朝食を食べ終えた少年は、歯を磨いた後すぐに家を出ていった。
少年の向かう先は昨日の場所だ。
しかし、今日もまた目的のポケモンはおらず、少年はその場で座り込んでしまった。
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さてと、昨日の続きをしようか。
たしか、ここがどこなのかということなのだが、結論から言うとホウエン地方のどこかの島だ。
まず、なぜホウエン地方であると考えたのかというと、テレビの内容だ。
もちろん、他の地方を取り上げたニュース番組やバトル大会などもいくつか確認できるのだが、
その量・質がホウエンのものとは比較にならない。
そういうわけでここがホウエン地方であるのは確定的であるといってもよい。
では、具体的にここがホウエン地方のどこに位置している島なのかということなのだが、正直見当もつかない。
というのも、ホウエン地方は他の地方と比べて周辺に海に囲まれている場所が多く、周辺からその位置を推定することはかなり困難だからである。
いくつかそれを確かめる方法があるにはあるが、現時点でのその情報の必要性とそれを実行する手間とを天秤にかけた結果が、先の状態である。
次にこの島について今自分が把握していることを整理してみる。
「この世界はポケモンに満ちている」という世の常にもれず、この島にも多数のポケモンが生息している。
ポケモンは炎タイプならば熱い場所、草タイプならば木が生い茂った場所といったようにその種によって好む場所が異なっている。
すなわち、同じ場所に生息するポケモンは同じタイプの場合がほとんどであり、それが野生のポケモンの習性であるといってもよい。
しかしながら、この島は少し違う。
かなりの数、そして種類のポケモンを確認することができた。
なぜそのようなことができるかというと、答えは単純だ。
多様なポケモンが好むような環境が形成されているからに他ならない。
島の大部分を占める森林群、湿地帯、島を2つに分断するようそびえたつ山脈、大きな洞穴なども存在する。
自分の知識の中に、ポケモンの世界でここまで様々な環境を形成する島はあまり聞いたこともない。
すなわち、この島がかなり特異的な場所である可能性が高いと考えている。
先では言及しなかったが、この島には多数のきのみが自生しており、それを食べてポケモンが生活している。
それらを目的に侵入や移住を企てようとする人がいそうなものだが、ここで暮らす人間は自分と老人以外確認しできていない。
…住みにくいから?
否定はしないが、ここ以上に人間の手が加えられていない場所などこの世界に無数に存在するし、そこを所有、管理する人間もいるだろうし、需要がないとも言い難い。
明確な理由はある。
これには老人が大きく関わっている。
そうだな、
では、次は老人についての情報をまとめ「フリャー」よう・・・か。
お。ようやく来たか。
緑の体をもつポケモンが上空から舞い降りた。
せいれいポケモンの 「フライゴン」
それがこのポケモンの名前だ。
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フライゴンはうれしそうに自分の方へと近づいてきた。
この島で一番一緒にいた時間が長いポケモンがこのフライゴンだ。
もしかしたら老人よりも長い時間共にしたのかもしれない。
ちなみに、このポケモンは自分のポケモンではない。
まあ、自分はポケモントレーナーですらないので当たり前なのだが。
こいつと初めて会ったのは、ここがポケモンの世界だと知った日のことだ。
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今でこそ冷静に自分の状況を分析しているが、最初はかなり混乱していて何が何だかわからなかった。
まず目が覚めたら、体が幼児化しているのである。
さらに、ここが見知らぬ場所であることにも気づいたのだが、その事実すらも吹き飛ぶような出来事が起きた。
見たこともない謎の老人がこちらに顔を覗かしているのである。
その恐怖心が自分の心を支配した時、それが聡明な判断ではないと自覚するよりも前に、家を飛び出していた。
家から走っているうちに頭が冷え、だんだん自身の置かれている状況が理解できるようになった。
情報不足の状況下での脱出行動は自殺行為と同義なのである。
そう思い立ち止まった場所がこの湖だ。
そこに生き物の気配はなく、静かで神秘的な自然の光景だった。
その風景に見惚れていると自分の身体が普通ではないことに気づく。
・・・空腹だ。
一日何も食べなかったレベルの空腹感ではない。
一刻も早く何かを食しなかったら餓死してしまうのが容易に想像がつくレベルの空腹だ。
そのことに気づいたときはもう体が動かなくなっており、重力運動による地面との衝突に抵抗することもできなくなった。
もう死を待つのみかと半ば生をあきらめていた時、何かがこちらに近づいてくる音がした。
目を開けても視界がぼやけてそれが何者なのかもわからない。
次の瞬間、なにかが口の中に入ってくる感覚がした。
食を欲している自分の身体は、それが食用であるかを頭が判断することもなく、飲み込みさせた。
ーーこれは・・・・・ナンダ。
それがなにであるかを理解しようとしたのは、自身の体に変調が起きたからである。
体が熱い
他のことがどうでもよくなるぐらいのものだ。
そのときはじめて自分が食べたものが辛いと知覚した。
あまりの辛さに飛び起きると、そこにいたのがフライゴン
・・・の進化前のナックラーだったのだ
それがナックラーだとわかったことが、自身の頭の中をポケモンの知識で満たすようになった契機なのであった。
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昔の話に思いをはせているとフライゴンは少しばかりの怒りをこちらに訴えかけているようだ。
・・・なるほど
どうやらしばらく顔を見せていなかったから、心配で自分のことを探し回っていたらしい。
前の世界の自分ならば、先の文に違和感を持つだろう。
そうなのである。
自分はフライゴンの考えていることが分かるのだ。
ゲーム・アニメのポケットモンスターの世界において、通常、ポケモンの鳴き声でその心情・感情を把握することは、人間(トレーナー)の持つ能力を超えたものであり、逆にポケモンは人間の言葉を理解することでその指示に従い、ポケモンバトルを行う。
これがポケモンバトルの醍醐味であり、それだからトレーナーとポケモンの思いを一つにするのが難しいとされている。
しかし、ポケモンの考えていることが分かるこの能力は、自身の考えるポケモンとトレーナーとの関係観から遠いものなのではと考えている。
また、「ポケモンの考えが分かる」というのでは、少しだけ不適切だ。
ポケモン側も自分の考えることを理解している可能性が極めて高い。
自分はフライゴンにまともに言葉を発したことがないのだ。
それにもかかわらず、自分が心の中で指示したことを忠実に再現することができている。
人間のように会話をすることはできないが、
フライゴンがどんな感情か、何を思っているかをぼんやりとだけ理解できる。
ちなみに、この能力が機能しているのは今のところこのフライゴンぐらいであり、他のポケモンのほとんどについては、自身に対する敵意は伝わってくるのだが、それが思考の読み取りを阻んでよくわからない。
さて、ではこの能力の価値について考えてみよう。
これが、 自身固有の特殊なもの もしくは 皆が共通でもつ一般的なもの のどちらかによって、
それは大きく左右されるだろう。
もしも、これを使えるのが自分だけであったならば、この世界におけるポケモンバトルの立場の高さを鑑みると、最悪の場合人体実験される可能性も考えられるので、バレるのを避ける意味で多用は控えた方がいいのではないかと考えている。
(ちなみにだが、フライゴンに声で指示を出したところ全く言うことを聞かなかったので、自分としては能力の多用が可能となる後者の説を願っている。)
「ではこれをどのようにして確かめることができるのか。」とフライゴンの方を見てみると、
フライゴンから呆れにも似た感情が向けられる。
また、無意識のうちに思考が自分だけの空間に入っていたらしい。
昔からの悪い癖だ。
そのうち直さないなければと思ってはいるのだがな。
さてと、いろいろ脱線したが、フライゴンとやりたいことがあったのだ。
まあ端的に言うと、バトルの練習だ。
別にどっかの地方でチャンピオンとかになりたいわけではない。
自分の最終的な目的は憑依の解除、もとい元の人格の復活だ。
どうすればこれをどうすれば達成できるかはわからない。
それどころか、元の世界であればこんな話絵空事の類だろう。
ただ、ここはポケモンの世界。
人間では到底説明不可能な伝承を残す伝説・幻級のポケモンが存在する。
そんなポケモンに出会いたい・探すことを目的として旅をしているトレーナーも多い。
しかし、そういったポケモンに遭遇するポケモンはほんの一握りだろう。
よっぽど運がいい奴か、 伝承が残された地を様々旅し、ようやく出逢える奴。
そして、そのような伝承が残された地は総じて危険がつきものであり、足を踏み入れるトレーナーを制限する。
どのようにしてその資格を選別するか。
単純だ。
ある一定以上のポケモントレーナーとしての強さを示すこと。
すなわち、バッチの数だ。
もちろん、その危険度により必要となるバッチの数は変わる。
ちなみにだが、バッチを得るのだったら同じジムリーダーに勝った証なのだから、一個持っているのも
数十個持っているのも極論同じなのではないと考える人もいるだろう。
ジムバッチの数はそのトレーナーの旅の長さに比例しているといっても過言ではない。
つまり、それだけ様々な苦難・試練を乗り越えているのだ。
さらに、ジムバッチをもつことによって得られる恩恵は、チャンピオンリーグ出場や先の事項だけではない。
大学への進学・諸職業に有効な資格としての側面もある。
ポケモンリーグ協会が定めているジムリーダーが評価するのは、バトルの強い、弱いではない。
「ポケモンに対する理解」この一点に尽きる。
大学でのポケモン研究を目指すものの中には、当然ながらバトルが弱いトレーナーは存在する。その人たちに対する救済措置だ。
ジムリーダーが使用しているポケモン全てを、そのジムリーダー本人が育てているわけではないらしい。
ポケモンリーグ協会が指定したブリーダーが、何匹ものポケモンの手入れをしている。
挑戦者のジムバッチの数・ジムトレーナーとのバトルを通して確認されるバトルスキルに合わせて、使用しているポケモンを変えているらしい。
(ソースはテレビ番組「驚愕!!ジムリーダーの秘密」というテレビの知識)
もちろん、ジムリーダーになるくらいなのでポケモンについての知識は相当のものだ。
自分のようにある程度の数のジムバッチ獲得を目指すものには茨の道になることは想像に難くない。
だからこそ、ある程度は強くなくてはならない。
がむしゃらにポケモンバトルを繰り返し、強くなるのも悪くはないだろうが、自分はある程度戦い方を理解した方が効率的だと考えて、こうしてバトルの戦い方を試行錯誤しているのだ。
この世界に来て何回かフライゴンで島のポケモンとバトルをしたのだが、
勝てるときは勝てるのだが、負けもかなり多い。
中にはまったく歯が立たないやつもいる。
理由は単純な経験不足なのだが、トップクラスのポケモンバトルと自分のそれとを比べて気づいたことがある。
この世界のポケモンバトルはアニメのものと同じものと考えて良い。
ゲームのそれとは違い、技を避けることができる、地形の活用、相手の技を技で返す、技ではないポケモン自身の特徴の利用など、例を挙げればまだまだある。
全体的に自身のバトルでそれらを活用できてるとは言い難い。
自身の指示の大半は技を出す指示であり、相手の技を避ける指示もタイミングが合わないのか、避けられられないこともしばしばある。
今回はそれの練習をしたい。
この世界で繰り広げられるポケモンバトルにおいて、ポケモンに「避ける」指示を出さないというバトルは存在しないと言ってもよい。
それほどまでにポケモンバトルにおいて重要なのがこの“避け”である。
さらに言えば、フライゴンというポケモンがスピードの速さで相手を
翻弄するタイプで、相手の技をわざと受けるタイプではない。
いわば、避けること自体がフライゴンの生命線とも言える。
では、今までなぜ避けられなかったのか。
その1つとして考えられるのは、信頼関係の無さだ。
これはトレーナーの力量不足により多発する問題であり、具体的にはポケモンが指示を無視するなどが挙げられる。
では、このフライゴンと自分についてそれがあるかと言われたら答えは否だ。
普段は変なことをしているフライゴンなのだが、バトルでは違う。
自分の指示にはすぐに反応しているし、それに反抗する様子もない。
原因は他にあるのだ。
――よし、まず飛んでくれ
自分の指示に従ってフライゴンが上空へ飛び立った。
――限界まで上昇してから、一気に急降下してくれ
すると、その姿が見えなくなるぐらい飛び上がったフライゴンは
湖へ向かって急降下を始めた。
その姿が見えた頃には最高スピードに達しており、「水面で勝手に止まるだろう」と思い、何の指示を出
さずにいた少年の意図を無視するかのように、そのままのスピードで水の中へと吸い込まれた。
その瞬間、轟音とともに舞った大量の水飛沫が、太陽に反射して煌めいた。
・・・痛そうだな
フライゴンは水の中からすぐに出てくると、水面を舞い始めた。
どうやら遊びたいだけらしい
それにしても、やはりすごいスピードだな
今も無駄に速い瞬発力で跳ねた水を避ける遊びをしている。
これを見て確信に変わった。
フライゴンにはほとんどの技を避けられるスピードがある。
ではなぜ避けられないのか。
原因は自分にある。
ポケモンは実に様々なことができる。
だからこそ、ポケモンバトルにおいて迷いが生じてしまう。
それを支えるのがトレーナーにおける役割だ。
ポケモンの能力を見極め、その膨大な選択肢から最善のものを選び、避けさせる。
それができるのであれば極端な話、攻撃を受けることはない。
すなわち、それが勝利への近道なのではないか。
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漠然とはしているが、今後のバトルの方針が決またことで、少年は少しの達成感を覚えていた。
そのとき、突然唸るような地響きが鳴り響く
、
痛覚を刺激するほどの轟音が、少年の思考を打ち砕いた。
そのとき、湖から一匹のポケモンがゆっくりと水面へ顔を出す。
二本の髭を生やした巨大なナマズの容貌をした水ポケモン
ナマズンが、まるで飛び回る羽虫を捉える魚の如く形相で、じっとフライゴンを見ていた。