新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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申し訳ありません。
更新が二ヶ月も空いてしまいました。

それと総合ポイントが3000ptとなりました。
こんな亀更新ながら、読んでくださって本当にありがとうございます。


Sin-愛しているからこそ-中編

「艦長。息子とちゃんと再会できるかな」

 

高雄コウジ。有事に備え艦内にて待機。

 

「無理っしょ、アタシだったらぶん殴る」

 

真希波マリ。八号機がオーバーラッピング対応型への改造が完了したため、スクランブル要員として艦内にて待機。

 

「そこまではしないだろう、アイツの息子だ」

 

剣崎キョウヤ。保安要員として艦内にて待機。

 

「艦長はどう転ぼうと、受け止める。そのつもりで会うと決めたのよ」

 

赤木リツコ、艦長代理として艦内にて待機。

そんな待機組四人は、ブリッジにて卓を囲み、

 

「ロン。白、撥、対々和、混一、ドラ3」

 

「いぎゃああぁぁ!!」

 

麻雀にいそしんでいた。

 

「白なら行けると思ったのに……ド畜生」

 

この振込みによってマリは完全に飛んだ。

 

「ここに来てドラを振る時点で終わってる」

 

そして剣崎はぶっちぎりの点差で一局を終えた。

 

「……俺は」

 

そんな時、高雄がポツリとつぶやく。

 

「……俺はあの人は、ワガママ言ったっていいんじゃないかと思うんだがなぁ」

 

卓上の牌を混ぜているときに高雄がそう呟いたので、他の三人は思わず高雄に視線を集めた。

 

「あ……、ああいや、子供を放っといていいって言うつもりじゃない。……だが―――、艦長が背負ってきたものを考えると、どうしてもそう思わずにはいられなくてな」

 

そう繕うと、高雄はどこか遠くを見ながら話し始めた。

 

 

ある日、高雄が一人でミサトに報告事があったために、艦長室に入ろうとした時だった。

 

『ゴホッ!ゴホッ!!』

 

と、何やら激しく咳き込む音が中から聴こえた。

それが止む気配も中々なく、もしや何か病気でも隠していたのでは、といてもたってもいられず、

 

「艦長!大丈夫ですか?」

 

とノックを忘れ、勢いよく艦長室に入ると、

そこには確かに、

 

「ゴホッ!エホ……」

 

ようやく落ち着き始めたのか、せきが治り始めたミサトがいた。

そしてその手には、どこで手に入れたのか火のついた葉巻が握られていた。

 

「ハァ、ハァ……、なんでもないわ、高雄機関長」

 

それを見た高雄は、なんとなく状況を察した。

葉巻になれていない人間が葉巻を飲もうとすると、謝って肺に煙を入れてしまう事がある。

すると煙草の何倍も濃い煙に、肺が耐えることが出来ず、激しく咳き込んでしまうのだ。

 

「どうしたんです?それ」

 

だが急にミサトが葉巻に手を出した理由までは、思い当たるには至らなかった。

 

「たまたま手に入ったから、試してみようと思ったんだけど、……私には、向いてないわね」

 

そう言ってミサトは、まだ静かに煙を吐き続ける葉巻を灰皿に置いた。

 

「……あの人には、良く似合ってたわね。高雄機関長」

 

そう言われ、高雄はようやく、彼女が葉巻に手を出した理由に行きついた。

 

「あなたとボスは違います。ボスのように振る舞う必要はないでしょう」

 

それはミサトが受けた、ある種の呪縛の為であった。

リュウジには遠く及ばない自分が、形だけでも彼のようになれたら。そう思い葉巻に手を出したのだ。

だが結果として、それすらも拒絶されたかのようにミサトは感じてしまい、

 

「ごめんなさい……」

 

そう呟いてしまう。

 

「あの人の、……あなたのボスの足元にも及ばない指揮官で……、ごめんなさい」

 

いつの間にかミサトは俯き、小さくその肩を震わせていた。

高雄はそれを、静かに見下ろし、

 

(こんなに細い肩だったんだな……)

 

と一人ごちた。

いつも纏っていた外套は壁にかかっており、その下にあるか細い身体が、今のミサトをより一層か弱く見せていた。

確かに、リュウジと彼女には、指揮官として雲泥の差があった。

戦場に指揮官として鎮座して見せるリュウジは、その口に堂々と葉巻を咥え、何が起ころうとも些かも動じることはなかった。むしろ不利な戦況となると、その状況が狙い通りであったかのように、不敵な笑みを浮かべていた。

だが勝利すると、周囲が歓喜に沸く中リュウジだけはその結果が、

 

『さも当然』

 

であるかのように、一人冷静な表情を湛えていた。

それほどの頼もしさは、確かにミサトにはない。

 

「それでも……」

 

それは恐らく、高雄が誰よりも感じていた。

それでも、

 

「ボスはあなたを信じ、加持はあなたに託した。……なら私は、あなたにこの身を委ねます」

 

高雄はミサトに上に立って欲しかった。

リュウジは確かに『伝説の軍人』であった。

それをこの上なく実感していながら、ミサトは懸命に今日まで戦ってきた。それはある意味で、世界の、人類の存亡をかけた戦いよりも、ミサト個人にとっては、絶望的なほど勝ち目のない戦いだった。

 

「いいですか。ボスは死んだ。あの人は負けたんです。ですがあなたは違う。ゼーレと、碇ゲンドウを相手に、こうして生きている。それは、『碇リュウジ』が出来なかったことなんです」

 

その戦いに挑み続けるミサトに、高雄はリュウジ以上の『強さ』を感じたのだ。

 

 

『ジャラジャラ』と次の場を整える牌の音がブリッジに響く。

 

「残酷な話だよな。『どっかの誰かさん』は、世界の為と称して、全てを艦長に背負わせたんだ。いかにそれが最善手であったとしても、艦長にかかる重しは、この上なく大きい」

 

そしてその『最善手』を打つ為に、リュウジは汚名を被った。

高雄はリュウジに恨み言を言いつつも、その覚悟を感じ入っていた。

 

「……それが解ってるからこそ、リュウジさんは今回『外出』したのかしらね」

 

「そうですな。だからこそ、少しくらい助け船を出してくれればいいんですが」

 

そう言うと高雄は並べ終わった配牌を見渡し、牌をきった。

 

 

「君は、ボクのお父さんを知ってるの?」

 

リョウジは、急に現れたリュウジに対して思わずそう尋ねた。

 

「まぁ、何もかも知っているって訳では無いが、生前君のお父さんには随分とお世話になった」

 

その言葉に半ばリョウジは呆気に取られるが、何とか差し出された手を取った。

 

「本当に?」

 

同世代にしか見えない目の前の少年に対して、そう聞き返すのは無理からぬ事であった。

 

「ああ。君の名前が、お父さんから受け継がれたことも知っている」

 

だが父の本当の名を知っている事を突きつけられると、あながち、

 

『嘘ではないのか?』

 

と言う思いが、心底に湧き出はじめた。

 

「更に言えば、俺は嘗て、君のお母さんの部下でもあった。だからと言うわけでは無いが、葛城さんの肩を持ちたくもなってな」

 

そう言いながら、リュウジは座り込むリョウジの隣に腰を下ろした。

だがさらに混迷をきたす言葉に、リョウジの頭は霞を帯びるかのようであった。

 

「部下?……、エヴァのパイロットってこと?」

 

「今はそうだが……、14年前は、ただのヒラの部下だった。そんな俺を、あの人は根気よく面倒見てくれたよ」

 

14年前?見た目同年代の目の前の少年がその当時母親の部下だった?

事情が全く読み込めないリョウジの混乱は、さらに加速する。

 

「ま、俺のことなんざ知らなくていい。大切なのは、君がどうしたいかだ」

 

その言葉に、リョウジは混乱から引き戻される。

 

「君があの人に対して、面と向かって何をしたいか。今はそれを決めるのが最優先事項だ」

 

「別に…何もないよ。あの人にしたいことなんて」

 

リョウジはそうぶっきらぼうに言い放った。

 

「あの人は、ボクを置いて行って、戦うことを選んだんでしょ。そんな残された人間の気持ちがわからないような人に、ボクはもう何かするつもりはないよ」

 

「それは違うな」

 

リョウジの感じている憤りを、リュウジは否定はしない。

 

「何が違うんだよ」

 

「葛城さんはちゃあんとわかってる。残された人間の辛さを」

 

だからこそ『葛城ミサト』が、『加持リョウジ』へ感じていたであろう憤りも、否定することはできなかった。

 

「何でそんなことがわかるんだよ」

 

「あの人も残された側の人間だからだ。君のお父さんにね」

 

残される側の憤りや、寂しさを、ミサトは受け入れて、そして加持リョウジは、愛する者を残しいってしまう懺悔を思いながら、その日別たれなければならなかった。

 

「君のお父さんは、とても愛情深い人だった。誰よりも葛城さんに惚れ抜いていた。そして葛城さんも、不器用ながら、お父さんのことを深く愛していた。それでも……君のお父さんは犠牲になることを選び、葛城さんは、残される側となることを選んだ」

 

なぜなら二人とも、次世代の為、そして目の前の息子の為に、世界を残したいと言う、同じ願いがあったからだ。

 

「なら何で、母さんはボクを置いて行ったんだよ」

 

だが残酷なことに、その為に二人に与えられた役目は、全く違うものだった。

 

「……なんで父さんは…母さんを置いて行ったんだよ」

 

「聞けばいい……。少なくとも、葛城さんは生きてる。彼女が君に何を思っているのか、まだ知ることができる。———だが、お父さんに関しては、申し訳無いがわからないとしか言えない」

 

そう。それだけは、長年戦ってきたリュウジとて知ることはできない。

 

「俺は戦いに臨む時、常に死を覚悟してきた。……だが、本当に死んで行ってしまった者たちとの覚悟とは、雲泥万里のごとき隔たりを感じる」

 

なぜなら、リュウジもまた残された側の人間だからだ。

上に立つ者は、たとえ多くの仲間が、戦友が死に行く事になろうとも、共に行くことは許されない。

セカンド・インパクトの前後で、世界の全ては変わってしまったが、それだけはリュウジにとっても、変えようの無い残酷な現実であった。

 

「それでも、死んで行った者達と共にした日々は、今でも俺の中で輝き続けている」

 

だがその陽だまりのような暖かな光は、その残酷な現実を、道程はどうあれ生き抜く力をくれた。

 

「おそらく、葛城さんの中にもあるはずだ。忘れられないほど、輝き続けている、君のお父さんから受け継いだ大切なものが」

 

それこそが、ミサトにとっては、

 

『目の前の息子』

 

なのではないか。

そうリュウジは思えて仕方なかった。

 

「なに、一発くらい殴ったって、あの人は受け入れてくれる。それほど君のお母さんは、大きい人なんだ」

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

そこに息を切って、一人の人物が走ってきた。

 

「先生……」

 

「すまん。リョウジ」

 

ケンスケはリョウジに頭を下げながら、開口一番に謝った。

 

「え?」

 

「君の想いを無視して、急に事を運び過ぎた。君がどう思うかを考えずに……」

 

「そんな……謝らないでください」

 

確かにことが急に運びだし、面食らってしまっていたのは事実だ。

だからと言って、リョウジは何もケンスケに対して恨みなどは抱いていなかった。

 

「ボクが幼稚だったんです。まだその……、心の整理が出来なくて」

 

実際にそれは事実であった。

だがそれは無理からぬことと言える。14歳と言う多感な年ごろの少年には、ここ一時間の心情の揺れ動きを制御するのは、無理難題であった。

 

「いや、それは当たり前だ。俺がそれをもっと考慮しなくてはいけなかったんだ」

 

「でも、いいんです」

 

その無理難題に晒されながらも、今のリョウジの表情はどこか晴れやかだった。

 

「リョウジ?」

 

「心の整理は、正直まだできていません。それでも、ちゃんと話してみようと思うんです。許すのも、許さないのも、それから決めても、遅くは無いかなって」

 

リョウジの言葉に、ケンスケの表情も同時に晴れ渡っていった。

 

「……ありがとう」

 

そう言うとケンスケは、再びリョウジに向かって頭を下げた。

 

「……行ってきます。どうなるかは解らないけど……」

 

「大丈夫。なるようになるさ」

 

「はい」

 

ケンスケを尻目に、リョウジはその場を駆けて後にした。

 

「君が、あの子を助けてくれたんだね」

 

「助けたなんて大袈裟ですよ。少しばかり、サシで話しただけです」

 

ケンスケはそう言うと、目の前の少年をまじまじと見た。

 

「で?サクラちゃんが『リュウジさん』と言っていた君は、何者かな?」

 

そして14年と言う歳月は、嘗て無邪気な少年だった男児を、思考の冴えたる、目の前の大人の男へと成長させていた。

それを今の一言でリュウジは痛感するが、最後のあがきとばかりに、

 

「いやぁ、それは……。ハハハ」

 

苦笑いを浮かべ、誤魔化しにかかる。

 

「それじゃ、今晩は久しぶりにシンジとも再会できたし、俺の知る『リュウジさん』の秘密の話でもして盛り上がるかな」

 

そのケンスケの言葉に、リュウジの苦笑いはひきつったものとなる。

 

「その人は珍しく葉巻が趣味だったけど、それを吸う切欠が……」

 

「やめろ!解ったから!!」

 

そしてついに白旗を上げた。

 

「頼む。誰にも言わないでくれって約束してくれたじゃないか」

 

「約束ってのは、ともすれば相手の態度次第で反故にされることもあります。―――例えば、帰ってきたのに恥ずかしいって理由だけでそれを知らせようとしないとか。……こっちが生きていてくれたことがどれだけ嬉しいかも考えずに」

 

ケンスケの言葉に、リュウジは痛いところを突かれたかのような表情を浮かべた。

 

「すまなかった。……今更、君や鈴原君にどんな顔をして会えばいいのか、解らなくって」

 

そう言うとリュウジは素直に頭を下げた。

それを見たケンスケは一つ溜息を吐く。

 

「戻りましょう、皆あなたがいなくなって大慌てですよ」

 

「そうだな。葛城さんに謝らなくては」

 

「……それと、改めて」

 

ケンスケはそう言うと、リュウジに手を差し出した。

 

「生きていて本当によかったです。リュウジさん」

 

その眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。

もう生きて会うことは出来ないと思っていた、

 

『憧れた男』

 

が、こうして眼の前に存在する。

その憧れていた人と、歳を経たからこそ話したいことが沢山あった。それは叶わないと諦めていたことが、こうして眼の前にある。

その想いが昂ったが故の涙だった。

 

「……本当に立派になったな。相田君」

 

そしてリュウジにとっては、ついこの間まで無邪気に憧れを向けてくれた少年が、こうして本物の大人となっていることを目の当たりにして、熱い思いが込み上げていた。




今更ながら書いていると、リュウジリと、リョウジ、が紛らわしくなっていますwww

こんな紛らわしく、亀更新と化している本作ですが、頑張って完結まで走り抜けます。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字、脱字などございましたら、お手数ですがご指摘していただけると幸いです。

これからも応援、よろしくお願いいたします。
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