新世紀エヴァンゲリオン-And become Joseph-   作:さえもん9184

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すいません。
誠に申し訳ございません。

とてつも無く間が空いてしまいました。

それでも許してくださる方がいらっしゃれば、読んでいただければ幸いです。


Sin-戦いの端緒と帰結の始まり-

A.D.2000.10.13

セカンド・インパクトから一か月後。

中東 とある戦場にて。

 

リュウジは満身創痍でありながらも、仰向けのまま懸命に意識を保っていた。

その彼の周囲には、7つの小さな人影が集っていた。

 

「……いいか、これから、お前たちに、最後の命令を伝える」

 

呼吸が苦しく、息を切らしそうになるが、リュウジは努めて穏やかに話す。

 

「必ず、生き残って、……家族の元に帰るんだ」

 

「おじさん!」

 

「お前たちの弟や妹も、苦しい思いをしているだろう。……恐らく、腹を空かせて、まともな生活も遅れていない。……だろ?」

 

後にセカンド・インパクトと言われる未曾有の大災害によって、リュウジがいた戦場は激変した。多くの戦友や部下が、援軍がないまま亡くなり、武器弾薬は枯渇し、食糧も現地で半ば強奪するしか入手手段が無く、それも雀の涙程でしかなかった。

だが激変したのは、何も戦場だけではなかった。

 

「だが、金や、食べ物が手に入るよりも……、お前たちが帰ってくることこそが、家族にとっては、……何より嬉しいはずだ」

 

眼の前の、少年少女と呼ばれる者達の日常も、激変してしまった。

住んでいた都市は壊滅し、食糧が不足し、多くの人命が失われた。

リュウジは詳細は知らされていないが、目の前の子どもたちがこうしてここに送られてきた理由も、おおよそ見当はついた。

混乱をきたした政府に、孤児になった子供達を完全に保護できるわけがなかった。保護しきれない子供たちに、『家族に十分な衣食住を与える』などと言って、口減らし兼名目上の援軍と銘打って、ここに送り込まれたのだろう。

リュウジは力を振り絞ると、自身のドッグダグを外し、近くにいた一番年上の少女に、それを託した。

 

「……オレは、ここで死んだ。それを持って、そう届出ろ。そうすりゃ、俺の使い道の無かった預金を、お前たちで分け合える。それで、なんとか生きるんだ」

 

「リュウジ……」

 

「いいか、……どんな時でも、希望はある。そのためにも生きろ。そして、新たな世界を、平和を築くんだ。そのとき必ず、お前たちのような、若い力が必要になる」

 

だが、落ち着いてきたからか、麻痺していた痛みが、ついにリュウジを襲いだした。

それを見たひとりの少年が、モルヒネを打とうとするが、リュウジはそれを制した。

 

「間もなく、敵の追手が……来る。解るな?北西を目指せ……。う、運が良け、れば……べ、米軍の、キ、キャンプが、あるはず……」

 

意識が朦朧としだしたが、リュウジは最後に残った拳銃を握り、マガジンを取り出した。

残酷なことに、訓練を重ねてきたその体は、満身創痍であるにも拘らず、それだけで弾数が極僅かであることが感じられた。

だがリュウジは迷うことは無かった。身体にムチ打って、うつ伏せとなると、体を引きづり、殿を務めるために、拳銃を構えた。

 

次の瞬間、頭に衝撃をおぼえると、リュウジは意識を手放した。

 

 

眼が覚めると、テントの天井がリュウジの目に移った。

慣れ親しんだ、野戦病院であるとなんとなく見当がつく。

 

「……オレは」

 

「気が付いたんですね!」

 

その声のした方を見ると、衛生兵(メディック)と思しき女性が、自分の顔を覗きこんでいた。

 

「所属と名前、言えますか」

 

「……CIA準軍事組織(パラミリタリーチーム)所属、碇リュウジ、中佐」

 

そう口にした時、リュウジは思わず胸に手をやった。

そこには外したはずのドッグタグがあった。

 

「よかったです。アナタだけでも助かって」

 

その言葉にリュウジの意識は一気に覚醒した。

 

「他には!オレの他にここに運ばれたのは!?」

 

そして一気に起き上がると、思わずその衛生兵の胸ぐらをつかんだ。

 

「……一人、アナタをここまで運んできた少女が一人。……ですが」

 

「どこに!!?」

 

衛生兵(メディック)がなんとか名簿を取り出すと、リュウジは半ば奪い取るように手に取った。

そして、数秒で、その少女が記載されているページを見て、そこに記されている『処置不可』の文字に愕然とした。

 

「ウソだ、……ウソだ!!」

 

そう言ってリュウジはテントを飛び出すと、『処置不可』の兵士たちが収容されているテントめがけて死に物狂いで駆けた。

 

「どこだ!……どこなんだ!!」

 

懸命に探していたその時だった。

 

「リュウ……ジ?」

 

そんなか細い声が、リュウジの耳に届いた。

振り返るとその先には、どこか印象的だった栗色のショートシャギーの髪型の少女が、血まみれの包帯に包まれ、今にも色を失いそうな淡い水色の瞳を向けていた。

 

「……よか…た。リュウジ……無事で」

 

リュウジとてすぐに分かった。もう長くは無いと。

 

「……ごめんね。……あなたの命令……守れなくて」

 

「大丈夫だ。任せろ。オレが必ず何とかするから」

 

そういって、近くを通りかかった衛生兵(メディック)をその目に映すと、リュウジはまさに縋りついた。

 

「頼む。この子をすぐに処置してくれ。金ならいくらでも払う!だから……」

 

「無理です。あなたも解るでしょう!薬品も食料も全く足りてないんです!」

 

「そこを頼む。責任ならいくらでも俺が持つ、な、頼む……頼むから」

 

「我々が好きでここにいる兵士を放っているとでも思っているんですか!?」

 

その言葉にリュウジはハタと気付いた。

周りには、多くの死にかけた、そして既に息絶えた者達が、その四体をそのまま晒していた。

 

「もはや我々には苦しまぬようにすることもできない。できることと言えば、看取ってあげる事だけです」

 

その衛生兵(メディック)も、怒りと、遣る瀬無さと、悲しみのすべてこもった表情を浮かべていた。

それらを見せられたリュウジは、己の無力を痛感した。

 

「いいの、リュウジ」

 

「いいわけないだろう。なんでだ?なんで……」

 

「アナタを……死なせたくない。皆そう思ったから」

 

リュウジの涙でぬれた頬を、ボロボロで、血まみれの手が優しく撫でた。

 

「アタシ達さ、なんとなく……解ってたんだ。……平和は、暫くやってこない。ううん、多分、人間が生きている限り、……戦争って続くんだと思う。戦場に出て……そう、思ったんだ」

 

その言葉にリュウジは何も返せなかった。

戦争を生業としている自分が、それを否定したところで何の説得力も無いからだ。

 

「……だからこそ、アナタは生きなければならない」

 

「え?」

 

「戦争が起きれば、……必ず、アタシやあの子らみたいに、戦場に立つことになる子達が……。その、子供達を……アナタ、なら……守れる」

 

「そんなの無理だ。オレには、そんなこと……」

 

「できるわ。……現に、アタシを……助けて……くれた」

 

彼女の横たわるシーツには、少しづつ赤い染みが広がっていく。

だというのに、眩しい笑顔をリュウジに向けていた。

 

「アナタなら…できる…、きっと……」

 

だが遂に、その眩しさと、瞳の色が消えた。そして力なく、リュウジの頬を撫でていた手がだらりと落ちた。

 

「―――おい、しっかりしろ……。頼む!起きてくれ!!」

 

懸命に体をゆするが、全く反応がない。

 

「なあ、おい!起きてくれ!!……マナ!マナッ!!」

 

 

「ハッ……」

 

そんな29年前のことを、この時になってリュウジは思い出していた。

自身の戦いの始まり、とは大げさかもしれないが、彼女と、あの子達との出会いが、今日まで自分を突き動かしていたのは確かだ。

彼女との約束を守れたわけではない。だが果たそうと懸命に戦ってきた。

あの時、子供達に助けられたこの命が、人類存亡と、兄との決着を着けるための戦いへ望むこととなると考えると、運命、または神の意志と言うものが働いたのかと、少し考えてしまう。

 

『リュウジ?大丈夫?』

 

「ああ」

 

『この状況でうたた寝とは、肝の据わり方が違うにゃ~』

 

待機しているエヴァパイロット三人にも、激しい振動が伝わってくる。

既に大気圏外より、南極へと突入して暫くたつ。

外では恐らくNHGシリーズと激しい戦闘が繰り広げられているのだろう。

 

「少し昔を思い出していた。ただそれだけさ」

 

『こちら時田シロウ。パイロット三名、応答願う』

 

『弐号機、感度良好』

 

『八号機、問題な~し』

 

「こちら4+3号機、どうぞ」

 

『エヴァ・インフェニティの群れを突破し、L結界第3層に突入した』

 

無線の向こうからも、凄まじい爆音と振動すら伝わってくる。

 

『このまま本艦がもてば、射出ポイントに入り次第誘導弾を発射。そこでエヴァ三機を射出する』

 

とどのつまり、いつでも出れる準備をしろと言う最後通告だ。

 

「時田さん。最後にいいですか?」

 

 

そう言われた時田シロウは、この状況であるにも拘らず。リュウジの『最後』という言葉に、心臓を掴まれる思いだった。

それはつまり、長らく共に戦ってきた友人が、死を覚悟していると改めて実感したからだ。

 

『どうして、アナタは離艦しなかったんです?……いや、そもそも、どうして今日まで俺と共に戦ってくれたんですか?』

 

そう。

時田はマリや、剣崎のように教え子と言うわけではない。

シンジのように家族と言うわけでもない。

重力制御装置の実験のころからの付き合いのある友人ではあるが、それでも14年もリュウジを守り続け、あまつさえ今日の最終決戦にまでリュウジに付き添ってきた。

 

「……聞きたかったからだ。何故アナタが、そうまでして戦い続けてきたのか」

 

『……オレは』

 

「戦うことでしか生きることを実感できないから。確かにそれもあるでしょう。でもそれは『誰か』の為に戦う理由にはならない」

 

『……大した理由なんてないですよ。たまたま戦えるのがオレだったから。……ただそれだけです』

 

「なら、私も大した理由なんてない。友人としてアナタに今日まで付き合えるのが、たまたま『私だけ』だった。……ただそれだけだ」

 

そう、ともに理由なんてない。

戦うにも、友人を助けるにも。

その何でもない答えにたどり着いたのに14年もかかったことを思うと、

 

『……フフフ』

 

「フ……フハハ……」

 

共に自然と笑みがこぼれた。

 

『時田さん。終わらせましょう』

 

「ああ、文字通り、これが最後の戦いだ」

 

そして間もなく、誘導弾発射最適地点に到達しようとしていた。

 

「リュウジ。何があろうと、私は最後まで見守っている。……友人として」

 

『ありがとうシロウ。今日まで、本当に……』

 

 

それを見送ると、時田は4+3号機のモニターへと目を移した。

既にエヴァ三機が、ネルフ本部へ向けて射出されている。

 

「弐号機、攻撃開始!!」

 

フルバースト、とはまさにこのような攻撃を言うのだろう。

全身に搭載されたミサイル兵器で、迫りくるエヴァ7シリーズを殲滅していく。

更に携えていたガトリングが火を噴く。

モニター越しからも伝わる、アスカの凄まじいまでの気迫であった。

 

「八号機、戦闘開始」

 

既にマリが携えていた盾も秒と持たずに破壊されているが、彼女もそれにひるむことなく携えた武器が、エヴァ7シリーズ攻撃している。

 

時田がこの様子をモニターし続ける限り、リュウジは無事と言う事だ。

だがそれも、ネルフ本部に降り立ってしまえば電波は届かなくなってしまう。時田にとっては、まさにこの瞬間がリュウジと共にある最後の時であった。

 

(頼むぞ、マリ、アスカ)

 

時田は二人に心の中で懇願する。

リュウジをゲンドウの元まで届けるための、最初にして最後の護衛なのだ。

故に二人に主な戦闘は任せられてしまう。

だが、リュウジと言う人間が、護衛されているだけに甘んじる訳もない。

 

二人がさばききれない敵に接近を許した瞬間、モニターの両脇から真円の刃と化したATフィールドが投擲されると、二機に纏わりつく敵だけでなく、その周囲の敵機も一気に殲滅した。

この時リュウジは護衛対象であると同時に、二人に守られながら客観的に戦況を見定める前線指揮官でもあった。

そして次の瞬間には、マリからアスカへ次の得物が投擲されていた。

その間にも、リュウジは自身のATフィールドを周囲に展開し、露払いに余念がない。

落下しながらも、リュウジを中心とした間合いの結界が、二人を援護していく。

その援護が、更にマリとアスカの攻撃を苛烈なものにしていく。

アスカの得物が振るわれれば、数多の敵機が塵芥となり、マリも攻撃と、アスカへの武器供給に専念できる。

 

(よし!これならネルフ本部まで……)

 

だが次の瞬間、時田の眼に信じられない映像が映る。

 

「エヴァ7シリーズの群れ、さらに増えました!!」

 

それは増えたという言葉で片付くのだろうか。

敵機が粒子が物質を形成し、そして物体となっていくかのように、白い分厚い壁が形成される。かと思うとそれが更に螺旋状に形成され迫ってくる。

再度アスカがミサイルの飽和攻撃を仕掛けるが、焼け石に水だとでもいうように、敵機の群れが再度迫ってくる。

時田は余りの敵の物量に絶望をおぼえるが、リュウジは焦る様子が全くない。

先行するマリとアスカが敵に向かっていくのを、何も心配していないかのように後方に控えていた。

そして両機の合わさったATフィールドが展開されると、螺旋となって迫ってきた敵の群れに接触すると、鋭い音が響いた瞬間その螺旋が磨り潰されていく。その巨大な螺旋は、二人が展開した強力なATフィールドによって次々中和されていった。

 

(すごい……)

 

流石は歴戦の猛者だと時田は舌を巻いた。

そしてそれが、

 

『さも当然』

 

と見定めているリュウジにも舌を巻いた。

一度拳を交えたからかもしれないが、そこに自身を任せる胆力にも、驚嘆した。

 

そしてついに、その眼前に目標地点の地表が迫る。

時田が見ているモニターも、目に見えて過ぎ去っていく景色の速度が落ちていく。

それと同時に、徐々にノイズが入ってくる。

 

「間もなく目標地点です」

 

「三機の状態は?」

 

「損傷軽微。……ですが、通信はもう……」

 

ミサトの質問に答えながらも、時田は地表に近づくモニターに見入っていた。

そして近づくに比例して、ノイズが激しくなる。

 

そして、最後に映像が地表に向かって水平になった途端、

 

「映像……途切れました」

 

「……後は、祈るしかないわ」

 

「……は」

 

それは決してリュウジが勝つことを祈るのではない。

 

『負けるが勝ち』

 

その言葉を知っている者たちは、リュウジが巡らせた最後の策謀、その成否を祈るしかなかった。

 

 

リュウジは着地の瞬間、完全に重量をゼロにすると、そのままフワリと着地した。

そして槽の反対にアスカはマリをそのまま抱き抱えると、ジェットの逆噴射によって荒々しく着地した。

 

「……マリ!」

 

だがすぐさまリュウジは臨戦態勢に入り、

 

「教官!」

 

それを察したマリが、携えていたカスタマイズされたパレットライフルを投げてリュウジによこす。

受け取ると素早くコッキングし、装着されたグレネードランチャーの装填も確認する。

そしてアスカもそれを察してか、両の手にハンドガンを構える。

 

背中合わせ(back to back)‼︎」

 

リュウジの号令のもと、三人は互いに背中を預け合う。マリも電磁ウィップを構えると、

 

「来た!」

 

まるでエヴァの腕のみが合わさっているかのような敵機の群れが、まさにスカラベ(フンコロガシ)の群れのように襲い掛かってくる。

すぐさまリュウジの携えたアサルトライフルが火を噴く。

マリも群がる敵機に向けて、縦横無尽に武器を振るう。

 

「アアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!」

 

アスカも構えた二丁銃を、ありったけ打ち込んでいくが。

 

「ッチ!」

 

当然弾切れにもなる。

すぐさま空のマガジンを排出すると、そこに絶妙なタイミングでマリがマガジンをリロードさせる。

そして今度は凄まじい爆発音がしたかと思うと、リュウジがグレネードランチャーの空の薬莢を排出する。

そこにも素早くマリは、グレネードランチャーを再装填させる。

 

(まったく、二人ともこき使ってくれるニャ!)

 

そしてさらに迫りくる敵機を電磁ウィップで両断していく。

ものの一分も掛からなかったろう。迫りくる敵機の群れは、あっという間に殲滅された。

だが、

 

「すぐ次が来る」

 

「ええ。このままじゃジリ貧になるのは目に見えてる」

 

リュウジもアスカも、リロードしながらも警戒を怠らない。

 

「マリ、悪いけど持ってる武器、ここに全部置いていって」

 

「解った。……行くよ教官」

 

マリはアスカの静かな覚悟を感じ入った。

 

「ああ。……アスカ」

 

そしてリュウジは今更ではあるが、自分の傲慢さに気づいた。

 

「リュウジ。……14年越しの決着、今度こそ着けて来て」

 

既に目の前の少女も、自分以上の戦士となっていたのだ。

リュウジは残すことのできなかった世界の為に戦ってきた。

アスカは違う。来たるべき自分たちの未来を勝ち取るために戦っている。

その未来は、リュウジやゲンドウが犯した罪によって、奪われてしまった未来だった。

だというのに、アスカは微塵もそれを他人のせいとは思ってない。

 

「……地獄で待ってて。アタシも行くから」

 

恐らく誰よりも、『自分たちの戦い』という強い自負のもと、ここに立っている。

その想いに対して、リュウジは拳を付き出した。

それにアスカは、静かな笑みを浮かべて拳を合わせた。

 

「ああ。待ってる」

 

そう言ってリュウジは、マリと共にその場を後にした。

 

 

マリとリュウジは懸命に駆けていた。

幸いにも、一度敵の群れを撃退できたからか、こちらに来る敵はそう多くない。

 

「この先だ」

 

そのお蔭か、ついに二人の視線の先には13号機へとつながる大きな風穴へと辿り着いた。

 

「……教官。ついたよ」

 

「ああ……」

 

「この先に、ゲンドウ君と13号機が待ち構えてる」

 

「……オレが、覚醒させた」

 

そう言うとリュウジはマリにゆっくりと視線を向ける。

 

「すまなかった。俺の我がままのせいで……」

 

「それは違う」

 

リュウジは決して清廉潔白なわけではない。ゲンドウやゼーレと同様、許されないことをしてきた。

 

「……教官は、他の連中の我がままの代償を負わされただけ」

 

だが、他の連中と違うのは、その償いを懸命にしてきたのだ。

その果てに、ようやくここまでたどり着けた。

 

「だから、最後は他の誰でもない、アナタの為に決着を着けて。教官」

 

だから最後くらいは、己の為に戦ってほしかった。

 

「……ありがとう。だがな。―――機体の性能差がありすぎだろ……」

 

「……教官。古い言葉に『性能の違いが、戦力の決定的差ではない』って格言があるニャ」

 

そのマリの言葉に、こんな場面だというのにリュウジは吹きだしそうになってしまう。

 

「教官には、今まで培ってきた戦闘経験がある。それが、ゲンドウ君に勝る最強の武器になるはず」

 

「そうだな、確かにその通りだ。……だがそれそんな古い言葉だったか?」

 

「そりゃそうでしょ。70年代の言葉だもん」

 

「……時がたつのは早いもんだ」

 

そう言ってリュウジはポジトロンライフルをマリへと渡す。

 

「ここは頼むぞ。マリ」

 

「了解!」

 

そして今度はマリを置いて、リュウジはその風穴へと身を躍らせた。

 

 

「……来たか」

 

リュウジは遂に、その眼前にゲンドウ()を捕えた。

13号機は残骸の塊に腰をおろし、こちらに背を向けている。その周囲には、二本のロンギヌスの槍が展開されていた。

 

「……大したもんだな。ユイさんの為に、お前は本当に世界を犠牲にしたんだな」

 

そしてゲンドウはゆっくりと立ち上がる。そして振り返ると、ついにリュウジ()を視認する。

 

「そして、お前の為でもある。リュウジ」

 

「オレの?」

 

「人類にとってお前は『戦争』という害悪その物でしかなかった。そのお前を、人類の神化と補完の為の使徒の贄として用いる。……それがせめて、私が兄としてお前にしてやれる手向けだ」

 

そして二対の腕を13号機が展開すると、二本のロンギヌスの槍をその手に構える。

 

「そうか……。なら、オレからも手向けを送ろう」

 

そう言うとリュウジは、ゲンドウとは対照的に、携えていたハンドガンも、プログレッシブナイフも捨てる。

 

「言ったはずだ。貴様に世話になることはない」

 

「いいや……。こればっかりは、俺が世話してやらなけりゃならん」

 

そして両の空の手を、ゆっくりと構える。

 

「だから終わりにしよう。兄さん」

 

「ああ。―――だが終わるのは、お前だリュウジ」

 

ゲンドウはその顔に敵意を、

 

「フ……。―――それでいいさ」

 

リュウジはその顔に摯意を浮かべる。

そして次の瞬間、兄弟は互いめがけ、己が身をぶつけ合う。




これだけ時間がかかって、あまりな内容かもですが、本当に読んでくださってありがとございます。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

誤字、脱字などございましたら、お手数ですがお知らせくださると幸いです。

これからも応援よろしくお願いいたします。
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