新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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今更ですが、新劇場版準拠なので、サブタイトルを変更します。




序-戦闘開始-

リュウジはミサトとともに、司令室に繋がるエレベーターに乗り込んだ。

 

「相手は何なんです?」

 

「詳細は省きますが、我々は使徒と呼んでいます」

 

「目的は?」

 

「ここです。正しくは、この地下にある物、とだけ言っておきます」

 

「need to know の原則ですか」

 

「ごめんなさい」

 

「いいですよ。時間もないことですし」

 

彼にしてみれば、敵の目的が判明しただけでも御の字である。

 

「解ればで結構ですが、N2兵器が効かない理由はなんです」

 

「我々はATフィールドと呼んでいます。通常兵器は、基本的にはそれに阻まれてしまいます」

 

「エヴァンゲリオンであれば、それを破れるんですか?」

 

「理論上ではありますが、こちらもATフィールドを展開し、中和させることで、破ることができます」

 

どういう理屈だ。と疑問しか浮かばないが、取り敢えず破る方法はあるらしい。

 

「使徒に弱点はないんですか?」

 

ミサトは、これを、と言いながら、使徒の現状を捉えた写真を見せる。

 

「顔のような部分の下にある赤い物体。このコアを破壊すれば倒せます」

 

「確かなんですね?」

 

「ええ」

 

なぜここまで詳細を知っているのか、それは敢えて聞かなかった。現状彼にとっては、知る必要のないものだからだ。

 

「話せる範囲で結構ですが、エヴァンゲリオンの情報もいただきたい。動力源、操作方法、駆動制御プログラム、情報処理能力、なんでも結構です」

 

その言葉を言い終わった途端、ミサトが抱える書類の束から、一つの分厚い紙の束が落ちた。

それの表紙には大きく、部外秘と書かれている。

当のミサトはそっぽを向き、飽くまでも、

 

「気づいていない」

 

体を装っていた。

 

(ありがとうございます)

 

リュウジはそれに気づき、すぐさま拾い上げ目を通した。

 

(こんなものが実用可能なのか?)

 

おそらくミサトにも全て明かされているわけではない、とリュウジは見当をつけていた。恐らくより深くを知っているのは、

 

(兄か、あの赤木さんか……)

 

一方ミサトは、『落としてしまった』資料に目を通すリュウジを見て、

 

(……一体、何者なの?)

 

と、再び考えを巡らす。

リュウジがゲンドウの弟である以前に、彼自身の能力について、彼女も疑問を浮かべていた。

定食屋のオヤジと言っていたが、ただの一般人でない事は明白だ。

現に今も、分厚いエヴァンゲリオンの資料を、読み終えようとしている。

彼自身のインプット能力の高さが伺える。

 

(並みの兵士ではないわ。年齢を考えたら、セカンドインパクト直後も、戦争、紛争地帯で戦っていたのかも……)

 

それは想像を絶する地獄であったろう。

物資はなく、味方もなく、安全な場所などない。それと比べたら自分がくぐり抜けた修羅場など、彼からしてみれば、

 

「可愛いもの」

 

としか映らないだろう。

そんな考えを巡らせているうちに、またもや書類が落ちる音がした。

今度は、リュウジがそっぽを向き、

 

「気づいていない」

 

体を装っていた。

ミサトはすぐさま拾い上げ、リュウジの言葉を待った。

 

「……シンジなら、これを動かせるんですか?」

 

「……彼しかいない、というより、彼が一番動かせる可能性が高いという話です。先程の少女、綾波レイですら、訓練してシンクロできるようになるのに7ヶ月かかりました。ネルフにあるスーパーコンピュータ、MAGIが出した起動する確率は、0.000000001%です」

 

途中、あの少女に名前に引っかかったが、彼はそれを頭の隅に追いやり、そして天井を見上げた。そこまでのポンコツとは思っていなかったからだ。

 

「まずは動くかどうか、だな」

 

「そういうことです」

 

「そして、訓練をしている時間も余裕もない」

 

「はい」

 

今更だが、ミサトは申し訳なくなった。

こんな状況では、アドバイス以前の問題だ。だがそんな状況とは裏腹に、リュウジの目からは、悲観した表情は全くなかった。

そう、彼は飽くまで勝つ算段を組み立てていた。

 

(幸いなことに、やつは人型だ。シンジならなんとかできる可能性は低くない)

 

であるならば、問題は先程から変わらず一つだけ、エヴァンゲリオンを動かせるかどうかであった。

 

 

エントリープラグ内。

シンジはインターフェイスを頭部に装着して、出撃の時を待っている。

 

(大丈夫。平常心、平常心)

 

シンジは自分の服に付いている、叔父の血を見つめていた。本来なら、血など忌み嫌うものだが、今はそれが半ばお守りの様に彼にとっては縋るものとなった。

 

『エントリープラグ注水』

 

「えっ?何ですか?これ」

 

『大丈夫。肺がLCLで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ』

 

液体を肺に入れるという、今まで経験したことのない行為に戸惑うが、現実は彼を待ってはくれない。

 

『シンジ、俺だ。聞こえるか?』

 

「はい」

 

『時間がない。出撃準備中に、ブリーフィングをする』

 

「わかりました」

 

『状況は最悪。敵、使徒の破壊行為により、射出口が破壊、もしくは作動不良により、最大で使徒の半径500メートル付近にしか、出せない。つまりいきなり敵の目の前にお前を出すことになる』

 

『更に最悪なのは、頼みのエヴァンゲリオンが動くかどうかも解らない。仮に動いたとしても、普段通り動けるとは限らない』

 

「どうして?」

 

『お前とエヴァの体格差を考えろ。小さい物の方が、動きは素早く、大きい物の方が遅くなる。どうしてもお前の感覚とは、タイムラグが発生するはずだ』

 

『そのタイムラグのせいで、歩こうとするだけでも、訓練を積まないと思う通りには動かせない。つまり戦う前にお前はエヴァとのリハビリを、敵の目の前でやらされる訳だ』

 

「ならどうするんですか?」

 

『歩こうとすればコケるのは目に見えている。まずは腕を動かすよう意識しろ。腕が動かせれば、敵の攻撃をガードできるし、最悪コケた時には、うまく行けば地面への熱烈なキスをせずに済む。仮にできなくても、匍匐状態なら腕でも移動ができるはずだ』

 

「腕ですね。わかりました」

 

『次に敵、使徒についてだが、弱点はコアと呼ばれる、赤いクリスタル状の部分だ。そこを破壊できれば倒せる。だが通常兵器では、ATフィールドによって無効化される』

 

「何ですかそれ?」

 

『アニメやゲームに出てくるバリアのようなものと思え、それを破るには、こちらもATフィールドを展開し、中和するしかないそうだ』

 

「……どうやればいいんです?」

 

『わからん。申し訳ないが、今は後回しだ。だが映像を見ると攻撃している時には、使徒はATフィールドを展開してない。ここが狙い目だな』

 

「攻撃を誘発してカウンターってわけですね」

 

『それが狙える程、動かせる様になればだがな。まずはリハビリしながら、出来る限り距離を取れ。だが敵の腕や顔のような箇所からは、指向性エネルギーを放つ攻撃が確認されている。距離が取れたとしても、油断はするな』

 

「……はい」

 

 

シンジにブリーフィングしているリュウジを、ゲンドウは睨む様に見ていた。

 

(リュウジ。なぜだ……)

 

子供の頃からそりが合わなかった。自分と違い、社交的であり、友人ともよく付き合っていた。そのくせ自分より勉学ができないかというと、全くそんなことはなかった。

そして突然自衛隊に入ったかと思うと、それ以来会うことは全くなかったのだ。

 

「優秀な男だな、お前の弟は」

 

脇に控える冬月が、リュウジの様子から率直にそう感じた。

 

「最後に会った時は、CIAにいたらしいからな、それなりにはできるんだろう」

 

「何をしていたか、聞いてはおらんのか?」

 

「互いに興味がなかったからな。15年前にあったのも、ユイがせめて挨拶ぐらいはさせてほしい、と言ってきたからだ」

 

「……待て。ユイ君と会っているのか?あの男は」

 

冬月の表情が厳しいものになる。

 

「そうだ」

 

「レイに会っているんだろう?怪しまれやしないか?」

 

「だとしても、あいつには何もできんよ」

 

「奴の来歴を調べた方がいい。ただでさえ、うちの諜報部は、奴の存在を確認していなかったんだぞ」

 

それだけで冬月には、彼から得体の知れない何かを感じざるを得ない。

 

「どうするかはお前に任せる。私にはどうでも良いことだ」

 

冬月はまだ言いたいことがあったが、取り敢えず、この場は抑えることにした。

 

(側から見れば、兄弟の意地の張り合いにしか見えん)

 

何が互いに気に入らないのかは、冬月にもわからないが、喧嘩をして互いが、

 

「あっちの方が悪い」

 

と意地を張っている様に思えてならないのだ。そう言った意味では、同じ穴のムジナである。

 

「後で調べさせるよう手配する。異論はないな?」

 

「好きにしろ」

 

「碇司令、出撃準備整いました」

 

ミサトが準備完了を告げる。

 

「かまいませんね」

 

「無論だ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」

 

(碇、いいのか?このままで……)

 

冬月はやはり不安を拭えなかった。

 

「発進!!」

 

 

急激なGを感じたと思えば、シンジにとっては目と鼻の先に、すでに使徒はいた。

 

『いいわね、シンジ君』

 

「……はい」

 

恐怖に押しつぶされそうになるが、シンジは静かに答えた。

 

『最終安全装置、解除。エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』

 

肩を固定していた安全装置が解除され、初号機は若干前のめりになる。

 

「まずは腕だ。動いてくれ」

 

それに呼応する様に、初号機は手を握って開きながら、両の腕を上下に動かした。

 

(いいぞ、0.000000001%の壁はクリア)

 

「マヤ、エヴァのステータスに変動、異常があれば逐一報告して」

 

「はい!」

 

「日向君は使徒のエネルギー数値を監視」

 

「了解!」

 

「青葉君は、使徒とエヴァとの距離を知らせて。報告は50メートル毎とします」

 

「了解しました」

 

その直後ミサトとリュウジはアイコンタクトをする。

 

「使徒の距離、現在500メートル」

 

エヴァンゲリオンを動かす感覚においては、リュウジが言えることはない。なにせシンクロしているのはシンジなのだ。リュウジも経験にないことはアドバイスできない。

 

(大丈夫。敵との距離もまだある、遠距離攻撃の様子もない)

 

「450メートル」

 

こちらとの距離を縮めてきてはいるが、遠距離攻撃をしてこない限り、まだ敵の間合いに入ってはいない。

だがゆっくりと、使徒は接近してきた。

 

『大丈夫。動かせます』

 

「すごいわ、ここまで動かせるなんて」

 

「400メートル」

 

腕を含めた上半身を、既にシンジは動かしてみせた。

 

「350メートル」

 

だが、使徒の接近も、段々と早まってきていた。

 

『足を動かしてみます』

 

そして問題の、移動手段の確立である。

 

「バランスを両腕で取りながら歩いてみろ。だが細かい調整は、お前の感覚に任せる」

 

『はい』

 

ここまで短時間で、エヴァを動かして見せたのを見ると、歩くこと自体は、できるだろうとリュウジは考えていた。

だがそれで初めて、こちらはスタート地点に立つ事になる。最終的には、使徒に勝たねばならないのだ。

 

「距離300メートル」

 

「目標のエネルギー数値、変動ありません」

 

「初号機とパイロットのシンクロ率、徐々に上昇しています。現在45%なおも上昇しています」

 

原因は不明だが、コンディションが徐々に良くなっていっている。

敵もとりあえずは、ただ接近しているだけの様だ。

そして、

 

『よしっ!』

 

重い一歩ではあるが、シンジは前進した。

 

「敵との距離、いっきに200を越えました!」

 

仕方がない、こちらも前進したのだから、距離が縮まるのが早まるのは通りである。

 

「今は歩きながら、バランスをとる事に集中しろ!」

 

『はい!』

 

距離をとる事にこだわり、後退りしながら転けるなんぞ、目も当てられない。

 

(距離をとることは、今は後だ。……いざとなれば)

 

「シンジ、無茶を言うがいつでも交戦できるよう構えておけ」

 

『はい』

 

歩くリハビリをしながら、臨戦体制をとるという凄まじい無茶振りであるが、今はそうしてもらうしかない。

幸いなのは、シンジは順調に、バランスをとりながら、歩むことができていることだ。

 

「150!……100!」

 

そしてその分、接近していく。

 

「リュウジさん!」

 

「このままでいい」

 

ミサトに声をかけられるが、ここに来てそのまま距離をとるのは、逆にリスキーである。とリュウジは判断した。

 

「50メートルきりました!!」

 

その瞬間、使徒が手で掴むように伸ばしてきた。

 

『うわっ!!』

 

咄嗟に反応したのか、伸びてきた手を弾く。

そのせいで、使徒は僅かだが体制を崩した。

 

『コノッ!!!』

 

「よせ!シンジ!!」

 

だがシンジは止まらなかった、いや止められなかったと言うのが正しい。

エヴァで弾いた反対の腕で、シンジは使徒をそのまま殴ったのだ。

 

「殴った……」

 

いきなりに先制攻撃に、リツコは思わず呟く。使徒も予想外の攻撃だったのか、後退りしながら倒れた。

だが相手を殴ると言う行為は、思いのほか体全体のバランスを使う。

 

『うっ、うわわっ!!』

 

まだ機体に慣れてない状況では、バランスを崩すのは目に見えていた。

 

「シンジ!」

 

使徒に覆い被さるように倒れそうになるが、

 

『ハァッ、ハァッ……』

 

シンジは両手を突き出し、四つん這いの状態で辛うじて体制を崩しきらずにいた。

 

「よし、シンジ。そのままでいいから、とにかく距離を取れ!」

 

『はいっ!!』

 

側から見れば不恰好だが、四つん這いのままそのままシンジはエヴァを前進させた。

そのまま前転し、受け身をとりながら立ち上がり、体制を整える。

 

(ようやくおじさんが言ってたことがわかった)

 

リュウジが体が動かしにくい、と言ったことを文字通りシンジは体で理解していた。

腕を動かす時はそうでもなかったが、足を動かした時、自分が普段歩くペースでエヴァを動かそうとすると、どうしても次の一歩に行こうとしても、前の一歩がまだ終わっていないのだ。

 

(だけど、少し慣れてきた。何とかなるかも)

 

『敵との距離、現在250メートル』

 

『シンクロ率、50%を超えました』

 

再び距離を取ることができ、エヴァとのシンクロも徐々に出来るようになったことで、ようやくシンジの中に余裕が生まれてきた。

 

『どうだ?シンジ。慣れてきたか?』

 

「なんとか。おじさんが言ってた、タイムラグの意味がようやくわかりましたよ。この後は?」

 

『今の距離を維持しながら……』

 

『敵体内に高エネルギー反応!!』

 

『シンジ!敵正面に立つな!!』

 

咄嗟にシンジは横に半ば倒れるように、リュウジの指示に従った。その直後、凄まじい爆風が走り抜けた。

いつのまにか、使徒は立ち上がりながらも、その顔から遠距離攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

『遮蔽物に隠れながら移動し続けろ!!とにかく止まるな!!!』

 

『了解!!!』

 

シンジは半ばパニックになりながらも、とにかくリュウジの指示通り動き続けた。

使徒も殴られたお返しとばかりに、エヴァに向かってビームを乱射する。

 

(よく見ろ。正面に立たないように、よく見るんだ!)

 

 

「すごいわ。この短時間でエヴァをここまで乗りこなしている」

 

「シンクロ率、現在60%。信じられません」

 

司令室では、リツコとマヤがモニターを見ながら、シンジの操縦と徐々に上昇しているシンクロ率に驚嘆していた。

 

(今は何とかしのげているが、そう長くは持たんだろう……)

 

その会話を耳にしながら、リュウジは考えを巡らす。実際遮蔽物に使っている建造物は、徐々に減ってきているからだ。

 

「シンジ。接近しろ!」

 

「リュウジさん!まだ早いのでは?!」

 

「ここまで動かせるのであれば、勝算はあります」

 

そもそも、動かせるかどうかが未知数だったのに対し、現状ではまさに長年操縦していたのではと思わせるほど、シンジは乗りこなして見せている。

 

「シンジ。お前のタイミングに任せる。だが冷静に行け」

 

『了解』

 

大きな建造物を背にしながら。シンジは息を整えていた。

遮蔽物を使って逃げていたのが、同時に撹乱にもなり、使徒はシンジを見失っていた。

 

(頭を使え。フル回転させろ)

 

自分を落ち着かせるように、リュウジに言われた言葉を反芻し、シンジは瓦礫を一つ拾う。

 

(頼む!)

 

そして全くの逆方向に瓦礫を投げ、使徒の注意を逸らそうとし、

 

(やった!!)

 

使徒がその方向にビームを撃ったのを確認し、

 

「うぁぁああああああああ!!!!!」

 

全速力で使徒に接近した。

だが使徒も注意をそらされた事に気づき、寸前で振り返りざまに腕を横に薙いだ。

 

「フンッ!」

 

だがシンジはそれを両の手で掴み、一気に捻り上げ、すぐさま足に蹴りを軽く見舞い、バランスを崩させ、

 

「ハァッ!!」

 

使徒を投げ伏せた。シンジはそのままマウント体制に、

 

(落ち着け!!)

 

『体内に再び高エネルギー反応!!』

 

入らずに距離をとった。

すぐさま使徒が上空にビームを放っていた。

 

『いいぞシンジ!よく思いとどまった。だが接近戦は継続しろ』

 

「はい!」

 

再び場面は司令室に戻る。

司令室で見ていた者達は、先程のシンジの一連の攻撃に、まさに度肝を抜かれた。

特にミサトは、もしかしたらリュウジから、何か手ほどきを受けているかも、と思っていたが、ここまでとは思っていなかったのだ。

 

(まじかよ、シンジ)

 

だが実は最も驚いていたのは、他ならぬリュウジだった。あそこまで綺麗に決めるなど、彼も思っていなかったからだ。

無論接近戦であれば、彼が伝授していた技術が役に立つとは考えていた。

だがあれほど綺麗に投げるのは、相当な修練が必要な筈だ。

だが彼は驚いたことは、顔には出さなかった。少しドヤ顔をして、やり過ごす。

 

(……だが嬉しい誤算だ)

 

接近戦であれば、今は俄然シンジが有利だからだ。先程のような思わぬ反撃に気をつければ、勝てる筈である。

 

(出来る限り接近して、尚且つ顔正面から体をそらす)

 

エントリープラグ内のシンジも冷静であった。

そして使徒が立ち上がった直後に、再び至近距離に接近し、

 

「フッ!」

 

膝蹴りを喰らわせると、そのまま垂れ下がっていた使徒の片腕を掴み、

 

「ハアァァ!」

 

またもや投げて見せた。

 

(今度は……!)

 

シンジは追撃を仕掛ける。

マウントは取らず。正拳を使徒のコアに振り下ろす。

だが突如金属音のような轟音が辺りに響いた

 

「なっ!」

 

シンジの振り下ろした拳は通らず、眩く光る透明な壁のようなものに阻まれてしまった。

 

「なんだこれ……」

 

訳も分からず、シンジは一旦後退する。

 

『シンジ君。今のがATフィールドよ』

 

リツコから通信が入る。

 

「これが……」

 

『そう。絶対領域と言われている、不可侵の領域。こちらもATフィールドを展開しない限り、攻撃は阻まれてしまう。こちらもATフィールドを展開して、中和するしかないの』

 

「どうやって展開するんです?」

 

『ATフィールドを展開するイメージをして、としか言えないわね』

 

『ここまで操縦してみて解っているかもしれないけど、エヴァはあなたのイメージ通りに動きます。バリアを張るようなイメージをしてみて』

 

この説明を聞いていたリュウジは以前なら、いい加減な、とツッコミを入れるところだが。イメージをする、というリツコの言葉に納得をしていた。

 

(そうか、だからシンジはあそこまで綺麗に投げられたのか)

 

恐らくだがシンジは使徒を投げる時、リュウジの動きをイメージしたのかもしれない。それを、エヴァが使徒と接近戦をする時に見事トレースした。と考えたのだ。

 

(なんて技術だ。もしかしたらエヴァで可能な動きは全てトレースできるのかもしれない)

 

イメージする力次第だが、現にシンジはエヴァでリュウジの技を再現して見せた。最も何度もリュウジの動きを味わっているからであろうが、

 

『やってみます』

 

再び使徒が立ち上がると同時に、接近戦を仕掛けた。シンジは使徒の体を掴み、脚をかけながら、今度は押し込むように使徒を押し倒す。

 

(もう一回!)

 

シンジはATフィールドに阻まれることを前提に、今度は掌底にして振り下ろした。そして再び、

 

「ぐうっ!」

 

ATフィールドが展開される。

 

「開けよ!こっちも展開できるんだろ!!開いてよ!!」

 

その時、眩く光るATフィールドが、エヴァの手の形に沿って解けるように、歪んでいった。

 

『すごいわシンジ君!空間が歪んでいっている』

 

(本当にイメージだけで……)

 

言われただけでここまでできるとは、恐らく偶然ではない。

 

(ゲンドウはできることを知っていたのか?)

 

ミサトからの話では、シンジが一番動かせる可能性が高いという話であったが、恐らく違う。ここまで動かせることを、ゲンドウはある程度見当をつけていたのだろう。

そしてついにシンジは、ATフィールドを破った。

 

『シンジ君。肩にプログレッシブナイフがあるわ。それでとどめを!』

 

「はい!」

 

『初号機!プログレッシブナイフ装備!』

 

「あああああああああああああああ!!!!!」

 

正確にプログレッシブナイフが、使徒のコアに突き刺さり、

 

「壊れろ!壊れろ!壊れろ!」

 

刺さったままのナイフ目掛けて、シンジは殴り続け、

 

「壊れろ!!」

 

遂にコアが砕けた。

 

(やった!!え……!?)

 

そこで、シンジの意識は途切れた。

 

「シンジ!!!」

 

一方の司令室のモニターは、巨大な十字の爆発が映し出されたと同時に、映像が途絶えてしまった。

 

「使徒、反応消滅!」

 

日向の言葉に、司令室は一旦安堵に包まれる。

 

「パイロットは!?」

 

ミサトはシンジの状態をマヤにモニターさせようとするが、

 

「解りません!爆発のせいでモニターできません!」

 

「復旧急いで!」

 

「了解」

 

青葉も加わり、映像、計測の復旧が始まる。

 

「リュウジ、ご苦労だった。戦闘は終わった」

 

「待ってくれ。せめてシンジの無事は確認させてくれ」

 

「だめだ、お前の役割は終わった」

 

その言葉と同時に、武装した諜報部員が今度は五人、リュウジに銃口を向けた。

 

「俺は、シンジの戦いを見守らせてくれと言ったんだ。生きていても、死んでいても、その結果を見届けさせてくれ」

 

「だめだ!」

 

「ゲンドウ!!」

 

「リュウジさん、落ち着いて」

 

ミサトがなんとか割って入る。

 

「碇司令。先程、彼の身柄は私に預けると仰いました。私が責任を持って、後で彼を拘束室に連れて行きます。彼は決して拘束を受けたくないと言っているわけではありません。ただ、彼の家族の無事を確かめたいだけです」

 

ミサトは頭を下げた。実際彼のアドバイスや、戦況分析のおかげで、途中どころか先程の爆発まで、エヴァンゲリオンは無傷だった。シンジの機転も勿論あっただろうが、それもリュウジの影響が大きいだろう。

それを考えれば、ミサトは出来る限り、リュウジの希望に添いたいと思った。

 

「モニター回復。映像出ます」

 

すぐさまリュウジはモニターを見た。

 

「シンジ……」

 

そこには爆発に吹き飛ばされたであろう、エヴァンゲリオンが巨大なビルに打ち付けられるように、腰を下ろしていた。

 

「パイロットのバイタルサイン正常。ただ気絶しているようです」

 

マヤの言葉にリュウジは胸をなでおろした。

 

「満足したか?」

 

「ええ」

 

そうしてリュウジは抵抗することなく、諜報部員の拘束を受け入れた。

 

「リツコ、ごめんしばらくたのむわ」

 

「ミサト?」

 

「私が拘束室に連れて行くって言ったからね、付き添うだけよ」

 

リツコはやれやれとため息をつき、

 

「早く戻ってよね」

 

「ええ」

 

ミサトはリュウジと諜報部員とともに、司令室を後にする。

 

「葛城さん。本当にありがとうございます」

 

「お礼を言うのはこちらの方です。我々は使徒に勝利した。初戦からあそこまで優位に立ち回れたのは、あなたのお陰です」

 

「待ってください。初戦とは?」

 

ミサトの言葉にリュウジは疑問を投げかけた。

 

「使徒はあれだけではないんです。いつ来るかは解りませんが、再び出現します」

 

「また……シンジに戦わせるんですか」

 

「……そうです。他に有効手段もなく、現状では戦えるのはあの初号機だけ。パイロットも、その……」

 

「あの少女もパイロットでしょうが、流石に彼女だけに任せて帰るなんて真似、今のシンジにはできませんよ」

 

実際彼もそんな真似はしたくはなかった。

 

「怪我もまだ完治していませんから、今は本当にシンジ君に頼るしかないんです」

 

「その現状を謝って、そしてシンジをパイロットとして使わせてほしい、そんな算段ですか?」

 

「勿論そうです」

 

その時、丁度一行は、拘束室の真前に到着した。

 

「ここだ。入れ」

 

諜報部員の一人が、リュウジに拘束室に入るよう促す。

 

「後は私がやります、戻っていいわよ」

 

「しかし!」

 

「今更逃すようなこともしないし、この人も逃げるようなことはしないわ。何かあれば私が全責任を負います。もう一度言うわ、戻りなさい」

 

「解りました」

 

そう言われた諜報部員は、全員その場を去っていった。

 

「先程の続きですが、確かにシンジ君にパイロットを続けて欲しいのが本心です。ですがその為に、貴方の力も今後貸していただきたいのです」

 

ミサトはリュウジに頭を下げた。

 

「碇司令は、私が説得します。どうかネルフに入っていただきたいんです!」




今回のブリーフィングシーンですが、実際にLCL注水から、発進のシーンで出来るのか本編で確認したら、普通にできました。
もしかしたら、何かあの時できない理由があったのかもしれませんが、少なくとも、あの状況の中、オペレーターの皆さんの話を聞いても、シンジ君は解らないから、せめて解っていることをブリーフィングするべきだと思います。

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