新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

46 / 72
あけましておめでとうございます。

今年も、皆様にご多幸をお祈りさせていただきます。

あと、更新が遅くて申し訳ありません。


Q-破滅あるいは再生-

14年前。

それは、ある種の贖罪だったのかもしれない

 

「……本当に、あの『棺桶』を再び飛ばすんですか?」

 

時田シロウの戦いが始まったのは、まさにこの時だった。

あの日、ガラクタとなっていた重力制御の実験機を、嘗ての実験体(盟友)が、

 

「貸してほしい」

 

と言ったその日から、徐々にではあるが、時田は渦中へと踏み込んでいくことになった。

そしてさらに決定的になったのが、剣崎から、

 

『四号機の再生は可能ですか』

 

という、余りに唐突な依頼をされた時だった。

 

「それは、リュウジからの依頼ですか?」

 

その時田の問いに、剣崎は答えなかった。

故にそれが、何よりの雄弁な答えとなった。

 

「……S2機関があるだけでは、とても再生は無理です。それに耐えうる代わりのものが無ければ」

 

『では、それがなんとかなれば、再生していただけると言う事ですね』

 

「そうです。是が非でも、なんとかして見せます」

 

資料を見た時田がそう言い切ったのも、贖罪だったのかもしれない。

だがそれだけではなかったのも確かだ。

碇リュウジと言う、破格の人物が自分に無茶ぶりを頼む。

それだけで、時田には得も言われぬ高揚感が芽生えていた。

そうして、時田と剣崎に加えて、加持までが加わり、四号機の再生に着手することとなった。

秘密裏に進めるに当たって、リュウジが残した諜報網を剣崎が駆使し、加えて加持が独自の伝手を使い、粛々と進められた。

さらに、リュウジの死亡と、その遺体が行方不明になったことがおおいに役に立った。ネルフとゼーレが、それらのことに気を取られたことで目眩しとなり、四号機を秘密裏に回収できたからだ。

もしかしたら、

 

「この事態もリュウジの狙いか?」

 

とも思えたが、今となっては時田の知りうるところではない。

それに加え第十の使徒と初号機の戦闘、並びにゼーレのシナリオにない、初号機をトリガーにするという事態が起こした混乱。

そのどさくさに紛れて、参号機の回収もすることもできた。

 

そして世界が滅ぶどさくさに紛れて、時田は剣崎と加持から4+3号機を作り上げる算段と、加持が守っていたものを引き継いで、身をくらませた。

 

(……思えば。これ程充実した時間になるとはな)

 

それらを思い出し、時田はふとそう感じている自分に酷く驚いていた。

それは決して、今日までの日々が楽しかったという訳ではない。むしろ、

 

「二度とゴメンだ」

 

と迷わずそう言い切れるほど、辛いという言葉の何十倍も筆舌にし難い苦しみばかりであった。

だがその苦しみと、滅んでしまった世界の中で、時田はそれまでの人生の中で、最も生きているということを実感していた。

 

そして……、それを噛み締めながら、時田は戦場へと向かう。

盟友を助けるために。

普段愚痴るばかりの時田だが、この時ばかりはこの任務を買って出た。時田としても念願の救出作戦だった。

 

(……ようやくだ)

 

慣れないステルス機に身を揺られながら、時田はネルフ本部へと近づいていく。

機内の傍らには、加持の残したカセットテープがある。

これで正気を取り戻すことができるかは、正直賭けであった。

 

『大丈夫ですか?時田さん』

 

「ああ。まもなくネルフ本部上空だ。バレないことを祈っていてくれ」

 

『機体が発見されることはないでしょう。もうレーダーなどというものは無いし、今更空に気を取られている暇は、連中には無いはずです』

 

「だが救出目標の場所は未だに不明だ」

 

『LCLの流れを辿り、それが消費されている箇所が、目安になるはず。尤もどれほどの量が使われているかは不明ですが』

 

「了解した」

 

『こっちもタイミングを見て奇襲をかけます。第一目的は何としても遂げるつもりですが、あの場に来るであろうパイロット達は、どれだけ脱出させられるか……』

 

「あなたのことだ。どう対応するかは任せる」

 

『了解。……時田さん。生きて帰って下さい』

 

「あなたも、無事(戦果)を持ち帰って下さい」

 

通信を切り、時田は機体を加速させる。

 

 

すでにプラグスーツに身を包んだシンジは、リュウジの眠る部屋へと来ていた。

 

「……多分。これが最後だ」

 

そう言うシンジは笑顔でこそあるが、あまりに悲しみを湛えたものだった。

 

「……最初にエヴァに乗って、その後病院で目を覚ました時、おじさん、泣いてたよね。後にも先にも、おじさんの涙を見たのは、あれっきりだった」

 

今思い返せば、それがシンジの思いを強固にしたのだ。

今まで助けてくれたリュウジへ、ようやく自分が何か恩返しができるようになったと思ったからだ。

 

「なんとなく分かってたよ。あの後も、おじさんはボクにエヴァから降りて欲しいって思ってたんだよね。変な言い方だけど、嬉しかった。ボクを、心配してくれて。ボクを、必要としてくれて」

 

リュウジには申し訳ないが、その心配が、シンジにとっては戦い続ける理由だった。

それは同時に、

 

「時に愛情は、暴力より残酷になる」

 

その事を誰よりも、痛感していたリュウジにとっては罪悪感ともなっていた。

では愛情の残酷さが牙を向かないようにするにはどうするべきか、単純にリュウジがシンジを見捨てればいい。

それを知っているリュウジは、尚の事、シンジを見捨てることはできなかった。

それを選べば、シンジは愛情を知る事がなくなるのでは無いか、とも考えていたからだ。

それは、大人の身勝手な暴力に他ならない。

 

「でもあの病室で誓ったんだ、おじさんだけは守るって。だから……」

 

リュウジを抱き締められない代わりに、シンジは調整槽に額をつける。

 

「ボクはおじさんを守る。おじさんが、世界よりボクを選んでくれたのと同じように、ボクも、おじさんを選ぶ」

 

それは、エヴァと言う武器を手に入れた時から、強固に固まった決意だった。

 

 

およそ、30分前。

 

シンジにあてがわれた部屋に、珍しくゲンドウが訪れていた。

 

「……私がなぜ来たか、解るな」

 

「用があるからでしょう?なら、さっさと済ませてよ」

 

「13号機が完成した、最初に言った通り、あの少年と乗り込め」

 

決してシンジはゲンドウの方を見ようとしない。

それを解っているのか、ゲンドウもそれだけ言うと、その部屋を後にしようとする。

 

「……どうして、こうまでするの?」

 

その言葉に、ゲンドウの足が止まる。

 

「自分の弟をあんなにしてまで、父さんは何をしたいの?」

 

「……聞いてどうする。人は所詮、互いに理解し合うことは出来ない」

 

「そうだね、でも父さんは、初めから理解するのを諦めた。おじさんとは違う」

 

理解できないなら、初めから己のエゴを優先し、周囲を顧みない。

そんな父が、シンジは逆に哀れに思えてならなかった。

 

「受け入れろ、シンジ。リュウジは死んだ」

 

「……そうだね。父さんが、どうあがいても勝てないから、怖いから、殺したんだよね」

 

シンジはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、いつも着替えが出てくる搬出口に立つ。

そして、いつもの制服ではなく、真新しい、黒を基調としたプラグスーツが出てくる。

 

「安心して、ちゃんと言われたことはするよ。……父さんの為じゃなく、ボクのために」

 

準備を始めたシンジを尻目に、ゲンドウは部屋を後にした。

 

 

そうして、シンジは自身の守りたいものの為にいつも戦ってきた。

エヴァと言う武器が、迷わず守りたいものの為に戦う決意を奮い立たせてくれた。

 

「シンジ君」

 

すると、同じプラグスーツを身にまとったカヲルが、シンジに声をかける。

 

「そろそろだ。行こう」

 

「……うん」

 

シンジはゆっくり振り返ると、静かに、力強く頷いた。

 

「シンジ君、一つ、提案があるんだ」

 

「提案?」

 

「そう、うまくいけば、リュウジさんを助けて、世界の修復もできる」

 

その言葉にシンジの顔が、ハッとしたかと思うと、カヲルの肩を掴んだ。

 

「本当?」

 

「ああ、鍵は、ドグマの爆心地に残る、二本の槍だ。君のお父さんやゼーレの目的である、人類補完計画に必要なものでもある。ボクらでその槍を手にして、第13号機とセットで使えば、全てやり直せる」

 

そして、カヲルも力強くシンジの肩を突かんだ。

 

「君にとって、リュウジさんが大切な存在なのは解る。でも、世界を滅ぼす選択を、君にしてほしいなんて、絶対思ってない。希望を持とう、シンジ君。―――それを、ボクも願ってるんだ」

 

「……ありがとう、カヲル君。一緒に、行ってくれる?」

 

「勿論さ。一緒に、リリンの希望になろう」

 

 

 

 

―――そして、警報音が響く中、13号機の下に、ドグマへと続くゲートが口を開く。

そして、カヲルと、シンジが乗り込むエントリープラグが、ゆっくりと差し込まれていく。

その中で、シンジは刹那の時間、光に包まれたかと思うと、すぐさま同じく乗り込んだカヲルが目に移り、互いに見つめあう。

そして、互いに頷き合う。

 

「「エヴァンゲリオン第13号機、起動!」」

 

 

『信号来ました!新型エヴァの起動を確認』

 

ノイズが激しいが、ジュニアの耳には傍受したヴィレの通信が入った。

諜報対策など、今のヴィレにも、ネルフにもほぼ存在しないため、ジュニアにとってはおもちゃをいじる程度で、情報を入手できた。

 

「時田さん。ヴィレが13号機の起動を検知した。リリスの結界が破られれば、アスカもマリも突入する。そっちの首尾は!?」

 

『まだだ。LCLの流れは把握したが、消費されている箇所が複数ある』

 

「恐らく最も消費されているのは、13号機建造、並びにアヤナミシリーズの調整のはずです」

 

『だがそれを除いても複数ある。』

 

ジュニアは一人、コア化した大地で、ネルフ本部がギリギリ眼の入る場所で、通信と傍受をしながら思案する。

 

(解っていたことだ。そう簡単に、目標の場所は解らない)

 

そうしていると、今度はジュニアの使徒としてのセンサーが反応を示した。

 

「……すまない時田さん。動きが思ったより早い。13号機がもうリリスの結界を突破した!」

 

『なに!?』

 

そのための13号機だと解っていたが、それでもこうも早くドグマへの入り口を突破されたことに、ジュニアは内心冷や汗をかく。

 

「まずいな……。タイミングを見て、こちらで時間稼ぎをします。ですが、その間に通信をすれば、さすがに傍受される恐れもあります。救助ができるまでは、完全にカットアウトします」

 

『大丈夫だ。私もあなたが眠っている間に、そこそこの修羅場はくぐってきた。なんとかするさ』

 

それを最後に、ジュニアは通信を切る。

すると、体が歪んだかと思ったら、空間に解けるように姿を消した。

 

 

そして、ジュニアが感じ取った通り、13号機と、Mark9は不気味な暗闇が広がる、セントラルドグマの最深部へと到着した。

 

「ここが、そうなの?」

 

「ああ、セントラルドグマの最深部、そして、サードインパクトの爆心地さ」

 

その異様な光景には、さすがのシンジも閉口してしまった。

見渡す限りのしゃれこうべ。

そして、

 

「これは……リリス?」

 

「の、なれの果てさ」

 

ネルフが全力で守っていたと言われているリリスの、変わり果てた姿は、シンジの胸にえも言われぬ虚無感が去来した。

そして、その先端に、異物を捉えた。

 

「あれは、エヴァ?」

 

「エヴァMark6。自立型に改造され、リリンに利用された機体のその末路さ」

 

そしてついに、13号機はその異様な有様に降り立った。

 

「綾波。君はそのまま、いつでも離脱できるようにしてて。何があるか解らないから」

 

「了解」

 

そうして、シンジはリリスのなれの果てと、Mark6に突き刺さるものをその眼に捕える。

 

「あれが、その槍なの?」

 

「ああ。ロンギヌスと、カシウス。あの槍で、世界の再構築を、二人で……、いや、ちょっと待って」

 

「カヲル君?」

 

急に様子が変わったカヲルに、シンジは訝しんだ声をあげる。

 

「……おかしい。二本とも、形状が変化して揃ってる」

 

「どうしたの?何か気になる事でも……」

 

その突如、

 

「うわっ!!」

 

二人の背後で、急に爆音が響く。

 

「いったい、何が……」

 

その直後、凄まじいATフィールドの衝突音が響くと、

 

「弐号機?」

 

嘗て見慣れた、愛を告白した人の愛機がそこにはいた。

 

「アスカ!!なんで!?」

 

「ホンット、癪に障るわ。ジュニア(アイツ)の言う通りなんだから……」

 

両刃の得物を構えながら、アスカは後方に着地する。

 

「邪魔しないでよアスカ!こうしなきゃ……」

 

「アンタこそ、余計なことしてんじゃないわよ!!また、サードインパクトを起こすつもり!?」

 

「違う!おじさんを助けるためには、こうするしかないんだ!!」

 

「言ったでしょ!今更、あいつを助けたところで、何もかも遅いのよ!」

 

そして、アスカは再度攻勢に出る。

 

「アスカに何が解るっていうんだ!!」

 

それを、ATフィールドビットが押しとどめる。

何度も弐号機が攻撃を仕掛けるが、その度に攻撃を完全に押し返す。

 

「おじさんを殺した世界で、ボクは生きていたくないんだ。そうしないために、あの槍を……」

 

「それが余計なことだって言ってんのよ!!」

 

めげることなく、アスカは攻勢をかける、

だが、

 

「しまっ!!」

 

Mark9が、携えた鎌で迎撃する。

 

「綾波!!」

 

「くっ!マリ!!」

 

アスカの叫びと共に、異なる衝撃音がMark9の得物を弾き飛ばす。

 

「援護射撃、いっつも遅いっ!!」

 

「めんごめんご。ゆるしてちょんまげ」

 

冷たい目線が、Mark9に照準を合わせていた。

 

「さ~て、アダムスの器さん。余計なことは、しないで、ニャッ!」

 

その言葉と共に、すさまじい発砲音が、Mark9の身体を地面に沈めにかかる。

 

「綾波!!」

 

「よそ見すんな!!」

 

邪魔者がいなくなったことを見計らって、アスカは再度攻勢に出る。

 

「受け入れろ!リュウジは死んだ!!目の前に現れたあれは、ただの死にぞこないなのよ!!」

 

「そんなこと解ってる!!だから、あの槍で全てやり直すんだ!!」

 

シンジの言葉に呼応するように、ATフィールドビットが、アスカに襲い掛かった。

 

「くっ!!」

 

それを向かい撃たんと、アスカは両刃を振るわんとした時、

 

「なっ!?」

 

アスカの得物が寸分も動かなくなる。

 

「え!?」

 

ATフィールドビットも、何もない空間で動きを止めた。

 

「……ったく。殺り合うしか能がないのか。エヴァパイロットは」

 

「アンタまさか……」

 

「一体……?」

 

その突如、アスカとシンジの前の空間が歪み、

 

「少しは頭を冷やせ……」

 

黒鉄(くろがね)と、白銀(しろがね)の機体が姿を現し、

 

「うわっ!」

 

「くぅっ!」

 

13号機と、弐号機を、凄まじい速さで吹き飛ばした。

 

「……バカどもが」

 

そして、ゆっくりと、4+3号機(ジュニア)が立ち上がった。

 

 

およそ、20分後

 

『……これをあなたが聞いているということは、私が任されたことは無駄には終わらなかった、と言うことでしょう。

 

まことにそれは喜ばしい。

 

……ですが、まずは謝らせてください。

 

どうやら、葛城を悲しませることになってしまった。

 

いや……悲しんでくれるのかな、あいつは……。それは私の願望かもしれません』

 

その突如、調整槽の中の眼が見開いた。

 

「思い出せましたか、自分が何者か……」

 

調整槽の中の眼は、ゆっくりと頷いた。

その様子を見て取った時田は、そう問いかけた。

 

「……では」

 

そうして、接続したウェアラブルコンピューターを操作し、囲っていたガラスのケースがせり上がり、LCLが流れ出ていった。

その流れと共に、彼は地面に流れ出ていき、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……葛城大佐と、式波少佐は、無事でしたか」

 

「ええ。貴方のおかげで」

 

「……よかった」

 

「避難しましょう。ここにいては、巻き込まれる」

 

「ええ。行きましょう」

 

そして時田は、通信機を操作する。

 

「こちら時田、目標の救助成功。繰り返す、目標の救助成功!」




何話、とわ断言できませんが、そう遠くないうちに、Q編は終わりにするつもりです。

おそらくあと数話といったところでしょうか。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも応援、よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。