考えすぎの黙示録   作:ほしぶどう

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 ナマズンの出現に気付いたフライゴンは羽ばたくのをやめ、空中で静止していた。

それを見計らったかのようにナマズンが動き出す。

ゆっくりとその大きな口を開いていく。

それと同時にかすかではあるが、口の中に光が見えた。

 

 

 

 

――フライゴン、上に逃げろ

 

 

 

ナマズンの様子、そして先の出来事を結びつけて考えると、相手がフライゴンに敵意をもっていると理解し、指示を出すのにそう時間はかからなかった。

 

フライゴンが完全に移動を完了してから数瞬もたたぬ間に、元居た場所に冷気を帯びた光線が通過した。

 創り出された氷の峰のから白煙が立ち昇っている。

 

自分が迷惑をかけたことに気付いたのだろうか、フライゴンが申し訳なさそうにナマズンに謝っている。

 

 

・・・が、そんなことを意に介さないかのように再び、れいとうビームが放たれた。

 

 

 

 すぐに反応し移動を始めたフライゴンだが、今度は放射状に放たれた“それ”をなかなか振り切ることができない。

 

 

 

――氷を盾にしろ

 

 

 

 自分の指示を聞き、フライゴンが氷を挟んでナマズンの反対側へと逃げることに成功した。

ナマズンはかなり怒っているらしく、いつでもわざが出せるようにじっとフライゴンのいる方へ意識を向けている。

 

自分たちがとれる選択肢は二つある。

 

 逃走か、闘争か。

 

 今のナマズンの動きを見たところ、かなりバトルに慣れているように感じる。

では逃げ切れる可能性が高いかと言われると、それも微妙だ。

戦闘からの完全な逃走は相手に背中を見せることが自動的に必然となる。

先の“避け”はフライゴンがナマズンへと意識を集中していたからできていた芸当であり、それを捨てたフライゴンを撃ち落とすことは、ナマズンからしてみれば造作もないことだろう。

 

そもそもバトルをするにしても、ここから逃げ出すにするも、まずこの状況を脱しなければどうにもならない。

 

 

…どうしたもんか。

 

 

 硬直状態がしばらく続いた後、しびれを切らしたナマズンが動き出した。

口の中から放出された泥の塊が氷に向かって降り注ぐ。

泥が氷に触れた途端、爆発が起こり、氷の破片が生み出される。

飛散した氷の破片の一部がフライゴンに当たり、ダメージを受けてしまった。

 

 

 中途半端に避けているだけではこのままジリ貧だ。

 

今までのナマズンの動きからこいつはかなり強い。少なくとも今まで自分たちが戦っていたポケモンの中でもかなり強い部類だろう。

 

まだ自分たちが敵うような存在ではないだろうから、何とか逃げ出すのが最善であると思ったが・・・

 

 

よし

 

 

――フライゴン

 

 

フライゴンがこちらに向く

 

 

――戦うぞ

 

 

自分の思いを読み取ったのだろうか、戦う気がなかったフライゴンであったが、覚悟を決めたようだ。

 

 

――フライゴン、「ずつき」だ。

 

 

 そのスピードを生かし、目にも止まらぬ速さでナマズンへ激突する。

ナマズンが怯んだ。

 

 

――よし、もう一度だ。

 

 

 ナマズンが怯んだ隙にフライゴンがもう一度「ずつき」を繰り出す。

攻撃が命中するが、このずつきではナマズンを怯ますことはできなかったようだ。

フライゴンが離れるよりも先にナマズンが動き出す。

その太々とした尻尾に水をまとわせ、今にもフライゴンを叩きつけようとしている。

 

 

――っ!!フライゴン、「いやなおと」だ。

 

 

機械音にも似た音の発生により、ナマズンの動きが止まる。

 

 ゲーム上のポケモンの技「いやなおと」は相手の防御ランクを2段階下げる技だが、

近距離で繰り出すことで怯ませることができる。

その隙にフライゴンはナマズンから少しだけ離れることができた。

 

いやなおとを聞かされたナマズンはますますその怒りを増長させている。

 

 

 

・・・これはチャンスだ。

 

 

冷静さを失った野生のポケモンは動きが単調になる。

これならば十分に勝機はある。

 

 

 怒り狂ったナマズンは自身の出せる最大量の水をその口から放つ大技「ハイドロポンプ」を繰り出してきた。

 

 

「ハイドロポンプ」は威力が高い分、直線的で到達地点が予測しやすい。

 

 

――冷静に躱せ。

 

 

畳みかけてくるように水の束がフライゴンに襲ってくる。

が、先ほどの「れいとうビーム」のように正確にフライゴンを狙っているわけではないのか、命中することはなかった。

 

 

 

疲れたのだろうか、ついに水の嵐が収まった。

 

 

・・・決めるなら今しかない。

 

 

 

 

 

――フライゴン、ナマズンへ向かって「すなあらし」だ。

 

 

 

 その羽を最大限まで動かして砂煙を発生させ、ナマズンへとぶつけた。

当然ながらナマズンにダメージはない。

当たり前だ。ナマズンは水・地面タイプのポケモン、地面タイプをもつポケモンにこの攻撃は意味をなさない。

 

 

ゲームだったらの話なのだが。

 

 

ポケモンの技はあくまで相手のポケモンにダメージを与えるためだけのものではない。

それに付随するものを用いてバトルで優位に立たせることも多い。先の「いやなおと」もだ。

 

突然の砂嵐の発生により視界が閉ざされ、ナマズンは少しの間固まってしまう。

 

が、すぐに動き出し、水面に向かい「アクアテール」を繰り出すことで周りを覆う砂嵐を吹き飛ばすことに成功した。

 

 

砂嵐が晴れ、その発生源を攻撃すべく、先に居た場所に「れいとうビーム」を打とうとするが、

 

 

どこにもいない

 

 

 

そして、その隙だらけの背中を相手にさらしてしまっていることに気付かなかった。

 

 

 

 

――フライゴン、「シグナルビーム」だ。

 

 

いつの間にか至近距離まで近づいていたフライゴンの口から放たれた七色の光線は、ナマズンに直撃し、その巨体を軽々と吹き飛ばした。

 

まともに喰らったナマズンは水面上でぐったりと浮かんでいた。

 

 

戦闘不能だ。

 

 

 

 

ナマズンが反撃しないのを確認すると、近くにあったオボンのみをフライゴンに渡し、ナマズンに届けさした。

 

 

フライゴンからの謝罪とともにきのみを口に入れられたナマズンは、こちらに対しての怒りは静まってはいたが、やや気まずい面持ちで、また水中の奥底へと姿を隠した。

 

 

 

・・・まあ、ナマズンからの攻撃は眠りを邪魔された怒りによるものだから、百パーセントこちら側が悪いのだがな。

 

 

フライゴンは、仲直りできたと思っているのだろうか、うれしそうにこちらへ報告してきた。

 

・・・こいつ。能天気だな。

 

 

なんにせよ、かなり厳しいバトルだったが、なんとか勝利を収めることができた。

 

技がうまく嚙み合ったいいバトルだった気がする。

 

 

 とはいえ、苦しい場面もいくつかあった。

今フライゴンが持っている技は、「いやなおと」「ずつき」「シグナルビーム」「すなあらし」だ。

これらが一流のトレーナーが所有するポケモンがもつ技かと言われるとかなり微妙なので、もっと技を追加したいという気持ちはかなりある。

 

今、習得したい技があるのだが、なかなか苦戦しているようだ。

 

 

ポケモンが新たな技を覚えるには自分が知る限りでは3種類ある。

 まずその中で最もスタンダードなのは、特に他の事象に関係なく習得できるものである。

まあ、ゲームでいうところのいわゆるレベルアップ技だ。その習得する順番などは威力が強い技や珍しい技であればあるほどその習得は遅くなるのだろうが、具体的にどの技をどのタイミングで習得するのかは不明である。

 

 次にその技を教えてもらうことでそれを習得することもできる。

いわゆる技伝授といわれるものである。その技を使用できる身体的特徴さえ備えてさえいれば、教えてもらうことができる。体の使い方、力をこめる場所、エネルギーを開放するタイミングなどを教え、訓練することで、実践で使用することができるクオリティへと高める。ポケモントレーナーの中にはそれを専門として生計を立てている者もいる。

そしてさらに言うのならば、別に教えるのが人間である必要性はない。

他のポケモンからそのポケモンのもっている技を教えてもらう場合だ。

フライゴンの「シグナルビーム」がそれだ。

 

 そして最後の一つなのだが、生まれつきで覚えている場合だ。いわゆる卵技だ。

これは「特別な技をもつ野生のポケモン」についてのテレビ特集で、「まれに親ポケモンが覚えていた技が卵から孵化した子にも備わっていることがあることが最新の研究で明らかになった。」みたいな内容の放送を見ていただけなので詳しい話はよく分からないが、先の二つの方法に比べてはるかに技自体の取得に要する時間は少ないので、トレーナーの中ではそれなりの需要はありそうだ。

 

 

 このまま長々とポケモンの技について、考察するのもよいがそれよりも考えることがあるだろう。

 

 

 このナマズン戦で得られたことを考えるのが吉だろう。

まず何よりも、氷技に弱すぎる。

 

 これは4倍弱点をもつポケモンには付きまとう問題だろう。

すぐに思いつくのは、「かえんほうしゃ」といった特殊技の炎技の習得だろうが。

自分の知る限り、島のこんな安全な場所にそんな技を覚えているポケモンはいない。

まあ、ナマズン相手にこんな苦戦している自分たちが未知の場所を探検するのはかなり後の話だろう。

 

 一度、ここからほど近い森を色々と探検していたのだが、その奥地でとんでもなく強いポケモンがいてぼっこぼこにされた。

幸いにもそこまで非人道的なポケモンではなかったか、ひんしになったフライゴンには手を出されなかったので良かったが、手を出すような奴だったらゾッとする。

 

これが、自身のバトルスキルの低さを自覚するいい経験に結果的になったのかもしれないが。

 

 

 バトルを終えてしばらく経った後、フライゴンは飛び立ってしまった。

行き先については見当はつくが、邪魔するわけにもいかない。

 

まだやりたいことあったのだが、うーん

 

 

 

 

・・・あーー

そういや老人について考えていたんだったけ。

 

 

 

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 老人は基本的に一日中家の中にいる。

自分が家の中で見る老人は、ずっとテレビを見ているだけだ。

ただ、たまーに昼間に出かけていることもある。

食料などの生活品を購入するために数日に1回、街へと飛び立っている。

 

それ以外にも外出することもある。

ポケモンバトルだ

 

…自分と?

 

老人とポケモンバトルをしたことはない

いや、したいと思ったことすらない

 

 

 数回だけだが、老人以外の人間を見たことがある。

といっても、遠目から確認しただけなので詳しい状況はわからない。

ポケモンバトルをしていたのだ。老人と。

ぱっと見、親しい間柄なのかと思ったが、どうやら違うようだ。

そこに対話をしている様子はなく、その相手の顔つきはどれも険しいものだった。

 

 

ポケモンバトルと言ってよいものかもわからない。

強者と弱者のそれでよく見られる一方的な展開、、、ですらない。

 

老人の一匹のポケモンを相手に何もできず、次々とポケモンが倒されていく。

そして最後の6匹目を倒され,感傷に浸る隙も与えられず、老人が静かに、けれどもこちらにも聞こえるようなはっきりとした口調で、ただひと言。

 

 

「ここから出ていきなさい」

 

 

そう言われた相手は後ろも見ずに一目散に島の外へと駆けていった。

 

 その後、しばらくその場でじっとしていた老人だったが、上空からツバメポケモンのオオスバメがやってくると、島から出たことを報告でもされたのだろうか、戦闘を終えたばかりのポケモンに乗り込み、家の方へと飛び立った。

 

 老人のポケモン

 その眼光で相対する相手を威圧するその姿は、まさにドラゴンタイプの象徴ともいえる

 大きな二翼を携えた飛竜 「ボーマンダ」

 

 その体は通常の個体とは異なり緑色に輝いていた。 

 

 

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