新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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ゴジラが米アカデミー賞視覚効果賞受賞!!

すごく感動しました。

ですが私は、ゴジラは、黒澤明、宮崎駿に続いて、アカデミー名誉賞を取れると確信しておりますので、まだまだこれからだと感じてます。


Sin-共有無き共謀-

ヴィレ、と言うより今の世界において最も問題とされているのは、

 

「人的資源の不足」

 

である。

嘗て70億という数を誇っていた人口は、今や見る影が無く。

ヴンダーを動かすために集められた人員の中には、まともに訓練を受けた人間の方が珍しいぐらいである。

ネルフの元職員も多分にいるが、その彼らももともと高雄などのように、

 

「プロの軍人」

 

として経験が豊富なわけではない。

だがこの世界においては、リュウジから見て子供と言えるミドリやサクラも、世界の現状を考えれば貴重な借りたい『猫の手』なのである。

 

「すいませんリュウジさん。彼女らを今日一日借りたいのですが……」

 

そんな訳で、日向がこうしてリュウジの元に来たのも致し方ないことと言える。

 

「借りたいもなにも、私に人事権なんてありませんよ。艦長がお許しなら、どうぞお連れください」

 

「申し訳ありません。冬月副指令を捕縛してからいろいろと人手不足でして」

 

そう。ネルフの重要人物を捕まえたということは、それだけでヴィレには良くも悪くも大きな衝撃が走る。

万年人手不足のヴィレにとって、冬月の捕縛はこうした負荷が降りかかってきてしまうのだ。

 

「で、でも。いいんですか?監視をつけなくても」

 

「お前も見てきただろう?この人がその気になったら、監視なんて居ようが居まいが関係ない」

 

「それは言いすぎですよ日向さん。私にはもう、大した力はありません」

 

「それでも、この部屋にいるボクらを殺すくらいは、訳ないですよね?」

 

そう言われ、リュウジは苦笑いするしかなかった。

 

「でも……」

 

だがミドリは嫌な予感がして仕方なかった。

確かにリュウジが反乱を起こすだの、ヴンダーを乗っ取るだのと言った、よからぬことをすることは無いとは思う。

だが先ほどリュウジから感じたゾッとしたなにかが、ミドリもサクラも頭から離れなかった。

無論自分たちでどうこうできるとは思っていない。だがその何かを放っておいたら、後悔してもしきれないことになりそうな気がしたのだ。

 

「……大丈夫ですよ。ここでちゃんと大人しくしてますから」

 

だがリュウジはそんな二人の懸念をよそに、いつもの人のよさそうな笑みを浮かべる。

 

「お二人に迷惑がかかるようなことは絶対にいたしません。今は、冬月さんへの対処を優先した方がよいでしょう」

 

その表情をミドリは見つめ返す。

だが、

 

「ハァ……」

 

と溜息をつくと、観念したかのように踵を返した。

 

「本当に大人しくしてなさいよね。還暦越えの、いい歳したオッサンなんだから」

 

「ハハハ……。仰る通りです」

 

そんなミドリにサクラも続くが、退室手前でどこか悲しげな表情をリュウジに向ける。

リュウジはそれに言葉を返すことなく、小さく頭を垂れた。

 

「……また、何か企んでいるんでしょう?」

 

二人が退室したのを見て取ると、日向が静かにそう言った。

 

「安心してください。ボクを含めて、誰もそれを止められるなんて思ってはいませんから」

 

「日向さん。私は……」

 

「でもこれだけは覚えておいてください。短い間でしたが、ボクもアナタの背中を見て、多くを学びました。……無理を承知で言いますが、ボクもアナタに死んでほしくないんです」

 

人の一生において、尊敬できる人物に出会えたとしたら、それは最も幸運なことかもしれない。

リュウジに会えたことを、少なくとも日向はそう感じていた。

故にリュウジに死でほしくないという言葉は、彼の赤心に他ならなかった。

 

「日向さん、私の身体はもう……」

 

「解ってます。でも、そう思っているのは、艦長やシンジ君だけではないことを、知っておいてほしかったんです」

 

そういうと、日向も踵を返し、退室していった。

 

 

日向が退出した先には、14年前のリュウジが佇んでいた。

 

「剣崎さん?」

 

「ああ、すいません。どうしても、その……、教官に差し入れをしたくて」

 

そう言った彼の手には、今やダイヤモンド並みに希少価値のある、コイーバがあった。

 

「フフ……。そんな理由つけなくても、あなたならリュウジさんは必ず会ってくれますよ」

 

そういうと、日向は先ほど自分が退出した部屋のドアを開けた。

 

「丁度良かった。今リュウジさんの監視役が欲しかったところです。暫く、彼の監視を頼めますか?」

 

「……勿論です」

 

「ではお願いします」

 

そういうと、日向はサクラとミドリを伴って、その場を後にした。

 

「すいませんね。日向さん」

 

そういうと、剣崎は懐に忍ばせたリモコンのスイッチを押し、日向によって開けられた扉をくぐった。

 

「いいもん持ってるな」

 

そして入るや否や、その手に持つコイーバを見たリュウジが歓喜の混じった声をかける。

 

「奇跡的に手に入れましてね」

 

「いいね。せめてラフロイグがあればより完璧なんだが……」

 

「申し訳ありません。スコッチも、バーボンも、もうどこにも」

 

「冗談だ。コイーバがあるだけでも、俺にとっちゃ贅沢ものだ」

 

剣崎はリュウジのシガーカッターを手に取ると、吸い口をカットする。

 

「ご安心ください。既に映像はダミーに切り替えてます」

 

そしてリュウジの口にくわえさせると、同じくリュウジのシガー用のマッチを使い、葉巻の先端に火を近づける。

 

「ふう……。―――それで……」

 

だが続けようとするリュウジを、剣崎は制した。

 

「……あなたも耄碌しましたね」

 

「なに?」

 

その言葉にはどこか怒気や、呆れのようなものが内在していた。

 

「すまない?よかった?なんですかそれは。駒として使う以上、私がどうなろうとも覚悟していたはずでしょう。それに謝罪してしまうような耄碌に成り下がるような、『まとも』ではなかったはずですが?」

 

耄碌という言葉にリュウジは一瞬血が昇ったが、次の瞬間には剣崎が続けた言葉に呆気にとられ、

 

「―――ふ、はは、はっはっは」

 

思わず紫煙と共に、乾いた笑いを浮かべてしまう。

 

「ハァ……。まるで、自分に戒められているようだ」

 

剣崎の今の様相も相まって、リュウジはまさに自分と向き合っているような錯覚をおぼえていた。

 

「少しはその呆けた頭に効きましたか?」

 

「大丈夫だ。お前はとことん使わせてもらう」

 

「そのつもりです」

 

「―――さて、話を戻すが……」

 

「ええ。まずは冬月さんから伝言です」

 

「ふん」

 

「『何をする気かは知らないが、眼はしばらくコチラに向けさせておく。その内に君の策謀を進めておいてくれ』だそうです」

 

「さすがだな、あの人は」

 

「捕まって何か仕掛けるのではなく、捕まる事自体が、冬月さんの目的だったんですね」

 

「そうだ。今更ヴィレもネルフも、ぶつかり合うのは避けようがない。ここで何らかの情報が入ったところで、何も変わりようがない」

 

ならば冬月が捕えられようとも、リュウジにとっても、冬月にとってもそれ自体に何の意味もない。

 

「尤もシンジ君は何か気づいているようです」

 

「というと?」

 

「彼が冬月さんの尋問を志願しました」

 

それはリュウジにとって多少の驚きがあったのか、咥えていた葉巻の先端が赤い熱を帯びる。

だが次の瞬間には、その色も失せた。

 

「なら、よりここで策謀を進めやすくなるな」

 

とどのつまり、シンジの眼すら冬月に向いている。

これからのことを、シンジには絶対に知られたくないリュウジにとっては、それは嬉しい誤算だった。

 

「一応確認するが、冬月さんは駒の配置は…」

 

「すでに戦場(いくさば)は整えたと」

 

剣崎の言葉に、リュウジは聞くまでもなかったと、一間肩をすくめる。

 

「マリが欲しがっていたものは?」

 

「それも滞りなく」

 

「よし。……ユーロネルフの中枢コンピュータに、ウィルスを仕込んでおいた。『取らぬ狸の皮算用』はしない主義だが、全てが終わった後の処理は、それで冬月さんが上手くやってくれるだろう」

 

「これであなたの思惑通りですね。それとも、碇ゲンドウ(あなたの兄)の計画、と言った方がいいですか?」

 

「俺は復讐を果たしたいだけだ。それがたまたま、ゲンドウの計画を利用する形になっただけだ」

 

「皆激怒しますよ。少なくとも、シンジ君は」

 

その言葉に、リュウジは苦笑いを浮かべながら小さく紫煙を吐いた。

 

「だからシンジには知られたくないんだ」

 

「でしょうね」

 

そういうと剣崎も、無表情ながらも、リュウジと同じく息を吐いた。

 

「ああそれと、式波オリジナルと、綾波タイプナンバー6共に、再度乗艦させて、調整設備と共に、第三村にて離艦させることとなりました」

 

その中で、リュウジが知りたいであろう情報を伝えていく。

 

「それがいい。あそこでなら、しばらく穏やかに過ごせるだろう。全てが終わった後も、あそこでならどう生きるか、自分で選ぶことができる」

 

リュウジは安堵するように息を吐いた。

助けておいて、他人に丸投げするのは気が進まないが、リュウジの現状を考えれば、他にどうしようも無かった。

 

「後のことは、赤木博士に頼んでみます。彼女であれば、恐らく……」

 

「ああ、頼んだ」

 

リュウジはそう言葉を吐くと、天井を仰ぎ見る。

 

「……ふぅ。『仕掛け』は流流、後は仕上げをごろうじろ、ってな」

 

隔離室には、リュウジが吐き出す紫煙が、ただただ充満していった。

 

 

ユーロネルフ内では、早速弐号機、八号機、並びに改造の為の機材が急ピッチでヴンダーへと運ばれていた。

 

「朝令暮改がすぎます。せっかく主任が準備を進めていたのに」

 

だがその急なヴィレ側のやり用に振り回されている、科学技術部側の者達はたまったものではなかった。

実際収まってきていた不満などが、こうして愚痴となって徐々に噴出してきているのも事実であった。

 

「仕方があるまい。ネルフの奇襲を予見できていなかった私にも落ち度はある」

 

だがそこに一人だけ、時田シロウのみは不満をこぼすどころか、率先して機材をヴンダーへと運び込む作業を行っていた。

 

「しかし……」

 

「それにこんなご時世だ。朝令暮改できる程の柔軟性が無ければ、生き残ることは出来ない」

 

不満を募らせている、長らく手助けしてくれた女史の一人に言葉を掛けながら、先程の戦闘の疲労などないかのように、時田は淡々と手を動かし続けた。

 

「……本当に、行かれるのですか?」

 

「ああ。……ここには君がいる。だから、私等いなくても問題ないだろう」

 

そう言いつつ、時田はそこにあるJA-02を見上げる。

 

「これは私が造ったものだ。それなりに愛着もある。……だからせめて、この作業は私の手で執り行いたいんだ」

 

リュウジが目覚めるまで、時田が率いていたこの集団は、ほぼ時田のワンオペで成り立っていた。

それでも彼は、今日まで耐え忍んできたのだ。

そんな時田のもしかしたら最後かもしれないワガママを、だれも止める気にはなれなかった。

 

「それに、ヴンダーやリュウジがここから離れれば、ここはネルフにとっても攻撃目標ではなくなる。ここにいた方が安全だよ」

 

「そういう事ではなく、もうあなたは戦わなくてもいいと言っているんです」

 

その言葉に時田は思わず苦笑いを浮かべてしまった。

それはよく時田がリュウジに抱いていた感情だからだ。

この世界がコア化したのも、綾波、式波シリーズと言う非人道的なプロジェクトも、なんだったらリュウジが使徒と化したことにも、時田はリュウジがなんら責任を感じることは無いと思う。

だからこそ、兄の罪すら背負って、全ての禍を、なぜリュウジ一人がケリをつけなければいけないのかと、時田は自身にすら憤りを感じていた。

だがいざ自分が同じように心配されると、どうにもその意志を変えることは出来なかった。

 

(結局私も、同じ穴のムジナか……)

 

「時田さん」

 

そこに一人の部下が声をかけた。

 

「どうした?」

 

「それが……」

 

「これが弐号機新造用のパーツ?」

 

そこにこのドッグには今まで響いていなかった、アスカの声が広がっていく。

 

「これは、式波戦時特務少佐」

 

そういうと時田はアスカへ敬礼をする。

 

「そしてアンタが、その改造担当になったってわけね」

 

「ええ。葛城艦長は、私の志願を受け入れてくださいました」

 

そう言いつつ、時田は敬礼を解いた。

そんな時田を、アスカはまるで品定めするかのようにまじまじと見る。

 

「……礼の一つもないんですか」

 

そんなアスカに、今まで時田と話していた女史が思わず小さく漏らした。

 

「おい」

 

「戦闘もろくにできないそちらの連中を、時田さんは自ら戦って助けたんですよ。なのに……」

 

「あら、礼を言えばそれで済むの?」

 

だがアスカはその不満に、怯むことなく、寧ろどこか冷めた表情でそう返した。

 

「アタシらのような兵士は、ただ戦って任務を果たすしかない。それ以外に、示すものなんてない。口先だけの礼や詫びなんて何の意味もない」

 

「なにっ」

 

「よせ」

 

時田は冷静にその場を抑えた。

実際時田は、今回のヴンダー側の対応について、何ら不満などなかった。

未だにリュウジの扱いに対しては、遺憾に思うことはあるが、ユーロネルフと、弐号機並びに八号機を守りきったにもかかわらず、ヴィレからは一方的に、機材と、エヴァ両機の運び込みを命令されていた。

不満を募らせるなと言うのが無理な話だが、時田は褒賞も、労りの言葉もほしいとは微塵も思っていなかった。

寧ろ最終決戦に向けて、自身の同道が許されたことに感謝すらしていた。

 

そんな様子の時田に、アスカは、

 

「成程ね」

 

と静かにこぼした。

 

「あんた、リリンにしてはかなりの修羅ね」

 

そしてゆっくりと右手を差し出す。

 

「アタシの弐号機よ。しっかりやってくれる?」

 

その意外な対応に、時田の反応は若干遅れたが、右手を同じく差出し、

 

「お任せください。少佐」

 

固く握手を交わした。

 

「……来たか」

 

「お久しぶりです。冬月先生」

 

一方のヴンダー内の尋問室にて、冬月は嘗ての教え子と対面していた。

 

「いまだに、君とリュウジ君の関係を知った時の驚きと言ったら無かった」

 

最初、マリがリュウジの教え子であると知った時は、冬月は酷く驚いたものだった。

マリがユイ以外の人物を、師事し、慕うとは思っていなかったからである。

 

「アタシだって、教官が急にユイさんを訪ねてきたとき、こんな関係になるとは思いませんでしたよ」

 

「ふむ。やはりユイ君と君は……」

 

「ええ。……25年前。教官をユイさんと検査したのは……アタシです」

 

 

「失礼。こちらに、碇ユイと言う方はいらっしゃいますか?」

 

25年前、京都。

冬月が学会に出向き、ゲンドウがそれに同道していた日に、冬月の研究室にいたマリの目の前に、その男は現れた。

 

「失礼ですが、どちら様ですか」

 

「……彼女に伝えてください。……あなたの弟がきたと」

 

そう言われ、訝しむなと言うことに無理はあるが、マリは一応奥にいたユイに面会者が来たことを伝えた。

その突如眼の色を変えたユイが、バタバタと慌てた様子でその男、碇リュウジへと駆け寄り、

 

「リュウジさん……。どうして」

 

「突然すいません。ユイさん……あなたの助けがいります」

 

 

「そのあと、教官の検査を手伝って、そして……」

 

「君もリュウジ君が使徒に浸食されたことを知り、そしてユイ君は、時が来たら君に知りうるすべての情報を、リュウジ君に話すよう伝えた」

 

「ええ。尤も、ユーロネルフに急に教官として赴任してきたのには驚きましたが」

 

「だがそのお蔭で、君はリュウジ君の人となりに触れることが出来たわけだ」

 

その時、マリは赴任してきたリュウジの言葉を思い出していた。

 

我々軍人は、弱き者の盾であり、時としてその者の代わりに、命を散らすことにもなる。

そしていかに戦い抜こうとも、いずれその戦いは世代が変わることで忘れ去られ、また次の戦いが否応なく始まる。

その中で我々軍人は、弄ばれ続ける。その理不尽の中で、軍人であり続ける限り、戦い続けなければならない。

だからこそ、戦う理由を、他人に委ねてはならない。

自分の守りたいものを、自分のために守り抜くのだ。

そしてそれは、決して誰かが肩代わりしてはならない。

そして、自分を強くするのは、なにより生かすことが出来るのは他ならぬ自分けだ。

その為に君達に出す私の最初の命令は、

 

「……生きて帰る事。それが何よりの戦果、か」

 

ある意味でその言葉は、マリにとって一つの契機になったのかもしれない。

ユイの為なら、自分はどうなってもいい。だがそうではなく、その為に生きろ、とリュウジは言ったのだ。

 

「その訓示を、当の本人が反故にしようとしているのは、未だに納得できませんが」

 

「それにあてはまらない唯一の例外が、リュウジ君は自分自身だと思っているんだろう」

 

その通りだった。

リュウジは自ら進んで貧乏くじを選ぶ。

その様をマリは何度も目の当たりにしてきた。

だがそうでなければ、リュウジをここまで信じることが出来なかったのも確かだった。

故にここまで来てしまった今となっては、リュウジの思う通りにさせたいと、マリは考えていた。今までリュウジが心血を注いてここまで計画したことを、無駄に終わらせたくないという想いがあったのだ。

 

「それで一方的に振り回されるのは、御免こうむりたいにゃ」

 

「そうだな。―――さて、悪いが私にはまだやることがある。このまま拘束してくれても構わんが、何も話す気はないと、葛城大佐には伝えてくれたまえ」

 

嘗ての恩師の静かで、それでいて確固たる表情を見て、マリはそれが本気であることを感じ取った。

 

「ま、アタシもアナタがここに来て全て話してくれるとは思ってませんよ。仮にあなたと教官がなにか共謀していたとしても、彼を利用していたアタシには何か言えた義理は無いですから」

 

「それは、リュウジ君が望んだことだ。恐らく彼にとっては盛夏だろう」

 

「解ってます。でもこれはアタシと、ユイさんで始めた事ですから。教官にはいいところで抜けてほしかったんだけどニャ〜」

 

これ以上は無駄話にしかならないと思い、マリは徐に立ち上がり、踵を返した。

 

「―――覚悟しておくといい……『イスカリオテのマリア君』」

 

その後ろ姿に向かって、冬月が静かに声をかけた。

 

「……何をです?」

 

「……後悔をする覚悟だ」

 

「フフ……。もう十分してますよ」

 

そう静かにマリがこぼすと、そのまま部屋を後にした。

 

「……いや、このまま結末を迎えれば、君は必ず後悔する」

 

冬月以外誰もいなくなったその部屋には、ただ寂しく彼の声が響くのみであった。

 




ここで少し解説です。

コイーバ……キューバ産の有名な銘柄の葉巻です。かつてはキューバ政府の高官や、国賓のみが飲むことができた高級シガー。

ラフロイグ……スコッチウィスキーの銘柄の一つで、強い燻香が特徴です。シガー愛好家が嗜むスコッチの代表格。

自分が好きなシガーとスコッチを登場させてみたくて、描いてみました。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字、脱字等ございましたら、お手数ですが、ご指摘いただけると幸いです。

これからも、応援よろしくお願いします。
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