新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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更新が遅くなり、申し訳ありません。

以前の更新ペースに戻したい……。

これからも何卒よろしくお願いします。


Q-何度でも-

「料理?」

 

ヴィレと、時田達との会合と同じころ、シンジはカヲルにある相談をしていた。

 

「うん。材料とか、調理器具とか、ないかな?」

 

そう言われ、カヲルは頭を捻る。

 

「なんでもいいんだ、……心当たり、ない?」

 

「まぁ、調理器具なら、食堂だった場所にあるかも知れないけど……料理だなんて、急にどうしたんだい?」

 

カヲルが投げかけた質問に、シンジは少し照れくさそうに頬を掻いた。

 

「綾波と、もう一度料理を一緒に作りたいんだ。よく作ったんだよ、一緒に。……だから、何か思い出すかもしれないって思ったんだ」

 

シンジは正直に言うと、レイが何も思い出さなくてもいいとも思っていた。

それよりも大切なことは、大好きな少女と、もう一度心を通わせて、新たに思い出を作ることだという、純粋な思いだけがあった。

それに加え、

 

「それに……君さえよければ、一緒に作らない?」

 

どうにも他人とは思えない『初対面』の目の前の少年とも、共にいたいと思えてならなかった。

その言葉と思いに、カヲルの心は思わず上ずった。

それと同時に、『いつも』受け手だったシンジが、ここまで他者と積極的に関わろうとすることに、驚きを隠せなかった。

そして驚き以上に、上ずった心から、喜びが止めどなく湧き出てくる。

 

「君は……」

 

「―――え?」

 

「……いや、なんでもない。―――それと食材だよね?なんとかなると思うよ。あまり、いい出来では、無いんだけど」

 

「本当?……て、出来?」

 

「うん。さ、ついてきて」

 

カヲルの言葉に疑問を抱きつつも、シンジは彼の言葉に従った。

 

「最初は失敗ばかりだったけど、試行錯誤をして、ようやくそれらしくなってきたんだよ」

 

カヲルはそう言いながら、リュウジに合わせた時とは逆に、薄暗い施設内を上へと登っていく。

そのせいか、段々と薄暗さもなくなっていき、そして、

 

「これって……」

 

「あまり形はよくないけど、ビニールハウスさ」

 

カヲルの言葉通り、テントに近い形ではあるが、空に抜けた天井から、日光を浴びているビニールハウスが、急に開けた部屋の真ん中にあった。

 

「さっきも少し話した、ボクがお世話になった人が、畑をやっていてね、それを少しでも残したくて始めたんだ」

 

そういうと、ビニールハウスの入り口に、シンジは案内された。

その付近には、栽培や農業、家庭菜園などに関する本が、少なくない量で山を形成していた。

それを尻目に中に入ると、

 

「うわ~!……すごい」

 

ナス、キュウリ、トマト、と言った、シンジにもなじみのある野菜たちが、実をつけ、日の光を浴び燦然と輝いていた。

 

「どうかな?シンジ君」

 

「すごいよ、カヲル君!本当に、使ってもいいの?」

 

「勿論だよ。むしろ、作ったはいいけど、どうすればいいか、迷ってたんだ」

 

そう言って、進めば、量は少ないが、根菜類や、葉物野菜も力強く育っていた。

 

「ありがとう。ボクもできることがあれば手伝うよ。……いや、寧ろ、ぼくにもお世話の手伝いをさせてよ」

 

「本当かい!?……なら……」

 

そういうと、カヲルはビニールハウス内において、もっとも日当たりを良くしている場所へシンジを案内した。

 

「ここに植えたものを育てるのを、手伝ってほしいんだ」

 

「ここには、何を植えたの?」

 

「……スイカだよ。ボク、まだ見たことが無くて……。その人も、いつか食べさせたい、て言ってくれたんだけど」

 

「すごい!ボクも育てたいよ!スイカ!」

 

シンジはその日一番の驚きと、尊敬をたたえた眼をカヲルに向け、そして強くカヲルの手を握った。

 

「手伝う!何でもするよ!」

 

「本当かい?」

 

「うん!それで、出来たら、一緒に食べよう」

 

一瞬呆気にとられたカヲルだが、

 

「……ああ、ボクも食べたい、君と」

 

シンジの手を握り返すと、互いに笑みを向け合った。

カヲルはこの時、初めてシンジと対等な友人になれたと感じた。

頑なな彼に、一方的に感情を露わにするのではなく。

傷ついた彼を、慰めるのではなく。

孤立した彼に、手を差し伸べるのではなく。

ただ互いに助け合って、ともに肩を並べて歩ける関係になった。

それが、とにかく嬉しかった。

 

「ところで、話は戻るけど、一体何を作る気なんだい?」

 

材料はなんとかなるのは判明した。

 

「う~ん。……それなんだよね。調味料とか、調理器具も何があるのか見てみないと」

 

だが食材だけあっても料理はできない。

それに味をつけ調理をして、初めて料理と言えるのだから。

 

「とりあえず、食堂にいこうか」

 

そういって、二人は今度は食堂を目指した。

場所としてはシンジにも覚えがあった。

彼も14年前に利用したり、訓練やテストの合間に小休止することもあったからだ。

 

「手分けして探してみよう。使えるものがあるかもしれない」

 

そう言って二人は、調理場へと足を進めた。

荒れ果ててるとは言え、ここは比較的原形をとどめているせいか、調理器具や、調味料を探すのは難しくなかった。

なかったのだが、

 

「……やっぱりか」

 

14年も放っておかれたのだ、包丁、鍋などは錆び、調味料は軒並みダメになっていた。

 

「包丁とかは、手入れすればなんとかなるかもしれないけど、調味料はな~」

 

俗にいう、『料理のさしすせそ』も見つかったのだが、使える状態には見えなかった。

 

「シンジ君、ちょっといいかな?」

 

手分けしていたカヲルが、何かを持ってシンジに声をかける。

 

「こんなものがあったんだけど、使えるかな」

 

それを見たシンジの顔が明るくなる。

 

「それって!」

 

カヲルの手にあったのは、出汁用の昆布。とどのつまり乾物だった。

未開封の為か、見た目には使えるように見えた。

 

「他にも、いくつかあったよ。でもどれがいいのか、よく解んなくて……」

 

「ありがとう。……これなら、あれがあれば作れる」

 

そのためには、絶対に欠かせない最後の『そ』がいる。

 

「決まったのかい?何を作るか」

 

「うん!」

 

そう言って、シンジは再度意気込むと、目的の『そ』を探し始めた。

 

 

一方ユーロネルフパリ本部において、交渉決裂となったヴィレは、ジュニアによって強制的にヴンダーへと連れて行かれていた。

 

「さ、お帰りください」

 

ATフィールドを解除すると、ジュニアはそのまま踵を返した。

 

「……一つ、いいかしら?」

 

だがミサトに声をかけられ、ジュニアは足を止める。

 

「あなたが何者かはどうでもいい、だけど、なぜそこまでリュウジさんへ憎悪を向けるの?」

 

「………」

 

「あの人は、多くの命を奪ってきた。だから、恨みをかっているのも別に不思議なことじゃない。そもそもあの人は、それをずっと覚悟して戦ってきた」

 

恐らく復讐を受けたのも、一度や二度ではないはずだ。

だがその全てを受け止める覚悟があり、それをできるだけの度量がリュウジにはあった。故に、リュウジに恨みを向けている人物がいても、ミサトとしてはさして気にすることではない。

 

「だけど、あなたの憎悪はどこか違う。単純な恨みつらみではない。命を奪うだけではなく、あの人のすべてを否定し、存在することそのものが許せない。そう感じるわ」

 

それはどこか、ゲンドウがリュウジに向ける感情に似ていた。

碇リュウジと言う存在がただただ許せない。

それほどの憎悪を、ゲンドウ以外がリュウジに向けるのが、ミサトには異様に見えたのだ。

 

「……止めなかったからだ」

 

呟くように、ジュニアが言葉を返した。

 

「セカンド・インパクトを経験して、世界が滅亡へと向かっていることを理解し、力を蓄えておきながら、結局はサード・インパクトを『止めなかった』」

 

「『止めなかった』んじゃない、『止められなかった』のよ」

 

そこにアスカが否定を挟む。

 

「アンタも知ってるでしょ。サード・インパクトが起こったのは、リュウジが撃たれた後だった。仮にその前に、ゼーレに対して武力行使して、力でねじ伏せることができたとしても、それは後々大きな歪を生む。そうなれば、また同じことが繰り返される。リュウジはそれを良く解ってた!だから……」

 

「結果が全てだ。止められる力がありながら、碇リュウジはそれを行使しなかった。……あなたに対しても守ると言っていたが、結局碇リュウジは何もせず。結果、あなたは使徒の侵食を受けた。聞こえの良い言葉を言うだけで、その責任を果たそうとしなかった」

 

その言葉を受け、アスカの眼が怒りを孕んだ。そしてジュニアに迫ると、彼の肩を掴み、振り向かせたその勢いのまま、彼の胸倉をつかむと、

 

「結果だけ見て、言いたいことばっかり言ってるアンタに、その責任がどれ程重いか、絶対にわからない!!」

 

怒りと悔しさを、ジュニアへ一気に吐き出した。

 

「リュウジがどれだけの覚悟で戦っていたのか知らないくせに……、リュウジがどれだけ悔しい想いをして、私達を戦場に送り出していたか知らないくせに……」

 

リュウジが抱えていた矛盾と葛藤を、アスカは理解していた。

ジュニアが先ほど述べたように、リュウジは子供達を戦わせたくなかった、エヴァの危険性を予見していた。

にもかかわらず、最終的にはそれらを容認することになってしまった。

それはそうしなければ、世界が滅ぶという理由もあったろうが、シンジをはじめとする、子供達の守りたいという想いを目の当たりにして、それを無視することができなかったからだ。

なぜならその想いは、リュウジが子供達を守ろうとしたからこそ芽生えたのだから。

その守りたいと言う想いこそが、呪縛に飲み込まれそうなアスカの心を、辛うじて繋ぎ止めてくれていた。

 

「リュウジがどれだけ必死だったか知らないアンタに、碇リュウジを否定する資格なんてない」

 

そしてリュウジは口だけでなく、本気で自分達を守ろうとしていた。それを理解されないことが、アスカは悔しくてしょうがなかった。

確かにアスカは、使徒の侵食を受けた。リュウジが駆けつけた時には手遅れだったことを考えれば、リュウジはアスカを守れず、救うことは出来なかったと言える。

だが、アスカにとっては、自分との約束を守るために、リュウジは死に物狂いで三号機に駆けつけてくれた。

その時、アスカの心は救われたのだ。

その想いを知ろうともしないジュニアに対して、悔しさを隠すことができなかった。

そんなアスカに、ジュニアは何か言おうとしていたが、それを呑みこみ、そして言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。

 

「……いずれ、解りますよ。……私にこそ、碇リュウジを否定する資格があると」

 

そういうと、ジュニアは胸ぐらをつかんているアスカの手を、ゆっくりとほどいた。

そして一歩下がり、アスカに深く頭を下げた。

 

「お急ぎください、式波少佐、葛城大佐。先ほど時田も申した通り、今や碇シンジは人質を取られた状態。それを盾にされれば、いかな命令も聞かざるを得ないでしょう。例え世界が滅ぶと解っている行為だとしても、目の前で人質が殺されそうになれば、それを拒否することは彼にはできない」

 

先程までの憎悪がこもった瞳がウソの様に、ジュニアは冷静にかつ力強く口を開いた。

 

「だからこそ、碇ゲンドウは下手にその人質を使ってくることは無いでしょう。思うに、碇ゲンドウは用心深い男。万が一、人質が死に至ることになれば、碇シンジを動かすどころか、あなた方への牽制もできなくなります」

 

「牽制とは?」

 

その理路整然と、戦況を分析して見せるジュニアに、ミサトは驚きを隠しながら問うた。

 

「碇リュウジが師として存在するものにとって、かの人質は存在するだけで絶大な効果となります。それは、滝の音として、あなた方に恐れを抱かせている。違いますか?」

 

アスカも、ミサトも図星だった。

あのリュウジの変わり果てた姿を見た後は、それを思い出すだけで心をかき乱されていたのだ。

 

「ですが所詮滝の音。いかに大きくとも、それに心を乱されていてはなりません。どうか広く視野をお持ちください」

 

そう言って再び頭穂深く下げた。

 

「一体……あなたは」

 

「もう行ってください。私からは、もう何もいう事はありません」

 

そしてジュニアは再び踵を返しその場を去っていった。

 

 

「首尾は?」

 

ブリッジに戻ったミサトに、高雄は早足で近づく。

だがその高雄に対して、ミサトは目を伏せながら顔を横に振った。

 

「そう……ですか」

 

高雄ともあろう者が、断られる可能性が高いことを予見できていない訳がない。

だが現状、リュウジに対抗しうる存在が味方してくれることに、一縷の望みを持っていたのだ。解っていても、人と言うものは、望みにすがる。

 

「このまま、我々はネルフ本部へと向かいます。フォース・インパクトがいつ起こってもおかしくない以上、このまま突き進むしかない。高雄機関長」

 

「は!」

 

高雄が一歩前へ出て、敬礼する。

 

「現状において、碇リュウジへの対策はあなたにしかできない、いざとなれば、あなたに矢面に立ってもらうことになる。頼んだわよ」

 

「了解」

 

ミサトの命令はとどのつまり、

 

「いざとなったら、お前が真っ先にリュウジに殺されろ」

 

と、同義だった。

発進準備に取り掛かる高雄は、そのことをよく理解していた。

そしてもし、その通りの結果になったとしたら、

 

(俺にしちゃ、上出来な最後だ)

 

碌な死に方をしない、今までの戦いと、殺しの人生を鑑みればそれが当たり前だと思っていた。

そんな人生を、どんな形であれ、もし『ボス』に幕引きしてもらえるのなら、

 

(いや、上出来どころじゃないな。……贅沢にもほどがある)

 

その高雄の背中に向けて、

 

「ごめんなさい、こんなこと……」

 

「上司がそう簡単に、部下に頭を下げてはならない。……ボスにそう教わりませんでした?」

 

「……そうね」

 

リュウジにも何度か、死と同義の命令を受けたことがある。だがその都度、

 

「生きて帰ってこい。それが何よりの戦果だ」

 

と言われた。

そして、帰ってくると、

 

「……ありがとう」

 

の言葉と共に抱擁を交わした。

その時、鼻をすする声が聞こえたが、いつも高雄は気のせいだと自分に言い聞かせていた。

 

「それで、どうでした?あの少年と話してみて」

 

今度はミサトの鼻をすする音が聞こえそうな気がしたので、高雄は話題の切り替えと、実際に高雄が気になっていた、リュウジに匹敵する戦闘力を持つ少年が、どういう人となりかを知るために、問いかけた。

 

「……正直に言えば、よく解らなかった。だけど、戦闘技術だけでなく、戦略的思考も、リュウジさんに匹敵するほどだったわ」

 

「なんですって?」

 

自分で話題を切り換えておきながら、高雄は素直に驚嘆した。

 

「事実よ。私達が感じていた動揺を見抜き、碇ゲンドウの思考も読んで見せた。そのせいもあって、ますます訳解らなくなった、と言ったところかしらね」

 

「となれば、それほどの存在を、このまま放置していていいんですか?このままもし背後を取られるようなことになれば……」

 

「動けないと判断しての事よ。ネルフも、このパリ本部をこのままにしておきたくはないはず。奪還、出来なければ殲滅にかかろうとするはず」

 

「ここに釘付けになっている間に、我々はネルフに対して詰めにかかる、と言うわけですね」

 

「ええ、余計な横槍は、ネルフ自ら抑えてくれるわ」

 

 

「―――と、ヴィレは考えている事でしょう。我々が動けないことを前提とし、ネルフに集中するつもりです」

 

会合の場となっていた会議室に戻り、時田と共にプロジェクターの映像を見ながらジュニアが言う。

 

「だが、それはネルフがここを重視しているという前提条件がある、だが……」

 

「ええ、ネルフ、……ゲンドウはここを取られることは想定済みです。逆に、このままヴィレにフォース・インパクトを阻止されることを懸念するはず」

 

「つまり、戦力をヴィレに裂く、と言うわけだな」

 

そう言いながら、時田は一人視線を天井へと仰ぎ、深くため息をついた。

 

「……何とも難しいな、嘘をつかないというのは」

 

「ですが、それが相手をだます第一条件です。嘘をつけば、より大きな嘘をつくことになる。ならばいっそ、正直であれば、嘘に翻弄されることは無い」

 

「……恐ろしいなあなたは、相変わらず」

 

預言者かのように、相手の思考を読み取るジュニアは、時田にとっては得体のしれないバケモノの様に、思えてならなかった。

 

「どう思っていただいても結構です。とにもかくにも、彼を助けなければならない」

 

ジュニアの視線の先には、プロジェクターより映し出されている、リュウジの画像があった。

 

「彼がこうなってしまったのは、私の見識の甘さゆえです。何としても助けなければ」

 

「それに加えて、第三の少年と、ゼーレの少年と、……彼女と彼女も……」

 

二兎追う者は一兎も得ず。

と言うが、四兎も追っているジュニアに、時田は頭を抱えた。

そうは言うが、今までそのために動いた来たので、彼としても文句の言い様が無いのだが。

 

「無理を言っているのは百も承知です。ですが……」

 

「解った、解った……」

 

二度目の深い溜息を吐くと、時田もジュニアと視線を同じくする。

 

「とことん、あなたには付き合いますよ。……以前、あなたがそうしてくれたようにね」

 

自分が強くなれたのは、彼のお蔭だ。だからこそ彼の我儘に付き合うのは、時田はどこか楽しげだった。




これだけ更新の間が空いているのに、読んでくださったり、ご感想をくださる方がおり、嬉しい限りです。

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