仮面ライダー仁夢~東方輝炎章~   作:伝説の超三毛猫

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―――是迄(これまで)()仮面騎手仁夢(かめんライダージンム)は!

れいむ「『ケガレイドとジンム』……」
らんしゃま「異変は我々だけで対処しなければならない」
れいむ「なんか、引っかかるのよねぇ…」
じんさん「ケガレイドに対抗するために、当時の私は手段を選ばなかった」
あきら「ドライバーを守ってくれたことだけは間違いじゃない。―――これを守ってくれてありがとう、ジンさん」
しょう「私、元々虎の妖怪だったんです」
あきら「仲間や家族が傷つくのって、すっごく辛いですよね。その人のこと、大切に思っている証拠だと思います」
じんさん「白蓮殿に変身を見られるぞ」
あきら「命蓮寺の皆と小傘さんの命が優先だ!!」
じんさん「そう言うと思ったぞ。出陣だ、彰!」


第8頁:霊夢と夜雀の捕物帳

 夜の帳が落ちた里周辺にて。

 静かな空気を壊す二人の声があった。

 

「コラぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!待ぁちなさい!」

 

「ぎゃあぁぁぁ!来るなぁぁぁ!!」

 

 一人は、若い人間の男の声。もう一人は、鈴のような美声を荒げた少女のものだった。十代前半位の見た目で、蘇芳色(すおういろ)の和服に三河屋エプロン、手ぬぐい頭巾にたすきがけを身に着けている。

 少女の名はミスティア・ローレライ。夜雀という妖怪であり、普段はチルノやルーミア達と遊んだり、授業を受けたりしている。が、夜はヤツメウナギの屋台を開いていて、人間・妖怪問わずに営業をしている。

 ミスティアは屋台を開くうえでいくつかルールを設けており、その一つが「ツケの禁止」というものだ。いつの時代も金のやり取りはなあなあにすると危険だ。金の切れ目が縁の切れ目という諺もある。

 

「ツケは許さないって言ってるでしょ!!」

 

「見逃してくれェェェェ!!」

 

 つまり、今のこの状況は、人間の男が飲み代をツケて逃げようとしていたのを、ミスティアが追っかけて折檻しようとしている、ということだ。決して妖怪が人間を襲う光景ではない。

 当たり前だが、金払いを誤魔化そうとした方が悪い。この食い逃げ犯が、現在ミスティアに追われているのは、ただの自業自得だった。

 ミスティアはあまり強い妖怪ではないとはいえ、人を狂わせる能力を持つ。この男がミスティアに捕まるのは時間の問題だった。

 ………そのはずだった。

 

「くそっ、こうなったら……」

 

イノシシ!

 

「!!?」

 

 なんと、追い詰められた男が取り出したのはコアエマキだったのだ!

 それを少し躊躇しながらも腕に突き刺した男は、皮膚を黒く染め、真っ白な血管を走らせておぞましいマカイライになる。

 

「ウォォオォォォ!!」

 

 更に、彼の背中を突き破って出てきたのは上半身がイノシシの頭と一体化しているケガレイド……名付けてボアケガレイドである。

 

「ええええっ!!?」

 

「ブオオオオオオオオオオオ!」

 

「ソコヲドケェェェェェ!!」

 

「いやあああ!?」

 

 これには、ミスティアも驚愕せざるを得ない。

 今まで追っていたただの人間が気持ち悪い人型と猪の化け物の二体に化けるなど、誰が予想できようか。マカイライとボアケガレイドの気持ち悪さとおぞましさに、思わず悲鳴をあげる。

 

「ブオオオオオオオオオオオ!!」

 

「あっぐ…!?」

 

 ボアケガレイドが、突進してミスティアを殴り飛ばした。

 妖怪の反射神経をもってしてもまともに反応できなかった彼女は、ゴム毬のように跳ね、転がっていく。並みの人間では絶対に見れない光景に、マカイライは完全に気を良くした。

 攻守逆転。逃げるものと追うものが逆転した。

 

 ミスティアは、初めての事態に恐怖した。

 なぜ、さっきまで人間だった男が妖怪になった?なぜ、彼から猪のような化け物が生まれた?それに撥ねられた自分の身体が、こんなにも痛む理由は?

 あまりの痛みに逃げるどころか、立ち上がることもできない。このままでは、あの化け物――マカイライとボアケガレイド――に捕まってしまう……。

 下卑た笑みを浮かべながら、自身に近づいてくるおぞましい生き物。そいつが再び、ミスティアの身に暴力を振るわんとして、目をぎゅっと閉じた―――その時だ。

 

 ブゥゥゥン!…と、静けさを破るエンジン音が鳴り響く。

 

「「!!?」」

 

 真っ白き人型が、バイクに乗ってケガレイドとマカイライに向かって猛スピードで突貫してくるではないか!

 

「「ギャアァァァァァァァァァ!!!!?」」

 

 ミスティアに仕返しをする事しか考えていなかったマカイライとボアケガレイドは、初めて見る先鋭的なバイクのスピードにまるで対応できず、まとめて撥ね飛ばされた。

 ケガレイドらを撥ねたバイクは、銀色と青が輝き、装甲とタイヤのスパイクが目立つものだった。河童特製のバイク……その名を、フュートチェイサー。そこに乗るのは、白のアーマーと仮面に真っ赤な瞳、そして何より美豆良(みずら)をモチーフにしている束ねた髪のようなサイドフェイスアーマーが特徴的な異形。

 名付けて……仮面ライダー仁夢(ジンム)。ケガレイドから、罪なき者たちを守る戦士である。

 

また、人間からケガレイドが生まれたか…

 

「一刻も早く倒すよ!」

 

 ジンムは、フュートチェイサーから備え付けの警棒を引き抜き、真価開放でジンムセイバーにする。

 

「せいやぁ!」

 

「ブオオオオオオオ!!」

 

「ナンダ…オマエハァァァ!!」

 

 そのまま斬りかかると、ボアケガレイドとマカイライも突撃してジンムセイバーを受け止めた。

 押し負けまいとジンムは力を込めてジンムセイバーを振るい、ボアケガレイドとマカイライを分断する。そして、マカイライを拳で攻撃して、ボアケガレイドにジンムセイバーの斬撃を放つ。斬撃はジンムセイバーに纏うだけではなく、ジンムセイバーから三日月のような衝撃波となって攻撃することもできる。距離があけば、ボアケガレイドを飛ぶ斬撃が襲う。

 

「ヤメロォォォォォォォ!!」

 

「くっ、ケガレイドなんかに……身を任せたら、ダメだ!」

 

 ボアケガレイドへの攻撃をやめさせようと飛び掛かってジンムにしがみつくマカイライに、ジンムは肘鉄で拘束を振りほどく。しかし、ジンムのマカイライへの攻撃は明らかに手加減がされていた。

 無理もない。ジンムの変身者・彰は元々性根の優しい少年だ。マカイライが元々は人間だったと分かっている為、自然とマカイライへの攻撃にセーブをかけてしまう。

 

「ソノ程度カァァァァァァ!!」

 

「うわっ!!?」

 

「今ダ!ヤレェ!!」

 

「ブオオオオオオ!!!」

 

危ないっ!

 

 その為、マカイライに反撃をする隙を与えてしまった。

 ジンムは姿勢を崩され、そこにボアケガレイドの猪突猛進が迫る。

 しかし、彰も何だかんだでケガレイドと戦ってきた。このままやられっぱなしではない。

 

「うおっと…!」

 

 即座に受け身をとってボアケガレイドの突撃を避けるジンム。

 片手に持っているのはコアエマキ。モードチェンジを利用して、ボアケガレイドを倒せないかと考えていた。

 そして、すぐに二つ目のコアエマキをドライバーに挿しこんで、レバーを引く。

 

ワーハクタク召喚!

 

望月(もちづき)の ()()をはらう 御牛(みうし)かな!】

 

 ジンムはワーハクタクモードの鎧に身を包み、戦闘態勢を整える。

 そして放った正拳突きを、再び突進してくるボアケガレイドの鼻先に向けて放った。

 お互いにぶつかって拮抗する技。しかし。

 

 この拮抗を解消したのは―――何処からともなく飛んできた、お札と爆発であった。

 

 

「うわああッ!?」

 

「ギャアアア!?」

 

「ブオオオオ!?」

 

 ジンムもマカイライもボアケガレイドも、衝撃と爆風を受けて三者三葉に吹き飛んでいく。

 爆発で土煙が上がる中、ふわりと空から戦場に降り立つ姿があった。

 

「……はぁ。まったく、こんな真夜中にどんちゃん騒ぎとか勘弁してくれる?」

 

 赤いリボンが結ばれた髪を靡かせ、巫女服に身をまとう少女。

 博麗霊夢が……その手に大幣(おおぬさ)を携えて、夜の戦場に現れた。

 

「霊夢さん……!」

 

「博麗ノ巫女ォ……!!」

 

「…それで? 誰からぶちのめせばいいのかしら?」

 

 霊夢はここに集まっていたジンムとマカイライ、ボアケガレイド、そしてミスティアを見て、どういう状況なのかしらと純粋に疑問を覚えた。だが、そんなのは全員ブッ飛ばしてからでも話は聞けるかと完結させる。

 博麗の巫女は、異変対応での即断ぷりは目を見張るものがあるが、その方法がやや……否、かなり暴力的になる傾向があった。

 

「まぁそこの異形三体は確定として……」

 

「三体………って僕も!!?」

 

「当たり前でしょ。ジンムだか何だか知らないけど、巫女の仕事を取らないでよね」

 

 霊夢は、ジンムのことを文の新聞で知った。

 人を襲って食らうケガレイドとそれと戦い倒すジンム……これまでとは違うと博麗の勘が告げていたが、実態はどんなものかと調べようとしたのだ。その矢先にジンムとケガレイドらの戦闘場面に出くわすのだから、霊夢の運と勘は今日も冴えている。

 

「いちおう……猪みたいなのと気持ち悪い人に聞くけど、とっとと降伏してくんない? 今なら軽いお仕置きだけで許してやるわ」

 

「ブオオオオ!」

 

「フザケルナ! 俺ハ…強クナッタンダ!コンナ所デ……諦メテタマルカァァァ!!」

 

「あっそ」

 

 降伏の意志なし。しかも片方は意思疎通さえ不可能。

 そう判断するやいなや、霊夢の行動は早かった。

 

「霊符『夢想封印』」

 

「「「!!?」」」

 

 スペルカードのよる、先制攻撃だ。

 五色の霊力の玉が、ジンムとマカイライ、ボアケガレイドに追尾して襲い掛かってくるのだ。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 

「ブオオオオオオオオオオオ大オオオオオ!!?」

 

 元々は一般人だったのであろうマカイライには、ひとたまりもない。避けようとするが追尾する玉からは逃げられず、夢想封印に数発直撃して吹き飛ばされる。誕生したばっかりのボアケガレイドも一緒だ。

 

わ、我々はどうする!?

 

「逃げても追いつかれるなら……」

 

奥義発動! ジンム!

 

 対してジンムは逃げることなく奥義発動のボタンを押し、ジンムセイバーを構えて、自身に向かってくる霊玉に立ち向かう。

 

天地開闢!ファンタジック・ストラッシュ!!

 

「ハァァァァァァァッ!!」

 

 ジンムセイバーを力の限り振り抜く一閃で、夢想封印を斬り払う。

 真っ二つになった夢想封印の弾幕は、勢いを落としてジンムの脇へ飛んでいき着弾した。

 しかし……夢想封印を放ってきた方向に…霊夢が、いない。

 

「な…」

 

「咄嗟の判断は良いみたいね」

 

「!!?」

 

 声は、ジンムのほぼ真後ろから聞こえた。

 

「いつの間に―――」

 

「せい!」

 

「うわああああ!!?」

 

 振り向くと同時に、霊夢の霊力の込められた蹴りがジンムの脇腹に命中し、吹き飛ばされる。

 ジンムで強化しているはずなのに、彰の身体には、霊夢のキックのダメージが響いてきたのである。それはひとえに……霊夢の圧倒的な強さを意味していた。

 

「いったい、何が……」

 

なんてメチャクチャな強さなんだ!

 

 彰もジンも、今の一瞬のやりとりで、霊夢が今までのケガレイドと段違いに強い事を察した。

 それもその筈。博麗霊夢は、今まで数多の異変解決に関わって、強大な妖怪の数々と戦ってきたのだ。

 日光を遮る赤い霧を出した、紅魔の吸血鬼。

 春を集めて妖怪桜を咲かせんとした、純白の亡霊姫。

 地底の奥深くで燻っていた、八咫の烏妖怪。

 あらゆるものの背に戸を開ける、後戸の国王。

 そのような猛者たちと戦い、勝利して異変を解決した巫女からすれば、今のジンムはせいぜい2面ボス程度の認識でしかない。慣れればノーミスノーボムでクリアできる難易度だ。

 

「そういうあんたらは……まだまだね。仕方ないけど」

 

「俺ヲムシスルナァァァァァァァ!!」

 

「ブオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 ジンムを冷静に見下ろす霊夢に、マカイライとボアケガレイドが飛び掛かってくる。

 だが、ボアケガレイドは兎も角、マカイライについては相手が悪いにも程がある。たかが人里の人間が奇怪なアイテム程度で強くなったからと言って、霊夢相手は無謀だ。そもそもマカイライは、ジンムや慧音でも対処可能なくらいでしかない。

 マカイライとなったこの男は、初手に不意打ちを食らって吹き飛ばされてから、ジンムの相手をしていた霊夢に怒りを覚え、冷静さを欠いていた。

 

「封魔針」

 

「グアァァァァ!?」

 

「ブオオオオオォォォ!!!」

 

 霊夢の手から放たれた針が、マカイライとボアケガレイドを襲う。

 マカイライはそれによって派手に吹き飛ばされる。しかし、ボアケガレイドは針が全身に突き刺さっても尚、霊夢への突進のスピードを緩めることはない。それは偏に、イノシシの特徴を色濃く現したケガレイドの特性があるからである。

 

「あら危ない」

 

 だが、その程度では霊夢の精神は揺るがない。

 ボアケガレイドの突進に対して、霊夢は軽く跳躍し、ボアケガレイドの背中に手をついて、軽く一回転。それだけで回避してみせた。

 そして、回避して生まれた無防備な背中に、霊力を叩き込んでいく。

 

「すごい…これが、博麗の巫女……!」

 

「ブオオオオオオオオオオオ!!」

 

 荒れ狂うボアケガレイドを軽くいなして追撃の陰陽玉を叩き込んだ。その後霊夢はマカイライに大幣を向けた。

 

「ヒィィ!?」

 

「まずは一体目ね」

 

 霊夢の圧倒的な強さと凄みに、マカイライは腰が抜けたのか悲鳴をあげるばかりだ。もう抵抗する気力もなくなっているらしい。

 そんなことは関係ないと言わんばかりにマカイライにトドメを刺そうとする霊夢。

 それを見たジンムは、言葉をかけるよりも先に、霊夢とマカイライの間に割って入って、霊夢の一撃を受け止めた。

 

「ううううっ!!?」

 

な…何をしている!?

 

 霊夢も、マカイライも、ジンでさえ、ジンムの―――彰のその行動に目を見開いた。

 霊夢の目から見たら、ケガレイドとそのお供、そいつらとジンムは敵対していた。庇う理由などないはず。

 

「…なんでそいつを庇うの?」

 

「この人は…元々人間だ!ケガレイドを倒せば元に戻れる!倒す理由なんかない!!」

 

 だが多田彰は知っている。マカイライが、元々は人間であったことを。

 大なり小なり、理由があってコアエマキを使って悪事に手を染めただけなのだということを。そして何より、ケガレイドを倒せばマカイライは元に戻る事を。

 

「そうなのね」

 

「だから…」

 

「えぇ。だから―――そいつは完膚なきまでに消さないとね」

 

「!!!?」

 

 しかし、霊夢はジンムの必死の説得を聞いても尚、マカイライを抹殺する事を選んだ。彰には、霊夢のその判断が冷酷に脳裏に響いていった。

 

「どうして……!?」

 

「当たり前でしょ。幻想郷において、人間が妖怪になる事は禁忌なのよ。生かしておく理由なんてないじゃない」

 

「……っ!」

 

 正直なところ、霊夢はジンムの言葉()疑っていない。

 この気持ち悪い黒と白の異形が元々人間であったことも、ケガレイド――イノシシの異形だと思われる――を倒せば元に戻ることも、ジンムの証言にウソはないだろうと自身の勘が言っていた。

 だが、霊夢の言う通り、幻想郷には絶対に破ってはいけない禁忌がある。そのうちの一つが、人間が邪法を使って妖怪になる事。

 人間と妖怪の数のバランスを保つため、人間が勝手に妖怪になる事を禁じているのだ。「人間が妖怪になった」前例を作ってしまえば、里の人間が次々と妖怪化し、元居た妖怪たちの畏れが供給されなくなるからだ。

 そういった禁忌を破った者を粛正する役目を担っているのが誰かと言えば―――博麗の巫女であった。

 

「だからといって―――!」

 

「ブオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

「「!!」」

 

 ジンムが霊夢に温情を求めようとしたところで、ボアケガレイドの雄たけびが聞こえた。ボアケガレイドが怒り狂いながらこちらへ向かって走ってくるのだ。

 突進してくるボアケガレイドが、どんなスピードになろうとも対処してやろうと身構える。しかし、ボアケガレイドの目的は2人ではなかった。

 

「ウワァッ!!? ナンダオ前ハァァァ!!?」

 

「マカイライを…!?」

 

「何を…」

 

 なんと、マカイライをかっ攫うようにすれ違いざまに担ぎ上げ、そのままどこかへ走り去ってしまったではないか。

 ボアケガレイドを倒すために現れたジンムと、たまたまケガレイドに出くわした霊夢にとっては、あっけない逃走である。

 オマケに逃げ足も速いようで、ボアケガレイドの目的がマカイライを攫う事だと気付いた時には、もうボアケガレイドは真っ暗な夜の闇の中に消えてしまっていた。

 あたりに、沈黙が訪れる。どれくらいの時間が経ったかというところで、ジンムはそのまま立ち去ろうとした。

 しかし。動かそうとした足元に、結界が光り輝いた。

 

「…逃がすと思ってるの?」

 

「あ、あはは…」

 

 本気のドスの入った声と視線に、ジンムは乾いた笑いを漏らすことしか出来なかったが、それで霊夢が許してくれるわけがない。

 

「夢符『封魔陣』!!」

 

「ぐあああああああああっ!!」

 

 霊夢の詠唱が終わり、片手に持っていたカードを地面に叩きつけると同時に、ジンムの足元から青白い立体の結界が立ち上がり、ジンムを閉じ込めた。

 結界に閉じ込められたジンムに、不可視な霊力が迫り、彼の身体をミシミシと締め上げる。

 

まずい!早くこれを突破しなければ………ジンム!アレを使いたまえ!!

 

「ぐっ……うぅぁあああ!!」

 

 ジンムはそれに対して激痛に耐えながらも、懐からコアエマキを手にとって、ジンムドライバーに差し込んだ。

 

ビャッコ!

ビャッコ召喚!

 

 ショウリョウバッタのようなジンムが、白虎のようなフォルムとなり、鎧が虎柄模様に染まっていく。

 

覇王(はおう)() 百里(ひゃくり)()けて (しめ)しけり!】

 

「あら…姿が変わったわ」

 

 ビャッコモードになったジンムを見ても、まったく動じない霊夢。

 ジンムは、どうしてもここから退散しなければならないと思った。このまま霊夢の封魔陣に閉じ込められたままでは、変身が解けてしまうかもしれない。そうなった時の自分の境遇は、霊夢が先程明言してくれていた。

 

「(先生も、人間が妖怪になるのはマズいって言っていたけど………まさか、霊夢さんがあそこまで言うなんて…!!)」

 

 ジンムは―――彰は、衝撃だった。

 彼は、いや、彼に限らぬ多田家は、博麗神社を代々から参拝していた。ゆえに、彰は霊夢とは顔見知りである。

 良く知る間柄であるはずの霊夢の、今まで見たことのない恐ろしい一面。動揺するなと言う方が無理であった。

 

『生かしておく理由なんてないじゃない』

『…逃がすと思ってるの?』

 

 霊夢の冷たい言葉が脳裏を支配していく。

 体が鈍くなるような感覚に襲われるが、ジンムはあるだけの勇気を振り絞ってソレを振り払わんとした。

 ここで霊夢に捕まったら間違いなく殺される。それにケガレイドに逃げられた以上、この場に留まる理由もない。

 霊夢はジンムを退治する気マンマンだが、ジンムには霊夢と戦う理由などなかった。

 

「オリャアアアアアア!!」

 

 兎にも角にも、ジンムの動きを封じる結界が破らねばいけない。

 そう思ったジンムは、恐怖を振り払うように結界にツメを立てた。

 ゴリゴリと霊力製のはずなのに金属が擦りあうような音を立てながら結界に穴を開けていく―――が。

 

「!! 結界を無理矢理…ならば、こうよ!

 宝符『陰陽宝玉』…!」

 

「うわっ!?」

 

 霊夢は、ジンムが力づくで突破しようとした結界をあえて解除した。結界を破ろうとしたジンムは、両手のツメに込めた力のあまり、前へつんのめって体勢を崩してしまう。

 つんのめった体に、すかさず霊力で強化した陰陽玉を撃ち込んだ。

 封魔陣を破ることに集中していたジンムに、陰陽玉は躱しきれないか。

 まさに万事休す、と思った―――その時だ。

 

「リトルバタリオン!!」

 

 霊夢とは違った弾幕が、戦場に降り注いだ。

 突風のように現れたそれらは、ジンムに襲い掛かろうとした陰陽玉を弾き飛ばし、ジンムに更なる追い討ちをしようとした霊夢を襲った。

 ひと飛びで弾幕を躱すと、ジンムとは違う攻撃を放った人物―――ミスティア・ローレライを一瞥した。

 

「…なんの真似?」

 

「その人は悪いヤツじゃないわ。巫女なんかに退治させるものですか!」

 

「!」

 

 なんと、このミスティアという少女、ジンムを庇うつもりがあるようだ。

 ミスティアはジンムの目の前に立って、顔だけ彼に向けると、小声で伝える。

 

「巫女は私が足止めするから、貴方は逃げて」

 

「で、でも……!」

 

「お願い」

 

 それだけ言うと、ミスティアは屋台の営業服であるにも関わらず、スペルカードを懐から取り出し、霊夢の周囲を飛び回り始めた。

 だがジンムは、すぐに動けなかった。自分でも手も足も出なかった霊夢に、自分よりも幼く見える彼女が太刀打ちできるのか。彼女を置いて、自分だけ逃げていいのかと。そこで、声がかかった。

 

ジンム、あの少女の言う通り、今のうちに逃げよう

 

「ジンさん!!?」

 

 ジンだ。彼は動かないでいるジンムに、そう言ったのだ。

 

「何を言ってるんだジンさん! あの子だけ置いて、逃げるなんて……できるわけないよ!」

 

だが博麗の巫女は強い! 二人がかりでも、勝てるとは限らない!!

 

「やってみないと分からないよ!!」

 

 ジンの説得を振り切って、セットされているビャッココアエマキのスイッチに指を添えようとする、が。

 

馬鹿者!!! 今君がやられたら、誰がケガレイドを倒すんだ!!

 

「!!!?」

 

 そうなのだ。ケガレイドを倒すことが出来るのは現状、ジンムしか居ない。

 例えば、もしここで霊夢に倒されてしまったとあっては、ケガレイドを止められなくなってしまう。

 

彼女の覚悟を無駄にするな!

 

「………ッ、ごめん…!」

 

【ビャ・ビャ・ビャッコ!】

 

 見たことのない程に声を張り上げたジンに反論できなかったジンムは、振り返ることをしないまま、ビャッコのコアエマキの力で一気にその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彰が渋々下したこの判断は、翌日も引きずることになる。

 

―――という事があったのだ

 

「成程。それで私の元へ来たという事か…。

 彰。君を庇ってくれた少女…ミスティアの事を気に掛ける気持ちは分かるが……」

 

「……分かってるよ。ケガレイドを倒せるのはジンムだけ……それ以外の人が倒しても復活しちゃうんでしょ? 先生の時みたいに」

 

 ジンに言われて慧音の寺子屋まで赴き、昨夜の出来事を話す。

 一応は分かっているようなことを言うが、気を落としているのは明らかだ。その一方で、慧音やジンの言い分も否定できていないのも分かっていた。

 もしも彰がいなくなったとしたら、ジンムドライバーに憑依しているジンは新たな変身者を探さなくてはならなくなる。変身者の条件は………ジンの言葉を聞き取れる、人間のみ。

 そして―――そんな限定的な条件を満たせる者が、まだいるとは、限らない。いちおう東風谷早苗がいるが、彼女が変身できるかも分からない。

 見つからなければ一巻の終わりだ。ケガレイドは、あっという間に幻想郷を支配するだろう。

 

………

 

 ジンは、口では分かっている風な口をきいている彰が、まったく納得のいっていない心情であることを即座に見抜いていた。

 

彰。その少女……ミスティア・ローレライに会いに行こう

 

「えっ!? でも…」

 

あの夜に出会った君はジンムの姿だ。ミスティアは彰がジンムに変身することを知らない。

 怪我をしたお見舞いと言えば、本人も納得するはずだ。その時にそれとなく聞けばいい!

 

「! た…確かに……」

 

 ジンは、それを知った上で、彰にこう提案した。その提案があながち悪くないことを理解した彰は、先程まで悩んでいたのがウソみたいに、跳ねるように立ち上がった。

 

「ま、待て、彰!」

 

「先生?」

 

「…私も行くぞ。彰だけでは不安だし……ジン殿だけではフォローできないでしょう。ミスティアは夜雀だから、ジン殿の声を聞かれているかもしれない」

 

 慧音は、彰の行動についていくことにした。

 彰=ジンムという事実は出来るだけ誰にも知られるわけにはいかない。ミスティアが妖怪である以上、あの夜にジンの声を聞いている可能性がある。彰だけでは不安が残るのである。

 慧音の案内のままに、ミスティアの住処に近づく。そこは、人里の中央通りの一角にある、食堂であった。家屋の前には、屋台もある。あの後、無事に帰ることができたのだろうか。

 

「ミスティア、来たぞ。何でも、ケガレイドとやらに襲われたと聞くが…」

 

「せ、先生……それに、彰さんも…すみません、お見舞いに来ていただいて……」

 

「あっ、動かないでください! まだ、ケガが治ってないのでは……」

 

「妖怪だから、ちょっとくらい大丈夫」

 

 上体を起こした少女……ミスティア・ローレライが微笑みかける。

 霊夢にボコボコにされたのであろう、生々しい傷がまだ残っている。見た目だけは少女なだけであって、見ている方がいたたまれない雰囲気を感じる。

 彰は、彼女を寝かせて看病してあげたいと思った。だが、ミスティアの言う事は虚勢ではなく、本当に頑丈だから問題ないと言っているかのようだった。

 

「なぁ……ミスティア。一体、何があったんだ?

 夜雀であるミスティアがここまで手ひどくやられるとは…」

 

「うーーん……この傷自体は博麗の巫女にやられたんだけど…」

 

 慧音が尋ねれば、ミスティアは包み隠さず全てを話してくれた。

 客の中に、お代を払わないヤツがいた事。それを指摘したら逃げた上に新聞で報道されていた化け物になったこと。そこにジンムという新たな妖怪が助けに来てくれたこと。だが、霊夢とバッタリ会ってしまい…攻撃されてしまったこと。そして……自分が、ジンムを庇った事も。

 

「ミスティアさん。その……ジンムはさ。

 君を置いて逃げるの、ものすごく躊躇ったと思うんだ」

 

「え…?」

 

 彰がそう言ったのは、ジンムとしての本音だった。

 勿論、ミスティアはジンム=彰であることは知らない。だがそれでも、あの場にいた者として言っておきたかったのだ。戦える力を得ていながら、あの時は逃げるしかなかった己の無力感を。

 直接言えないのは残念だが、ミスティアがジンムとあった夜のことを包み隠さず話してくれたため、こう言う機会を得ることが出来た。

 

「どうして、そんなことがわかるの?」

 

「え、えっと…」

 

「真夜中に、襲われている妖怪を助けるようなお人好しだ。例え促されたとしても、君を置いて逃げることに抵抗はあっただろう。それくらい予想がつく」

 

「! そ、そうだよ! そういうことだよ!」

 

「ふふっ……そうですね。もし…また、ジンムさんに会えることが会ったら、ひとこと言っておきたいわ。『私は気にしてない』って」

 

「………………そうですか」

 

 ミスティアのその言葉は、本人に会ったらの過程で話す、届かないものだと思っている。だが、それを聞いた彰は、ミスティアの下へ行く前と比べて、やや晴れやかな、救われたような気分になった。

 主題を話し終えて、これ以上ミスティアの療養の邪魔をするわけにもいかないか、と帰ろうとした―――その時だ。

 

 

 

「スズメちゃん、みーつけた♪」

【スパロウ!】

 

「「「「!!!?」」」」

 

 頭上から声がしたかと思えば、ミスティアの丁度真後ろに全身黒スーツの男が降ってきたのだ。

 そして、突然の事に何の反応もできない彼女の首筋に、雀色のコアエマキを突き刺したのだ!

 

「うぐあ゛あ゛あ゛あ゛ァァァ……!!?」

 

「ミスティアさんッ!?」

 

 コアエマキを突き刺されたミスティアは、邪素を振りまきながらどんどん姿が変わっていき、やがて一匹のケガレイドになってしまった。

 顔は目を包帯でぐるぐる巻きにしたスズメそのものに、背中からは二対の翼が生え、少女の体躯は面影が全くなくなり、慧音や彰並みのタッパになり―――おぞましい姿のスパロウケガレイドになってしまった。

 

「ミスティアさんっ! な、なんてことを……!」

 

シンゲツッ! キサマ、生きていたのかッ!!

 

「おやぁ…その声は、初代ジンムじゃあないですか!

 随分ユカイな格好になってますねェ! そのまま能でも舞っては如何でしょう?」

 

「ジン殿……こいつを知っているのですか?」

 

最初に生まれたケガレイドのひとりだ! コイツらさえ倒せば、ケガレイドは生まれなくなる!

 

「ははは!怖い怖い……でもボク、今日は戦うつもりはないんでね」

 

 ジンが黒スーツの男―――シンゲツを睨みつけると、シンゲツはおちゃらけてそんなことを言いながら、指を鳴らした。すると、傍らに闇色の霧が現れ、そこから一人の男が現れた。……彰や慧音は知りようもないが、そいつはミスティアの話に出てきた、勘定を誤魔化そうとした客だった。

 

「なんだここ……あ!お前、この前変な巻物をくれた………」

 

「今から面白い実験を始めるんでね。キミにも付き合ってもらうよ」

イノシシ!

 

「はぁ!? ちょっ、待っ―――ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!?」

 

 その男の懐からコアエマキを奪取すると、まるで熟練の看護婦が血液採取をする時のような手際の良さでそれを男の腕に突き刺して、その身をマカイライに変化させ、その肉体からボアケガレイドを生み出した。

 

「な、何のつもりだ!」

 

「フフフ……これは“実験”ですよ」

 

「実験…!?」

 

「あたくし達ケガレイドは、どうやって増やすのか。どうやったら増えるのか。その実験というだけだよ」

 

 不気味な笑みを浮かべながらそんな事を言うシンゲツに、彰は鳥肌が立った。

 人を無差別に襲うケガレイドを増やす。そんな試みが成功したらなんて想像は、したくない。

 だが、目の前で起こっている事は、まさしくケガレイドの増殖だ。このまま野放しには出来ない。

 

そんな事させるものか!

 

「そうだね…ミスティアさんを返してもらうぞ!」

 

ジンム!

 

「変身!」

 

浄化! 昇華!! ジンム召喚!!!

まつろえど ()(はず)さぬは (じん)(みち)!】

 

 彰は、即座にジンムに変身する。

 純白の鎧が身を包むと、その隣に慧音が並び立った。

 

「数が多いな……」

 

「慧音先生…!」

 

「お前はミスティアを頼む」

 

 それだけ言うと、慧音はボアケガレイドに体当たりをかまして、そのまま家の壁を破って外に出ていった。

 

「ふーーむ、ちょっと予想外な展開だけど……これもこれで、面白くなりそうですねェ…!」

 

「…ジンさん。戦おう。絶対に負けられないよ!」

 

当然だ!

 

 勝手に人や妖怪を実験に使って、それを面白がるシンゲツに対する怒りを覚える彰とジン。

 その怒りと勇気を振り絞り、ミスティアを解放するため、スパロウケガレイドに飛び掛かった。

 




はい、大ッッッ変長らくお待たせしました!
他の連載やってるとこっち書く時間がなくなる!!
展開を考えている時間もなくなってより投稿が遅れて……とにかく、すみませんでした。
とりあえず2号・3号のライダー名は決まりました。後は変身者を考えるだけだな……こういうのも、オリジナルの方が良いのかなぁ?

仮面ライダー仁夢のヒロインを予想してみよう!

  • 若き彰の恩師 上白沢慧音
  • 仮面ライダーを知る巫女 東風谷早苗
  • 稗田家に仕える女給 紗百合
  • 永遠に消えない不死鳥 藤原妹紅
  • 最速果断の天狗記者 射命丸文
  • 楽園の素敵な巫女 博麗霊夢
  • その他
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