新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
今年も、皆様にご多幸をお祈りさせていただきます。
あと、更新が遅くて申し訳ありません。
14年前。
それは、ある種の贖罪だったのかもしれない
「……本当に、あの『棺桶』を再び飛ばすんですか?」
時田シロウの戦いが始まったのは、まさにこの時だった。
あの日、ガラクタとなっていた重力制御の実験機を、嘗ての
「貸してほしい」
と言ったその日から、徐々にではあるが、時田は渦中へと踏み込んでいくことになった。
そしてさらに決定的になったのが、剣崎から、
『四号機の再生は可能ですか』
という、余りに唐突な依頼をされた時だった。
「それは、リュウジからの依頼ですか?」
その時田の問いに、剣崎は答えなかった。
故にそれが、何よりの雄弁な答えとなった。
「……S2機関があるだけでは、とても再生は無理です。それに耐えうる代わりのものが無ければ」
『では、それがなんとかなれば、再生していただけると言う事ですね』
「そうです。是が非でも、なんとかして見せます」
資料を見た時田がそう言い切ったのも、贖罪だったのかもしれない。
だがそれだけではなかったのも確かだ。
碇リュウジと言う、破格の人物が自分に無茶ぶりを頼む。
それだけで、時田には得も言われぬ高揚感が芽生えていた。
そうして、時田と剣崎に加えて、加持までが加わり、四号機の再生に着手することとなった。
秘密裏に進めるに当たって、リュウジが残した諜報網を剣崎が駆使し、加えて加持が独自の伝手を使い、粛々と進められた。
さらに、リュウジの死亡と、その遺体が行方不明になったことがおおいに役に立った。ネルフとゼーレが、それらのことに気を取られたことで目眩しとなり、四号機を秘密裏に回収できたからだ。
もしかしたら、
「この事態もリュウジの狙いか?」
とも思えたが、今となっては時田の知りうるところではない。
それに加え第十の使徒と初号機の戦闘、並びにゼーレのシナリオにない、初号機をトリガーにするという事態が起こした混乱。
そのどさくさに紛れて、参号機の回収もすることもできた。
そして世界が滅ぶどさくさに紛れて、時田は剣崎と加持から4+3号機を作り上げる算段と、加持が守っていたものを引き継いで、身をくらませた。
(……思えば。これ程充実した時間になるとはな)
それらを思い出し、時田はふとそう感じている自分に酷く驚いていた。
それは決して、今日までの日々が楽しかったという訳ではない。むしろ、
「二度とゴメンだ」
と迷わずそう言い切れるほど、辛いという言葉の何十倍も筆舌にし難い苦しみばかりであった。
だがその苦しみと、滅んでしまった世界の中で、時田はそれまでの人生の中で、最も生きているということを実感していた。
そして……、それを噛み締めながら、時田は戦場へと向かう。
盟友を助けるために。
普段愚痴るばかりの時田だが、この時ばかりはこの任務を買って出た。時田としても念願の救出作戦だった。
(……ようやくだ)
慣れないステルス機に身を揺られながら、時田はネルフ本部へと近づいていく。
機内の傍らには、加持の残したカセットテープがある。
これで正気を取り戻すことができるかは、正直賭けであった。
『大丈夫ですか?時田さん』
「ああ。まもなくネルフ本部上空だ。バレないことを祈っていてくれ」
『機体が発見されることはないでしょう。もうレーダーなどというものは無いし、今更空に気を取られている暇は、連中には無いはずです』
「だが救出目標の場所は未だに不明だ」
『LCLの流れを辿り、それが消費されている箇所が、目安になるはず。尤もどれほどの量が使われているかは不明ですが』
「了解した」
『こっちもタイミングを見て奇襲をかけます。第一目的は何としても遂げるつもりですが、あの場に来るであろうパイロット達は、どれだけ脱出させられるか……』
「あなたのことだ。どう対応するかは任せる」
『了解。……時田さん。生きて帰って下さい』
「あなたも、無事
通信を切り、時田は機体を加速させる。
※
すでにプラグスーツに身を包んだシンジは、リュウジの眠る部屋へと来ていた。
「……多分。これが最後だ」
そう言うシンジは笑顔でこそあるが、あまりに悲しみを湛えたものだった。
「……最初にエヴァに乗って、その後病院で目を覚ました時、おじさん、泣いてたよね。後にも先にも、おじさんの涙を見たのは、あれっきりだった」
今思い返せば、それがシンジの思いを強固にしたのだ。
今まで助けてくれたリュウジへ、ようやく自分が何か恩返しができるようになったと思ったからだ。
「なんとなく分かってたよ。あの後も、おじさんはボクにエヴァから降りて欲しいって思ってたんだよね。変な言い方だけど、嬉しかった。ボクを、心配してくれて。ボクを、必要としてくれて」
リュウジには申し訳ないが、その心配が、シンジにとっては戦い続ける理由だった。
それは同時に、
「時に愛情は、暴力より残酷になる」
その事を誰よりも、痛感していたリュウジにとっては罪悪感ともなっていた。
では愛情の残酷さが牙を向かないようにするにはどうするべきか、単純にリュウジがシンジを見捨てればいい。
それを知っているリュウジは、尚の事、シンジを見捨てることはできなかった。
それを選べば、シンジは愛情を知る事がなくなるのでは無いか、とも考えていたからだ。
それは、大人の身勝手な暴力に他ならない。
「でもあの病室で誓ったんだ、おじさんだけは守るって。だから……」
リュウジを抱き締められない代わりに、シンジは調整槽に額をつける。
「ボクはおじさんを守る。おじさんが、世界よりボクを選んでくれたのと同じように、ボクも、おじさんを選ぶ」
それは、エヴァと言う武器を手に入れた時から、強固に固まった決意だった。
およそ、30分前。
シンジにあてがわれた部屋に、珍しくゲンドウが訪れていた。
「……私がなぜ来たか、解るな」
「用があるからでしょう?なら、さっさと済ませてよ」
「13号機が完成した、最初に言った通り、あの少年と乗り込め」
決してシンジはゲンドウの方を見ようとしない。
それを解っているのか、ゲンドウもそれだけ言うと、その部屋を後にしようとする。
「……どうして、こうまでするの?」
その言葉に、ゲンドウの足が止まる。
「自分の弟をあんなにしてまで、父さんは何をしたいの?」
「……聞いてどうする。人は所詮、互いに理解し合うことは出来ない」
「そうだね、でも父さんは、初めから理解するのを諦めた。おじさんとは違う」
理解できないなら、初めから己のエゴを優先し、周囲を顧みない。
そんな父が、シンジは逆に哀れに思えてならなかった。
「受け入れろ、シンジ。リュウジは死んだ」
「……そうだね。父さんが、どうあがいても勝てないから、怖いから、殺したんだよね」
シンジはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、いつも着替えが出てくる搬出口に立つ。
そして、いつもの制服ではなく、真新しい、黒を基調としたプラグスーツが出てくる。
「安心して、ちゃんと言われたことはするよ。……父さんの為じゃなく、ボクのために」
準備を始めたシンジを尻目に、ゲンドウは部屋を後にした。
そうして、シンジは自身の守りたいものの為にいつも戦ってきた。
エヴァと言う武器が、迷わず守りたいものの為に戦う決意を奮い立たせてくれた。
「シンジ君」
すると、同じプラグスーツを身にまとったカヲルが、シンジに声をかける。
「そろそろだ。行こう」
「……うん」
シンジはゆっくり振り返ると、静かに、力強く頷いた。
「シンジ君、一つ、提案があるんだ」
「提案?」
「そう、うまくいけば、リュウジさんを助けて、世界の修復もできる」
その言葉にシンジの顔が、ハッとしたかと思うと、カヲルの肩を掴んだ。
「本当?」
「ああ、鍵は、ドグマの爆心地に残る、二本の槍だ。君のお父さんやゼーレの目的である、人類補完計画に必要なものでもある。ボクらでその槍を手にして、第13号機とセットで使えば、全てやり直せる」
そして、カヲルも力強くシンジの肩を突かんだ。
「君にとって、リュウジさんが大切な存在なのは解る。でも、世界を滅ぼす選択を、君にしてほしいなんて、絶対思ってない。希望を持とう、シンジ君。―――それを、ボクも願ってるんだ」
「……ありがとう、カヲル君。一緒に、行ってくれる?」
「勿論さ。一緒に、リリンの希望になろう」
―――そして、警報音が響く中、13号機の下に、ドグマへと続くゲートが口を開く。
そして、カヲルと、シンジが乗り込むエントリープラグが、ゆっくりと差し込まれていく。
その中で、シンジは刹那の時間、光に包まれたかと思うと、すぐさま同じく乗り込んだカヲルが目に移り、互いに見つめあう。
そして、互いに頷き合う。
「「エヴァンゲリオン第13号機、起動!」」
※
『信号来ました!新型エヴァの起動を確認』
ノイズが激しいが、ジュニアの耳には傍受したヴィレの通信が入った。
諜報対策など、今のヴィレにも、ネルフにもほぼ存在しないため、ジュニアにとってはおもちゃをいじる程度で、情報を入手できた。
「時田さん。ヴィレが13号機の起動を検知した。リリスの結界が破られれば、アスカもマリも突入する。そっちの首尾は!?」
『まだだ。LCLの流れは把握したが、消費されている箇所が複数ある』
「恐らく最も消費されているのは、13号機建造、並びにアヤナミシリーズの調整のはずです」
『だがそれを除いても複数ある。』
ジュニアは一人、コア化した大地で、ネルフ本部がギリギリ眼の入る場所で、通信と傍受をしながら思案する。
(解っていたことだ。そう簡単に、目標の場所は解らない)
そうしていると、今度はジュニアの使徒としてのセンサーが反応を示した。
「……すまない時田さん。動きが思ったより早い。13号機がもうリリスの結界を突破した!」
『なに!?』
そのための13号機だと解っていたが、それでもこうも早くドグマへの入り口を突破されたことに、ジュニアは内心冷や汗をかく。
「まずいな……。タイミングを見て、こちらで時間稼ぎをします。ですが、その間に通信をすれば、さすがに傍受される恐れもあります。救助ができるまでは、完全にカットアウトします」
『大丈夫だ。私もあなたが眠っている間に、そこそこの修羅場はくぐってきた。なんとかするさ』
それを最後に、ジュニアは通信を切る。
すると、体が歪んだかと思ったら、空間に解けるように姿を消した。
※
そして、ジュニアが感じ取った通り、13号機と、Mark9は不気味な暗闇が広がる、セントラルドグマの最深部へと到着した。
「ここが、そうなの?」
「ああ、セントラルドグマの最深部、そして、サードインパクトの爆心地さ」
その異様な光景には、さすがのシンジも閉口してしまった。
見渡す限りのしゃれこうべ。
そして、
「これは……リリス?」
「の、なれの果てさ」
ネルフが全力で守っていたと言われているリリスの、変わり果てた姿は、シンジの胸にえも言われぬ虚無感が去来した。
そして、その先端に、異物を捉えた。
「あれは、エヴァ?」
「エヴァMark6。自立型に改造され、リリンに利用された機体のその末路さ」
そしてついに、13号機はその異様な有様に降り立った。
「綾波。君はそのまま、いつでも離脱できるようにしてて。何があるか解らないから」
「了解」
そうして、シンジはリリスのなれの果てと、Mark6に突き刺さるものをその眼に捕える。
「あれが、その槍なの?」
「ああ。ロンギヌスと、カシウス。あの槍で、世界の再構築を、二人で……、いや、ちょっと待って」
「カヲル君?」
急に様子が変わったカヲルに、シンジは訝しんだ声をあげる。
「……おかしい。二本とも、形状が変化して揃ってる」
「どうしたの?何か気になる事でも……」
その突如、
「うわっ!!」
二人の背後で、急に爆音が響く。
「いったい、何が……」
その直後、凄まじいATフィールドの衝突音が響くと、
「弐号機?」
嘗て見慣れた、愛を告白した人の愛機がそこにはいた。
「アスカ!!なんで!?」
「ホンット、癪に障るわ。
両刃の得物を構えながら、アスカは後方に着地する。
「邪魔しないでよアスカ!こうしなきゃ……」
「アンタこそ、余計なことしてんじゃないわよ!!また、サードインパクトを起こすつもり!?」
「違う!おじさんを助けるためには、こうするしかないんだ!!」
「言ったでしょ!今更、あいつを助けたところで、何もかも遅いのよ!」
そして、アスカは再度攻勢に出る。
「アスカに何が解るっていうんだ!!」
それを、ATフィールドビットが押しとどめる。
何度も弐号機が攻撃を仕掛けるが、その度に攻撃を完全に押し返す。
「おじさんを殺した世界で、ボクは生きていたくないんだ。そうしないために、あの槍を……」
「それが余計なことだって言ってんのよ!!」
めげることなく、アスカは攻勢をかける、
だが、
「しまっ!!」
Mark9が、携えた鎌で迎撃する。
「綾波!!」
「くっ!マリ!!」
アスカの叫びと共に、異なる衝撃音がMark9の得物を弾き飛ばす。
「援護射撃、いっつも遅いっ!!」
「めんごめんご。ゆるしてちょんまげ」
冷たい目線が、Mark9に照準を合わせていた。
「さ~て、アダムスの器さん。余計なことは、しないで、ニャッ!」
その言葉と共に、すさまじい発砲音が、Mark9の身体を地面に沈めにかかる。
「綾波!!」
「よそ見すんな!!」
邪魔者がいなくなったことを見計らって、アスカは再度攻勢に出る。
「受け入れろ!リュウジは死んだ!!目の前に現れたあれは、ただの死にぞこないなのよ!!」
「そんなこと解ってる!!だから、あの槍で全てやり直すんだ!!」
シンジの言葉に呼応するように、ATフィールドビットが、アスカに襲い掛かった。
「くっ!!」
それを向かい撃たんと、アスカは両刃を振るわんとした時、
「なっ!?」
アスカの得物が寸分も動かなくなる。
「え!?」
ATフィールドビットも、何もない空間で動きを止めた。
「……ったく。殺り合うしか能がないのか。エヴァパイロットは」
「アンタまさか……」
「一体……?」
その突如、アスカとシンジの前の空間が歪み、
「少しは頭を冷やせ……」
「うわっ!」
「くぅっ!」
13号機と、弐号機を、凄まじい速さで吹き飛ばした。
「……バカどもが」
そして、ゆっくりと、
※
およそ、20分後
『……これをあなたが聞いているということは、私が任されたことは無駄には終わらなかった、と言うことでしょう。
まことにそれは喜ばしい。
……ですが、まずは謝らせてください。
どうやら、葛城を悲しませることになってしまった。
いや……悲しんでくれるのかな、あいつは……。それは私の願望かもしれません』
その突如、調整槽の中の眼が見開いた。
「思い出せましたか、自分が何者か……」
調整槽の中の眼は、ゆっくりと頷いた。
その様子を見て取った時田は、そう問いかけた。
「……では」
そうして、接続したウェアラブルコンピューターを操作し、囲っていたガラスのケースがせり上がり、LCLが流れ出ていった。
その流れと共に、彼は地面に流れ出ていき、ゆっくりと立ち上がる。
「……葛城大佐と、式波少佐は、無事でしたか」
「ええ。貴方のおかげで」
「……よかった」
「避難しましょう。ここにいては、巻き込まれる」
「ええ。行きましょう」
そして時田は、通信機を操作する。
「こちら時田、目標の救助成功。繰り返す、目標の救助成功!」
何話、とわ断言できませんが、そう遠くないうちに、Q編は終わりにするつもりです。
おそらくあと数話といったところでしょうか。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。
これからも応援、よろしくお願いいたします。