新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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おかげさまで、お気に入りに登録していただいた方が、51人となりました。ほかに素晴らしい作品がある中、本当に嬉しく思います。今後ともよろしくお願いいたします。

もし時間と余裕があれば、リュウジの情報をwikiや百科事典みたいにまとめてみたいです。


序-兄弟喧嘩-

ゲンドウが部屋に入った途端、空気が張り詰める。

ゲンドウがきたことを知らせた職員は、その空気に耐えられず、そそくさと退散した。

そんな事はどうでも良い兄弟は、そこそこの距離がありながら、激しくメンチを切り合っている。

 

(……いい歳だろう、二人とも)

 

と冬月は溜息をしながら呆れている。

彼としても、碇ゲンドウがここまで嫌悪感を出すのは初めて見るし、まだ会って間もないが、碇リュウジという凄まじい経歴を持つ男が、大人気なく敵愾心を出すのも意外に感じた。

この兄弟は、互いのこととなると、理解し難いほど、意地を張り合うのだ。

そうこうしている間に、ゲンドウは着席し、立っているリュウジは無言でそれを見下ろす。

 

「まず単刀直入に聞くが、俺とシンジは帰れないのか?」

 

「無理だ。貴様はともかく、シンジはパイロットとして必要だからな」

 

再度冬月から溜息が溢れる。

 

「碇。彼も帰すわけにはいかんだろう」

 

「安心してください冬月さん。シンジがここに残るなら、俺は是が非でもここを離れる気は無い」

 

さも当然、という風にリュウジは言ってのける。

 

「拘束でもなんでもしてくれていい。シンジの近くを俺は離れる気は無い。だが、もし俺を追っ払いたいなら……」

 

先程まで座っていた椅子に、リュウジは静かに座る。

 

「シンジにパイロットとしてでなく、父親として接しろ。そうすれば、俺の頭でも身体でもいじって、ここの記憶を無くして、ほっぽり出せばいい」

 

リュウジの言葉に、ゲンドウは答えない。

 

「だんまりか、つくづく臆病なやつだ」

 

「黙れ」

 

「お前がせめて、シンジと家族でいれば、あいつも寂しい思いをしなくて済んだんだ」

 

「貴様の家族ごっこに、私が強要されるいわれはない」

 

「その家族ごっこからも逃げているから、お前は臆病なんだ。そもそも俺が日本に戻ったのは……」

 

「いい加減にしてくれ二人とも。話が進まんだろう」

 

冬月は遂に頭痛を感じ始める。

 

「碇。リュウジ君とお前の確執は今は置いておけ。まず彼にこちらの結論を伝えるんだ」

 

「……わかった」

 

「リュウジ君。君の憤りもわかるが、我々の結論をどうか聞いてほしい」

 

「憤り?むしろ尊敬してますよ。傷だらけの少女を使って、シンジに負い目を負わせて、エヴァに乗るよう仕向けたこいつには……」

 

「お前の存在も、シンジがエヴァに乗る理由になったはずだ」

 

「ああそうさ。だから言ったろ?お前に対しては尊敬していると。憤りを感じているのは俺自身にだ!」

 

「ならば子供みたいに、私に突っかかるな。目障りだ」

 

「そうか、ならさっき言った通りだ。シンジと父親としてしっかり向き合え、そうすれば目の前から消えてやる」

 

「頼むから落ち着いてくれ!年寄の寿命を減らして二人とも楽しいか!?」

 

ついに冬月が声を荒げる。

 

「二人とも。頼むから、話を進めさせてくれ。互いにこれ以上無益なやり取りで時間を浪費したく無いだろう……いいな」

 

「……ああ」

 

そう言うと、ゲンドウは電話をとった。

 

「私だ。葛城二佐を呼び出してくれ」

 

 

『葛城二佐。至急碇司令オフィスまでお越しください』

 

「お呼びのようね」

 

「ミサト……」

 

「ま、どうなるかはわからないけど、たまには飲むの付き合ってよね、リツコ」

 

そう言って、ミサトは部屋から出て行こうとする。

 

「……確かに、リュウジさんと貴方では、能力に差があるかもしれない」

 

その背中にリツコが声をかける。

 

「でもね、ミサト。貴方のネルフへの貢献が、霞むほどじゃ無いはずよ。それを無碍にするほど、上も冷徹じゃ無いはず」

 

「リツコ……」

 

「それにリュウジさん自身が言ってたじゃない。エヴァンゲリオンの専門家は貴方や私だって。……だから、自信持ちなさい」

 

「ありがとう、リツコ。やっぱ持つべきは親友ね」

 

そう言うと、ミサトは軽く手を振り部屋を後にした。

 

 

「失礼します。葛城二佐が参りました」

 

「わかった……」

 

ゲンドウは、リュウジの顔など見たくない、とでも言う風に、窓から外を眺めている。

 

「失礼いたします」

 

ミサトは中に入ると、彼女から見て左にリュウジが右に冬月が立っており、此方を見ていた。

 

「すまんな。彼の人事について、君にも知らせておく必要があるのでね」

 

冬月はリュウジへ視線を向けながら話す。

 

「心得ております」

 

「そう緊張しなくていい。君のことを無碍にするつもりは無い」

 

そう言うと、冬月は机に置いてあった書類を持ち読み上げた。

 

「碇リュウジ。右の者を戦術作戦部作戦局第一課に配属し、課長補佐に任命する。階級は三尉とする。なお葛城二佐においては、至急彼の受け入れ体制を整えておいて欲しい」

 

ミサトの時間が止まる。

 

「……申し訳ありません。聞き間違いでしょうか。今の辞令は私に対してでは無いのでしょうか?碇リュウジと最初に聞こえた気がしましたが」

 

「聞き間違いでは無い。君の補佐にリュウジをつける。この男のことは好きに使いたまえ」

 

ゲンドウが背を向けながら言う。

 

「ま、待ってください。つ、つまり私の部下になると言うことですか!?」

 

彼女にとってはまさに予想外の人事だった。

しかも三尉では若いオペレーター達よりも階級が下になる。

 

「それでは作戦指揮が……」

 

「なお、彼の経歴には不明瞭な点が多く見られるため、葛城二佐には彼の仕事から日常生活における、監視を含めた監督の任にもついてもらう」

 

「監督?」

 

「出来うる限り、君の管理下に置いて欲しいということだ。これが、碇リュウジをここ、ネルフに入れる条件だ」

 

碇リュウジを管理下に置く?そんな無理難題どうしろと言うのだ?その気になれば、瞬く間にこの部屋の人間全員を制圧できるであろう男に。

 

「ま、待ってください!それでは流石に……」

 

「葛城二佐。君はどんな人事も受ける。そう言ったな?」

 

言葉に詰まった。それは、どんな降格処分も受ける、という意味で返事をしたのだ。だが蓋を開けてみれば、降格処分以上の理不尽な人事。ミサトは己の迂闊さを呪った。

 

「リュウジ。お前が良からぬ行為をすれば、全責任は監督者である葛城二佐にかかることになる。いいな」

 

そう言うことか。とミサトは合点がいった。

自分は足枷だ。碇リュウジの動きをネルフ側から抑えるのではなく、碇リュウジ自身が抑えればいい。そうしなければ、またもやミサトに厳罰が降るようにしたのだ。

 

「……まぁいいさ。好きに縛ればいい。俺は、子供達を守る。その未来も含めて」

 

リュウジはゲンドウに鋭い視線を向けるが、向こうは見ようともしていない。今更そんなことすらも、期待はしないが。

 

「これからは、あんたの指揮下にも入るわけだから、今の内に言っておきたいことがある」

 

そのリュウジの言葉に、冬月だけが少し顔を顰める。

 

「……あんたが、シンジと向き合おうとしない理由は何となくわかる。自分は、親子として幸せになる資格なんて無いと思ってるんだろう」

 

今まで合わせようとすらしなかったゲンドウの視線のみが、リュウジに向く。

 

「昔っからあんたは臆病だった。だが臆病でも、臆病なりにやり方ってもんがあるだろう?」

 

ゆっくりと、リュウジはゲンドウに詰め寄る。

 

「あの子はずっと寂しい思いをしてきた。父親であるお前を、ずっと待ってたんだ。だから3年前、ユイさんの墓参りに行って、お前と会った。そして今回も、お前に呼ばれてここまで来た。……だがどちらの時も、出発前に決まって遠慮した表情を俺に向ける。何故かわかるか?」

 

そしてついに、ゲンドウの真横まで詰め寄った。

 

「今度は、俺に捨てられるんじゃないかと怯えているからだ。お前に会って、帰ってきた時に、俺が嫌な顔をするんじゃないかと怯えてるからだ。……だがそう思っていても、あの子はお前に会うと決めた。それはお前がシンジの父親だからだ」

 

こっちを向けとでも言うふうに、リュウジはゲンドウの両肩を掴み、無理やり向かい合った。

 

「あの子は、……俺のことを父親と思って慕ってくれた。だが内心俺は、申し訳なくて仕方がなかった。最後の寂しさを埋めるピースを、俺では埋めることができないからだ。それを埋められるのは、本当の父親であるお前だけなんだ」

 

まるで懇願している表情のリュウジに、ミサトは胸が詰まった。シンジを、今この世界で誰よりも愛していながら、何もできない己の無力さを、嘆いているように見えたからだ。

 

「そんな寂しさを抱えて、他人の顔色を伺うようなあの子が、可哀想と思わないのか?哀れと思わないのか!?……まだ間に合う。シンジも、あんたも、まだ生きてる。生きていれば、なんとでもなるんだ。なあ、頼む!」

 

ゲンドウの肩を揺さぶりながら、俯きながら、リュウジは懇願する。だが、

 

「……わかった。わかったよ。俺の言葉じゃ、あんたはテコでも動かないもんな。何を言っても無駄だろう。……なら俺は、俺のできることをやるだけだ」

 

ゲンドウは動かない。

俺は結局、シンジのために何もできないと、己の無力さを痛感する。ゲンドウの肩から、ゆっくりと手を離す。

 

「……俺はシンジを、愛してる。そして、是が非でも守る。これはユイさんとの約束でも、お前がネグレクトしているからでも、俺の罪滅ぼしでもない。俺の純粋な願いだ。……その為なら俺は何でもする。覚えとけよ」

 

そう言うと、リュウジは崩れた服を直し、姿勢を正し、

 

「碇リュウジ三尉。ネルフ戦術作戦部作戦局第一課に配属、並びに課長補佐の任、謹んでお受けいたします。碇司令、冬月副司令、葛城二佐。何卒よろしくお願いいたします」

 

長年行ってきたであろう、非常に綺麗な敬礼を行うと、回れ右をして絵に描いたような歩き方で退室していった。

 

「……葛城二佐。彼の正式な配属は、3日後になる。準備を進めてくれ」

 

「承りました」

 

ミサトもリュウジを追うように退室していった。

 

 

(チクショウ……)

 

リュウジは退出した後内心毒吐いていた。

自分に対して。

彼は、ゲンドウにシンジを任せ、自分はハイさようなら。等としようとしている訳ではない。

シンジが未だにゲンドウに振り向いて欲しい気持ちを、その寂しさを、何とかしたいと考えていたからだ。

だが、

 

(俺のせいだ……俺のせいで……)

 

自分がゲンドウに対して子供じみた敵愾心を持っているから、弟という存在でありながら、兄を動かせない。何を言っても届かない。

そんな兄弟のせいで、シンジがああなってしまった。

 

(つくづく救いようのない)

 

「……ジさん?リュウジさん!?」

 

「あ、ああ、葛城さん……」

 

そんな自責の念から、ミサトの声にも、気配にも気づかなかった。

 

「申し訳ありません。葛城さん。俺たち兄弟喧嘩のせいで、貴方にも多大な迷惑を……」

 

「気にしないでください。こっちこそ、あんな大見得張っておきながら、私なんかの副官にさせてしまいました」

 

そのことに関して、リュウジはなんとも思ってなかった。寧ろ自分が、ここでシンジの側で働けるような部署になれたことに、感謝すらしていた。

どちらかと言うと、

 

「私の監督、監視のような面倒なことの方が、申し訳ないですよ」

 

「そう。その事で、折り入って提案があります」

 

「はい?」

 

「私も正直なところ、思うところはあります。碇司令の今回の人事は、明らかに貴方に対して嫌がらせに近いものがあります」

 

「まぁ、それもあるでしょうね」

 

「大方、貴方の監督管理もできるとも思ってないでしょう」

 

「あの……、別に貴方に迷惑をかけるつもりは無いですから」

 

これは事実だ。彼女に迷惑がかかるようなことを、するつもりはなかった。

もっともシンジに何かあれば、その限りではないが。

 

「分かっています。ですがこちらも、それ相応のやり方を見せつけて黙らせてやりたいんです。やるからには、徹底的に。……そこで……」

 

 

二人が去った後、ゲンドウは着席し冬月が今度は外の風景を眺めていた。

 

「まったく、もう少し大人になれんのか。お前たちは」

 

冬月は先程までの兄弟のやりとりを見て、これから先の事に頭を痛める。

もし、またあの口喧嘩が始まったら、他の者が止められるわけもなく、自分が止めに入る事になるであろうからだ。

 

「それよりどうだったんだ?リュウジの事はわかったのか?」

 

ゲンドウが部屋に来るまでの間、冬月が対局していたのは、純粋にリュウジの実力を測るためであった。

過去の経歴ももちろん重要だが、もし相対する事になった時、彼の打ち筋がわかれば、対応のしようがある。

 

だが、

 

「……わからん」

 

「何?」

 

「わからなかったのだ。強いのか、弱いのか、その実力を隠しているのかも、まったくわからなかったよ」

 

「どういうことだ?」

 

「一局目、私はわざと負けてみた。それに気づいたそぶりもなかったのでな、この程度か、と最初は思ったよ」

 

次の二局目で、まったくわからなくなったのだ。

 

「私は、いつのまにか勝っていた。打ち筋は覚えているのだが、何をどうして勝つ事になったのかが、まるでわからん」

 

決して、話に気を取られていた訳ではなかった。

だがどこが勝つ要因だったのか、彼の悪手が何処だったのかがまるで見当がつかない。

 

「私とて、将棋など趣味でしかないが。それでもこんな事は初めてだ。ケムに巻かれたのか、それとも本当に偶然か。……だがあれ程戦いに長けた男だ。恐らく計算した可能性が高い」

 

だが確証が持てない。

 

「碇。私ならすぐさま消したいところだが、それはまず無理と思った方がいい。ならば、今のうちに抱き込む事も考えていた方が……」

 

「その必要はない」

 

こんな時まで、ゲンドウはリュウジを認めようとはしなかった。

 

「碇!意地を貼るな。手遅れになるぞ」

 

「落ち着け。奴の弱点はこちらが握っている」

 

「弱点?……第三の少年のことか?」

 

「そうだ。せいぜい家族ごっこを演じさせておけばいい。その分リュウジは絶望に落ちるさ」

 

たしかにシンジはリュウジの弱点であろう。

 

(だが碇、リュウジ君がそれに気づいていないとでも思うのか……)

 

リュウジはそんな事百も承知だ。

知った上で、全部受け入れているのだ。

 

次の第三局。

それがいつになるのか、どのような形になるのか、それはわからないが、冬月はとてもじゃないが、

 

「勝てる」

 

とは、断言できなかった。

 

 

第3新東京市

某所

 

「ボス。お久しぶりです」

 

「私はもう貴方のボスじゃない。剣崎は教官と呼ぶし。勘弁してくれ」

 

「いえ、貴方は今でも私のボスです」

 

「それより剣崎のことで……」

 

「ええ、聞きました。戦闘に巻き込まれたと」

 

「ああ、諸事情があって、まだ確証は得られていないが、重症らしい」

 

「重症?私の調べでは、一週間で退院できると聞きましたが……」

 

「……まぁいい。どちらにしろ、すぐには動けないのは変わらない。そこで貴方には、彼に頼んでおいた件を引き継いで欲しい。ユーロの伝手に、依頼を出して入るらしく……」

 

「あいつがユーロに持っている伝手なら、見当がつきます。でも大丈夫何ですか?ネルフに貴方は目をつけられて……」

 

「ゲンドウが警戒しているのは、私がネルフを嗅ぎ周らないかどうかだ。それらしい動きをして、こちらに目を向けさせておく」

 

「わかりました」

 

「それともし頼めるなら、追加で依頼したいことがある」

 

「何でしょう?」

 

「剣崎には、所在のみといったが事情が変わった。このチップに、追加依頼を入れてある。彼女に届けて欲しい」

 

「……その真希波マリと言う女への依頼ですか?」

 

「そうだ。頼む」

 

「了解。ボス」

 

「……だから、私はもうボスじゃない」

 

「そうでしたね。わかりました………ボス」




仕事場でも、身内がいると違う表情や態度が出る人っていますよね。今回のゲンドウは、そんな感じで、弟に対して弱冠ムキになるようにしてみました。

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