新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph- 作:さえもん9184
が最近かなり多い気がします。大した文才も何のに時間かけてすいません。
リュウジはそのまま、ヴンダー内の隔離室に連れられ、再び上半身を拘束されている。
その拘束具をつけているのは、無論北上ミドリである。
「これは、無駄になったかもしれないな」
「なにがですか?」
そしてサクラも、監視の一人としてその場で、一応滞りなく拘束されるているか確認要員として同伴している。
「ユーロネルフに、私を移動させた準備がですよ。……恐らく、艦長はこのまま第三村へと移動することを指令するでしょう」
「は?何を根拠に……」
『各員に継ぐ。本艦は当初の予定を変更し、弐号機、八号機を回収し、当艦内において両機の改修作業を行いつつ、第三村へと進路を取る。なお……』
「……ね?」
起伏のない声音のアナウンスが響くと、リュウジがしたり顔を二人へ向ける。
(こいつ……)
「な、なんで解ったんですか?」
「先ほどの戦闘では、幸いにして死者も出ず、大きな損害も被りませんでした。ですが、敵の狙いがこの艦、もしくは私である以上、いついかなる時に再襲撃が行われるか解らない。であれば非戦闘員、並びに離艦希望者を第三村にて下船させ、大気圏外にて最終段階まで準備を進める。再襲撃のリスクを抑えるには、そうするのが現状ではベストです」
これはミサトの考えをよんだ、と言うよりも、長年司令官として上に立っていたからこそ考え付いた、当たり前のリスクヘッジである。
このヴィレと言う組織が、いかにして現状においてリスクを回避するか、そのロジックを組み立てればこの考えに到達することは『リュウジは』難しくなかった。
「フン。相変わらず頭のいいことで」
だが上に立った経験のないミドリからは、その言動がどうにも気に食わなかった。
「いや~、それほどでも」
尤もリュウジはどこ吹く風であるが。
「へぇ~、じゃあそのとってもいい頭をしてるアンタに聞きたいんだけどさ……」
ミドリはそう言うと、拘束具を装着し終えたリュウジを改めて見つめる。
「この戦い、勝てると思う?」
その質問に、涼しい顔をしていたリュウジの表情が、真剣な色を帯びた。
「それは、兄を……。碇ゲンドウを『倒せるか』と言う事でしょうか?」
ミドリは一間、固まるが、ゆっくりと頷いた。
サクラもいきなりの核心に迫るその答えに、思わず固唾を呑む。
暫しの間リュウジは二人を見つめるが、やがて、
「……フ」
と小さく息を吐いた。
そして、
「―――無理ですよ」
と、まるで当たり前のように答えた。
「どうあがいても、もはや碇ゲンドウを倒すことは出来ない。神殺しの力があろうとも」
そのあまりの無慈悲な返答に、ミドリもサクラも思わず言葉を失う。
これが他の人間であれば、二人もこうはならなかったかもしれない。
だが目の前の、遥かに高度な戦略的思考を持ち、未来予知のように他人の思考を読み取る、碇リュウジと言う人物がそう言い切ったことに、胸の奥底に得体のしれない冷たいものが広がっていくような感覚に襲われた。
「……それは、ウチラだけで戦った場合?アンタが戦えば、勝てる可能性は少しは生まれるの?」
だがミドリはなんとか言葉を振り絞った。
先のリュウジの生身の、そしてエヴァに乗っての戦闘能力を見て、ミドリはまだ一縷の希望を持っていた。
「関係ありません。たとえ私がどんなに強くても、この状況では何もかも手遅れです」
だがリュウジはその希望を何の躊躇もなく断った。
「……無駄だったの?」
ミドリは徐に、胸ぐらをつかむようにリュウジの拘束具を握った。
「アタシ達の戦いも!家族の死も!……全部無駄だってことなの?」
「ええ。誰が死のうが、誰が戦おうが、全て無駄です」
ミドリの懇願するような悲鳴を聞いても、リュウジの表情は同情の色など微塵も出さなかった。
「じゃあなんで……、どうして…アタシ達は……」
そう言ってミドリは項垂れる。
その様子を見ていたサクラも、俯いてしまう。
「……だからこそ、それらを全て利用します」
だがリュウジのその言葉に、二人は思わず顔をあげた。
「ゲンドウを倒せず、全ての戦いも死も無駄。……それらを全て利用します」
ミドリもサクラも、リュウジの言っていることは何ら理解することは出来ない。
若干の放心状態のミドリは、無意識にリュウジから手を離すが、リュウジ本人は二人に顔を近づける。
「北上、鈴原、……覚えておけ。この戦い―――『負けるが勝ち』だ」
『勝ち』と言う何よりも懇願した帰結を表した言葉を聞けたにもかかわらず、ミドリもサクラも、目の前の得体のしれない怪物の表情に、思わずゾッとした。
(こいつは、サイコパスだとか、そんな、生優しいもんじゃ無い……)
ミドリは目の前にいる、人の形をした闇が、人の尺度では測れない存在である事をようやく、一厘程ではあるが理解できた。
※
「勝ったみたいだね。教官は」
「勝つでしょ、おじさんなら」
同時刻。
シンジは自身の部屋のベッドに腰掛け、その後ろからマリがシンジにしなだれかかるように抱き着いていた。
「ま、そりゃそっか」
マリはシンジの肩に顎を乗せ、そう呟いた。
そんなマリの頭を、シンジは徐に撫でるとそのまま向き合い、抱きしめ返した。
「ありがと。マリ」
「なにさ、急に」
「ずっとボクの事、守ってくれてたんでしょ?」
シンジの胸に顔を埋めながら、マリは被りを振った。
「ううん。守っていたのは、教官だよ」
「おじさんを使って、母さんはボクを守ろうとした。君はその想いを引き継いで、母さんの代わりに戦って、おじさんを使って、ボクを守ってくれた。そうでしょ?」
「ならわかるでしょ?私は教官を……、君のおじさんを利用してたんだよ?だから……」
「それもおじさんが、この戦いの蚊帳の外にならない為の、最後の手段だったんだよ」
「そうだけどさあ……」
「それに」
シンジはマリの両肩を掴むと、真っ直ぐに彼女の眼を見つめた。
「こうして、君と出会えた。ボクは良かったと思ってるよ?それとも、マリはイヤなの?」
「そ、そんな事ない!」
「フフ……良かった。これならアスカにボコボコにされる甲斐があるよ」
そのあどけない表情に、マリの頬は熱に染まっていく。
たまらずマリは、再びシンジの胸に顔をうずめる。
「最低。アスカがいながら、他の女に手を出すなんて」
「ごめんね。マリと初デートしたのに、アスカに手を出して……」
「失礼します」
「「ふぇっ!!??」」
そんな雰囲気を一期にぶち壊す、なんとも間の悪い声が割り込んで来た。
「な、長良っち?」
そこにはあくまで無表情に佇む長良スミレがいた。
「……お取込み中申し訳ありません。艦長が御呼びです」
「理由は?」
そう問い返された長良は、ちらりとシンジを見ると。
「……ここでは申し上げられません」
「……そ」
そういうと見せつけるかのように、マリはシンジの胸に再び顔を埋めた。
「にゃらいかにゃ~い。ここでシンジ君といちゃいちゃする」
「困ります。艦長は……」
「シンジ君にはもう隠し事したくないんだ」
その言葉に、シンジはハッとする。
そして次の瞬間にはふと笑顔を浮かべると、マリの優しさを噛みしめるように撫でる。
「大丈夫だよマリ。ほら、行かなきゃ」
「でも……」
「大丈夫。それにいい女には、隠し事がつきものらしいから。一つ隠し事追加して、もっといい女になってきてよ」
「こやつめ~。言うようになったにゃ~」
そんなものを見せつけられた長良は観念したのか、盛大に溜息をつく。
「……ネルフ副指令。冬月コウゾウを捕えました」
その言葉にはさすがの二人も表情が変わった。
「つきましては、最も彼のことを良く知るあなたに、尋問を頼みたいとのことです」
「成程。そういう事なら話は別」
マリは立ち上がると、長良と共にその場を後にしようとする。
「……待ってください」
だがそこに、シンジが静かに待ったをかけた。
「ミサトさん……、艦長に頼みたい事があります」
※
「よくOK出したわね」
マジックミラー越しに、拘束された冬月を見ながら、リツコは隣にいるミサトに声をかけた。
「『冬月副指令の尋問をやらせてほしい』なんて。シンジ君にそんな重責務められるとは思えないけど」
そう。シンジはマリの代わりに、冬月の尋問をさせてもらうよう頼んだのだ。
誰もがその嘆願を聞いた時、
「ありえない」
と思った。
実際に誰もが、当初の予定通り、マリに尋問をさせると考えていた。
だがマリは、
「いいね~。面白そうじゃん」
と言ったかと思うと、リツコらと同じくマジックミラー越しに冬月を見る側となり。
更にミサトも。
「いいでしょう」
の一言の元、シンジの嘆願を承諾した。
「冬月副指令も、尋問に際してマリをよこしてくることは予想しているはず。であれば、その予想を裏切ることで、何か聞き出せるかもしれない」
「要するに、単なる思い付きね」
「科学者に大事なものは、直感とインスピレーションだよ?」
ミサト、リツコ、マリの三者が見守るなか、ドアが開くとシンジと、記録担当の為に長良が入室した。
「これは驚いた。てっきり……」
「マリが来ると思いました?それとも、……おじさんが来るとでも?」
冬月の表情が、飄々としたものから張りつめたものに切り替わる。
「念のため確認させてください。あなたは最初から、あのおじさんが本物ではないことは解っていた。そうですよね?」
「……ああ」
「そこで気になっていたんです。どうしてあなたがそのことを黙っていたのか」
傍から見れば、その疑問は愚問にも思える。
だがシンジは、その愚問にこそ答えがあると感じていた。
「無論。父さんの思惑もあったと思います。でもそれ以上に、あなたには、おじさんが秘密裏に動いていることをボクに知られたくなかった。違いますか?」
「なぜそう思うんだね?」
「あなたは言いました『14年待った』と。……何を待ったんですか?ボクが目覚めるのをですか?……父さんがぼくを利用しようとしていることを考えれば、あり得ないことではないと思います。ですがそれよりも『おじさんが目覚めるまで待った』と言う方が、誰が聞いても説得力があると思います。」
シンジにはどのような経緯があったのかは知るところではない。
だが、リュウジの思惑が14年前から張り巡らされていると考えれば、点が線でつながっていくのを目の当たりにしていた。
「それを前提として考えて、ボクが至った結論は、……おじさんとアナタは、父さんには秘密裏に、協力関係を築いていた。違いますか?」
その言葉に冬月は一瞬だけ眼を見張るが、すぐさま余裕を示すかのように笑みを浮かべる。
「それこそ説得力が無いな。私がリュウジ君に協力するメリットは?」
「……父さんの目的が何かは、ボクには解りません。ですが、あなたは父さんと同じ目的があって、行動を共にしていた。そんなアナタに、おじさんが、より確実で安全な方法でその目的を果たせると持ちかけたら、どうしますか?」
その笑みに対して、シンジは怯むことなく視線をぶつける。
「フフ……。成程。リュウジ君程の男からそんなうまい話を持ちかけられれば、靡かない手は無いな」
だが冬月の余裕が揺らぐことは無い。
何故なら、そこに根拠がなんらないことを冬月は知っているからだ。
「その為には、水面下で動くおじさんから、ボクを含め、全員から目をそらしておく必要があった。そのためにアナタは、影武者を仕立て、そこに目が行くように仕向けた。……違いますか?」
「……有体な反論をしよう。それらを証明する証拠はあるのかね?」
シンジはその言葉にすぐさま頭を振った。
「なら、君のこれまでの話は仮説の域をでまい」
「ですが、それが何よりの証拠となりませんか?」
証拠がないと認めたにもかかわらず、シンジの眼は何ら怯むことは無い。
「どういう事かね?」
「14年前。アナタと父さんは、おじさんと対峙していながら、尻尾を掴むことは出来なかった。よくは知りませんが、ゼーレと言う組織も、おじさんの策略を、最後まで読み切ることは出来なかった。できたのは、おじさんが仕掛けた三文芝居を目の当たりにすることだけ。『仮に』ボクの言っていることが正しかったとしても、おじさんがボクごときに解るような証拠を残すと思いますか?」
「……まるで悪魔の証明だな」
証拠がないことが何よりの証明と言えるかもしれない。
だが、証拠がない以上、シンジが話したのはあくまで仮説にすぎない。
であるならば、冬月の思惑は何ら揺らぐことは無い。
「惜しいところまで言っているが。それでは君への評価は『Z』だ。とてもじゃないが、その証明は『成立した』と断ずるには程遠い」
その証明に至るには並大抵の反証では思いも至らないことが、冬月には解っていた。
そしてそこにこそ、リュウジの思惑が潜んでいた。
「その証明の為に、一つ課題を出そう」
そういうと冬月の口角がゆっくりと上がっていった。
「尻尾を掴ませず、その足跡も掴ませないよう暗躍するのと、それを突き止めるのとではどちらが難しいと思か。ただし、証拠は必ず存在する。どうだね、君ならこの課題の意図が解るだろう」
「因みに、アナタの見解は?」
シンジは冬月の顔を見つめた。
「私は前者が難しいと思う。理由は証拠と目的の両方を隠し通さなければならない。一方後者は、ただ相手を追っかければいい」
シンジの表情には合点の色が浮かんだ。
冬月の言わんとするところに、シンジなりに行きついたのだ。
「どのような結論になろうと問題はない。重要なのは、敬意を払う事だ」
だが完全なる反証、もしくは証明にまでは至っていない。
故にシンジは、
「ここまでか」
と追い詰められた。
「最後に、一つだけ。……おじさんは、勝てますか?」
「君も解っているのではないかね?」
息を漏らすと、冬月は再度シンジをまっすぐと見つめる。
「彼は負ける。それはリュウジ君自身が誰よりも理解しているはずだ。―――だから知りたいのだろう?その敗北が、何を証明するのかを」
個人的にはハーレムはどちらかというと好きではありません。
ですが、アスカも、マリも、レイも、シンジ君も幸せになってほしいです。この作品を書くにあたっては、そんな願望も込めています。
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これからも、応援よろしくお願いいたします。