新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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投稿が遅れて申し訳ありません。

仕事が……、仕事が憎い。

後観たい映画が増えるのが悪いwww

一ヶ月くらいニートになりたいです。


Sin-止められない現実-

シンジは、二段ベッドの上で寝ころび、天井を見上げていた。

 

(知らない天井……。なのになんでこんなに落ち着いていられるんだろう)

 

あれ程の混沌を目の当たりにしながら、シンジは至って冷静だった。

先程のアスカとの会話にしても、聞きたいこと、話したいことは山ほどあった。

だが、彼女が心情を整理しきれていないと見て取ると、シンジは冷静に引き下がることが出来た。

実際にそれは正解だった。彼女のシンジやリュウジに対する懺悔の念は、ある程度の処理が出来なければ、まともに話すことなどできなかったろう。

その時、入り口が開く音が彼の耳に届いた。

入り口にはカヲルがおり、ゆっくりと部屋に入ると下のベッドに腰を下ろした。

シンジはそんなカヲルを、少し上半身を起こし視界に入れる。

 

(どうしたのかな?)

 

その表情はいつになく神妙な面持ちであり、考え込んでいるように見える。

 

「カヲル君?」

 

声をかけるが、カヲルは聞こえていないのか、返答はない。

気になったシンジは、そろりと降りると、

 

「カヲル君?」

 

もう一度声を変えた。

そこでようやくカヲルは気づき、ハッとした表情をシンジに向けた。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ああ。ゴメン、少し考え事をしてて」

 

そこまで長い付き合いがあるわけではないが、今のカヲルは今までシンジが見たことが無いほど、酷く考え込んでいるように見えた。

実際にカヲルは今までの出来事に、

 

『今までに無い程』

 

混乱しており、考え事をしていたというのも実際に嘘ではなかった。

だが今、この艦において、事の真相を最も把握しているのは、恐らくカヲルであった。

 

「カヲル君……。聞いてもいいかな?」

 

そんなカヲルの表情を見て、シンジは問わずにはいられなかった。

 

「……うん」

 

「おじさんが使った使徒の力について……何か、知ってるの?」

 

そう言われ、カヲルは迷った。

だが、

 

「……ああ」

 

少しの間をおいて、正直に答えた。

 

「そっか。……じゃあ、その力を見て、君は何をあんなに驚いていたの?」

 

「それは!……それは」

 

カヲルは勿論答えられる。

だが、果たして答えていいものか、迷いに迷っていた。

なぜなら、

 

(答えるべきか?でも、このことを話したら……)

 

そう思うと、とてもではないが話せなかった。

余りに残酷な未来を告げなければならなくなる。

それを今のシンジに話していいものかどうか、カヲルは途方に暮れていた。

 

「……ごめん。ボクなんかが、聞いちゃいけないことだよね」

 

そんなカヲルの表情を見て、シンジは申し訳なさそうに微笑んだ。

 

「違う!そうじゃない!ボクは……」

 

「いいんだよ、カヲル君。……君が、話したい時に話してくれれば」

 

そのシンジの微笑みに、カヲルは途方に暮れた。

全てを話したい、だが話せばどうなるか想像もできなかった。

避けられない残酷な現実に、シンジは幾度となく晒されてきた。その度に、誰も手を差し伸べず、一人でシンジはもがいてきた。

だが今回は、今までにないほどシンジは成長し、他人と触れ合うことを恐れずに、自ら理不尽を乗り越えてきた。それは紛れもなく、碇リュウジの影響が大きい。

 

(でも、……でもこの事実は)

 

そんなシンジだからこそ、カヲルは話すことが出来ず、苦悩していた。

そんな時だった、

 

「失礼……」

 

急遽第三者の声が響いた。

大柄な体躯をした男、高雄コウジであった。

 

「渚カヲル。艦長命令により、碇リュウジの尋問への同席をしてもらう。ついてきてくれ」

 

「……おじさんの?」

 

シンジとしては、何故カヲルが呼び出されたのか理解できていなかった。

 

「解りました」

 

だがカヲルは理解できた。

艦長命令などと言ってはいるが、その実、リュウジがカヲルに会いたがっていることは容易に想像できた。

 

「ただ、一つお願いしてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

「どうか彼を……、シンジ君も同席させてください」

 

高雄はそう言われ、困ったなという表情を如実に浮かべた。

 

「……なぜだ」

 

「これからボクが話すことは、リュウジさんとその家族にとって大切な話になります。なら彼も、……シンジ君も知らなくてはならないからです」

 

「カヲル君……」

 

そのカヲルの言葉に、心底まいった表情を浮かべ、高雄は腕を組む。

 

「お願いします。せめて、艦長に掛け合ってください」

 

「……急にそんな要求をされて、はいそうですか、と簡単に通るほど、君らの扱いは軽いものではない。その自覚はあるのか?」

 

「無理を言っている自覚はあります。ですが、お願いします」

 

高雄は頭をかきながら、軽く溜息をついた。

 

「……悪いが、艦長には掛け合えない」

 

「そんな……」

 

「許可が下りるにしても、かなり時間がかかる。俺が独断で連れて行き、後で艦長に怒鳴られるとしよう」

 

「「え?」」

 

余りの高雄の厚意に、カヲルもシンジも目を丸くした。

 

「何にしても、今は時間が無い。間もなくユーロにも到着するしな。俺が怒鳴られるだけで、時間が短縮されるなら安いものだ」

 

そういうと、高雄はそそくさと二人に背を向け、

 

「ほら、早くしろ」

 

その部屋を後にした。

 

「……カヲル君。ありがと」

 

カヲルはゆっくりと首を振る。

 

「礼はいらないよ。……それにもしかしたら……」

 

「え?」

 

後半が聞き取れず、シンジは思わず聞き返す。

 

「ううん。何でもない、行こうか」

 

カヲルは気を取り直し、高雄に続き部屋を後にしていく。

 

(……もしかしたら君は、ボクを恨むかもしれない)

 

 

「これはどういう事かしら、高雄機関長」

 

「は、誠に申し訳ございません」

 

当然の如く、高雄はミサトに叱責を受けていた。

 

「謝罪ではなく、ちゃんと理由を聞きたいのだけれど」

 

「待ってください!ボクが無理を言ったんです」

 

カヲルがそれを遮るように、言葉を発するが、

 

「関係ありません。彼が私の命令を無視したことには変わりない」

 

厳しい言葉を掛けるが、高雄は言い訳をすることなく、ひたすらその頭を下げていた。

 

「………ハァ。ま、連れて来てしまったものは仕方ないわ」

 

それを見てミサトは軽く溜息をつく。

高雄が情に脆いのは、今に始まった事ではない。

故に真摯に懇願されれば、断れないことも重々承知していた。

 

「……会ってく?あなたのボスに」

 

そんな高雄に、冷酷な判断をさせたことが何度もある。

それでも彼は、リュウジではなくミサトにこの14年間ついてきてくれた。

その彼に、報いる言葉をミサトは吐いた。

 

「……いいえ」

 

そんなミサトの心を、高雄も感じていたが、あえて断った。

今でも、リュウジに対して毅然とした態度を、自分こそが貫かなければならないと思っているからだ。

 

「……あなたは私の命令を無視した。なら、今私が貴方の意志を無視しても、なんら理不尽なことは無いわよね?」

 

その態度を貫こうとするのは、高雄なりにヴィレと言う組織を慮ってのことである。

そんな高雄に、ミサトは随分と助けられた。

だからこそ、今のうちに会わせたかった。

 

「会っていきなさい。……後悔しないように」

 

「ありがとう……ございます」

 

高雄はついに観念し、そして一人扉をくぐった。

 

「……あの、ミサトさん。あの人って……」

 

「ええ。リュウジさんの教え子の一人よ。付き合いの長さで言えば、私やあなたよりも長い。―――だから悪いけど、先に話をさせてあげて」

 

 

「……ボス」

 

ガラス越しのリュウジをその眼に留めると、高雄は思わず声を漏らした。

 

「……少し、痩せたな」

 

そんな高雄を見たリュウジは、驚くこともなく落ち着いた表情だった。

 

「わかりますか?」

 

「わかるさ。お前のことだからな」

 

「そうですか。……俺は、アンタに投げられたのに、解らなかった」

 

高雄はジュニアとして振る舞っていたリュウジに対して、戦闘した時を思い出していた。剣崎がリュウジの影武者となっていたことによる先入観もあっただろうが、今にして思えば気づくきっかけはいくつもあった、

にもかかわらず、高雄は長年戦闘を共にしてきたリュウジに、気付くことが出来なかった自分を少し恥じていた。

 

「そりゃそうだ。お前に偽装を見破られるほど、老いぼれちゃいない」

 

そんな高雄に、リュウジはあえてしたり顔をして見せた。

 

「……フ、フフ」

 

「クク……」

 

「「ハッハッハッハッハッハ!!」」

 

そのやり取りが、二人には面白くてたまらなかった。

 

「お、お前は昔からそうだ。フフ、間諜に関してはどこか抜けてる」

 

「うるさい。アンタと比べるな!そもそも、そういったこまごまとしたことは、加持や剣崎に任してきたんでね。それに……」

 

そんな笑いあっている二人を、サクラとミドリは、先程とは別の驚きを感じて見入っていた。

互いが互いの悪態を笑いあいながらついているのを見ると、リュウジの見た目も相まってまるで仲のいい親子のようにも見える。

加えてミドリとしては、高雄が心から笑っている様子に、少しほっとしていた。

リュウジが敵として現れた時から、高雄の様子は沈んでいたし、フォース・インパクトの時も、ミサトの対応はともかく、高雄が断腸の思いで攻撃準備をしていた姿勢も見ていた。

そんな二人の談笑を見ていると、不意にリュウジが高雄に対して頭を下げる。

 

「高雄。ありがとう」

 

「ボス?」

 

「葛城さんと赤木さんを、お前は今日まで支えてくれた。本当に、ありがとう」

 

そう言って、リュウジは頭をあげた。

 

「それができたのも、ボスが率いていた部隊のデータがあったからです。恐らく、あなたは最初からそのつもりで、私にあのデータを渡したんでしょう?」

 

「ああ。そのお蔭で、俺はこの世界を生き抜くことが出来た。そして、最後の布石を置くことが出来た。……ありがとう。友よ」

 

「……俺はもう用済みですか?」

 

「前から言ってたろう?俺はもう、お前のボスじゃない。俺はもう……用済みなんだ」

 

そう言ったリュウジの表情は、申し訳なさや、後悔。そんな何とも言えない『詫び』の詰まったものだった。

 

「……終わらせるつもりなんですね。すべてを」

 

「ああ」

 

「……解りました」

 

そういうと、高雄は素早く席を立った。

 

「互いに。老兵ですからね」

 

「ああ、……ただ終わるのみだ」

 

高雄はそう言われ俯くが、すぐに顔をあげる。

 

「光栄です。ボス……いや、友よ」

 

「……光栄だ」

 

そうして高雄はその部屋を後にした。

 

 

「……話は終わりました」

 

高雄は目頭を押さえながら、ミサトにそう報告した。

 

「……少し休みなさい。」

 

『はい』とだけ小さく答えると、高雄はその場を後にする。

 

「……あの!」

 

だがその背中に、シンジが声をかけた。

 

「……ずっと、叔父の助けになってくれて、ありがとうございます」

 

その言葉に思わず高雄は、胸に苦しさが込み上げてきた。

 

「……君に礼を言われる筋目ははない」

 

高雄はなんとか言葉を繕った。

実際高雄は、シンジから礼を言われる価値など毛頭ないと感じていた。

 

「それでも、ありがとうございます。ボクは、ずっと叔父の助けにはなれませんでしたから」

 

高雄はなんとかその場を後にしようとするが、シンジの容赦ない言葉に胸が張り裂けそうになっていた。

 

(違う……。君が、君こそがボスの助けになっていたんだ。君がいたからこそ、ボスは、辛うじて人でいられた)

 

その心を怪物にしてまで、リュウジは一人で戦い続けてきた。

リュウジの人ではいられない冷酷さを、高雄は理解した時、リュウジの孤独を目の当たりにした。

していながら、自分は何もできなかった。

だがリュウジはシンジと出会って、初めて温もりを得られたのだ。彼の人生において、絶対に得ることのできないはずだった家族という温もりを。

それがリュウジの心をどれだけ温めていたか、どれだけ救いになっていたか。

だが、

 

(俺は、……そんなボスの恩人を……)

 

辱しめる行為を傍観していた。

いや、傍観だけならいい、自分もその行為に加担していた。

 

(俺には……この子に声をかける資格すらないんだ)

 

そう自身を叱責し、足を前に出すと、その場を逃げるように高雄は後にした。

そしてエレベーター前に来ると、

 

「「あ……」」

 

今度はリツコと鉢合わせてしまう。

 

「……酷い顔ね」

 

「……すいません。見苦しいものを」

 

だがリツコは優しく顔を横に振る。

 

「あなたには随分無茶をさせた。それに報いることが出来なかったのは、私達よ」

 

「いえ……、そんなことは」

 

「……もっとも、それができるのは、世界でたった一人。そうでしょ?」

 

「……すいません」

 

「謝らないで。……今はゆっくり休みなさい。いいわね?」

 

高雄は顔を右手で抑えながら、足早にエレベーターに乗り、その場を後にした。

 

 

「さて、まず連絡事項よ」

 

尋問の再開の前に、リツコがリュウジへ時田達がヴィレの傘下に入ったことを伝えた。

現在、ユーロネルフに向かっていることも含めて。

それを当たり前のように、リュウジは聴き入っていた。

 

「これにより、あなたは今まで捕虜の扱いだったけど、正式に我々の所有物となります」

 

リュウジはリツコの言葉に無言で頷いた。

そして、リュウジ側の部屋の引き出しが勢いよく開いた。

 

「鈴原少尉、彼にDSSチョーカーを」

 

「は、はい……」

 

そういわれ、サクラは引き出しを覗き込むが、

 

「あ、あの、スイッチもこちらに来てるんですけど……」

 

「当然でしょ?もう一人の監視役が持つのだから」

 

そういうとリツコは、ミドリへと視線を移した。

 

「え?わ……私ですか?」

 

「艦長の言葉忘れたの?必要とあれば、彼の処罰はあなたに一任されているのよ?つまり、碇リュウジがもし、インパクトのトリガーとなれば、あなたが止める。いいわね?」

 

ミドリの顔に一気に冷や汗が浮かんだ。

眼の前のリュウジと言う存在を、今この時より、スイッチ一つで自在に終わらせられるようになった。

その事実が、彼女の心に重く圧し掛かった。

 

「北上さん」

 

その重圧を見て取ったリュウジは、優しく声をかけ、

 

「……これは必要なことなんです。どうしても」

 

「言ったでしょ!自殺幇助なんて私は……」

 

「それとこれとは話が別なんです」

 

そういうと、リュウジは正面を向き、

 

「そうでしょ?渚カヲル」

 

目の前に座るカヲルと相対した。

その後ろには、シンジが控えていた。

 

「……恐らく。貴方から見れば、私は奇怪な存在なんでしょう―――。今までの円環に存在しなかった、碇ゲンドウの弟。その意味不明な存在は、あまつさえ、タブリスの力を持っている」

 

だがリュウジはあえて、カヲルのみと話す姿勢を見せた。

シンジとの再会に浸りたかったが、今はどうしても確認しなければならないことがあった。

 

「……単刀直入に聞きます。あなたは何者なんですか?」

 

「円環を遡る者……、とでも言っておきましょう。その為に、自身で選んだんです。こうなることを」

 

信じられないものを見る眼で、カヲルはリュウジを見た。

 

「それで、説明してくれるかしら?4+3号機と、あなたの使徒としての力について」

 

そこにミサトが口を挟む。

彼女も含め、この場にいる全ての人間が、カヲルと、リュウジ以外すべてを理解できる話ではないことは容易に想像がついていた。

だが今後行われるであろう最終決戦に向けて、リュウジがなぜあれほどの戦闘能力をエヴァで発揮できたのかを把握する必要があった。

 

「エヴァを動かせたのは、あなた自身がS2機関となっていたから。そうでしょう?」

 

「ええ。4号機のコアが、大きなダメージを負っていたこともありますが、何より、14年間ネルフ、ヴィレ、の双方から存在を検知させないためには、どうしてもその反応を消す必要があった。つまり、コアが生きていては不都合だったんです。そこでコアの器だけは残し、私がその中身となることで、4+3号機を動かしていました」

 

タブリスの力を引き継いだ以上、カヲルはリュウジがどれだけ並外れた存在となっているかよく理解していた。

 

「なるほどね―――。シンクロ率は?どう説明するの?」

 

リツコが記録をしながら、次の質問に入った。

 

「操作できるんです。自由自在に」

 

「なんですって?」

 

ミサト以外は言葉を発しなかったが、それがどれだけあり得ない力か、その場の全員が理解していた。その言葉が真実であれば、リュウジはあらゆるエヴァンゲリオンを操ることが出来る。

 

「そして、その能力を応用して、遠隔からボク等が乗っていたエヴァのシンクロ率も操作して、その制御系を無力化した。そうですね?」

 

「……もっとも、それをあの時やったのは、君の前任者が最後の力を振り絞ってくれたからです。でなければ、4+3号機を操作しながら、あんな芸当はできない」

 

その言葉に、カヲルの表情は沈んだ。

そして、申し訳なさそうにシンジに顔を向ける。

 

「どうしたの?」

 

その表情に、シンジは不安げな表情を浮かべる。

 

「……やはり、もういないんですか?」

 

「ええ」

 

リュウジの言葉にカヲルは頭を抱えた。

彼の予想通り、残酷な未来が確定してしまったからだ。

そのただならぬ様子に、シンジは先ほどのカヲルの沈んだ表情も相まって、一気に不安に駆られた。

 

「お願い、カヲル君。いったいどうしたのか教えて」

 

「……信じられないことだけど、リュウジさんの精神と魂は、まったく汚染されてない。身体は使徒だけど、精神と魂は、ボクから見れば人間のままなんだ」

 

「正しくは、汚染されていないのではなく、出来なかったんです。埋め込まれたわずかな魂だけでは、肉体だけで精いっぱいだった」

 

「ですが、あなたが受け継いだ最後の力、それこそガフの扉を無理やり閉じる程のATフィールドは、本来はタブリスの魂と精神が無ければ制御できない」

 

「彼の魂の力が弱まっていたからこそ、逆にATフィールドの力が強くなっていった。という事でしょう?」

 

カヲルは無言で頷いた。

 

「とても信じられない。何故あなたが今、ATフィールドを制御できているのか」

 

「実感はしてますよ、これはいずれ、私の手に余るものだと……」

 

だがリュウジの表情は、カヲルの深刻なそれとは違い、穏やかそのものだった。

その表情に、カヲルは胸が詰まるが、同時に、

 

「やはり……」

 

という想いが内在していた。

リュウジの人となりを、聞いていたカヲルは、これぐらいのことで、動じないことは見当がついていた。

問題は、

 

「おじさん。さっきから何言ってるの?」

 

彼の家族であるシンジと、彼を慕う者達だった。

 

「……俺はもう長くはないという事だ」

 

シンジはその言葉に眼を見開き、リツコやミサトも、僅かに抑えたが驚愕の表情を浮かべた。

 

「厳密には、長く存在してはいけない、というべきかな」

 

「リュウジさん、それは……」

 

「いや、タブリスは私に確かに言った。いずれこの力は、私以外を補完すると。―――あなたも、同じ結論なんでしょう?」

 

うなだれるように、カヲルは頷いた。

 

「リュウジさん。―――お願い、ちゃんと説明して」

 

リュウジの言葉による動揺を抑えながら、ミサトは絞るような声で問うた。

 

「―――ATフィールドは、本来あらゆる個体が、己を形作るために持っている心の壁。ですが、私がガフの扉を閉じるときに展開したATフィールドは、元来使徒の魂と精神を持っているからこそ制御できるもの。……それがないにもかかわらず、私には人では制御できないほどのATフィールドが備わってしまっている。それがいずれ、制御できなくなるという事です」

 

その言葉の意味するところに、リツコはいち早く理解がおよび、眼を見開く。

 

「それって、どうなるんですか?」

 

シンジも半ばどういう事か理解していたが、認めたくない思いがその表情にありありとでていた。

 

「……制御できなくなったATフィールドは、恐らく際限なく膨張し続ける。―――他の個体が持つ、あらゆるATフィールドを中和していきながら」

 

そんなシンジを見ながらも、リュウジは淡々と己の現実を言葉にしていった。

 

「そしてATフィールドを中和された個体は、自身を形作ることが出来なくなり、皆が一つの存在へと補完され、LCLの海へと還っていく」

 

自分の存在が、いずれ引き起こす現実を、

 

「―――つまり、俺を中心として、人類の補完が起こってしまうわけだ」

 

リュウジだけは、受け入れていた。




できるかどうかはまだ微妙なんですが、来月がシンジ君の誕生日なので、誕生日企画のお話を投稿してみようかなと検討しております。

そんなことよりはよ本編書け、って話しですがwww

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも応援よろしくお願いいたします。
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