新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
リュウジはミサトとともに、司令室に繋がるエレベーターに乗り込んだ。
「相手は何なんです?」
「詳細は省きますが、我々は使徒と呼んでいます」
「目的は?」
「ここです。正しくは、この地下にある物、とだけ言っておきます」
「need to know の原則ですか」
「ごめんなさい」
「いいですよ。時間もないことですし」
彼にしてみれば、敵の目的が判明しただけでも御の字である。
「解ればで結構ですが、N2兵器が効かない理由はなんです」
「我々はATフィールドと呼んでいます。通常兵器は、基本的にはそれに阻まれてしまいます」
「エヴァンゲリオンであれば、それを破れるんですか?」
「理論上ではありますが、こちらもATフィールドを展開し、中和させることで、破ることができます」
どういう理屈だ。と疑問しか浮かばないが、取り敢えず破る方法はあるらしい。
「使徒に弱点はないんですか?」
ミサトは、これを、と言いながら、使徒の現状を捉えた写真を見せる。
「顔のような部分の下にある赤い物体。このコアを破壊すれば倒せます」
「確かなんですね?」
「ええ」
なぜここまで詳細を知っているのか、それは敢えて聞かなかった。現状彼にとっては、知る必要のないものだからだ。
「話せる範囲で結構ですが、エヴァンゲリオンの情報もいただきたい。動力源、操作方法、駆動制御プログラム、情報処理能力、なんでも結構です」
その言葉を言い終わった途端、ミサトが抱える書類の束から、一つの分厚い紙の束が落ちた。
それの表紙には大きく、部外秘と書かれている。
当のミサトはそっぽを向き、飽くまでも、
「気づいていない」
体を装っていた。
(ありがとうございます)
リュウジはそれに気づき、すぐさま拾い上げ目を通した。
(こんなものが実用可能なのか?)
おそらくミサトにも全て明かされているわけではない、とリュウジは見当をつけていた。恐らくより深くを知っているのは、
(兄か、あの赤木さんか……)
一方ミサトは、『落としてしまった』資料に目を通すリュウジを見て、
(……一体、何者なの?)
と、再び考えを巡らす。
リュウジがゲンドウの弟である以前に、彼自身の能力について、彼女も疑問を浮かべていた。
定食屋のオヤジと言っていたが、ただの一般人でない事は明白だ。
現に今も、分厚いエヴァンゲリオンの資料を、読み終えようとしている。
彼自身のインプット能力の高さが伺える。
(並みの兵士ではないわ。年齢を考えたら、セカンドインパクト直後も、戦争、紛争地帯で戦っていたのかも……)
それは想像を絶する地獄であったろう。
物資はなく、味方もなく、安全な場所などない。それと比べたら自分がくぐり抜けた修羅場など、彼からしてみれば、
「可愛いもの」
としか映らないだろう。
そんな考えを巡らせているうちに、またもや書類が落ちる音がした。
今度は、リュウジがそっぽを向き、
「気づいていない」
体を装っていた。
ミサトはすぐさま拾い上げ、リュウジの言葉を待った。
「……シンジなら、これを動かせるんですか?」
「……彼しかいない、というより、彼が一番動かせる可能性が高いという話です。先程の少女、綾波レイですら、訓練してシンクロできるようになるのに7ヶ月かかりました。ネルフにあるスーパーコンピュータ、MAGIが出した起動する確率は、0.000000001%です」
途中、あの少女に名前に引っかかったが、彼はそれを頭の隅に追いやり、そして天井を見上げた。そこまでのポンコツとは思っていなかったからだ。
「まずは動くかどうか、だな」
「そういうことです」
「そして、訓練をしている時間も余裕もない」
「はい」
今更だが、ミサトは申し訳なくなった。
こんな状況では、アドバイス以前の問題だ。だがそんな状況とは裏腹に、リュウジの目からは、悲観した表情は全くなかった。
そう、彼は飽くまで勝つ算段を組み立てていた。
(幸いなことに、やつは人型だ。シンジならなんとかできる可能性は低くない)
であるならば、問題は先程から変わらず一つだけ、エヴァンゲリオンを動かせるかどうかであった。
※
エントリープラグ内。
シンジはインターフェイスを頭部に装着して、出撃の時を待っている。
(大丈夫。平常心、平常心)
シンジは自分の服に付いている、叔父の血を見つめていた。本来なら、血など忌み嫌うものだが、今はそれが半ばお守りの様に彼にとっては縋るものとなった。
『エントリープラグ注水』
「えっ?何ですか?これ」
『大丈夫。肺がLCLで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ』
液体を肺に入れるという、今まで経験したことのない行為に戸惑うが、現実は彼を待ってはくれない。
『シンジ、俺だ。聞こえるか?』
「はい」
『時間がない。出撃準備中に、ブリーフィングをする』
「わかりました」
『状況は最悪。敵、使徒の破壊行為により、射出口が破壊、もしくは作動不良により、最大で使徒の半径500メートル付近にしか、出せない。つまりいきなり敵の目の前にお前を出すことになる』
『更に最悪なのは、頼みのエヴァンゲリオンが動くかどうかも解らない。仮に動いたとしても、普段通り動けるとは限らない』
「どうして?」
『お前とエヴァの体格差を考えろ。小さい物の方が、動きは素早く、大きい物の方が遅くなる。どうしてもお前の感覚とは、タイムラグが発生するはずだ』
『そのタイムラグのせいで、歩こうとするだけでも、訓練を積まないと思う通りには動かせない。つまり戦う前にお前はエヴァとのリハビリを、敵の目の前でやらされる訳だ』
「ならどうするんですか?」
『歩こうとすればコケるのは目に見えている。まずは腕を動かすよう意識しろ。腕が動かせれば、敵の攻撃をガードできるし、最悪コケた時には、うまく行けば地面への熱烈なキスをせずに済む。仮にできなくても、匍匐状態なら腕でも移動ができるはずだ』
「腕ですね。わかりました」
『次に敵、使徒についてだが、弱点はコアと呼ばれる、赤いクリスタル状の部分だ。そこを破壊できれば倒せる。だが通常兵器では、ATフィールドによって無効化される』
「何ですかそれ?」
『アニメやゲームに出てくるバリアのようなものと思え、それを破るには、こちらもATフィールドを展開し、中和するしかないそうだ』
「……どうやればいいんです?」
『わからん。申し訳ないが、今は後回しだ。だが映像を見ると攻撃している時には、使徒はATフィールドを展開してない。ここが狙い目だな』
「攻撃を誘発してカウンターってわけですね」
『それが狙える程、動かせる様になればだがな。まずはリハビリしながら、出来る限り距離を取れ。だが敵の腕や顔のような箇所からは、指向性エネルギーを放つ攻撃が確認されている。距離が取れたとしても、油断はするな』
「……はい」
※
シンジにブリーフィングしているリュウジを、ゲンドウは睨む様に見ていた。
(リュウジ。なぜだ……)
子供の頃からそりが合わなかった。自分と違い、社交的であり、友人ともよく付き合っていた。そのくせ自分より勉学ができないかというと、全くそんなことはなかった。
そして突然自衛隊に入ったかと思うと、それ以来会うことは全くなかったのだ。
「優秀な男だな、お前の弟は」
脇に控える冬月が、リュウジの様子から率直にそう感じた。
「最後に会った時は、CIAにいたらしいからな、それなりにはできるんだろう」
「何をしていたか、聞いてはおらんのか?」
「互いに興味がなかったからな。15年前にあったのも、ユイがせめて挨拶ぐらいはさせてほしい、と言ってきたからだ」
「……待て。ユイ君と会っているのか?あの男は」
冬月の表情が厳しいものになる。
「そうだ」
「レイに会っているんだろう?怪しまれやしないか?」
「だとしても、あいつには何もできんよ」
「奴の来歴を調べた方がいい。ただでさえ、うちの諜報部は、奴の存在を確認していなかったんだぞ」
それだけで冬月には、彼から得体の知れない何かを感じざるを得ない。
「どうするかはお前に任せる。私にはどうでも良いことだ」
冬月はまだ言いたいことがあったが、取り敢えず、この場は抑えることにした。
(側から見れば、兄弟の意地の張り合いにしか見えん)
何が互いに気に入らないのかは、冬月にもわからないが、喧嘩をして互いが、
「あっちの方が悪い」
と意地を張っている様に思えてならないのだ。そう言った意味では、同じ穴のムジナである。
「後で調べさせるよう手配する。異論はないな?」
「好きにしろ」
「碇司令、出撃準備整いました」
ミサトが準備完了を告げる。
「かまいませんね」
「無論だ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」
(碇、いいのか?このままで……)
冬月はやはり不安を拭えなかった。
「発進!!」
※
急激なGを感じたと思えば、シンジにとっては目と鼻の先に、すでに使徒はいた。
『いいわね、シンジ君』
「……はい」
恐怖に押しつぶされそうになるが、シンジは静かに答えた。
『最終安全装置、解除。エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』
肩を固定していた安全装置が解除され、初号機は若干前のめりになる。
「まずは腕だ。動いてくれ」
それに呼応する様に、初号機は手を握って開きながら、両の腕を上下に動かした。
(いいぞ、0.000000001%の壁はクリア)
「マヤ、エヴァのステータスに変動、異常があれば逐一報告して」
「はい!」
「日向君は使徒のエネルギー数値を監視」
「了解!」
「青葉君は、使徒とエヴァとの距離を知らせて。報告は50メートル毎とします」
「了解しました」
その直後ミサトとリュウジはアイコンタクトをする。
「使徒の距離、現在500メートル」
エヴァンゲリオンを動かす感覚においては、リュウジが言えることはない。なにせシンクロしているのはシンジなのだ。リュウジも経験にないことはアドバイスできない。
(大丈夫。敵との距離もまだある、遠距離攻撃の様子もない)
「450メートル」
こちらとの距離を縮めてきてはいるが、遠距離攻撃をしてこない限り、まだ敵の間合いに入ってはいない。
だがゆっくりと、使徒は接近してきた。
『大丈夫。動かせます』
「すごいわ、ここまで動かせるなんて」
「400メートル」
腕を含めた上半身を、既にシンジは動かしてみせた。
「350メートル」
だが、使徒の接近も、段々と早まってきていた。
『足を動かしてみます』
そして問題の、移動手段の確立である。
「バランスを両腕で取りながら歩いてみろ。だが細かい調整は、お前の感覚に任せる」
『はい』
ここまで短時間で、エヴァを動かして見せたのを見ると、歩くこと自体は、できるだろうとリュウジは考えていた。
だがそれで初めて、こちらはスタート地点に立つ事になる。最終的には、使徒に勝たねばならないのだ。
「距離300メートル」
「目標のエネルギー数値、変動ありません」
「初号機とパイロットのシンクロ率、徐々に上昇しています。現在45%なおも上昇しています」
原因は不明だが、コンディションが徐々に良くなっていっている。
敵もとりあえずは、ただ接近しているだけの様だ。
そして、
『よしっ!』
重い一歩ではあるが、シンジは前進した。
「敵との距離、いっきに200を越えました!」
仕方がない、こちらも前進したのだから、距離が縮まるのが早まるのは通りである。
「今は歩きながら、バランスをとる事に集中しろ!」
『はい!』
距離をとる事にこだわり、後退りしながら転けるなんぞ、目も当てられない。
(距離をとることは、今は後だ。……いざとなれば)
「シンジ、無茶を言うがいつでも交戦できるよう構えておけ」
『はい』
歩くリハビリをしながら、臨戦体制をとるという凄まじい無茶振りであるが、今はそうしてもらうしかない。
幸いなのは、シンジは順調に、バランスをとりながら、歩むことができていることだ。
「150!……100!」
そしてその分、接近していく。
「リュウジさん!」
「このままでいい」
ミサトに声をかけられるが、ここに来てそのまま距離をとるのは、逆にリスキーである。とリュウジは判断した。
「50メートルきりました!!」
その瞬間、使徒が手で掴むように伸ばしてきた。
『うわっ!!』
咄嗟に反応したのか、伸びてきた手を弾く。
そのせいで、使徒は僅かだが体制を崩した。
『コノッ!!!』
「よせ!シンジ!!」
だがシンジは止まらなかった、いや止められなかったと言うのが正しい。
エヴァで弾いた反対の腕で、シンジは使徒をそのまま殴ったのだ。
「殴った……」
いきなりに先制攻撃に、リツコは思わず呟く。使徒も予想外の攻撃だったのか、後退りしながら倒れた。
だが相手を殴ると言う行為は、思いのほか体全体のバランスを使う。
『うっ、うわわっ!!』
まだ機体に慣れてない状況では、バランスを崩すのは目に見えていた。
「シンジ!」
使徒に覆い被さるように倒れそうになるが、
『ハァッ、ハァッ……』
シンジは両手を突き出し、四つん這いの状態で辛うじて体制を崩しきらずにいた。
「よし、シンジ。そのままでいいから、とにかく距離を取れ!」
『はいっ!!』
側から見れば不恰好だが、四つん這いのままそのままシンジはエヴァを前進させた。
そのまま前転し、受け身をとりながら立ち上がり、体制を整える。
(ようやくおじさんが言ってたことがわかった)
リュウジが体が動かしにくい、と言ったことを文字通りシンジは体で理解していた。
腕を動かす時はそうでもなかったが、足を動かした時、自分が普段歩くペースでエヴァを動かそうとすると、どうしても次の一歩に行こうとしても、前の一歩がまだ終わっていないのだ。
(だけど、少し慣れてきた。何とかなるかも)
『敵との距離、現在250メートル』
『シンクロ率、50%を超えました』
再び距離を取ることができ、エヴァとのシンクロも徐々に出来るようになったことで、ようやくシンジの中に余裕が生まれてきた。
『どうだ?シンジ。慣れてきたか?』
「なんとか。おじさんが言ってた、タイムラグの意味がようやくわかりましたよ。この後は?」
『今の距離を維持しながら……』
『敵体内に高エネルギー反応!!』
『シンジ!敵正面に立つな!!』
咄嗟にシンジは横に半ば倒れるように、リュウジの指示に従った。その直後、凄まじい爆風が走り抜けた。
いつのまにか、使徒は立ち上がりながらも、その顔から遠距離攻撃を仕掛けてきたのだ。
『遮蔽物に隠れながら移動し続けろ!!とにかく止まるな!!!』
『了解!!!』
シンジは半ばパニックになりながらも、とにかくリュウジの指示通り動き続けた。
使徒も殴られたお返しとばかりに、エヴァに向かってビームを乱射する。
(よく見ろ。正面に立たないように、よく見るんだ!)
※
「すごいわ。この短時間でエヴァをここまで乗りこなしている」
「シンクロ率、現在60%。信じられません」
司令室では、リツコとマヤがモニターを見ながら、シンジの操縦と徐々に上昇しているシンクロ率に驚嘆していた。
(今は何とかしのげているが、そう長くは持たんだろう……)
その会話を耳にしながら、リュウジは考えを巡らす。実際遮蔽物に使っている建造物は、徐々に減ってきているからだ。
「シンジ。接近しろ!」
「リュウジさん!まだ早いのでは?!」
「ここまで動かせるのであれば、勝算はあります」
そもそも、動かせるかどうかが未知数だったのに対し、現状ではまさに長年操縦していたのではと思わせるほど、シンジは乗りこなして見せている。
「シンジ。お前のタイミングに任せる。だが冷静に行け」
『了解』
大きな建造物を背にしながら。シンジは息を整えていた。
遮蔽物を使って逃げていたのが、同時に撹乱にもなり、使徒はシンジを見失っていた。
(頭を使え。フル回転させろ)
自分を落ち着かせるように、リュウジに言われた言葉を反芻し、シンジは瓦礫を一つ拾う。
(頼む!)
そして全くの逆方向に瓦礫を投げ、使徒の注意を逸らそうとし、
(やった!!)
使徒がその方向にビームを撃ったのを確認し、
「うぁぁああああああああ!!!!!」
全速力で使徒に接近した。
だが使徒も注意をそらされた事に気づき、寸前で振り返りざまに腕を横に薙いだ。
「フンッ!」
だがシンジはそれを両の手で掴み、一気に捻り上げ、すぐさま足に蹴りを軽く見舞い、バランスを崩させ、
「ハァッ!!」
使徒を投げ伏せた。シンジはそのままマウント体制に、
(落ち着け!!)
『体内に再び高エネルギー反応!!』
入らずに距離をとった。
すぐさま使徒が上空にビームを放っていた。
『いいぞシンジ!よく思いとどまった。だが接近戦は継続しろ』
「はい!」
再び場面は司令室に戻る。
司令室で見ていた者達は、先程のシンジの一連の攻撃に、まさに度肝を抜かれた。
特にミサトは、もしかしたらリュウジから、何か手ほどきを受けているかも、と思っていたが、ここまでとは思っていなかったのだ。
(まじかよ、シンジ)
だが実は最も驚いていたのは、他ならぬリュウジだった。あそこまで綺麗に決めるなど、彼も思っていなかったからだ。
無論接近戦であれば、彼が伝授していた技術が役に立つとは考えていた。
だがあれほど綺麗に投げるのは、相当な修練が必要な筈だ。
だが彼は驚いたことは、顔には出さなかった。少しドヤ顔をして、やり過ごす。
(……だが嬉しい誤算だ)
接近戦であれば、今は俄然シンジが有利だからだ。先程のような思わぬ反撃に気をつければ、勝てる筈である。
(出来る限り接近して、尚且つ顔正面から体をそらす)
エントリープラグ内のシンジも冷静であった。
そして使徒が立ち上がった直後に、再び至近距離に接近し、
「フッ!」
膝蹴りを喰らわせると、そのまま垂れ下がっていた使徒の片腕を掴み、
「ハアァァ!」
またもや投げて見せた。
(今度は……!)
シンジは追撃を仕掛ける。
マウントは取らず。正拳を使徒のコアに振り下ろす。
だが突如金属音のような轟音が辺りに響いた
「なっ!」
シンジの振り下ろした拳は通らず、眩く光る透明な壁のようなものに阻まれてしまった。
「なんだこれ……」
訳も分からず、シンジは一旦後退する。
『シンジ君。今のがATフィールドよ』
リツコから通信が入る。
「これが……」
『そう。絶対領域と言われている、不可侵の領域。こちらもATフィールドを展開しない限り、攻撃は阻まれてしまう。こちらもATフィールドを展開して、中和するしかないの』
「どうやって展開するんです?」
『ATフィールドを展開するイメージをして、としか言えないわね』
『ここまで操縦してみて解っているかもしれないけど、エヴァはあなたのイメージ通りに動きます。バリアを張るようなイメージをしてみて』
この説明を聞いていたリュウジは以前なら、いい加減な、とツッコミを入れるところだが。イメージをする、というリツコの言葉に納得をしていた。
(そうか、だからシンジはあそこまで綺麗に投げられたのか)
恐らくだがシンジは使徒を投げる時、リュウジの動きをイメージしたのかもしれない。それを、エヴァが使徒と接近戦をする時に見事トレースした。と考えたのだ。
(なんて技術だ。もしかしたらエヴァで可能な動きは全てトレースできるのかもしれない)
イメージする力次第だが、現にシンジはエヴァでリュウジの技を再現して見せた。最も何度もリュウジの動きを味わっているからであろうが、
『やってみます』
再び使徒が立ち上がると同時に、接近戦を仕掛けた。シンジは使徒の体を掴み、脚をかけながら、今度は押し込むように使徒を押し倒す。
(もう一回!)
シンジはATフィールドに阻まれることを前提に、今度は掌底にして振り下ろした。そして再び、
「ぐうっ!」
ATフィールドが展開される。
「開けよ!こっちも展開できるんだろ!!開いてよ!!」
その時、眩く光るATフィールドが、エヴァの手の形に沿って解けるように、歪んでいった。
『すごいわシンジ君!空間が歪んでいっている』
(本当にイメージだけで……)
言われただけでここまでできるとは、恐らく偶然ではない。
(ゲンドウはできることを知っていたのか?)
ミサトからの話では、シンジが一番動かせる可能性が高いという話であったが、恐らく違う。ここまで動かせることを、ゲンドウはある程度見当をつけていたのだろう。
そしてついにシンジは、ATフィールドを破った。
『シンジ君。肩にプログレッシブナイフがあるわ。それでとどめを!』
「はい!」
『初号機!プログレッシブナイフ装備!』
「あああああああああああああああ!!!!!」
正確にプログレッシブナイフが、使徒のコアに突き刺さり、
「壊れろ!壊れろ!壊れろ!」
刺さったままのナイフ目掛けて、シンジは殴り続け、
「壊れろ!!」
遂にコアが砕けた。
(やった!!え……!?)
そこで、シンジの意識は途切れた。
「シンジ!!!」
一方の司令室のモニターは、巨大な十字の爆発が映し出されたと同時に、映像が途絶えてしまった。
「使徒、反応消滅!」
日向の言葉に、司令室は一旦安堵に包まれる。
「パイロットは!?」
ミサトはシンジの状態をマヤにモニターさせようとするが、
「解りません!爆発のせいでモニターできません!」
「復旧急いで!」
「了解」
青葉も加わり、映像、計測の復旧が始まる。
「リュウジ、ご苦労だった。戦闘は終わった」
「待ってくれ。せめてシンジの無事は確認させてくれ」
「だめだ、お前の役割は終わった」
その言葉と同時に、武装した諜報部員が今度は五人、リュウジに銃口を向けた。
「俺は、シンジの戦いを見守らせてくれと言ったんだ。生きていても、死んでいても、その結果を見届けさせてくれ」
「だめだ!」
「ゲンドウ!!」
「リュウジさん、落ち着いて」
ミサトがなんとか割って入る。
「碇司令。先程、彼の身柄は私に預けると仰いました。私が責任を持って、後で彼を拘束室に連れて行きます。彼は決して拘束を受けたくないと言っているわけではありません。ただ、彼の家族の無事を確かめたいだけです」
ミサトは頭を下げた。実際彼のアドバイスや、戦況分析のおかげで、途中どころか先程の爆発まで、エヴァンゲリオンは無傷だった。シンジの機転も勿論あっただろうが、それもリュウジの影響が大きいだろう。
それを考えれば、ミサトは出来る限り、リュウジの希望に添いたいと思った。
「モニター回復。映像出ます」
すぐさまリュウジはモニターを見た。
「シンジ……」
そこには爆発に吹き飛ばされたであろう、エヴァンゲリオンが巨大なビルに打ち付けられるように、腰を下ろしていた。
「パイロットのバイタルサイン正常。ただ気絶しているようです」
マヤの言葉にリュウジは胸をなでおろした。
「満足したか?」
「ええ」
そうしてリュウジは抵抗することなく、諜報部員の拘束を受け入れた。
「リツコ、ごめんしばらくたのむわ」
「ミサト?」
「私が拘束室に連れて行くって言ったからね、付き添うだけよ」
リツコはやれやれとため息をつき、
「早く戻ってよね」
「ええ」
ミサトはリュウジと諜報部員とともに、司令室を後にする。
「葛城さん。本当にありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらの方です。我々は使徒に勝利した。初戦からあそこまで優位に立ち回れたのは、あなたのお陰です」
「待ってください。初戦とは?」
ミサトの言葉にリュウジは疑問を投げかけた。
「使徒はあれだけではないんです。いつ来るかは解りませんが、再び出現します」
「また……シンジに戦わせるんですか」
「……そうです。他に有効手段もなく、現状では戦えるのはあの初号機だけ。パイロットも、その……」
「あの少女もパイロットでしょうが、流石に彼女だけに任せて帰るなんて真似、今のシンジにはできませんよ」
実際彼もそんな真似はしたくはなかった。
「怪我もまだ完治していませんから、今は本当にシンジ君に頼るしかないんです」
「その現状を謝って、そしてシンジをパイロットとして使わせてほしい、そんな算段ですか?」
「勿論そうです」
その時、丁度一行は、拘束室の真前に到着した。
「ここだ。入れ」
諜報部員の一人が、リュウジに拘束室に入るよう促す。
「後は私がやります、戻っていいわよ」
「しかし!」
「今更逃すようなこともしないし、この人も逃げるようなことはしないわ。何かあれば私が全責任を負います。もう一度言うわ、戻りなさい」
「解りました」
そう言われた諜報部員は、全員その場を去っていった。
「先程の続きですが、確かにシンジ君にパイロットを続けて欲しいのが本心です。ですがその為に、貴方の力も今後貸していただきたいのです」
ミサトはリュウジに頭を下げた。
「碇司令は、私が説得します。どうかネルフに入っていただきたいんです!」
今回のブリーフィングシーンですが、実際にLCL注水から、発進のシーンで出来るのか本編で確認したら、普通にできました。
もしかしたら、何かあの時できない理由があったのかもしれませんが、少なくとも、あの状況の中、オペレーターの皆さんの話を聞いても、シンジ君は解らないから、せめて解っていることをブリーフィングするべきだと思います。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
誤字脱字などございましたら、お知らせください。