新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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あけましておめでとうございます。

今年も皆様にとって、良い年となりますよう、切に願う次第です。

あと、更新が遅れ続け、申し訳ございません。


Sin-手遅れな喜劇-

ユーロネルフ指令室に、一つの人影が入ってくる。

冬月であった。

彼は遠くに聞こえる銃声などが入り混じった喧騒をとは打って変わって、静まり返った指令室内のシステムを一つづつ復旧させていく。

そして一際大きなモニターを復旧させると、そこには巨大な戦艦、ヴンダーが映し出されていた。

それを見て取ると、冬月はヴンダーの一部分をズームしていく。

そこからはエヴァ4+3号機がせり上がり、やがて襲い来るであろうエヴァシリーズを迎え撃たんと待ち構えていた。

 

「……本当にいいんだな?リュウジ君」

 

 

14年前。

リュウジと冬月が飲み交わし、協定を結んだあの夜。

リュウジは冬月に自身の目的を話した。

 

「どう思います?」

 

冬月はその胸内に、驚愕を感じずにはいられなかった。

そして眼の前の男の正気を疑わざるを得なかった。

 

「あなたはユイさんとエヴァを、ゲンドウ以外に最もよく知る人物です。そのあなたから見て……」

 

「確かに理にはかなっている。そして、もしその通りとなったらば、私にとってもこれ以上のことは無いだろう」

 

だが、と言葉を続けると、冬月はお猪口を煽った。

 

「君は良いのかね?それでは碇の思うつぼだし、……何より君は、―――永遠と続く戦いに漕ぎ出していくことになる」

 

その永遠を想像することすら、冬月には恐怖でしかなかった。

だが対照的に、リュウジは無邪気に微笑むだけであった。

 

「冬月さん、この世に永遠などというものはありませんよ。どんなものにも、どんな形であれ必ず終わりは来きます。―――ですがまぁ、確かに永遠に近い程、終わりの見えない戦いになるのは確かでしょう」

 

リュウジはそう言うと、徳利を持ち、冬月に酒を注ぐ。

 

「もっとも、私が今日まで生きてきて、戦いが終わった事などありませんがね」

 

 

リュウジはエヴァシリーズを迎え撃つにあたって、敵の目的であるヴンダー上を戦場とすることを選んだ。

地上を戦場とすれば、ユーロネルフへの被害を食い止めることと、ヴンダーを守ることの両方を注力して戦うという事態になるからだ。

 

「あの諸刃……」

 

『ええ、模造品ではあるけれど、ロンギヌスの槍よ。いかにあなたのATフィールドが強力と言えど……』

 

「大丈夫」

 

ミサトの言葉を受けると、リュウジは近くに作業用のワイヤーがあるのを見て取り、それを両の手で手繰り、眼前に構えた。

 

「そもそもあんな防護壁、無い状態で戦った歴の方が長いですから」

 

そしてそのワイヤーが青白く発光したのとほぼ同時に、エヴァシリーズが計9体。

リュウジの眼前に降り立った。

 

「さあ、互いに無用の長物となった物同士だ。この円環を最後に、すべて終わりにしよう」

 

どこか静かに構えるリュウジとは対照的に、エヴァシリーズはその裂けた口から液を撒き散らしながら、威嚇するかのように下卑た笑声を立てる。

 

そんな対照的な両者の均衡に、エヴァシリーズの内の一体が我慢できなかったのか、遂にリュウジに襲いかかった。

だが次の瞬間には、エヴァシリーズの得物を構えていた片腕が宙を舞っており、その背後には素早く得物を奪い取ったリュウジが、敵をその得物で貫いていた。

 

「フゥ……」

 

小さくリュウジが息を吐くと、貫かれたエヴァシリーズの一体は、力無く崩れ落ちる。それが合図と言わんばかりに、残りの八体が一期にリュウジに攻めかかった。

 

(…1…2…)

 

そのワイヤーを駆使すれば、まるでバターを切るかのようにエヴァシリーズの機体を切断し、

 

(…11…12…)

 

超近接格闘においては、数的不利をものともせず次々と倒していく。

 

 

「敵残り2体です」

 

戦闘の火蓋が切られ、一分の半分がようやく過ぎたと言う時間にもかかわらず、青葉はすでに敵の内7体が事切れていることを告げた。

 

「…………圧倒的ね」

 

「リツコ?」

 

ミサトは不意に声を発したリツコへと目線を向ける。

 

「エヴァを強くするのに最も単純かつ確実な方法は、そのパイロットの戦闘能力を向上させるのが最も有効な手段。逆に言えば、戦闘能力が高い人物がエヴァの適性を得ることができれば、それがそのまま、エヴァの戦闘能力となる」

 

「理屈ではそうね、でもそれは……」

 

「ええ、それはとどのつまり、彼ほどの類稀なる戦闘技術、戦略的思考を持っている人物が、エヴァパイロットの適性を持ち、さらに高数値のシンクロ率を維持できなくてはならない」

 

リュウジ程の戦闘に関する技能を持つにいたるには、ただ訓練しただけではたどり着けない大きな壁がある。

実際に、実戦で、大勢の人を、その手で殺す。

それを多くの時間をかけて繰り返していかなければならない。

そんなものはパイロットはおろか、普通の人間が経験できるものではないのだ。

 

「あり得ないとは分かっていたけど、彼を一度見てしまうとどうしても考えてしまうのよね。……せめて、彼の戦闘能力を、ダミーを利用して、エヴァにインプットできないか」

 

実際リュウジが提案してきた、

 

『種蒔き』

 

に乗ったのも、そのロマンを実現できないかと思った部分もある。

 

「でも、目の前にはそれ以上の光景が広がってる。久々に思い出したわ……最初に感じたものを」

 

科学者という人種は誤解されがちであるが、ロマンチストであることが往々にしてある。

有名なところで言えば、ライト兄弟も、

 

『空を自由に飛びたいな』

 

という、猫型ロボットの登場するアニメの主題歌のフレーズのような夢を元に、世界初の有人動力飛行を実現した。

 

リツコは『E計画』責任者であったことからも、エヴァの特性をよく理解している。

それはつまり、

 

『リュウジの戦闘能力をエヴァで実現する』

 

という事がいかに難しいことであるかという事を、誰よりもよく理解していたという事である。

それをせめてダミーシステムを利用して実現に近づけないかと考えていたのだが、目の前にはそれ以上に、

 

『リュウジがエヴァに搭乗している』

 

という夢に描いていた現実が広がっていた。

 

「これで最後です」

 

頭部を破壊された最後のエヴァシリーズが、そのまま力なく倒れていった。

 

「エヴァシリーズ、全機沈黙」

 

「いいわ、リュウジ。そのまま帰投しなさい」

 

「……待ってください」

 

ミサトの命令に、日向が待ったをかけた。

 

「エヴァシリーズの反応を再度検出!」

 

「9体とも再起動しています」

 

青葉もモニターの情報から、まだ戦闘が終わっていないことを報告する。

 

「くっ!S2機関搭載は伊達じゃないわね……。リュウジ!」

 

『や…り、…アの部……胸…下か……。加えて………機体を………た時間を……れば、再生、………する………時間は大よそ……』

 

だが肝心のリュウジは、その様子を見ながら聞き取れない声量で何か呟いているのみであった。

 

「リュウジ?」

 

『……40秒だな』

 

戦場となったヴンダー上では、再生したエヴァシリーズが、リュウジを囲みながら先ほど以上の下卑た笑声をあげながら、リュウジを取り囲んでいく。

だがリュウジは冷静さを保ちながら、再度ワイヤーを構える。

 

「4+3号機、シンクロ率上昇!?……ひゃ、141%!!」

 

「なっ……」

 

青葉の驚愕の声につられるようにミサトも驚嘆を声に露わにしてしまう。

 

(どうするつもり?リュウジさん)

 

再度戦闘の火蓋が切って落とされるが、その光景は変わらない。

次々と襲いかかるエヴァシリーズを、圧倒的な戦闘力で倒していくのみであった。

先程よりも早い戦闘運びではあるが、仮にこれを続けていったとしてもジリ貧に陥るのは目に見えている。

だが再び最後の一体となった時、リュウジは近くに落ちていた敵の諸刃を手に取ると、

 

『フンッ!』

 

その最後の一体の胸部を一刀のもとに切り裂いた。

血飛沫をあげ、エヴァシリーズが再度倒れようとする寸前、

 

『そこだ!!』

 

伸ばした掌底が青白く光らせ、露わになったコアを奪い取るが早いか、

 

『パアンッ!!!』

 

その手で握りつぶした。

残っているエヴァシリーズが再生を始めているが、残った機体のコアを握りつぶすには、十分過ぎるほどの時間の余裕があった。

 

『9体で、今の戦闘時間がおよそ、39秒……、マイナス4秒。……つまり一体あたり大よそ……4秒弱か』

 

 

その様子を冬月が、指令室で静かにモニターしていると、

 

「来たか……」

 

「お久しぶりです。冬月副指令」

 

剣崎が、その背後に銃口を突き付けていた。

 

「やはり大したものだな。君の恩師は」

 

そのモニターには、再生することなど歯牙にもかけずに、着実に、一体ずつ、エヴァシリーズのコアを破壊していく4+3号機が映し出されている。

 

「最初の戦闘で、再生、再起動までの時間を計測し、同時にコアがどの部分にあるかを特定、そしてそれを元に着実に殲滅していっている」

 

リュウジの作戦はいたってシンプルである。

再生するまでに、一体ずつS2機関を破壊し再起不能にさせる。

 

「エヴァシリーズの学習能力はかなり高いはずだが、この短時間であれ程の近接戦闘に対応するのは、やはり無理な話か」

 

「お言葉ですが、あれで教官に勝てると本気で思っていたのですか?」

 

その会話の間にも、また一体コアが破壊されたエヴァシリーズがこと切れていく。

 

「まさか。私はただ確かめに来ただけだよ」

 

「確かめる?」

 

冬月は銃口を向けられているにもかかわらず、穏やかな表情で剣崎に向き直る。

 

「以前、リュウジ君に『エヴァは兵器としては三流以下』と言われたことがあったのだが、何故だと思う?」

 

「……教官らしい観点ですね。兵器に求められるものは『威力高いこと』よりも、『誰にでも使える事』が求められます。少ない訓練で、多くの者が使用でき、高い威力を発揮する。確かにそう言った意味では、エヴァは欠陥品です」

 

「そうだ。彼に言わせれば『兵器としての完成度はAK-47(カラシニコフ)の足元にも及ばない』だそうだ。……実際彼の言う通りだろう。戦場に出て、穢れに染まりきったものでは、まずエヴァに乗ることが出来ない」

 

そういうと冬月は、再びモニターへと顔を向けた。

 

「―――だが見たまえ。その彼が、自ら穢れ無き存在に染まり、エヴァを駆っている。それがどれ程の威力を見せてくれるのか……。この老骨の眼に、それをどうしても焼き付けたかった」

 

パイロットの戦技が、いかんなく反映され、それを生身と遜色なく、いや生身では物理的に不可能な動きすら発揮される。

そんな4+3号機の周囲には、残っているエヴァシリーズは、遂に2体のみとなっていた。

 

「さぁ、私の役目はすんだ。随意にするがいい」

 

剣崎は油断の無いよう、冬月に接近する。

この状況下で、冬月が剣崎に対して何かできるとは思えないし、実際冬月も殺されることも仕方がないと思っていた。

だが、

 

「とは言ったが、できれば最後に一つ、叶えて欲しい事がある」

 

と側から見れば命乞いとも、時間稼ぎとも見られる言葉を吐いた。

 

「私には特に権限はありませんが、どちらにしろあなたは捕縛します。いろいろと艦長も聞きたい事があるでしょうから」

 

その言葉を受け冬月は両手を頭につけ、膝を床についた。

 

 

ミドリは食い入るように、4+3号機の戦闘が繰り広げられるモニターを魅入っていた。

そして遂には、

 

「エヴァシリーズ完全に沈黙」

 

「最初にS2機関を破壊されたエヴァシリーズが沈黙してから3分37秒経過。反応は確認できません」

 

9体のエヴァシリーズが、モニター上にも、センサー上にも、完全に殲滅されたことを、オペレートしていた、日向、青葉両名から告げられた。

 

「結構。……リュウジ。帰投しなさい」

 

『了解』

 

リュウジは手に持っていたワイヤーと、エヴァシリーズが装備していた諸刃を放ると、出撃用のハッチへと足を進めた。

 

「どうだった?とりあえずボスの世話をしての感想は?」

 

その様子をモニター越しに見ていたミドリに、高雄が隣から声をかけた。

 

「……アイツって、サイコパスなの?」

 

ミドリの予想外の言葉に、高雄は一瞬固まるが。

 

「ハッハッハッハッハ!!」

 

次の瞬間には、何処がそんなに可笑しいのか、盛大に笑い声をあげた。

 

「高雄機関長。まだ第一種戦闘配備は継続中よ?言動には注意を払いなさい」

 

「も、申し訳ありません。き、気をつけます」

 

ミサトに注意を受けるが、それでも高雄は笑い顔を浮かべ続けてしまう。

 

「言い得て妙だな。確かに、サイコパスな気が、あの人にはあるな」

 

そう言うと、高雄が今度はしみじみ思うような表情を浮かべる。

 

「いつも俺たちには厳しくも、それ以上に優しかったが、こと戦闘となると、慈悲など一切無く、相手を殺しに……いや、壊しに掛かる。表情など一切変えずに」

 

ミドリはリュウジの優しさや、そのうちに秘めている覚悟に、少しではあるが触れる事ができた。

故に高雄をはじめとする教え子達が、いまだにリュウジを慕う理由もわかる。

 

「ここまでアタシらを連れて来る時、自分のクローンってわかっている筈なのに、そんなの気にも止めずに殺し続けてた。……あんなの、普通じゃない」

 

「普通じゃいられなかったのさ。あの人が生きてきた世界は、それが出来なければ、それこそ死ぬしかない。しかもそんな世界で、あの人は俺みたいなヤツを救い続け、あまつさえ生きられるよう鍛えてもくれた」

 

そんな高雄の表情を見たミドリは、少し心が揺らいだ。

 

「言っとくけど。だからって手心加えるとか無いから。殺すときは、殺すから」

 

だからこそ、それを振り払うかのように、彼女なりに冷たい言葉を吐いた。

 

「勿論だ。お前は何も気にすることはない。仮に今DSSチョーカー(それ)を発動させたとしても、オレも、誰も、お前を恨む事はない」

 

「な、なんでよ……」

 

「そんなこと、それこそボスは望まない。……あの人はそういう人だ」

 

 

「ふぅ……」

 

出撃を終え、エントリープラグから出てきたリュウジに、

 

「お疲れ」

 

若干不機嫌な声がかかった。

声のした方にリュウジが顔を向けると、

 

「な、……何してるんですか?」

 

そこには葉巻を燻らせ、不機嫌な表情を浮かべるアスカがいた。

その雰囲気に押され、リュウジは思わず敬語で返してしまう。

 

「マッズい。アンタよくこんなの吸ってられるわね」

 

そんなリュウジに構わず、アスカは咥えていた葉巻を手に取り、紫煙を吐き出しながらリュウジへと近づいていく。

そしてそのままリュウジへと、葉巻の吸い口を向けてリュウジに咥えさせた。

 

「……この身体になってから、食い物もそうだが、遂に水すら受け付けなくなってな。この毒に塗れた煙だけが、オレに人間の身体だった時の記憶を思い出させてくれる」

 

鼻腔を抜けていく煙を、リュウジは物悲しそうに見つめていた。

 

「マリは?アイツに渡したと思ったんだがな」

 

「シンジといるわ。シガーケース(これ)を持ってたから、どうせアンタがアイツの背中を押したんだってわかったのよ」

 

そう言ってアスカは持っていたシガーケースを手渡した。

その最中も、アスカはジト目を向けている。

 

「あ〜……。やっぱり怒ってる?」

 

「べっつに〜。『還暦越えの死にたがり爺さんが、余計なことしてくれた』なんて、微塵も思ってないわよ?」

 

そう、アスカは怒っている。リュウジに向けて、何ら隠すことなく怒りを向ける。

それはつまりマリは勿論、シンジにも怒りを向けていないということであった。

 

「そうか?だとしても、二人きりにしていていいのか?」

 

「いいわけないでしょう!?浮気なんてしたら、シンジのやつ半殺しにしてやる」

 

でもね、とアスカはさらに続ける。

 

「私の戦友を泣かせるような事をしたら、それこそ絶対にぶっ殺す」

 

その言葉にリュウジは思わず、盛大に吹き出してしまう。

 

「そいつはまた、随分と無理難題だな」

 

「いいのよ。14年も待たせたんだから。これくらい吹っかけなきゃ割に合わないっつーの」

 

腕を組み、そっぽを向きながらも、その中に不器用な優しさを垣間見たリュウジは、うっすらと笑みを浮かべた。

 

「アスカ。前に言ったことは訂正するよ。君はもう立派な大人だ」

 

そう言ってリュウジは咥えていた葉巻を、今度はアスカに咥えさせた。

 

「灰を落として、プラグスーツを焦がさないようにな。……ありがとう」

 

リュウジのいきなりの言動に、アスカは抜けた表情を浮かべながら、その後ろ姿を見送った。

 

「……はぁ。―――やっぱりマズイ」

 

紫煙を吐き出しながら呟いた言葉が、格納ドッグ内に静かに木霊した。




今年の目標は、この作品を完結させることです。

去年もそんな事を言っていた気がしますwww

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも、応援よろしくお願いします。
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