった彼だが、

 

「今こそ、立場に関係なく、権力を秘密裏に握れる」

 

と、思い至り。各国の立て直しに乗じて、その手を広げていった。

元々能力もあり、また傍から見れば、立て直しに成功しているリュウジの実績もあり、大義名分のもと、彼は悠々と国家の内部に力を持つことができた。そしてそれは、網目のように広がり、世界を覆っていった。

 

「―――とまぁ、これがボスが『そういう力』を持てた、大まかなあらましだ」

 

「……つまり、当時からゼーレやネルフに対抗するために、力を蓄えてた、ってことですか?」

 

「いや。ボスはネルフに来るまで、ゼーレはおろか、エヴァや使徒の事すら知らなかった。使徒に浸食されていたと知ったのも、ネルフに来て使徒と言う存在を知ってからだ」

 

この言葉にも周囲は驚いた。

そうだとしたら、ゼーレの正体をまともに知らない状態で、半ばまで互角に戦っていたことになるからだ。

 

「それじゃ、何のためにそんな力を得たってのよ。世界征服でもするつもりだったの?」

 

「……さあな、唯一つ言えることは、あの人は決して私利私欲のために、力を求めたんじゃない。それだけは確かだ」

 

高雄はこの時、嘘をついた。

リュウジが力を求めた理由を、高雄は理解していた。

リュウジは純粋に、子供達を守る事、それが本来の軍の在り方であり、世界はそうあるべきだと本気で考えていた。

だが大人たちは、本来なら無条件で守られ、愛されるべき子供達を、エヴァと言う得体のしれない代物に乗せて戦場に駆り出した。

その細い肩には過酷すぎる人類の存亡と言う命運を、恐らく心の中では誰もがおかしいと思いながらも、子供達に背負わせたのだ。

それをリュウジのみが、おかしいと声を上げた。

だからこそ、リュウジは命がけで子供達を守ろうとしていた。せめて生き残れるよう、彼のできる限りを教え、力を尽くした。

そしてその愛情は、十二分に子供達に伝わったのだろう、だからこそシンジは、

 

「碇リュウジを守りたい」

 

と思い、必死になって戦ったのだ。

それが紆余曲折を経て、ニアサーへと至った。

 

高雄は己に唾を吐きつけながらも、その真実を話すことは出来なかった。

なぜなら、シンジへの恨みの念が、辛うじて今この組織を保たさせている要素だったからだ。

 

(……俺も同じか。おかしいと思いながらも、何も言えずにいる)

 

一路、ヴンダーはパリへと進む。

 

 

そして遂にヴンダーは、パリへと到着した。

 

「まさに花の都ね」

 

その復元された街並みを見て、リツコはポツリと呟く。

 

「スゴイ……本当にパリだ」

 

同じくヴンダーから降りたミドリが、眼を輝かせている。

写真でしか見たことのない街並みを、目の当たりにしていることを考えれば、これは当然の反応であった。実際ミドリ世代の隊員達も、程度の差はあれど、眼を輝かせている。

 

「どうぞこちらへ」

 

そんな一向に、初老の女性が突如一向に声をかけ、中へと案内する。

復元されたユーロネルフ本部内を、ミサトは案内の後ろについて歩みを進める。

それに、リツコ、アスカ、ミドリ、そして他のヴィレの部下も続く。

彼らは念のために武器を隠し持ってはいるが、それを臆面にも出さずに付き従う。尤も『彼』からしてみればバレバレなのだが。

 

「……なんか、嫌な雰囲気感じません?」

 

周囲の眼に、若干の闇を感じたミドリが、思わず呟く。

 

「そうね、恨みを向けてきているわね」

 

リツコはミドリとは違い、いつも通り平静を保っている。

 

「恨まれるようなことした?私達」

 

「……あなた方の戦いに巻き込まれ、大切な家族や友人を失ったものが、ここには少なくありませんから」

 

通路の向こう側からの声に、一同は顔を向ける。

一人の男が、通路の向こう側から、ヴィレ一行の前まで歩いてきた。

 

「案内ありがとう。後は私が」

 

「……はい」

 

案内役の初老の女性は、鋭い眼をミサトたちに向けながら、その場を後にした。

 

「巻き込まれたって……、仕方ないじゃない、今はなりふり構ってられる様な状況じゃないのよ!」

 

「北上!」

 

ミサトがミドリの物言いに、厳しく声を張る。

 

「……人類の為と言うお題目があれば、何をしても許されるというわけか。……まるで、人類補完計画を推し進める連中の言いぐさですな」

 

「なっ……」

 

「申し訳ありません、クルーの失礼な態度を謝罪いたします」

 

「いえいえ、そのお題目によって、辛い思いをしていながら、それを乗り越えて、同じお題目を掲げられるとは、私等及びもしない程のお強い精神を持った部下をお持ちで」

 

その男の皮肉に誰も言い返すことができず、

 

「言葉もありません」

 

ミサトは頭を下げた。

さすがにまずいと思ったのか、ミドリも他の部下もそれに倣った。

 

「……失礼、言葉が過ぎました。こちらこそ、申し訳ありません」

 

男も大人げないと感じたためか、深く頭を下げた。

 

「申し遅れました。私は時田シロウ、ここの代表を務める者です」

 

「私は……」

 

「存じております。元ネルフ作戦部長、そして今は反ネルフ組織ヴィレのリーダー、葛城ミサト大佐。お会いできて光栄だ」

 

お互いに手を出し、硬く握り合う。

 

「時田シロウ。私の記憶違いでなければ、日本重化学工業共同体の代表ね」

 

「これは、これは……ご高名な赤木博士にお名前を知られているとは、私もまだ捨てたものでは無いな」

 

そしてリツコとも握手を交わす。

 

「さぁ、こちらへ。後ろの方々も、どうぞ」

 

そう言うと、会議室に使われていたであろう、長机とプロジェクターのようなものがある、大きめの部屋に通された。

時田は一人奥へと進むと、警戒のためか、ミサト達は入り口付近の椅子に座ったり、出口を警戒している。

時田は一人、部屋の片隅にある小さい冷蔵庫を開け、

 

「葛城大佐は大変なお酒好きと聞きましたが、どうですか?」

 

缶ビールを差し出した。

 

「お酒はやめました。健康に悪いので」

 

「これは失礼。ならコーヒーでも淹れましょうか?」

 

「我々はお茶しにきたわけでも、飲み会に来たわけでもありません」

 

ミサトの強い口調に、時田も、

 

「フゥ、……そうですな」

 

と漏らすと、砕けた態度が消え、畏まったように、緊張した面持ちで、奥の机に腰掛けた。

 

「あなた方は、ユーロネルフ本部(ここ)が欲しい、ユーロネルフ本部(ここ)を手に入れるためにいらっしゃった。そうですね?」

 

「いえ、我々は……」

 

「その通りです。我々はユーロネルフ本部(ここ)にある荷物と、あなた方が所持する最強戦力が欲しい。故にユーロネルフ本部(ここ)を欲しております」

 

リツコは言葉を繕おうとするが、ミサトはそれを遮り、正直にこちらの狙いをバラした。

 

「ミサト」

 

「今は急を要します。くだらない腹の探り合いをしている時では無いわ」

 

かと言って、こんなことを言われて、はいどうぞ、となる訳もない。

 

「なるほど。あなたも、人類のためと言うお題目を掲げると言うわけですか」

 

「恨んでくださって結構です。もう私は、地獄に落ちました。そのさらに先に落ち、外道と成り果てても、私は使命を全うします」

 

時田はミサトの目が、覚悟を決めていると感じ取った。だが時田も、曲がりなりにも一団の長である。その表情に怯みはなかった。

 

「確かに、相当の覚悟をお持ちのようだ」

 

時田は声には出さなかったが、

 

(リュウジの目に狂いはなかった)

 

と感心していた。

 

「一応確認しますが、あなた方は、まず彼をどうにかしたい、そうですね?」

 

そう言うと部屋が薄暗くなり、プロジェクターから映像が流れる。

 

「……そうです」

 

ミサトはリュウジが映る映像を見て、強く頷いた。

 

「こちらも確認させてください。貴方はかつて、碇リュウジを実験体にしていましたね」

 

そのリツコの指摘に、時田は目を伏せる。

 

「ええ、リュウジは重力機構の実験体に志願してくれました」

 

時田としても、その点を突かれる可能性を考えていた。

交渉において、相手の弱みとなりうる部分を突くのは当然の戦法であるからだ。

 

「志願?強制でしょう。直前まで受けていた、使徒との同化実験による、体の経過を調べるための……」

 

「それを私が知ったのも、遥か後になってからだった」

 

言い訳にしかならないが、リュウジが侵食されていた事など、当時の時田は知る由もなかった。

 

「戦闘機の経験もあり、書面上は志願となっていた彼を、拒否する理由はなかった」

 

無論時田は、この実験が類を見ないほど過酷であり、命が保証できない事を何度も志願者に説明した。だが異この実験においては資金が潤沢に回ってきており、報酬も普段は見ない程の額だった。

 

「あの実験だけは、多くのスポンサーがついた。だが何のことはない、重力制御機構(あれ)をNHGシリーズに転用したいがためだった」

 

ゼーレが秘密裏に手を回していたであろうことは、今となっては自明の理であった。

 

「そして調べました。あの使徒との同化実験は何だったのかと。ですが結局実態は解らず仕舞い。唯一分かったのは、責任者の『六分儀』という名前のみ」

 

時田はリュウジの侵食のことを知ってから、記録を基に出来る限り調査を進めたが、その責任者が何者なのかすら、判らなかった。

 

「スポンサーになっていた企業も、全てペーパーカンパニーだった。それを辿っても、ゼーレには辿り着かなかった。尤も今更それが分かったとて、私の罪は消えませんがね」

 

時田は自身の責任を痛感していた。

ただ好奇心の赴くがままに、創造し、実験を繰り返していた自分に。それが世界に及ぼす影響など、考えてもいなかったのだ。

 

「我々科学者や技術者は、創造した物に責任が伴う。だからこそ、私は戦う決意をしました。その責任を果たす為に。あなたもそうじゃありませんか?赤木博士」

 

「そうです」

 

リツコはエヴァを創った。それと同じように、時田は重力制御機構を考案した。そしてそれらは、形は違えど、人類補完計画の要に使われている。

 

「もっと早く、その責任を自覚するべきだった。それをしなかったが為に、そこにいる若い方々が、戦う必要のない戦いに巻き込まれた」

 

時田の目は、ミドリを始めとする若いヴィレメンバーに向いていた。覚悟が碌にできていない彼らに、覚悟が出来ていないことをとやかく言う資格は自分達にはない。

 

「こんな世界になったのは、我々がセカンドインパクトを経てなお、世界の危機を他人事としていたからだ。他力浅慮、それこそが、世界を破滅に導いた」

 

そこまで言うと、時田は一呼吸置くと、ゆっくりと立ち上がった。

 

「葛城大佐。結論を申し上げれば、貴方の要求は飲めない。第一に、貴方の言う最強戦力は、我々にとっては唯一の戦力。我々の身を守る、たった一つにして最後の盾なのです。そんな我々が、最後の力を振り絞ってようやく得た基盤がユーロネルフ本部(ここ)です」

 

ヴィレがどれだけ苦しい戦いを経てきたか、それは時田も十二分に理解していた。

だが、かと言って、自分達も筆舌にし難い、艱難辛苦を乗り越えてきたのだ。時田とジュニアの腹の中に逸物があるのは確かだが、それを差し引いても、おいそれと、無碍にすることなどできよう筈もなかった。

 

「それに加え、私は、他力浅慮はしないと決めた。紆余曲折はあれど、4+3号機は、私が作り上げた。いかにあなた方と言えど、おいそれと引き渡すことはできません」

 

時田はそう言い切ると、それにリツコが反論する。

 

「そのお気持ちは解ります。ですが、今は貴方の技術者としてのエゴに拘る時ではありません」

 

「こう言う状況だからこそ、私は敢えて拘るのです。14年前の世界の危機に、それを捨てた結果、ネルフの専横を許し、サードインパクトが起こった」

 

だがその反論にも、時田は鋭く、かつ冷静にとって返す。

 

「……私の技術者としての覚悟をエゴイズムと言うならば、あなた方の戦う覚悟も、エゴイズムではないでしょうか?」

 

ミサトはその時田の眼から、いかんともしがたいことを悟った。

 

「お話は分かりました。あなたの覚悟のほども。ですが、今は拘りに構っている時ではありません」

 

「ではどうしますか?奪いますか?」

 

こちらからしかけるつもりは、時田には無い。だがかといって、戦わないというわけではない。こちらにもそれ相応の目的がある以上、自衛のための戦闘なら止むおえない。

 

「……いえ、では我々が貴方の下に付くというのはどうでしょう」

 

「艦長!?」

 

「ちょ、ちょっと何よそれ!?」

 

いきなりのミサトの発言に、リツコもミドリも驚嘆の声を発する。

だがそれを手で制すと、ミサトはつづける。

 

「いきなりここをよこせ、こだわりを捨てろと一方的に言うのは、余りに理不尽なのは明らかです。ならば、我々ヴィレをあなた方の傘下に置き、あなたの手によって、ネルフを、そして碇リュウジを止めてください」

 

そして驚嘆したのは、時田も同様だった。

ミサトがプライドを、何より14年間の筆舌にしがたい苦痛を放棄するかのごとき行為を、自分の目の前でやってのけたのだ。

 

「……そして、止めることが出来なければ、……どうか、……あの人を解放してあげてください。それは、あなたの判断にお任せします」

 

若干の声の震えを感じたのは気のせいではあるまい。

だが、ミサトにとって師ともいえるリュウジの姿が、悲痛の叫びとなって離れなかった。ならば、例え彼の命を奪う結果になったとしても、戦いと言う終わりのない旅路から解放されるのなら、それもやむを得ない。

 

「もう……あの人を安らかに眠らせてあげたい」

 

「……それは筋が通りませんよ」

 

そこに、部屋にはいないはずの声が響いた。

 

「さんざん多くの命を奪っておきながら、一人解放されるなんて、余りに虫が良すぎる」

 

そう言って、長机の真ん中の空間が光り、歪んでいったかと思うと、人影が徐々に形成されていった。

 

「碇リュウジはペテン師だ。解放されるなんて許されることではない」

 

「ジュニア、あなたは口を挟まない約束だ」

 

急に現れたジュニアに、ヴィレのメンバーたちは驚きを隠せない。

 

「これは一体!?」

 

ミサトですら、驚嘆の声を上げた。

 

「ATフィールドで、光の屈折をいじって、姿を見えなくさせていたんです。所謂光学迷彩って奴です」

 

実はジュニアは最初から、ヴィレのメンバーをずっと観察していた。

 

「すいませんね時田さん、ただ我慢できなくなって」

 

時田に一瞬振り返ると、ジュニアは再度ミサトたちに顔を向ける。

 

「リュウジは力を持っていながら、当時何もしなかった。その気になれば、ゼーレもネルフも制圧できる力を持っていたのに」

 

「だから、ペテン師だと?」

 

「まだまだありますよ?子供達を戦わせたくないとのたまっておきながら、戦わせてる。エヴァの危険性を知っていたらしいが、結局はエヴァが使われるのを傍観していた」

 

「それは……」

 

ミサトは言葉を返せなかった。リツコも思うところはあったが同様だった。

傍から見ればジュニアの言う通りだったからだ。

 

「挙句の果てに、彼の使徒との同化実験のデータが……」

 

そういうと紅く光る眼が、アスカをとらえる。

 

「シキナミ、アヤナミ、両シリーズのプロジェクトを進める重要な要素となった」

 

その言葉に、時田とジュニアを除く、その部屋の人間の顔がこの日一番の驚愕に染まった。

 

「……本当……なの?」

 

そしてそれは、ここまで沈黙を守っていたアスカの、口を開かせるには十分なものだった。

 

「ええ。言ってしまえば、あなたの悲劇の元凶なんですよ。碇リュウジは……。それでもなお、リュウジを師と呼べますか?」

 

「アスカ……」

 

ミサトが声をかけるが、アスカは目を伏せてまま、ジュニアに近づいていく、そして最も近い位置から、机の上に立つジュニアを見上げる。

 

「……なんで、アンタみたいなのが、そんなに強いのか理解できない。でも、それでもアンタしかいないのよ、リュウジと戦えるのは」

 

そういうと、なんとアスカはジュニアに向かって頭を下げた。

 

「お願い、アンタがリュウジに何か恨みがあるのは解る、なら、あなたの手で殺して、……リュウジを」

 

アスカのいきなりの行為に、周囲は面食らう。

だが、

 

「殺す?そんなのは当たり前です。だがそれだけで終わらせません」

 

アスカの行為を見るジュニアの顔は冷ややかだった。

 

「殺すだけじゃない。リュウジの名を辱め、貶める。リュウジの罪を明らかにし、名実ともにその名を地に落とす!」

 

そして、紅い眼の奥に、蒼く光る十字が両目に浮かび上がる。

 

「アンタ、やっぱり……」

 

「ええ、使徒です。この世界にいなかったはずの、最後の使徒だ」

 

「ジュニア!!」

 

そこに時田が抑えに入った。

 

「少し、抑えろ」

 

「……申し訳ありません」

 

数秒のやり取りであったが、ミサトとリツコは内心気が気ではない。

目当ての少年が使徒であることも驚きだが、それを時田が完全にコントロール下に置いていることにさらなる驚きを感じていた。

 

「時田シロウ、あなたが何を狙っているのかは知りませんが、この少年と同じ考えなのですか」

 

「私はリュウジに対して恨みはありません、寧ろ私にとっても尊敬できる人物です」

 

「なら!」

 

「ですが、世界を元に戻し、安寧を図るために、リュウジの犠牲一つで済むなら安い物でしょう」

 

時田の言葉に迷いはなかった。

 

「それをさせないと言ったら?」

 

ミサトは素早く、時田に銃を向けた。

だがそれを遮るべく、ジュニアもすぐさまATフィールドを展開させた。

 

「お引き取りください、葛城大佐。あなたが思っている以上に、時間が無いんですよ?」

 

「どういう意味だ?」

 

「彼は今や人質なんですよ、碇シンジを動かすための。いう事を聞かなければ、殺すと脅されれば、世界が完全に崩壊すると解っていても、それに従わざるを得ない」

 

そうなれば、すぐさまフォースインパクトを起こすことも、あり得ない話ではないのだ。

 

「ジュニア、客人たちはお帰りのようだ」

 

「解りました。お送りします」

 

そういうと、そのままATフィールドで、ミサトたちを完全に包み込んでしまった。

 

「時田シロウ!!」

 

「葛城艦長。ここで我らが争うは、ネルフのみの利となるのは貴方にも解るはず。我々に思うところがあるのは解りますが、それのみに捕らわれていては、本末転倒になります」

 

ATフィールドに捕縛されたヴィレのメンバーは、強制的に退去されていった。

 

「……はぁ、まったく。割に合わないな。……こういう役回りは」

 

 

「……ようやく合図が来たな」

 

『申し訳ない冬月さん。まだです』

 

「ハハハ。とんだぬか喜びだ」

 

『ですがまもなくです。そして』

 

「我々の第三局が始まる、と言うわけか」

 

『楽しみですよ』

 

「楽しみ?私の勝ちが確定している対局など、無味乾燥でしかない」

 

『ですが、まだどう勝つかは解らない、でしょう?』

 

「……本当にいいのか?君は」

 

『ええ……。それより』

 

「彼のことなら心配いらん。私がなんとかする」

 

『感謝します』

 

「感謝するのはこちらだよ……。リュウジ君」




仕事中にアイディアが浮かんでも、それを書き留めておく手段がなく、仕事が終わりいざパソコンに向かっても、そのアイディアが結局明確に思い出せない。

年を取ったな~、と思う今日この頃です。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字等、ございましたらご報告いただけると幸いです。

これからも応援、何卒よろしくお願いします。
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