あきら「これ何なんだろう?」
じんさん「妖怪のコアエマキだ。正しく使えばケガレイドとの戦いで頼もしい武器になる。」
さゆり「彰さん、ですよね。何でも手伝ってくださるお人好しな方だって」
あきら「僕はみんなの笑顔を見るのが大好きだから。」
さだひこ「邪魔するヤツは全員ぶっ殺す……!」
じんさん「コアエマキから、ケガレイドが生まれてしまった…!」
あきら「紗百合さんの安全を確保するべきだって、思ったんだ」
さなえ「貴方は、まさか……………仮面ライダー!!?」
『仮面…』
「らいだぁ?」
早苗の聞き慣れない単語を聞き返したジンムに変身中の彰とジン。二人(?)とも、「仮面ライダー」という言葉は初めて聞いた。当然、その意味など分かるはずもない。
しかし、興奮治まらぬ早苗は、ジンムに近づいて手を握ってきた。
「感ッ動しました…! クウガやアギトも好きでしたけど……まさか、幻想郷にもいたんですねッ!!」
「えっと………ありがとう、ございました???」
彼女の言っている事は、彰は半分も理解できていない。だが、いちおう感動している様子なので、わけもわからないまま、感謝を述べた。
しかしジンは、早苗の言っている事がどうにも気になる様子だった。
『あき…じゃない、ジンム。とりあえず、彼女の言う「仮面らいだぁ」というものが、私は気になるんだが………』
「わっ、ベルトが喋った!」
「『!!!』」
早苗がジンの声に反応したことに驚きを隠せない。
ジンの声は、彰以外の人間には聞こえない筈だから。
「あの…ジンさんの声をどうして………」
「え、普通に聞こえますよ? しかし……ベルトが喋るタイプの仮面ライダーもいるんですね!」
「えっと、その……」
「しっかし、見れば見る程素敵なデザインですね~~!誰がデザインしたんでしょうか?」
『そ、そうか? ジンムのデザインはそんなに気に入ってくれたか?』
「あの!!! そもそも『仮面らいだぁ』ってなんなんですか?」
「!」
ジンムの鎧のデザインを褒める早苗と、それに良い気分になったジンによって脱線しかけた話の流れだが、ジンムは思い切って勇気を振り絞り早苗に問う。
彰からすれば、変身後の姿は『戦士・ジンム』という認識だ。なぜ早苗が自身を『仮面ライダー』と呼ぶのか、『仮面ライダー』とは何か………それを知りたかった。
「し……知らないんですかッ!? その姿をしておいて……『仮面ライダー』を!!?」
「え…………えっと……はい…………?」
「な…なんてこと……完全に『仮面ライダー』だと思ったのに……!」
「え…えぇぇ………ジンさん、どうすればいいんだろ?」
『うーむ、普通に尋ねればいいと思ったんだがな…』
「仮面ライダーというのはですね―――」
ジンムが仮面ライダーを名乗っていないことを受けて明らかに凹む早苗に、彰はどうすればいいか悩む。ジンもこればかりはと言わんばかりに困り果ててしまう。
すると、早苗は顔をあげて、ジンムに「仮面ライダー」たるものが何かを説明しだした。
「仮面ライダーというのは……人々の自由と平和を守るヒーローの名前です!!
敵とおんなじ力を持ちながら、その力を誰かの為、人のために使う……それでいて、その正体を仮面で覆い、明かさない!それが仮面ライダーなんです!!」
「………ってことは、変身解かなくて正解だったのかな」
「当然です!! 仮面ライダーが正体を明かすのは物語終盤だって相場が決まってますから!」
「…ちょっと何言ってるか分からないけど、僕そろそろ失礼してもいいかな? ほら……騒ぎが落ち着いたから、人が戻ってきそうだし…」
熱の入り始めた早苗の弁にいささか引きながらジンムは問う。
よく考えれば、スネークケガレイドを倒し、紗百合の安全を確保し、彼女を狙った貞彦も慧音が捕えているのだ。もうじき、人々が戻ってくるかもしれない。そうなった時、ジンムがどんな目で見られるのか………慧音の言い方からして、あまり良い扱いは期待できない。故に彰は、できるだけ早く変身を解きたかった。
「……まぁ、仕方ないですね! では、明日会いに来ます!えっと…お名前は?」
「…僕の名前はジンム。ベルトはジンさんだ」
「わかりました。それではまた明日!」
ジンムの事情と名前を聞き出した早苗は、朗らかにそう言って空を飛んでいった。
人目がなくなったことで、ようやく彰は変身を解除できるのであった。
「む、早苗に会ったのか」
後日。
彰は慧音にこの事を伝えると、少し怪訝な顔をした。
『早苗殿は変身した彰を見るなり、彼を「仮面ライダー」と呼んだのだ』
「仮面らいだぁ?」
「やっぱり、先生も知らないですかね?」
「私にもさっぱりだ」
早苗が言っていた「仮面ライダー」……どういったものかは説明してくれたものの、やはり彰はそれを分かりきってはいない。
それならばと慧音にその事を尋ねてみたのだが、どうやら長きにわたって幻想郷の歴史の編纂に携わってきた慧音も知らないようだ。
「……と、なると早苗さんを待つしかないかなぁ。実は、明日会うことになってるんだ……ジンムの姿で」
「言っておくが、人里内でジンムの姿になったら霊夢に退治されるからな」
慧音の言う通り、早苗を待つにしても多田彰の姿では彼女に認識してもらえない。だからといって、ジンムの姿で人里にいたら混乱を招くのは確実だ。早苗より先に異変解決の専門家が来てしまう。
「しょうがない。里の外で待つことにするよ」
「危なくないのか?」
「大丈夫。変身後の僕を見て、人間だって思う人いなかったんでしょ?」
問題ないよ、と笑顔を返す彰に、慧音は一抹の不安を覚えた。
確かに最初ジンムの姿を見た時は、新手の妖怪か何かだと思ったものだ。その妖怪の正体が彰だと知った時は混乱でどうすることもできなかったし、彼が戦う事を決めた時は更に頭を悩ませたものだ。
また一個、頭痛の種が増えるのかと思いながらも、慧音は彰の晴れ晴れとした笑顔に頷く事しかできなかった。
翌日。
彰は、ジンムに変身した状態で人里から離れた平地に立っていた。慧音は、寺子屋で授業のためついていくことができない。
『早苗殿は果たして来るのだろうか…?』
「大丈夫。早苗さんは能力は怪しいけど根は真面目な人だから。……ほら」
早苗本人にとっては割と失礼な人物評を述べながら、ジンの問いに空を指さす。
そこからは、早苗がその身ひとつで空を飛び……ジンムを見つけてこちらに近づく様子が。
「ジンムさん!約束覚えててくれたんですね!でも、どうしてここに?」
「人里の近くにいたら、皆がビックリするから」
「流石です……自分の姿が人にどう映るか考えて、人を思いやる…それこそ仮面ライダーです!!」
『彼女の琴線がよく分からないな…』
ジンムの元に下りてきた早苗は、人里から離れた場所にいた理由を知って再び感極まるが、彰もジンもそこまで深く考えていなかった。人里内で変身するわけにはいかなかったのは事実だが。
自分の世界から戻ってきた早苗が、嬉しさを隠しきれない様子でジンムに話しかけた。
「さて、ここでは何ですし、守矢神社へ行く道がてらお話しましょう! バイク持ってますよね?」
「………ばいくって何?」
「え?」
聞き捨てならないことを聞いた。
そう言っているかのように、早苗の動きが止まった。
早苗の話に出てきた用語にジンムが質問しただけなのだが、早苗は一瞬で石化でもしたかのように固まった。
そして、すぐに石化が解けたかと思うと。
「ラ…ライダーなのにバイクを知らないッ!!?」
「えっ!?ちょっ!!!?」
形相を変えて、ジンムに掴みかかった。
その必死さたるや、16歳の少年・彰がタジタジしてしまう程である。
「それは致命的すぎますよ!!!?
いいですか!! ライダーはバイクに乗ってるから『ライダー』なんですよ!!
バイクに乗らないライダーなんて、ライダーじゃあありません!!!!」
『さ、早苗殿!!?』
どうやら、仮面ライダーとバイクにはただならぬ思い入れがあるようで、バイクを知らないジンムは仮面ライダーとして致命的だと考えていたようだ。
断っておくが、幻想郷生まれ幻想郷育ちの彰や現代から1300年間ベルトに封じこまれてて外の様子を知ることが出来なかったジンに罪はない。
また、バイクに乗らない仮面ライダーも平成後期から現れ始めているが、そんな事はこの場の誰も知る由もない。
「そ、その…ばいくってそんなに大切なものなの?」
「当たり前です。ライダーってバイクの乗り手的な意味がありますから、バイクに乗らないのはヒゲをそったマリオやゴリラのいないドンキーコングと同じくらいありえないです」
「例えがよく分からないけど……馬じゃ駄目なの?」
「馬……馬、ですかぁ……まぁ、幻想郷っぽいですけど……」
バイクというまだ見ぬ乗り物の代わりに馬はどうかという提案も、難色を示して乗り気ではない早苗。
うーんうーんと悩んでいたが、やがて何か思いついたようにポンと手を叩いた。
「あ! じゃあ、作ってもらいましょう!ジンムさんの為のバイクを!」
「『?』」
早苗は、徒歩でジンムの先を行く形でとある場所に案内した。
―――
人里から、妖怪の山方面に歩いた先にある、透き通るような清水が特徴の水辺だ。ここには蛍や鮎を中心とした、現代社会では見かけなくなった、美しい水がある事で暮らせる生物が暮らしている。
「あれ…早苗さん、ここって確か…」
「はい。河童のすみかですよ!」
ジンムにそう答えつつ、美麗な沢に彼を案内した早苗は、沢の近くに建っていた木造住宅の戸を叩いた。
「にとりさーん、いますか?」
「…え、にとりさんって…!」
『確か幻想郷縁起にも載っていた!
そのにとりという人物、もしかして…!』
「はいはーい、どうしたのさな……え……?」
早苗の呼びかけに答えて出てきたのは、青い髪をした、一人の少女だ。
ウェーブのかかった外ハネが特徴的で、ツーサイドアップの髪型にしており、頭には緑のキャスケットを被っている。水色の上着とポケットのついたスカートが、玄武の沢に合っていた。
そんな青髪少女だったが、家から扉を開けて出てきたところで、早苗とジンムの姿を見て動きを止めた。そして。
「だ、誰、そのメカメカしい格好のヤツ…!?」
ジンムの姿にぎょっとした顔つきでおずおず尋ねた。
河童にとっても、ジンムの格好はあまりに奇抜で先鋭的であるためだ。
「仮面ライダーです!!!」
「いや、何だよその『仮面らいだー』ってのは」
「何だか……僕のあだ名?二つ名?みたい、だよ?」
「なんであんた自身が疑問系なのさ」
早苗の堂々とした声に、困惑するにとり。
知人が奇妙奇天烈な妖怪っぽい見た目の人物を連れてきたら、こうなるのは当然だ。無論、にとりは「仮面ライダー」という単語など知らない。
扉に半分隠れながらマジマジとジンムを頭の先からつま先までおっかなびっくり観察するにとり。だが、彼女の視線がジンムの腰で止まった時、にとりの表情は一変した。
「なぁ…あんた、仮面らいだーだっけ?」
「ジンムです」
「そのベルト……誰が作ったんだい?」
「え、ベルト?」
ゆっくりと扉の陰から出てきて、吸い寄せられるようにジンムドライバーに近づいていく。
「えっと、このベルト……ジンムドライバーはジンさんが1300年前に作ったんだって」
『かつて人間達を襲ったケガレイドを倒すために作り上げた、私の技術の集大成だ』
「うわっ、喋った!? え、ホントに会話できるの!?そういう機能じゃなくて!?」
『初めましてだな、河城にとり殿。私がこのベルトの開発者、ジンだ』
「うわぁーーーーすごい〜!ホントに会話するのか!?
ねぇねぇ、コレちょっと詳しく調べてもイイ!!?」
そして、ジンムドライバーに込められた、ジンの技術力でも感じ取ったのか、目を輝かせてベルトを触りだしたのだ。河童には独自の技術力を持ち、機械いじりが好きなのだという早苗の談は確かなようである……が。
「えっと、これどうやって外すのかな?」
なんと……ジンムの腰に巻き付いているベルトをどうにかして外そうとしているではないか!
「え、ちょっ!? ちょっと待って!」
『にとり殿!いまベルトを外すのは……!』
「だいじょ〜ぶ、河童が機械を雑に扱ったりしないよ」
にとりが心配無用とばかりにそう言うが、二人が懸念したのはそういう事ではない。
手慣れた様子でベルト―――ジンムドライバーを外してしまったため、ジンムは変身が解除されて、人間・多田彰の姿があらわになった。
「あっ……」
「えっ……!?」
「あああああああああああああああ!!!」
思わず何も言えなくなった彰、呆気に取られるにとり、絶叫する早苗。
「え………あ、彰!?」
「仮面ライダーの正体が見えてしまったァァァァァァァ!!!!」
ジンムのメカメカしい妖怪の姿からごく普通の人間の姿に戻った様子を見たにとりは、その人間に見覚えがあったようで、声を張り上げてしまう。目を覆う早苗は早苗で、予期せぬアクシデントで変身解除をしてしまった様子にダメージを受けていた。
「あー………にとりさん、実はこれには訳があってね…」
彰とにとりは、面識があった。
元々、人間と河童は距離が近い関係だ。河童は人間に技術を提供し、人間は河童に胡瓜を送る。ギブアンドテイクの関係であるのだ。
人間が河童の住む玄武の沢に胡瓜を届けに行く時も、極まれであるが妖怪に襲われる危険がつきまとう。その時に胡瓜の届け役を、この超がつくお人好しの彰が買って出たのだ。
そうして玄武の沢に行った時ににとりと出会ってからというもの、面識が出来たという訳である。
『……仕方ない。彼女たちにもある程度事情を話して黙っていて貰おう』
正体がバレては仕方がない。
ジンに頷いた彰はベルトを手にした経緯とケガレイドという、最近人里に現れた謎の生命体について、早苗とにとりに話すことにした。もちろん、正体は誰にも話さないようにお願いしながらだ。
「…なるほどね。そういうことなら、ベルトを見せてくれるなら黙っていてあげるよ。いつもキュウリを送ってもらってる仲だしね」
「うわぁ~…! 特撮だ…まんま特撮の設定じゃあないですか!」
『早苗殿、これはれっきとした現実だ』
「分かっていますよ!でも、燃えるのには間違いありません!正体を喋らなければいいんですよね?大丈夫です!!」
にとりは、ジンムドライバーを見せることを条件に黙っておくと言い。
早苗は、興奮やまぬ様子で秘密を守ってもらう事を快諾した。やや不安が残るテンションと言い方であるが、彰は気に留めなかった。
「ジンさん、良いかな? にとりさんにベルト見せても」
『構わない。むしろ、私の技術の理解者が増えるのは良い事だ』
ジンもまた、にとりにベルトを見せる程度で秘密を守ってくれるのなら、安いものだと考えていた。
「早苗さん…なんか、すみません……」
「いいんですよ。気にしていません」
「で、でも…なにか、お詫びを…」
「あ、どうしてもっていうなら彰さん、守矢に改宗して―――」
「ごめんなさい。ウチは先祖代々博麗神社の信者なので」
「もう。博麗神社の何が良いんですか…」
にとりにベルトを預け、技術者同士の対談から席を外すことにした彰は、川辺に座っている早苗に話しかけた。
にとりのうっかりでジンムの正体を知ってしまった早苗は、ジンムとケガレイドの事情を聞いたためか、もう正体を知ってしまったことをもう気にしていない様子だった。
彰がお詫びをしたいと言ったことを逆手にとって自身の神社に改宗を迫る、抜け目ない早苗だったが、さしもの彰もそれは断った。速攻で勧誘に失敗してややすね気味になる早苗。
「あの、早苗さん」
「なんですか?」
「どうして早苗さんは『仮面ライダー』に詳しいんですか?」
彰は、気になっていた事を早苗に尋ねた。
自身の歴史の先生でもあった慧音が知らない単語を、初対面でさらっとジンムに向かって興奮を隠さず言った早苗は、どこでその言葉を知ったんだろうか、と。
早苗は、川の流れに目を落とし、そして言葉を発した。
「私…実は外の世界から来たって知っていますか?」
「外?」
幻想郷は、日本の大陸上にある土地を、2種類の結界で覆って作り出された箱庭のような世界だ。
そんな幻想郷において「外の世界」とは、幻想と現実を隔てる結界の「外側」……つまり、我々現代人が住む日本という意味に他ならない。
彰は、いちおう幻想郷の構造について………幻想郷と外の世界の概念は、慧音を中心とした大人からしっかり教わっていた。
「『仮面ライダー』っていうのは、その外の世界でやっていたテレビ番組なんです」
「れてび……ってあぁ、アレか。にとりさん達が前に作ってた」
「えぇ。それで放送される、お芝居みたいなものなんですけど……リアリティと臨場感があって、ここに来る前はよく見ていました」
「どんな話があったの?」
「そうですね………」
早苗は、彰に促されるままに、自身がテレビで見た『仮面ライダー』の物語を語ってみせた。
例えば、古代遺跡から蘇った戦闘民族の殺戮を止めるためにたった一人で戦った戦士の話。
例えば、神から遣わされた天使から超能力に目覚めた人々を守った戦士たちの話。
例えば、超高速で人を殺害する、異界から飛来した蟲を倒すために戦い続けた戦士の話。
例えば、未来からやってきた人類から現在を守るために立ち上がった、電車の戦士の話。
「………すごい…」
彰は、それらの話のスケールが大きすぎて、本当にテレビで放送されていたものなのかという感想を抱いた。彰の知る白黒のテレビに移すにはあまりにドラマチックであるからだ。本にして出せば、それなりに売れるんじゃないかと思える程だ。
そして、その物語に登場した人々のすべてが、自分なんかより余程立派なのではないかとも、思っていた。
「なるほど……それが、早苗さんの言う『仮面ライダー』なんですね……」
「はい。仮面ライダーは人々の自由の為に戦った戦士なんですよ」
仮面ライダーについて語って満足げな早苗の横顔を、彰は黙って眺めていた。
そこに、にとりがジンムドライバーを持ってやってきた。
「いやぁ~、お待たせ!なかなか良い話になったよ!」
『こちらこそお礼を言いたい。君のお陰で、私の技術が孤立することはなくなりそうだ』
「とんでもない!こちらこそ、新しい技術を見せてもらって創作意欲がマシマシだよ!!
河童の技術力がこれで上がるかもしれない!!」
にとりはどうやら、ジンがもたらしたジンムドライバーの技術がお気に召したようで、ドライバーを彰に返すと、そのまま家に引き返して戸を閉めてしまった。そして、中から甲高い機械音が鳴りだした。どうやら、ジンとの話で何か閃いたようだ。
「にとりさん、家にこもっちゃったぞ」
『バイクを作るそうだ。幻想郷に流れ着いたものがあったらしい』
「おぉ、いいですね! これで、ジンムがちゃんと仮面ライダーに……」
「大変だーー!」
「「!!?」」
にとりが新たな道具を作ってくれることになってひと安心したところに、男性の悲鳴が響いた。
その直後に走ってきた男性は、頭に皿を乗せている河童だった。息を切らしながら、男河童は彰たちがいる方向へ逃げ込んできた。
「ど、どうしたんですか!?」
「あんたは、守矢の巫女!?…と人間か。あんたら二人とも、逃げた方がいい。バケモノがでたんだ!!」
「バケモノ……?」
男河童に何が起こったのかを詳しく聞こうとするが、それより先に男河童がやってきた方向から、すさまじい勢いで鉄砲水が飛んできた!
「うわぁっ!!?」
「な、なんです!?」
彰と早苗は、鉄砲水が飛んできた方向を見て……異常な水流を放った主を目の当たりにした。
蛙だ。二足歩行の蛙の異形が、ゲゴゲゴと鳴きながら逃げ遅れたであろう河童たちを両手で抱え、愉快そうに嗤っているのだ!
「あ…あいつだ。あいつが皆を襲ったんだ!!」
「か、蛙の化け物!?」
『ケガレイドか!!一体どうしてここに!?』
「先に逃げてください! 私がなんとかします!!」
「お、おう!」
早苗に避難を促され、男河童は我先にと逃げ出していく。
現れた異形……フロッグケガレイドが吠えると、早苗は大幣を取り出し、彰はジンムドライバーを腰に巻き付けコアエマキを起動した。
【ジンム!】
「変身!」
【浄化! 昇華!! ジンム召喚!!!】
【まつろえど
彰が変身を完了し、いざ戦おうとした……その時。
「かっ……カッコイイ~~~~~~!!!」
なんと、早苗が目を光り輝かせてジンムに飛びついてきたのだ!
あまりに予想外の行動に、ジンムも思わず面食らう。
「な…なんですか今の変身!! ロマンの塊じゃないですか!!
あの、彰さん! もう一回今の見せてもらってもいいですか!?」
「ちょっ……何言ってるんですか! そんな場合じゃ―――早苗さん、前!!!」
「え?」
慌てふためくジンムだったが、フロッグケガレイドが、口に水を集めて今にもそれを放ちそうな構えでいるのを見て、すぐさま早苗を現実に呼び戻す。
早苗も流石にジンムに指摘された状況を見て、すぐさま対抗するため攻撃を放った。
「やっば……開海『海が割れる日』!!」
それは、彼女自身が持つ「奇跡を起こす程度の能力」にちなんだスペルカード。
遥か昔、預言者が人々を導くために海を割ったことを元に名付けられた技。
フロッグケガレイドから放たれた鉄砲水が割れ、早苗とジンムの脇を通っていく。反撃といわんばかりに、水の弾幕がフロッグケガレイドに集中した。
「早苗さん!しっかりしてよ!」
『今のはかなり危なかった。集中したまえ!!』
「あはは〜、ごめんなさい。
仮面ライダーと共闘してると思うと、つい…」
早苗は軽く笑う。だが、鉄砲水の威力は笑えるものではなかったし、戦闘中に敵前でジンムの変身に気を取られるなど油断のし過ぎだ。それが、例えジンムの変身が早苗の琴線に触れたとしても、である。
ジンムは、早苗の両肩を掴み、目をしっかり見つめながら言った。
「早苗さん」
「は、はいっ?」
「僕は、仮面ライダーじゃありません」
「え……一体、何を」
「早苗さんが教えてくれた仮面ライダー、色々いましたけど……僕は、そんな人達の足元にも及びません」
自分は、早苗が憧れるようなヒーローなんかじゃないと。
彼女が語ってくれた『仮面ライダー』は、彰が聞く限り大きなことを成し遂げていた。ある戦士は古代の戦闘民族を全員倒し。ある戦士は神をも破り。ある戦士は鏡の世界の戦いを終結させた。
どれもこれも、『世界を救った』に等しい偉業だ。自分には到底真似できない。でも、早苗はそんな存在と自分をおんなじように見ている気がしたのだ。
「僕はただ……目の前の命を守るために戦ってるだけなんですから」
彰は、自分はそんな大層な存在じゃないと断言した。
何故なら、ただ目の前の命が消えかかっているのを、見過ごせないだけだからと。
そして、フロッグケガレイドに向かっていき、飛びかかりながら右ストレートを繰り出した。それに対してフロッグケガレイドは、持っていた河童たちを投げ捨てて、ジンムの拳を掌でガードした。
「早苗さん!!今の内に、河童のみんなの救助を!!!」
「…あ、はい!!! あき…ジンムさんも、どうかご無事で!」
ジンムの指示で我に返った早苗は、投げ捨てられた河童を背負い、男河童が逃げた方へ飛んでいった。
早苗の後ろ姿を確認し、再びフロッグケガレイドに殴りかかる。
「―――なに!?」
…が、フロッグケガレイドは、水に潜った事でジンムの拳をかわした。
それと同時に、ジンムの後ろに回り込んだフロッグケガレイドが、水から飛び出すと同時にジンムに飛び蹴りを加えた!!
「ぐあぁっ!?」
濡れた足場で思いきり蹴とばされて、姿勢を崩されるジンム。
先ほどの鉄砲水を防御していても、足場が濡れていて思うように踏ん張ることができなかったのだ。
「ゲコーーーーー!!」
「うっ! ぐっ! うあああっ!!」
フロッグケガレイドはその間も、ジンムへの攻撃をやめない。
水に潜って、死角から飛び掛かって攻撃、そして再び水中へ避難。それを繰り返すケガレイドに、ジンムはまったく対応できない。
【真価解放! ジンム!】
「でやああああああっ!」
このままやられてはいられない、とジンムも真価解放の手刀を放つ。が……
「ゲコォ!!」
「ぐわあああああああああああああああああああああ!!!?」
それもあっさりかわされ、懐に体当たりを食らってしまった。
ジンムの身体が転がっていく。ダメージが大きすぎたのか、すぐに立ち上がる事ができない。
『彰!大丈夫か!?』
「うぅ……まだ…まだ!」
今まで人里の一般人だった彰にとっては経験したことのない激痛が襲う。それは、紛れもない戦いの傷だ。彰は、そんな痛みを受けてもなお、弱音を押し込めて、立ち上がろうとする。
だが、フロッグケガレイドがジンムが完全に立ち上がるのを待ってくれるわけがない。未だにあがこうとするジンムにトドメを刺すべく、ズンズンと近づいていく―――そこで。
ドッガァァァン!!!
「ゲゴォォ!!?」
突然、フロッグケガレイドが爆発した。
ジンムに心当たりのないそれに何事かと顔を上げると。
「家の前でドンパチうるさいと思ってみれば……お前がケガレイドか!よくも彰をイジメてくれたね!」
「にとりさん……!?」
にとりだった。さっき家に籠ったはずなのだが、戦いを間近で見ていたらしく、戦いに割り込んできたのだ。さっきの爆発もおそらくケガレイドに爆弾を投げたとかだろうか。
「何やってるんですか!?」
「見て分からないのかい?助太刀だよ」
「どうして……」
「彰よ。人間と河童は古来からの盟友だから教えてやるよ。
河童にはなぁ…傷ついた友達を見捨てるヤツはいないんだ!!」
ケガレイドはジンムにしか倒せない。
でも、だからどうした。それが友達を助けない理由になるわけがない。
そう言っているかのように、にとりは弾幕を展開した。それが、フロッグケガレイドの動きを縛る。
ケガレイドにダメージは入っても撃破はできない。しかし、にとりの心意気の篭った弾幕は、フロッグケガレイドの注意を確かに逸らした。
『彰! 新たなコアエマキが生まれるぞ!』
「え?……あっ!」
ようやく立ち上がったジンムの目の前に、新しいコアエマキが降ってきた。
掴み取ったそれは、水色に緑の縁取りがされているコアエマキだった。この色合いを、ついさっき見た気がするが……ジンムは、迷わずにスイッチを押した。
【カッパ!】
新たなコアエマキは、たった今ジンムの為に身体を張って戦いに参加してくれた少女・にとりの種族を高らかに宣言して起動した。
空のスロットに生まれたばかりのコアエマキを差し込んで、モードチェンジをするべくレバーを引いた。
【カッパ召喚!!】
すると、周囲に鮮やかな水色と緑色のアーマーが現れ、ジンムに装着される。更に、頭部には河童の皿を思わせるような、純白の円盤が装着された。
変身が終わった後のジンムの姿は、より鋭角的で水の抵抗が少ないようなフォルムとなっていた。
【
俳句が流れた時に立っていたジンムは、「仮面ライダー
「ハァァァッ!!」
「ゲゴォォ!!?」
今の状況のような、水場での戦闘が得意である点だ。
モードチェンジしたジンムは、にとりの弾幕を楽々かわしながら、その中心にいたフロッグケガレイドを殴り飛ばした。
そうすることで、フロッグケガレイドが派手に吹き飛んで、その先で弾幕の餌食となる!
「ゲゴォ!」
フロッグケガレイドはあまりの状況の変化についていけず、思わず逃げ出そうとする。
水中に飛び込めば、あのジンムも追いつけまい、と。だが、今のジンムはフロッグケガレイドの知るジンムではない。
「逃がすかぁぁ!!」
「ゴワァァ!!?」
なんと、ジンムも水中に潜って、フロッグケガレイドに猛追してきたのだ!
仰天したフロッグケガレイドは、足を掴まれ、ジンムに水中で思いきりハンマー投げの要領でぶん回され、とてつもない速度で水の外に投げ出された。
「彰、それは…河童か!?」
「そう…みたいだよ?」
『彰、にとり殿!これならあのケガレイドとも戦えるはずだ!
とびっきり強力な攻撃を頼む!!』
「あぁ、分かった!思い切って切り札切っちゃうよ~!」
水中での圧倒ぶりを発揮したジンムは地上に上がって、地面に叩きつけられたフロッグケガレイドのトドメを始める。
「水符『河童の幻想大瀑布』!!」
【奥義発動! カッパ!】
にとりが一枚のスペルカードを取り出して、スペルを詠唱する。ジンムが空高く飛び上がり、錐揉み回転をする。
一面に現れたのは、壮大にして豪快な水流。それは巨大な崖から水が一斉に滝壺へなだれ落ちてくる、かのナイアガラの滝を想起させた。水を模した弾幕は、フロッグケガレイドの動きを止めるには十分である。
そして、ジンムの突き出した足に、水が自ずと集まってきて、ドリルの形を成した。そしてそれは、本物のドリルのように高速回転し始める。そのまま、ジンムはキックを放った。
【
「はああああああああああっ、でりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ゲガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」
水のドリルを纏った飛び蹴りは、フロッグケガレイドが苦し紛れに放った鉄砲水を鎧袖一触で撃ち破り、フロッグケガレイドのど真ん中に直撃した。
やがて、水のドリルがフロッグケガレイドを貫通すると、風穴が空いたフロッグケガレイドを中心に大爆発。そして、玄武の沢は、もとの静寂を取り戻した。
「ジンムさん!避難終わりました!私も助太刀に―――って、え?え?なにこれ?まさか、もう終わっちゃったの!? っていうかその恰好なに!!?新しいフォームですか!?」
ちょうど爆風が治まったタイミングで早苗がやってきて、自分の間の悪さを嘆いたりジンムの変化に目聡く気付くのはご愛嬌となった。
「うーん……やっぱり返すよ、コレ」
「え、いいんですか!?」
フロッグケガレイドとの戦いの後日。玄武の沢にて、にとりがカッパのコアエマキを彰に渡す姿があった。
ジンは反対したが、彰としては助けてくれたお礼として、にとりにカッパのコアエマキを渡すことにした。コアエマキの危険性は理解しているが、自身の事情を説明したにとりなら誤った使い道はしないだろうと考えたのだが、まさかの返答に彰も驚く。
「彰じゃないと使えないんだろ?じゃあ、私が持ってても意味ないし、危なっかしいからね」
『だから言っただろう。コアエマキを渡すのはやめておこうと』
「でも、ジンム関係の発明は諦めてないからね! 手始めにコレだ!」
「「おぉぉぉぉ~~~~~!!」」
にとりが持ってきた発明品に、彰とついでに来ていた早苗が感心の息を漏らして歓喜した。
それは、バイクであった。銀色の金属光沢と重厚な存在感を放つ、トライアルバイクだ。
「こ、これが……!」
「そうです!これがバイクです!!」
生まれて初めて見たバイクのフォルムに興奮を隠せない彰と、仮面ライダーゆかりの乗り物が出てきてテンションが上がる早苗。
そんな二人を相手ににとりは「試乗してみるかい?」と誘ってみたが……
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ………」
「「…………」」
「ごめん……ちょっと、練習させて…」
「うそでしょ……仮面ライダーのバイク乗る練習とか見たくなかった……」
「なに言ってんのさ早苗。初めての乗り物なんだ、上手く乗れるワケないじゃないか。繰り返し練習だよ」
早苗にとっては、夢が崩れていく瞬間を目撃することになってしまった。
常識ではあるが、最初から自転車に乗れる人間はいない。何度も転んだり支えてもらったりして初めて乗れるようになるものだ。バイクでも同じ事である。
一方にとりはというと、デコボコな道しかない幻想郷で拙いながらも揺れまくるバイクに乗る彰を見て、「乗り心地が課題だな」と今後の調整のビジョンを見ていたりする。
はい、という訳で第5話でした。
この話は、ぶっちゃけると「今までの仮面ライダー、ライダーじゃなかった!ヤベェ!」という思いから書きました。
ジンムっぽいバイスタンプとか考えてたりジンムと早苗をどうやって再会させるか考えてるうちに11月になってた…
【Come on! サ・サ・サ・サーベル!】
【バディアップ!】
【飛び跳ねる!爆ぜる!大地を駆ける!サーベルタイガー!踏み外さぬは牙の道!】
仮面ライダー仁夢のヒロインを予想してみよう!
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若き彰の恩師 上白沢慧音
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仮面ライダーを知る巫女 東風谷早苗
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稗田家に仕える女給 紗百合
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永遠に消えない不死鳥 藤原妹紅
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最速果断の天狗記者 射命丸文
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楽園の素敵な巫女 博麗霊夢
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その他