甘やかし過ぎたサイレンススズカとトレーナーの日常   作:祭囃子.

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育ててみてサイレンススズカの可愛さに気付いたので書いてみました


甘やかしすぎてゲートから出てきたサイレンススズカ

私のトレーナーさんは他のトレーナーより感情表現が豊かでスキンシップが激しい人だった。毎日の練習が終わると今日もよく頑張ったなと私の頭をなで、タイムが更新されると自分のように喜び抱きしめてくれた。

 

初めの内は子ども扱いされていると感じて嫌だったし、辞めてもらうよう彼に言った。その時の彼の本当に申し訳なさそうな顔は今でも鮮明に覚えているし、こちらも少し申し訳なくなった。それでもこれでようやく対等に見てもらえると安心していた。

 

メイクデビュー戦の時にようやく彼は人一倍人の成功を喜んでくれる人なのだと理解できた。

 

「いけぇぇぇ!!スズカぁぁぁぁ!!!!」

 

「頑張れスズカぁぁぁぁ!!!!」

 

「やった!!おめでとうスズカぁぁぁ!!」

 

メイクデビュー戦は期待の新人でもいない限り大きい声援はそうそうないが、トレーナーさんは私1人のために声が枯れるまで応援してくれた。彼の元に行けばまるで自分の事のように感動してくしゃくしゃに泣いていた。枯れた声で私におめでとう、応援うるさかったらごめんなと言う彼がとても愛おしく、申し訳無く感じ何も言わず両腕を広げると、彼は強く抱きしめ、頭がくしゃくしゃになるまでなでてくれた。この後ウイニングライブあるのになんてその時は頭から出てこなかった。とても暖かく、心地よかった。...スタッフの方に呼ばれるまでずっと抱きしめてもらったほどに。

 

その日から私が走る目的が1つ増えた。彼のために走りたい。彼に応援して欲しい。彼に抱きしめて欲しい。…彼に甘えたい。そう思えば思うほど以前以上に練習に身が入り、着々と力を付けていった。

 

その内私は練習が終わり、彼が近づいてくると撫でられやすいように自然に耳が下がり、タイムが更新されれば両腕を広げて彼の元へ向かった。そんな私に彼は嫌な顔1つせず、いつもの笑顔で私を甘やかしてくれた。

 

そんな生活が続いたとある日、私は初の重賞である弥生賞に出走することになった。メイクデビュー戦とは全く違う景色、観客の数、ライバルの子達、普通なら緊張しないはずがない状況だったが私には心の支えがあった。パドックで各ウマ娘を冷静に分析しつつも最終的に出てくる結論は「スズカなら負けない。」彼の一言に私は大いに奮い立たされた。

 

 

 

ゲートに順に入りもうすぐレースが始まる。ふと左右を見れば緊張で顔が固まっている者、こわばっている者が多く見られた。けれど私は大丈夫。観客席の方に耳を傾ければ彼の声援が...聞こえない。不安になり観客席を見ると最前列で応援しているトレーナーさんが...いない。

 

「トレーナーさん...?」

 

どっと押し寄せる緊張と孤独感で脚がすくんだ。トレーナーさんはどうしたんだ。パドックではあんなに私を励ましてくれていたのに。トレーナーさんの身に何かあったのだろうか。トレーナーさんはどこに...トレーナーさん...トレーナーさん...

 

 

●●●

 

急に入った電話を終え、再び競馬場へ戻る。取材の依頼はありがたい限りだがスズカのレースが見れなくなったのはとても残念だ。今頃スズカはターフを疾走しているだろうになぁ。なんて思いながら観客席へと歩いていたが一向にターフを走る音が聞こえてこない。声援も聞こえず聞こえてくるのはざわついた声だった。もしかして何かトラブルがあったのだろうか。スズカの身に何かあったのかもしれない。頭の片隅に出てきた想像で血の気が引き、急いで向かうとそこには...初めて見るような姿をしたスズカがいた。

 

「トレーナーさぁん...どこですかぁ...」

 

耳の先までしょぼくれ今にも消えそうな声で自分を呼ぶサイレンススズカがいた。出走前でスズカ以外のウマ娘がゲートインしている事を見るに何かあったに違いない。おぼつかない足取りで周りをきょろきょろ見渡すスズカの元に走って向かった。

 

「スズカ!スズカ!」

 

「トレーナーさぁん...!」

 

外ラチを越えスズカの元へ駆け寄る。涙をぽろぽろ溢す彼女を優しく抱きしめる。珍しくスズカが締め付けるように強く力を込める。

 

「トレーナーさん...良かった...」

 

「大丈夫だ。俺はぴんぴんしてるぞスズカ」

 

「トレーナーさんに何かあったんじゃないかなって心配で心配で...」

 

「大好きな教え子のレースさ、何がなんでも俺は来るよ。それにさ」

 

1度抱きしめていた華奢な身体を少し離し、泣きはらしたスズカの目と目を合わせる。

 

「どんなとこにいたって俺はお前を全力で応援してるさ」

 

そうスズカに伝えるとスズカはいつものようにくすりと笑った。

 

「そうですよね。だってトレーナーさんですから。」

 

「おうとも勿論よ。」

 

「...ありがとうございます。私、走ってきます」

 

「おう。」

 

幾分か話してスズカはいつもの調子に戻った。それを見た俺は観客席に戻り周りの視線が痛い中また声が枯れるまで応援するのであった。

 

○○○

 

あの日の出来事は新聞で大々的に報道され一躍私は時の人...ウマ娘となった。全く望まない形だったが。

 

「本当にご迷惑をおかけしましたっ」

 

「いやいやこっちも悪かったよスズカ。何も言わずに居なくなったからなそりゃ心配するさ」

 

「いえでも...」

 

一夜たったトレーナー室でお互い謝り続けていた。もっとも悪いのは私なのにトレーナーさんも人が良いから自分を責め、私も当然折れる訳にもいかず終わりが見えなかった。

 

「...何かあったんじゃないかなって心配...か」

 

トレーナーさんが部屋の天井を見ながらポツリと呟いた。それを聞いた私は顔がかあっと赤くなる。

 

「忘れて下さい...」

 

「忘れろって言ってもいつものスズカからは想像も出来ないような表情だったからなぁ...今の表情も含めて。」

 

「もうっ!忘れて下さいっ」

 

笑みを含みながらからかうように話すトレーナーさんにムッときてぽかぽかとトレーナーさんの背中をぶつ。

 

「うははは。いやー今後スズカに憧れてここに入学してくる子達にこれ見せるのが楽しみだわー」

 

「それだけはやめてくださーい!!」

 

 

それから数ヶ月後、トレーナーさんにそそのかされたスペちゃんから「スズカさん弥生賞で凄い事したって聞きました!一体どんなことしたんですか!?」と聞かれて困るのはまた別のお話。

 

 

 

 




ウマ娘ssは今回初めて書きました祭囃子.です。アプリが話題になった頃からネイチャ、ライス辺りは既に推しでしたが、☆3で手に入ったので試しに育成してみたら思っていたよりマイペースで大好きになりました。

スズカの事が気になって調べていく内にスズカの弥生賞の話を見つけました。担当厩務員の方がスズカから離れて遠くにいたので寂しがってゲートから出てきちゃうスズカ、可愛いね。
見たこと無い方はこちら→https://youtu.be/7At7nWCVC8A

あまりにも可愛かったんでこれで1つ書いてみようと書いてみた次第です。一説によると皐月賞のために無理矢理出走させられて怒って出てきたとかもあるらしいですが。

何はともあれスズカは可愛いのでまた他の作品を書こうと思います。また次の作品でお会いしましょう。祭囃子.でした。感想お待ちしてます
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