新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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なんとか五月中に投稿できました。

遅くなって申し訳ありません。


Sin-終わりに向けて-

『ミサトさん。珍しいですね、あなたから直接連絡なんて』

 

「悪いわね、だいぶ間が空いて」

 

『いいんですよ。あ、リツコさんからの要請なら確認しました。二人の受け入れ態勢と、LCL調整槽の設備準備、今急ピッチで進めてます』

 

「ありがとう。そちらへは明日には到着する予定だけど、今後のことを考えると、調整は貴方たちに丸投げすることになるかもしれない」

 

『任せてください。トウジの奴、「いっちょ、やったろやないかい」って、張り切ってますよ』

 

「そう。―――それと、頼みたいことがあって」

 

『……彼の事ですか?大丈夫です、いい子に育ってますよ』

 

「……今更だけど、ちゃんと会ってみようと思うの。自分勝手だし、今更どうこう言えた義理は無い。でも、最後かもしれないから、加持からもらったものと、……大切なものと向き合わないといけない。……そう思ったの」

 

『………』

 

「もし、あの子が嫌だと言うなら諦める、でも……」

 

『何言ってるんですか、むしろその言葉、ずっと待ってたんですよ。大丈夫、ちゃんと伝えます。だから、覚悟しておいてくださいね』

 

「ありがとう。お礼と言っちゃなんだけど、会わせたい人がいるから、楽しみに待ってて」

 

『会わせたい人?』

 

「きっとびっくりするから、覚悟しておいて」

 

 

シンジは先のブリーフィングが終わると、一人通路を歩いていた。

未だに周りから刺すような視線を感じるが、今の彼はそれを受けて怯むようなことは無かった。

 

「ここ……だな」

 

そう言いながら目的の部屋をくぐると、

 

「っ!おじさ……」

 

「ん?」

 

そこには14年前のリュウジそのままに、調整槽の前でレポートに眼を通している剣崎キョウヤの姿があった。

 

「あ、あなたは……」

 

「ああ、君の叔父の出来損ないだ」

 

「終わりました」

 

そこに二人以外の第三者の声が響く。

 

「綾波?うわっ!」

 

その声の響いた方を見ると、一糸まとわぬレイがシンジの眼に入り、慌ててシンジは眼をそらす。

 

「言っただろう。人前ではしっかり服を着るんだ」

 

「命令?ならそうする」

 

「命令じゃない。これから君が生きていくための、最低限の常識だ」

 

剣崎はそう言うと、レイを奥に戻るよう促した。

 

「……彼女に会いに来たのかな?」

 

その後ろ姿を、シンジとは対照的に落ち着き払った声音で、剣崎は見送りながら声をかける。

 

「は、はい……。その、なんであなたも」

 

「この体は、君のお父さんによってLCLで無理やり作り変えられてしまった。ここで調整を受けないと、体を維持することが出来ないんだ」

 

そう言われたシンジの心は、思わずドキリと痛みに呻いた。

 

「す、すいません、その、父さんが……」

 

そして次の瞬間には、先程の視線では怯みもしなかった彼の口から思わず謝罪が漏れる。

 

「君の謝罪は必要ない」

 

だがその謝罪を、剣崎はぴしゃりと止める。

 

「あくまで君のお父さんがやった事だ。この体のことも、この世界のことも。……だから私は、君に謝られるいわれはない」

 

そういうと、剣崎はレポートから目を離し、シンジを見やった。

 

「君こそどうなんだ?目の前には、君の叔父を殺した男がいるんだ。恨みの一つでも言いたいんじゃないか?」

 

そう言われシンジは今の今まで、剣崎がリュウジを殺したことを忘れていたことにひどく驚いた。

寧ろ剣崎はシンジの中では、

 

『被害者』

 

という位置づけが強かった。

 

「あなたはどちらかと言うと、父さんと、おじさんにいいように使われてしまっていたようで、……その、あまり恨みとかは今となっては感じないんです。むしろ、そうまでして、叔父と共に戦ってくれて、なんて言うか…、『ありがとう』って思えるんです」

 

そしてそれは、シンジにとってある種の剣崎に対する尊敬の念であった。

高雄に対して、礼を述べたのと同じように、剣崎に対してもここまで叔父の計画に添い遂げてきたことに対する、

 

『ありがとう』

 

であった。

だが、

 

「それを受け取る資格も、私には無い」

 

剣崎はその礼すら、受け取る気は毛頭なかった。

 

「……高雄って人もそうでした。『君に礼を言われる筋目は無い』って」

 

「彼が選んだことだ。そして今の現状も、私が選んだ。だから君は、私に対してなんら引け目も、礼も、感じる必要はない」

 

そういうと剣崎は、レイが消えていった奥に目線を移す。

 

「それより、彼女の元へ行ってやれ。そろそろ、服を着ている頃だろう」

 

「その……聞いてもいいですか?」

 

シンジは己の中にあるほぼ確定しているであろう考えを、目の前にいる剣崎なら誤魔化すことなく話してくれると、何故か確信していた。

 

「綾波も、アスカと同じ……」

 

「君の想像通りだ」

 

そして考えていた以上に、明確に考えていた通りに剣崎は答えてくれた。

 

「そう……ですか」

 

それを聞いたシンジは、レイに対してとても無神経な言動ばかりしていたと感じていた。

14年前、彼と共に戦ったレイと思い込み、その思い出を押し付けるかのように触れ合っていたからだ。

知らなかったとはいえ、クローンであったとしても、別のレイであり、別の人間であることを考えることなく接していたことが、とても無神経であったと感じてならなかった。

 

「……だが、君にそれが関係あるのか?」

 

「え?」

 

そんなシンジの葛藤を見透かしたかのように、剣崎が言葉を放った。

 

「彼女を守りたいという想いに、偽りは無かったはずだ。その変わらぬ思いが君の中にまだあるのなら、何も問題は無い」

 

その純粋な子供の願いを、助けてこそ大人だ。

確かにその想いが暴走してしまう事もあるかもしれない。子供なら尚更だ。

だがそれでも、

 

『大好きな相手を、全力で守る』

 

その想いを、誰かに持てることの方がよっぽど大事だと剣崎は思う。

そしてその背中を押しやり、その子供の責任を負うことが、大人の責任であるはずだ。

 

(いや、そうなろうという願望でしかないか)

 

だが今更そうあろうとしても、何もかも手遅れだった。

だからこそ、自分はこんな有様なのだと剣崎は痛感していた。

 

「……やっぱり、ボクはアナタを恨むなんて出来そうもありません」

 

今度はシンジが、剣崎の心情を見透かしたかのようにそう言った。

 

「ミサトさんもおじさんもそうでした。いろんな人がボクを守ろうと必死に戦ってくれました。……あなたからも、そんな温もりみたいなものを感じられるんです。だから、ボクもアナタから、謝られるいわれはありません」

 

そう言うと、シンジは踵を返し、

 

「今度、おじさんやミサトさんの話聞かせてください。それじゃ」

 

レイがくぐった扉を、シンジもそう言ってくぐっていった。

 

(……羨ましいな)

 

シンジは自分と違って、ちゃんと大人になれるだろう。

自分はあんなふうに、子供の時間に、まっすぐに子供でいられることが出来なかった。だからこそ、こんな大人になりきれないしこりを抱えているのだ。

シンジは違う。

子供特有の眩しいほどの青さをもって、守りたいものの為に戦っている。

 

シンジがいなくなった部屋で、剣崎はそんな気持ち良い

 

『羨望』

 

の感覚に浸っていた。

 

(思えば、随分と遠くまで来たものだな。……加持)

 

そして子供でいられなかったが故に感じた『羨望』が、若かりし頃の『郷愁』を呼び起こし、今は亡き旧友を思い出させた。

 

 

「綾波、ふ、服着た?」

 

「うん。ちゃんと着た」

 

シンジが恐る恐る部屋に入ると、そこにはレイがいた。

14年前、彼女をイメージすると、まるで一枚の絵のように思い起こさせる学校の制服を着たレイがそこにはいた。

 

「綾波……」

 

「碇君」

 

否が応にも、それはシンジに別のレイだと思わせることをより困難にさせた。

 

「どうしたの?」

 

「ご、ごめん。プラグスーツじゃなかったから、驚いちゃって」

 

「あの人が、もう着なくていいからって」

 

「そっか」

 

シンジはその言葉にどこか安堵をおぼえた。

少なくとも目の前のレイは、もう戦わなくていいのだとそう思えたからだ。

 

「……綾波。ボクは君に、謝らなきゃいけない」

 

「何を?」

 

「ボクは勘違いしてたんだ。君が、ボクが14年前に一緒に戦っていた綾波だって。でもそうじゃなかった、君は、ボクが知ってる綾波とは違う。なのにボクは、君に僕の思い出を押し付けてしまっていた。……本当にゴメン」

 

シンジはレイに向かって深々と頭を下げた。

だがレイは、シンジがなぜ頭を下げているのか解らず、キョトンとした表情を浮かべていた。

そのレイの表情を見て、シンジはハッとした。

レイはシンジが何に対して罪悪感を持っているのか解っていないのだ。

そして、そんな彼女に対して、一方的に謝るのも、

 

『押し付け』

 

ではないのかと思い至ったのだ。

 

(どうしたらいい?……ボクは)

 

「ごめんなさい」

 

「え?」

 

「私、……あなたに今、なんていえばいいのか解らない。でも、……そんな表情の碇君は見たくない」

 

「綾波……」

 

結局のところ、自分の想いもエゴに過ぎないのかと、彼の中にやるせなさがこみあげてくる。

 

「また……」

 

気付けばレイは、シンジの頬に手を添えていた。

いつの間にか彼の頬には、涙がつたっていた。

 

「大丈夫。私も、碇君も、この先きっと、大丈夫だから。だから、……もう泣かないで」

 

その言葉にシンジは胸が張り裂けそうになるが、同時に彼のしなければならないことを再認識させた。

 

「ありがとう、君は待ってて。ボクは、やらなければならないことがある。14年前助けられなかった子を、今度こそ助けるんだ。それでようやく、ボクは自分の罪と向き合える」

 

そう。シンジの戦いもまだ終わっていない。

 

『守りたい』

 

そう誓ったからには、最後までそうあろうと決めていたのだ。

仮にその誓いを果たす事ができても、できなくても、謝るなら全てが終わってからだと、シンジは今思い直した。

 

 

リュウジは誰も訪ねてくることが無ければ、監視の二人に対しても己から話す事は余りないほど、

 

『静かなもの』

 

と言うのがサクラとミドリの印象であった。

それ故に、

 

「お聞きしたいことがあるのですが」

 

と、サクラに話しかけてきたものだから、彼女は内心少々驚いていた。

 

「なんでしょう」

 

だがサクラはリュウジに対してさして悪い印象は抱いていなかったので、そう静かに返答した。

一方のミドリも、リュウジが何を聞きたいのかと興味があり、顔をあげた。

 

「……君のお兄さんは、元気にやってますか?」

 

その言葉にサクラは、そう聞かれることを想像だにしていなかった自分にひどく驚いていた。

14年前、シンジと自身の兄が親友であったことは当然知っていた。

ならば、リュウジが兄のことを知っているのは自明の利であった。

 

「やっぱり、知ってるんですか。お兄ちゃんの事」

 

「ええ。よくシンジのことを気にかけてくれたり、何度か、相田君と泊りに来てくれたこともありました。まあその時はアスカが不機嫌になったりもして、次回から対抗意識で、レイや洞木さんを呼んだりして、……今思えば、楽しかった」

 

その14年前の光景は、リュウジにとっては憧れていた光景であった。

戦争屋でしかない自分では、絶対に得ることのできない暖かな家族団欒の光景は、今もリュウジの胸の中で、一枚の絵画のように焼き付いていた。

 

「その彼が、今は第三村で医師として働いていると聞きましてね。情報で無事とは知っていましたが、妹のあなたに、もしよろしければ実際どうなのかと聞いてみたくなりまして」

 

「……その、洞木さんと結婚して、今は子供もいます」

 

「子供が?」

 

「はい。もうホント親バカで、見てるこっちがはずかしゅうなるほどで……」

 

「……よかった」

 

サクラの言葉を受けて、リュウジは安堵の息とともにそう言った。

 

「普通の幸せを、得ることが出来たんですね」

 

「あ、相田さんも元気ですよ。今では第三村内で、便利屋みたいなことしとって、皆から頼りにされてます。結婚は、『自分は恋愛にかまけてる暇はない』って、してないんですが」

 

「それは各々の自由ですよ。それに……」

 

リュウジはそこまで言ってハタと言葉を止めた。

 

「それに……なんですか?」

 

「いや、なんでもありません」

 

リュウジはその時、ふと思い至ったことがあった。

彼はミサトからの頼まれごと故に、

 

『一人でいるのではないか?』

 

と言うものだった。

 

(それこそ余計なお節介だろう。俺が気にすることじゃない)

 

だがそう思おうにも、一度その考えが浮上してしまうと、それが新たな自分への嫌悪感となり、纏わりつく。

 

『葛城さんへ全て押し付けてしまったが故ではないのか……』

 

『加持さんが生きていれば違った結果になったのではないか』

 

そんな考えが脳裏を過ぎる。

昔からの彼の悪い癖であった。

 

「そうだ。第三村に付いたら、是非お兄ちゃんと相田さんに会ってください。きっとあの二人も喜びますよ」

 

その悪い癖に浸っているリュウジは、サクラの言葉に我に帰る。

 

「それは無理ですよ」

 

「大丈夫ですよ。なんとか、艦長に……」

 

「サクラ!」

 

そこにミドリが待ったをかけた。

 

「落ち着きなよ。こいつは使徒で、厳重監視対象だよ?」

 

今こうして隔離室とは言え、呑気に過ごせているが、リュウジは使徒であると同時に、最も強力な、

 

『兵器』

 

に他ならないのだ。

それをおいそれと外に出す様なことは、そこらへんに40メガトン級の核兵器を放っておくようなものだ。

 

「そやけど……」

 

「鈴原さん。そのお気持ちだけで十分です」

 

リュウジとしては、無事と、近況がわかったのであれば、それで十分であった。

 

「それに今更、私の運命は変わりません。もし二人がその行く末を知れば、悲しませてしまうだけです。ですから、このまま私は『死んだまま』の方がいいんです」

 

そして今なお、滅亡寸前の世界で懸命に生きているトウジとケンスケに、余計な波風を立たせるようなことはしたく無かった。

 

「そうでしょうか」

 

だがサクラはそうは思えなかった。

 

「もし、死んだ思うてた人が、生きてるって知ることができたんやったら。……少なくとも、私は嬉しいと思いますけど」

 

死は悲しい。だがそれを乗り越えて、ここにいる人々も、第三村の人々も生きてきた。

だがその死が、実は思い過ごしであったことも、少なからずあった。そしてその思い過ごしは、自分達の生きる糧となったのは事実なのだ。

 

「艦長に、言うだけで言うてみます。それでダメやったら、諦めます。でも最初から何もやらんで会えないっちゅうのは、なんか違う気がすんです」

 

そう言ってサクラは、隔離室を後にした。

その後ろ姿を、リュウジは半ばあっけに取られた面持ちで見送った。

 

「……覚悟しなよ。サクラはああなると、結構頑固だから」

 

ミドリはそんなリュウジの表情を、揶揄うように行った。

 

「……そのようですね」

 

(お兄さんにそっくりだ)

 

サクラの気持ちは、本当に嬉しかったが。

 

『会えないだろう』

 

とリュウジは諦めていた。ミドリも言ったように、自分は使徒なのだ。加えてフォース・インパクトを起こそうともした。

そんな存在、自分であれば隔離を解くことは絶対にしない。

その扱いをリュウジは受け入れている。

 

 

 

 

 

だからこそその後すぐに、

 

『監視対象の条件付きの外出を許可す』

 

と出たことに、リュウジは心の底から驚いてしまった。

 

 

同時刻

クレーディト 野外実験ラボ

 

「先生!」

 

「久しぶり。元気にしてたか」

 

「ええ。にしてもどうしたんですか?急に」

 

「ああ。実は明日、どうしても君に会わせたい人がいるんだ。詳しいことは戻ってから話す。急で悪いんだが」

 

「あれ、でも明日ってAAAヴンダー帰艦予定日ですよね。先生も確かその準備で……」

 

「まあな。本当のところを言うと、君に合わせたい人も、今その艦に乗ってる。だから明日、時間をとって欲しいんだ」

 

「別に大丈夫ですけど、一体その人って……」

 

「安心しろ。ちゃんと説明する、それを聞いたうえで、自分で合うかどうか判断して欲しい」

 

「………」

 

「だが俺としては、一度は会ってきちんとその人と話して欲しい。俺みたいに後悔して欲しくないからな」

 

「……その、一つだけ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

「先生が後悔してる事って一体……」

 

「それは……。親父の愚痴の一つも聞けなかった事かな」




作中リュウジが言ってたお泊まり会の描写は、一度書いてみようとして没にしたものです。
まあ、後付け設定とも言いますがwww

ようやっと次回第三村です。最終決戦まで考えると、あと何話構成になるのか……

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字脱字などございましたら、お手数ですがご指摘いただけると幸いです。

これからも応援よろしくお願いいたします。
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