新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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なんとか月内にQ編を終わらせられました。

次回からシンへと突入します。


Q-そしてSin(罪)へ-

崩れていくリリスの血を浴びながら、リュウジはホッとしていた。

 

(……だが、ここからだ)

 

しかし瞬時に気の緩みは消え、宙で不気味に蠢く、横たわるMark6へと視線を向ける。

リュウジはそれに歩み寄りながら、

 

「出番だ」

 

と言い放つと、肩のウェポンラックが突如腕へと変化する。それはかつて侵食された三号機のパーツだった。

そしてMark6をその腕で抑え込む。

 

「安心しろ、俺が用があるのはお前じゃない」

 

そういうとMark6のエントリープラグを強制射出させ、その直後ATフィールドで首を切り落とす。

弐号機(アスカ)を肩に担ぎつつの作業ではあったが、かつて侵食されて形成された二対の腕のおかげでスムーズに進められた。

 

「よし。目的は果たした。あとは……」

 

その直後、切り落とされた首から、黒く長いファイバーケーブルのようなものが、蛇のようにうねりながらMark6から排出されていく。

それが浮遊する13号機に、繭の様にまとわりついていくのを、リュウジはどこか冷めた目で見ていた。

 

「哀れなもんだ。第12の使徒ともあろう者が、これじゃまるで贄だ」

 

そしてコアと化して行く様を見ながら、自身の胸に手を当てる。

 

(さて、今度は冬月さんとの約束を果たさなきゃだな)

 

 

マリは一人地上へ這い出た。

 

(ゴメン、アスカ。私の役目なのに)

 

リュウジを殺すことになった時は、是が非でも自分がすべきだと覚悟していた。

それはマリの中にある、ある種の矜持でもあったのだが、今のマリでは勝つ見込みはない。勝てるとすれば、万が一の可能性だが、獣化形態の弐号機であればまだ望みはあるとマリは踏んだ。

 

(早く、シンジ君達を確保しないと)

 

だがマリの中の冷静な部分は九分九厘、アスカは負けるとみていた。

そう考えている以上、フォース・インパクトが起こることを前提に動かなければならない。

そしてアスカ自身もそう考えているからこそ、自分にシンジ達の確保を任せたのだろう。

そんな思考を巡らせていると、先ほどマリが這い出た穴から、エントリープラグが再び射出されていった。

 

「まさか、アスカ!?」

 

リュウジに負け、他のパイロット達と同様に強制排出されたのだとすれば、

 

「まずい、時間がない」

 

そう思うが早いが、凄まじい轟音がマリを襲った。

そして、天へとそびえたつ嘗てのネルフ本部を何かが突き抜けていった。

 

「……教官。本当にフォースを発動させる気?」

 

天には覚醒した13号機が、二本の槍を構え神とも悪魔とも思える姿を現していた。

 

「このむこうに魂の部屋があるのか。とてもじゃないが、スズメがさえずるような雰囲気はないな」

 

地上に出たリュウジは、肩に担いでいた弐号機(アスカ)を優しく横たえる。その近くには、先ほどMark6から射出させたエントリープラグが横たわっていた。

リュウジはそれを確認すると静かに浮き上がり、滞空する13号機目掛けて飛翔した。

そのとき13号機の真上には、紅い扉が円を広げるように開いていく。

それと同時に凄まじい破壊音と共に、地上を破壊しながら何かがせり上がる。

 

「黒い月を本来の用途とは違う使い道を考えるとは。冬月さんも随分と無茶をする」

 

するとそこに、さらなる轟音が響く。

 

「来たな。葛城さん」

 

 

「怯むな!主砲一斉掃射!何としてもフォースの発動を食い止めるのよ!!」

 

ミサトは納得できない心を必死に封じ込め、己の役目を懸命に果たそうと指令を出す。

 

「敵ATフィールド、損傷なし」

 

だが陽電子砲ですら、ほぼ無傷で防ぎきるATフィールドにさえぎられ、ヴンダーの攻撃はようとして意味をなさない。

 

「ATフィールド全開。直接敵ATフィールドを中和させる!」

 

だがその瞬間、ブリッジに轟音が響く。

 

「主砲被弾!!」

 

「重力制御被弾!姿勢維持できません!!」

 

4+3号機(リュウジ)がそれを黙って見ている筈もなく、回転ノコギリの様に投げられたATフィールドが、ヴンダーの機体を文字通り削り取る。

 

「予備装置に切り替え、回復次第第二波攻撃を続行」

 

怯まずに指令を出し続けるが、

 

(リュウジさん。あなたでさえ、滅びを選ぶと言うの)

 

心の奥底では、リュウジの選択に絶望を感じつつあった。

 

 

「ぐっ……くぅっ!」

 

一方の地上では、シンジがエントリープラグからなんとか這い出していた。

 

「シンジ君。大丈夫かい?」

 

「カヲル君!よかった」

 

そこには既に脱出していたカヲルが駆けつけていた。

 

「これは……一体」

 

「フォース・インパクト、その始まりの儀式さ。―――ほら、あそこ」

 

カヲルはガフの扉の中心点を指し示す。

 

「あれは……13号機?誰も乗ってないはずなのに」

 

「理由は解らない。だが君のおじさんはどういうわけか最後の使徒であり、アダムスの魂も持っている。だからこそフォース・インパクトを引き起こせた」

 

その経緯が解らず、カヲルは混乱を極めていた。

もしそんな人物が存在するのであれば、何故自分が把握していないのか。

 

「……とにかく、おじさんをなんとかしないと」

 

「そうだね、でもボクらでは……」

 

『お~い。シンジ君~』

 

そこに八号機が駆け付ける。

 

「マリ!?無事だったの?」

 

『なんとかね』

 

「アスカは?」

 

シンジの問いに、マリは首を振る。

 

『最後に残って、教官と一騎打ちになったけど、結局負けたみたい。アタシが脱出した後、すぐにエントリープラグが飛んで行ったから』

 

「……そっか。―――マリ、綾波とアスカはボクらで何とかする。君はおじさんを止めに行って」

 

『でも、君達は……』

 

「どのみち、おじさんを止めないと全てが終わる。そして今、おじさんを止めに行けるのは、君だけだ」

 

『……了解。アスカの事、頼んだよ!シンジ君!』

 

「うん!アスカのエントリープラグは、どっちに?」

 

『脱出口から南西に飛んでった』

 

そういうと、マリは方角を指差した。

 

「解った!綾波を助けてから、アスカとも合流する!―――ミサトさんを助けてあげて!」

 

『ラジャ!』

 

 

「13号機の覚醒。黒き月の顕現。……ここまではお約束通りです。冬月さん」

 

『ああ、ご丁寧にな。……ありがとう、リュウジ君』

 

「こちらこそ、シンジと剣崎の件は、本当にありがとうございます」

 

『あのまま、あの少年に無理をさせては、君に何を言われるかわからんからな』

 

「……駒と道具は揃えました。後の準備はお任せします」

 

『ああ。駒を並べ、戦場(いくさば)を整えておくとしよう』

 

「後は順に沿って、私があなたと兄の術中にハマればいい」

 

『……やはり、意志は変わらんか』

 

「今更でしょう?そもそも、そんなことをすれば、あなたの望みは叶わない」

 

『すまん。……ありがとう』

 

 

 

 

 

 

「……もういいんですか?」

 

「ああ、これでひとまずは落着だ」

 

「よかった。正直、もう限界でした」

 

「すまない。だいぶ無理をさせた」

 

「ううん。ですが、まだ……」

 

「解ってる。力づくにはなるが、ガフの扉は俺が閉じる」

 

「気を付けてください。その力は、いずれあなた以外を補完させる」

 

「その前に終わらせる。だから大丈夫だ。―――ここまでありがとう。また会おうタブリス。いや……カヲル」

 

 

「13号機が……」

 

マリが天を仰ぎながら、ガフの扉の中心地へと向かっていると、13号機がこと切れたかのように槍を手放し、そのまま落下していった。

だがなおもガフの扉は閉じる気配がない。

 

「やはり、教官をなんとかしないと……フン!!」

 

掛け声とともに、マリは傾いたヴンダーの羽に手を伸ばし、そのまましがみ付いた。

 

「もしも〜し。艦長聞こえる?」

 

『マリ。ちょうどよかった。これより再度4+3号機に向かう。……任せたわよ?』

 

何をとは葛城は言わない。

 

「もちのろん。最初っからそのつもり」

 

だがマリは言わずともわかった。

姿勢制御を回復し、マリを乗せたヴンダーは再び上昇を始める。

 

「ATフィールドを中和次第、残った主砲を一斉掃射!」

 

「了解!主砲スタンバイ!」

 

「待って。あれは……」

 

4+3号機が天を見上げながら両手を掲げると、ATフィールドが、開いていくガフの扉を上回る速さで展開していく。

 

「これがATフィールド?」

 

余りに桁違いな規模のATフィールドに、ミサトは驚愕を隠せない

 

「何をする気なの?」

 

『まさか……。でもなんで』

 

そしてガフの扉を包むように、今度は急速にATフィールドが縮小していく。

 

『教官が力ずくでガフの扉を閉じてる!?』

 

「バカな、ありえない!こんな規模のATフィールド」

 

 

一方で地上では、シンジがエントリープラグから、なんとかレイを救出している最中であった。

 

「大丈夫?綾波」

 

「ええ」

 

そうして外へ出ると、

 

「カヲル君?」

 

カヲルが空を見上げて、呆然としているのが目に入り、シンジも同様に空を見上げる。

そこには、桁違いのATフィールドを展開し、異様な威圧感を感じさせるガフの扉を閉じている4+3号機があった。

 

「……すごい」

 

「なんて、規模のATフィールドだ」

 

カヲルは内心、背筋に冷たいものを感じていた。

今までこれ程の規模のATフィールドを見たことが無かったというのもあるが、それを操って見せていることにも空恐ろしさを感じていた。

 

「……これって、おじさんがフォース・インパクトを止めたってこと?」

 

「そうみたいだ。……何が目的かは解らないけど、少なくとも世界を崩壊させるつもりは無いってことなのかもしれない」

 

その言葉を聞いたシンジは、膝から崩れ落ちた。

それを心配したレイがしゃがみ込み、シンジの肩に手を添える。

 

「シンジ君?」

 

カヲルも心配そうに声をかける。

 

「……よかった。……ボク、おじさんが、どうか…しちゃったのかと」

 

カヲルの言葉を聞いたシンジの心中には、急速に安堵が込み上げ、その安堵がシンジの眼から涙をあふれさせた。

 

 

ヴンダーのブリッジでは、ガフの扉が無理矢理閉じられていく光景に、ほぼ全ての人間が圧倒されていたが、

 

「……艦長」

 

一人だけしわがれた声を響かせた。

高雄だった。

 

「今、4+3号機は……無防備な、…状態です。殲滅するなら、今しか、ありません」

 

主砲発射ボタンに手を置き、高雄は声を震わせながら進言した。

リュウジが何を目的とし、フォース・インパクトを発動させたのか、理由はわからない。

だが、現状終息させていることを見れば、世界を滅ぼす意思はないのは間違いなかった。

恐らく高雄は、それをここにいる誰よりも安堵していた。

 

「ボ……碇リュウジは、フォース・インパクトをお、起こしました。第一級の危険人物をこのままにしておくのは……」

 

だが軍人として、なによりヴィレの一員として、リュウジが世界を崩壊させる一歩手前まで、危険を犯した事実は看過してはならない。

何か考えがあったのかもしれない、フォース・インパクトを発動させなければならない、事情があったのかもしれない。そんな思考が高雄の中を駆け巡る。

だからこそ、高雄は自分が、そんな甘えを捨て、毅然とした態度をとらねばと、己を鼓舞した。

だが、その震えた手と、しわがれた声を聞いた誰もが、高雄の断腸の思いを感じていた。

 

「……いえ、待機します。4+3号機がガフの扉を閉じている以上、今下手に攻撃を加えれば、どんな影響が出るかわからない。……マリ!」

 

『こっちも警戒しながら待機、かにゃ?』

 

「ええ、頼むわ。ーーー高雄機関長」

 

「……ハ」

 

「あなたは正しい進言をした。気に病まないで」

 

「ありがとう…ございます」

 

そのやりとりに多くは胸を撫で下ろしたが、ミドリだけは小さく舌打ちをした。

 

そして遂にガフの扉が閉じられる。と同時に4+3号機が事切れたかのように落下していく。

 

「教官!!」

 

いち早く反応したマリは、ヴンダーの上を駆け、落下していく4+3号機にしがみついた。

 

「聞きたいことが山ほどあるから、あとでキッチリ説明してよね。ーーーだけど……」

 

マリは4+3号機のプラグ射出のボタンを探し、

 

「まずはシンジ君とアスカに、思いっきり殴られてこい!!」

 

狙いを定めると、プラグを強制射出させた。

 

「艦長!八号機と4+3号機(コイツ)、回収よろしく!!」

 

そして自身も空中で身を捻り、狙いを合わせ、エントリープラグを強制射出させた。

 

 

小さな金属音を響かせ、リュウジはケースから葉巻を取り出した。

手慣れた手つきで、葉巻に火をつけると、先程までの天変地異がウソの様に静かになった空と、紅く染まった大地を眺め、紫煙を吐き出す。

紅い大地に刺さったエントリープラグの上で、そんな異様な静けさを眺めながら、リュウジは片足をブラブラと振り子のように振っていたが、

 

「……さてと」

 

徐に立ち上がると、近くの弐号機と、少し離れたところに同じく刺さっているエントリープラグへ順繰りと視線を流す。

 

「……ひどいありさまだな、全部ゼーレのシナリオ通りだ」

 

地面に転がった黒い月を眺め、のんきにそんなことを呟いていると、そこに五つの影が近づいてきた。

 

「もっとも、ゼーレも俺がそのシナリオを実行するとは思わなかったろうが」

 

「……おじさん」

 

「そんな顔をするな。たのむから」

 

シンジの悲しげな表情を見て、更に近くに不機嫌な表情を二つ見る。

 

「そっちの、何か言いたげな表情の方がまだいいな」

 

そう言って、リュウジはエントリープラグから飛び降りた。

 

「にしても……」

 

「なに?」

 

リュウジはその不機嫌な表情の片方である、マリをまじまじと見ると、

 

「……やっぱり、俺より歳上には見えないな」

 

「なっ!」

 

「ふざけてないで、ちゃんと説明してよ!リュウジ!!」

 

「悪いな。それよりやることがある」

 

アスカの怒気のはらんだ言葉を尻目に、リュウジは近くにあったMark6から射出されたエントリープラグへと向かった。

 

「フン!」

 

ハッチをこじ開け、その内部に蹲る紅い影をみつけると、リュウジはゆっくりと降りていく。

 

「……だいぶ弱っているな。無理もない」

 

その眼に光は無く、表情に生気は感じられなかった。

それでも身体的に異常はなさそうであると判断すると、

 

「すこし、我慢してくれ」

 

肩に担ぎ、なんとかエントリープラグから出る。

そうしてリュウジが担いできた人物に、

 

「……アスカ?」

 

「リュウジ、あんた……」

 

シンジは訳が分からなくなり、アスカはそれ以上言葉を続けることができなかった。

 

「それが……貴方がフォース・インパクトを起こした理由」

 

マリがようやく納得した表情を浮かべた。

 

「彼女は、世界の為に犠牲になった。なら……、助ける為には、世界をかけなきゃな」

 

そういうとリュウジは通信機を取り出す。

 

「こちらリュウジ。応答願う」

 

『こちら時田、首尾は?』

 

リュウジは立ち上がり、彼女を見下ろした。

 

「救出作戦成功!式波シリーズ、オリジナルアスカ、確保しました!」




この顛末は、あくまで作者の解釈の下書き上げたものです。
色々な考察や考えがあると思いますが、それこそがエヴァであり、その魅力であると思います。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字などございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも応援よろしくお願いします。
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