「では、まず呪術師の持つべき基本知識について学んでいきましょう。
呪いってなんなんでしょう。相手を呪う、とはどういったことなのか。
流れる運気が滞れば淀みが生まれ、積り積もった淀みはそれを喰らう災厄を呼ぶ。
伝承に伝わる鬼だか妖怪だか言われてきたモノたちですね。
この世ならざる存在がもたらすもの、それが現世に干渉した工程やその結果を呪いと呼びます。
ますたーのご先祖はこう考えました。
やつらをこんとろーるする術を得ることができれば、うちが最強じゃん?
そうして呪術が生まれ、はじまりの一族たる神成家が生まれたのです。
呪術師は淀みを操り、指向性を持った災厄をもたらすことができる存在、ということです。
じゃあまあ、呼んでみましょうか、災厄。
呪術師の第一歩、ちゅーとりあるってやつですよ。」
あなたのお母様は残念なことに呪殺されてしまいました。
あなたが一族の最後の生き残りです、まいますたー。
なんてよくわからないことを目の前の折り紙がのたまわっている。
夏休み初日の朝。
玄関先に届いた郵便を開けると、中から式神(?)が這い出てきた。
最近多いんだよね、こういうの。
あらかじめそれっぽいセリフを封じ込めて式神を送り付け、呪術師用の教材を一般人に高値で売りつける。
一軒一軒電話をかけるより効率的で、インターホンを押すより手間もかからない。
ようするに詐欺だ。
小学生じゃあるまいし、華の女子高生がそんなのにひっかかるわけないでしょう。
商品の宣伝どころか振り込む口座も知らない式神なんて、詐欺にしちゃ間抜けがすぎるとは思わないでもないが。
「詐欺ではありません。私はそこらの大量生産品とは違う、おんりーわんの高性能です。
一族存続の危機に陥ったとき起動する緊急用の式神であり、先代の人格をこぴーして作成された、受け答えのできる最新鋭の式神なのです。
また、私は初代から脈々と受け継がれてきた秘伝術式を伝授するための弟子育成もーどを保有しています。
あなたを弟子として認識し、一から教育を・・・」
可燃ごみにしては意外と手が込んでるな。口うるさい点に関しては、我が家に届いたセールス式神どもの一歩上をいく。おまえがナンバーワンだ!
・・・式神処理バサミはどこだったか。
「突然ですがますたー、私の存在が御三家に察知されたようです。
呪いの反応が急速に接近中。
玄関から離れ、術式による防御をおすすめします。」
突然だねホントね。
呪術師でもない一般人に術式は使えない。
術式を扱える人間はとっても貴重だ、とそんな常識も知らないのか。
世間知らずもオンリーワンの個性と言えるのだろうか。うーん。
さっさとチョキってお昼ご飯にしよう。
「では安全を確保します。術式の行使を開始。発動まで3、2・・」
セミの鳴き声が遠のく。
唐突に訪れるありえん大きい衝撃。
玄関ぶち破ってトラックが・・・トラック?
きらきらしたガラスの破片が飛び散り、木の柱が腕や足に突き刺さる。
なんで家の中でトラックに轢かれるんですか?
ぐしゃ
「ますたー、私の存在が御三家に察知されたようです。
呪いの反応が急速に接近中。
玄関から離れ、術式による防御をおすすめします。」
予知夢なんぞ初めて見たわ。
お前がしゃべり出してから5分も経ってないぞ!この疫病m・・式神ィ!
自分の死を第三者視点で目撃することある?
生存本能がフルスロットルな感じがする。気分は最悪。
それでも沸き立つ悪寒が体を動かし、変な高揚感が血をめぐる。ぐるぐる。
急いで台所のテーブルの下に・・・防災訓練じゃないんやぞ!
途端、爆発したような音がした。
土足で人の家に入るとは、礼儀がなってないよ礼儀が。
「術式の発動を確認。どうやらご無事のようですね。
では一息ついたところで呪術師についてお話しましょう。」
一息ついたように見えたか?それ今する話か?
あの降りてきた黒服グラサン誰?
・・・宇宙ネコ、ヨシ!
「では、まず呪術師の持つべき基本知識について学んでいきましょう。」
こうして私の夏休みが始まる。
感想とかもらえるととっても嬉しいです。