新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
こんな考えもあるんだな〜、と思いながら読んでいただくと幸いです。
時田はリュウジからの通信を受けると、目をつぶり天を仰いだ。
「……了解。成功を祈る」
そういうと、通信を切る。
「……やはり、教官は放ってはおけませんでしたか」
「そりゃそうでしょう。あんなことを知って、黙っているような人じゃない」
剣崎はこの時、僅かながらの後悔の表情を浮かべた。
「なに、彼のことだ、遅かれ早かれ彼自身で知ることになっていただろう。気に病むことは無い」
そんな剣崎の心情を察してか、時田は慰めの言葉をかけた。
「むしろ、私こそ、あなたに謝らなければ。私の手際が悪かったがばかりに、あなたにいらぬ役を押し付けてしまった」
剣崎は首をゆっくりと振った。
「それこそ気に病まないでください。教官を守る為には、遅かれ早かれ複製が必要でした」
「ですが、あなたはそのせいで……」
「今はよしましょう。脱出が先です」
「……そうだな。いこう」
時田と剣崎は立ち上がると、その部屋を後にした。
※
一方のリュウジは通信を切ると、ゆっくりと周囲を見渡す。
「どういう…こと……。教官」
マリがなんとか言葉を絞り出す。
「どういう事とは?この身体になった事か?それともこの機体に乗っている事を言っているのか?」
どこか冷めた口調のリュウジの言葉を、ヴンダーの乗組員も、ミサトを含め信じられないというような面持ちで聞き入っていた。
「なんで、……なんでアンタがフォース・インパクトを起こすのよ」
「それを聞いてどうする?仮にやむを得ない事情があったとして、お前たちは『はいどうぞ』となるのか?」
「裏切るの?私達を」
「裏切る?仲間になった記憶はないがな」
「くっ!」
マリはとっさにライフルを構える。
だが、その銃口は僅かに震えていた。
「マリ……」
アスカはいつも見ない雰囲気のマリに、驚きを隠せない。
当のマリも、
「どうした?マリ。見たところ、
そんなマリの心情を言い当てながら、リュウジは手を広げながらゆっくりと歩み寄る。
対するマリは、歴戦の戦士とは思えぬ程、その表情に怯えが見えた。
そんなマリに、急接近したリュウジに対応しろと言うのは無理な話だった。
気付けばマリは倒されていた。
とっさに構えて立ち上がろうとするが、肝心のライフルはリュウジの手中にあり、あっという間に分解されてしまう。
「うぉぉおおおお!!」
アスカはなんとか重い足を前に踏みだし、接近戦を挑むが、いきなり視界がふさがる。
分解したライフルの部品が投げられ、目くらましとなったのだ。
アスカが混乱したのは一瞬だったが、リュウジとしてはその一瞬で十分だった。すぐさま手を掴み捻りあげるとともに、
「クハッ!!?」
あらぬ方向に折れた腕を抱え、痛みに顔をゆがめながらアスカは倒れた。
「女に、手をあげるなんて、最低」
「……だから言っただろ。幻滅するって」
「おじさん!」
そしてついに、シンジ達がリュウジと対峙する。
リュウジもシンジの言葉に呼応するように、13号機へと向き直る。
「もう戻れ、シンジ」
シンジに向けても、リュウジは冷たく言い放った。
「脅しの材料に使われていたのは、ゲンドウが用意した俺の影武者だった。ならばもう、お前がエヴァに乗る理由はない」
「それは……」
「お前はもう、何もするな。それが、お前の為でもある」
「……何だよそれ、―――何でおじさんも、ミサトさんと同じこと言うんだよ!」
「ゲンドウはお前を利用することで、己の願いを成就させる気だ。お前が何かしようとすればするほど、アイツの狙い通りに事が運ぶ。お前も解るはずだ」
「……じゃあ、なんでおじさんはフォース・インパクトを起こそうとするんだよ」
「それが俺の戦いだからだ」
「教官!」
いつの間にか立ち上がったマリが、リュウジの背後に立っていた。
「あなた……、恨んでるの?」
「……何のことだ?」
「私やユイさんが、あなたを利用したこと。何も、話さなかったことを」
その言葉にリュウジは、一間目をつぶる。
「恨みどころか、俺の中にはもう何もない。後悔も、何もかも。―――俺がここにいるのは、己の罪を
「そのために、人類すべてを滅ぼすの?」
「人類を滅ぼしても意味はない、円環は続く。終わらせるには、定められた物語の始まりを、終わらせるしかない。―――それが俺の贖罪であり、戦いの始まりとなる」
「……そう、意志は変わらないんだ」
そして腰に差していた、ハンドガンをマリは構えた。
「前に言ったよね。介錯は是が非でも私がするって」
「……ああ」
「マリ!だめだ!」
「シンジ君。君には悪いけど、これは私の役目だから」
静かな殺意と覚悟とともに、マリはリュウジと対峙する
「……マリ。お前はそんなことしなくていい」
だが対照的に、リュウジは構えるどころか、戦闘の意志すら示さない。
「そんなことって……」
「お前に介錯される価値すらも、俺にはない。目の前にいるのは、地獄でも浄化できぬほどの罪を背負った、哀れな
「……そう。なら……」
「フン!!」
突如、
「何をしてでもアンタを止める」
だが完全にバランスを崩したわけではない
(やはり甘かったか……)
一撃も入れられないとすれば、即座に持ち直した
そう考えた時、
「まだだ!」
「マリ!今だ!!」
「ああああああああああ!!」
遂に完全なる隙を生まれると同時に、マリは一気呵成に攻める。
※
「にしても、大丈夫なんですか?」
「何がです?」
脱出を図りながら、剣崎は時田に聞きたいことがあった。
「確かに、教官の戦闘技術は、どのエヴァパイロット達より上でしょう。ですが、エヴァを動かす技術は……」
「シンクロ率が高ければ、おのずと解決します」
「ですから、それ自体余程の訓練をしないと」
「それは、『彼』自身の使徒の能力が解決してくれた」
※
「ぐ、くぅっ!」
もう一方の手を出そうとするが、
「どうしたマリ。もっと痛みをくれ」
急に機体に見えない重さが圧し掛かったかのように、体が沈んでいく。
「うおおお!!」
「なっ!」
背後に眼があるかのごとく、
「どうした神の機体。最後の執行者にしては、随分とひ弱だな」
「このぉっ!!」
「ガッ!?」
その間にも、
「く、くぅっ」
遂に
そのさなか
だが既に
「まずは君からだ、レイ」
そしてマウントを取ると、もがいていたMark9が糸が切れたかのように動かなくなった。
「なぜ?リンクが回復しない」
「よかった、うまくいった。悪いが、今のMark9は、俺の制御下だ。いや、タブリスの、と言った方がいいかな」
そういうとエントリープラグの差込口をこじ開けると、
「まずは、一人目」
エントリープラグを強制射出させ、一気にセントラルドグマ最深部から脱出させた。
「器になる前でよかった」
「やはりだ、あのパイロット……」
その様を13号機の中から見ていたカヲルが、あり得ないものを見る表情になる。
「カヲル君?」
「でもありえない、そんな記憶は何も引き継いでいない……」
「カヲル君!しっかりして!」
その隙をリュウジが逃すはずが無かった。
「ぐっ!」
跳びかかった
「トリガーになる前に、早く帰れ」
だがすぐに立ち上がり、なんとか構える。
そして拳を繰り出すが、
「ぐっ、くぅ……」
シンジもカヲルも痛みに表情を歪め、たまらず両膝を折ってしまう。
「これだな」
そう呟くと、もがいていた13号機が、先程のMark9と同様に動かなくなる。
「こっちも、覚醒前なら何とかなったな。……解ってる、そう時間はかからない」
そして、狙いを定めると、カヲルのエントリープラグを強制射出させる。
「加持さん。約束ははたしましたよ」
その呟きは、リュウジ以外の耳に入ることはなかった。
「おじさん、教えてよ!一体……」
「俺がなんとかする。だから任せろ」
そしてシンジのエントリープラグも、射出させた。
「これで後二人だが、下がる気は……」
「「あああああああ」」
「ないようだな」
同時に挟み撃ちに放った拳を、
『こちら時田、無事に脱出成功、これより離陸する』
「了解。とにかく離れてください」
そういうと、掴んでいた腕を離し、目的のMark6へと目線を向けた。
「お前たちはもう帰れ、二人なら、ここから自力で脱出できるだろう」
倒れた二人を尻目に、肥大化し封印されたリリスへと向かおうとする。
「リュウジ!!!―――まだ終わりじゃない!終わらせない!!」
だが立ち上がったアスカが、リュウジに最後の勝負に出た。
「前に言ったわよね、いつかアンタを、ボコボコにしてやるって」
そして顔を痛みにゆがめながら、
「グゥッ!!」
リュウジに折られた腕を無理やり直す。
「マリ、アンタはさっき射出された三人を回収して。私はこいつをぶん殴って、ミサトたちの前に引きずってでも連れてって、頭を下げさせてやる」
「……解った。あの三人はなんとかする。―――死なないでね、アスカ」
そうしてマリが脱出していくのを、アスカは勿論リュウジも邪魔することなく見送った。
「アスカ。悪いが、俺は謝る気はない。許しを請う資格すら、俺にはない」
「知るか!とにかく、アタシと来い!アンタを待ってる人がどれだけいると思ってんのよ!」
「俺が彼らにできることはもうない。俺ができるのは、俺がまき散らした罪を
リュウジの物言いに、アスカは悔しさの表情を浮かべた。
嘗て自分をまっすぐ愛してくれた人はすでにいない。
眼の前にいるのは、罪の意識に苛まれ、全てを背負う病に侵された病人だった。
「解った。なら、アタシが終わらせてあげる」
その病には、たった二つしか対処はない。
永遠に罪を贖う戦いを続けるか、死ぬことだけ。
「―――悪いが、まだ終われない」
そしてリュウジには、死ぬなどと言う選択肢はなかった。
と言うより、ここから始めるのだ。
贖罪の戦いを。
「モードチェンジ。裏コード
そういうが早いが、弐号機がうなり声をあげる。
それと同時に背中にグロテスクな突起物がいくつも隆起し、装甲がはがれる。
そして弐号機の口には鋭い牙が並び、特に下あごには犬歯のように伸びた牙がむき出しになった。
そして徐々に四つん這いになると、四肢も獣の如く変化していく。
だがその様を見てなお、リュウジは構えることは無かった。
「……悪手だな。アスカ」
「その口、速攻黙らせてやる!」
瞳を緑に光らせ、眼帯からも青い光をこぼしながら、
「ああああああああああ!!!」
そして一気に、その喉元を食い破らんと弐号機は食いついた。
(……え?)
だがすぐさまアスカは違和感を感じた。
感触が無いのだ。
正しくは何かに食いついたのは確かなのだが、エヴァの喉元に食いついたという感触が無い。
「教えてやる、獣では絶対に俺には勝てない」
次の瞬間、目の前の
「何が……」
「光学迷彩は姿を消せるのではない、見えないという錯覚を起こすに過ぎない。逆に言えば、姿がそこにあるように錯覚させることもできる」
そのさなかも弐号機は拘束を解こうともがくが、それも徐々に落ち着いていった。
「さすがに完全にコントロールは奪えないが、プラグ深度はプラスになったな」
その影響か、弐号機の姿も徐々に戻っていく。
「人は確かに個としては弱い。だからこそ集団としての強さを手にした、等とよく言うが、俺に言わせれば
それに合わせ、4+3号機が徐々に弐号機の身体の拘束を強めていく。
「
「う、うう……」
そして、アスカは意識を手放した。
「もっとも、使徒と化した俺が言っても説得力はないか」
そして
「さて、……仕事だ13号機」
すると、突如13号機が反応を示す。
そしてまさに電源が戻ったかのように、起動し、その眼は紅く染まっていた。
「……ありがとう、タブリス。最後に、俺の我がままに付き合ってくれて」
そして13号機が、封印されたリリスをよじ登っていく。
「後は俺がやる。君の力を引き継いだ、俺が」
その様を見守るように、
「約束する。必ずやり遂げる」
そして13号機はついにMark6の上に登り、二対目の腕が展開され、二本の槍を掴む。
「そして必ず助けに行く。だから、今はサヨナラだ」
―――そしてついに、槍が抜き放たれた。
※
「ごらんのとおりです。リュウジの力を持って、死海文書の契約改定を成しました。手段こそ歪ですが、あなた方の願いどおりです」
ゲンドウがゼーレのモノリスの前で、淡々と話す中で、そのうちの一つが電源が切れたかのようにこと切れる。
「奴はここまで自分の狙い通りだと思い込んでいます。あなた方の思惑だとも気づかずに」
そして次々と、その命が終わっていく。
「そして奴とて、決して死からは逃れられない。であるならば、最後には私が勝ちます」
そしてゲンドウの目の前のモノリスが、最後に残る。
「宿願たる人類補完計画と、諦観された神殺しは、私が弟の死を持って行います。ご安心を」
『我らの願いはすでにかなった。……よい、全てこれでよい。―――人類の補完。安らかな魂の浄化を願う』
そして最後の命が、福音と共に絶えた。
ここにゼーレは、その悠久を終えた。
予定では次回でラストとなります。
月内に更新できるかは正直未定です。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
誤字脱字等、ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。
これからも応援よろしくお願いします。