~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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 …カッコイイ題名が付けられるようになりたいです。最近の筆者は欲が多いですね。

 では、どうぞ!


第11話 第二層での日々

 アルファ「…なるほど」

 

 アルファはアスナに連れられて、タランの街の一角にある空き部屋に招かれた後、部屋でくつろいでいたキリトとそれを冷たい目で見るアスナに、剣の取り戻し方と鍛冶屋ネズハが働いている悪行についての説明を受けた。

 それを聞いたアルファは、今すぐに剣を取り戻して、ネズハを問い質しに行こうと思ったが、犯行の確実な証拠を見つけ出さなければ、今後も悪事が行われる可能性が高いとキリトに説得され、彼らの考案した作戦を受け入れることにした。

 

 アルファ「…ところでさ、キリトさん、さっきアスナに名前呼びで君付けされたんだけどよ。なんかアスナさん丸くなってねえか?」

 

 キリト「あぁ…確かに、ちょっと丸くなったかもしれないな」

 

 アルファ「なんかしたのか?」

 

 キリト「…いや、特に何も…」

 

 アルファとキリトはお互いに顔を近づけて、アスナには聞こえないようなボリュームで話していたつもりだった。するとアスナはニッコリとしながら俺達に喋り掛ける。

 …あぁ、これは俺達のお話がしっかりと聞かれていたのだろう。でも、それにしてもアスナは耳が良すぎる気がするんだが…。

 

 アスナ「…聞こえてるからね?因みに、私はキリト君なんかには、何もされてないからね」

 

 とキッパリアスナは否定してくれる。キリトは「キリト君なんか、って扱いひどくないか?」と少し落ち込んでいたが、三人は気を取り直して、作戦を実行することにした。

 

 

 

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 鍛冶屋ネズハを懲らしめるための作戦は、キリトがフルアーマー男に変装してわざと詐欺に引っ掛かり、スキルの強化オプションの<クイックチェンジ>を利用することで悪事を暴く、といった具合だ。武器スキルの派生オプションの一つであるクイックチェンジは、手元を離れた武器を、即座に自らの手の中に戻せる機能を追加するオプションだ。

 詐欺に引っ掛かったらしいアスナと、そして勿論アルファは顔が割れてしまっているので、ネズハにバレないように、空き部屋からキリトとネズハの様子を伺っていた。キリトが強化を願い出た武器が見事詐欺られた現場を、キリトが例のオプションで押さえてから、二人でネズハの元に駆け付けて、ネズハの退路を防ぐ。

 作戦は無事に成功し、俺の愛しきストーンブレードも返ってきた。ストーンブレードが砕け散ったのは、俺が一瞬目を離した隙に、もう強化出来ないストーンブレードのエンド品と取り換えたことが原因だったようだ。エンド品は強化すると砕け散る仕様らしい。

 詐欺がバレた事で、いっそのこと死んでしまおうとしたネズハを、キリトとアスナが穏やかに説得することで、この強化詐欺事件は一件落着となった。しかし、ネズハに高等な詐欺方法を教え込んだ人物がいたという、その情報だけが気掛かりだ。

 取り敢えず、俺達は一度空き部屋に戻って、今は三人で情報を整理している。

 

 アルファ「お前ら息ぴったりだよなぁ。そのままコンビでも組んだらどうだ?」

 

 アスナ「……」

 

 最近分かってきたが、アスナが黙り込んでしまう時は、大体自分自身が認めたくないことを突かれた時に限るのだ。そんなアスナを代弁するように、キリトが口を開く。

 

 キリト「…実は昨日からコンビ組んだんだよ」

 

 アルファ「おー、熱いねえ。やっぱできてんのか?」

 

 「「出来てない!!」」

 

 冗談半分で二人を揶揄おうとしたら、二人は息ぴったりに反論してきた。…ここまでハモるような奴らだ。そう思ってしまうのも無理はないだろう。すると、キリトがこんな事を言ってきた。

 

 キリト「そういえば今日はユウキと一緒じゃないんだな」

 

 アルファ「……あ!やっべっ!」

 

 アルファは鍛冶屋の件に夢中で、完全にユウキのことを忘れていたのだ。ストレージに収納しておいた食料品も、もうとっくに冷めてしまっている。

 …こんな夜更けまで晩御飯が食べられないとなると、ユウキに文句を垂れられること間違いないだろうなぁ…。というか、俺が同じ立場だったら絶対文句言うし…。

 

 アスナ「ユウキ…?」

 

 アルファ「俺とタッグ組んでるやつの名前だ。また今度紹介するっ。じゃあな!」

 

 アスナは、知らないプレイヤーの名前に純粋な疑問を浮かべていたが、それにこたえる余裕のないアルファは適当に返事をして、急いでユウキの元に帰るべく走っていった。

 結局、晩ご飯の時間はとっくに過ぎていたせいで、予想通りにユウキにこっぴどく怒られた後「この埋め合わせはいつかしてもらうからね」と言われてしまった。だが、メッセージで現状さえ説明しなかったアルファは弁明できるはずもなく、ユウキに貸しを一つ作る羽目になってしまったのであった。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 ユウキ「ん~、美味し~!」

 

 アルファは先日の一件で押し付けられた貸しを消化するという名目で、ユウキにウルバスのメインストリートの外れに建つお店に連れられた。まだ2層に来て間もないのに、こんな地味なところにあるお店にどうして気が付いたのかを尋ねてみると「なんかね、美味しそうな匂いがする方向に向かったら見つけちゃったんだ~」との返答があった。

 おそらく、これがキリトが言っていたシステム外スキルってやつなんだろう。…そうじゃなければ、普通におかしい。

 店内に入ってみると、そこは小さなレストランだった。それを受けた俺は、つまりは埋め合わせとして、ここの料理を奢れってことなのだろう、とユウキの意図を察する。

 確かにここのレストランは、はじまりの街のレストランで食べられる料理よりも、一歩も二歩も上を行く素晴らしい食事だったので、結構な値が張った。懐の暖かみが弱くなってきていることを実感しながら、お会計をしようと席を立つ。

 

 アルファ「飯も食ったことだしそろそろ行こうぜ……?」

 

 しかし、何故かユウキは席を立とうとせずに、真剣な眼差しでジッと俺を見つめている。

 

 アルファ「ユ、ユウキ?…どうしたんだ?」

 

 ユウキ「まだボク…デザート食べてない…」

 

 アルファ「…あ、はい」

 

 お金持ちの人のことは分からないが、俺みたいなザ・庶民はレストランに来たら、デザートまでしっかりと食べたくなるもんだ。その個人的な傾向に当てはまるユウキも、俺と同じ庶民といったところなのかもしれない。

 デザートの値段をメニュー表で確認すると、自分まで食べる気が失せてしまったので、キラキラと目を輝かせてメニュー表を眺めるユウキを見ながら、ユウキがデザートを決めるのを待っていた。

 ユウキがデザートを決め終え、店員さんに注文して少し経つと、目の前にドでかいホールケーキが現れた。

 

 ユウキ「<トレンブル・ショートケーキ>、思ったより、大きいね…」

 

 俺はおろか、頼んだ張本人のユウキでさえも、その大きさに若干引いている。しかし、大きさもそうだが、アルファ自身はそれ以上に、その金額に震えていた。完全に懐が冷え切ったことに伴い、今日からしばらくは節約しようと心に誓う。

 

 アルファ「ショートってなんだよ…」

 

 ユウキ「ショートっていうのは、元々はショートニングを使ったケーキを表していたんだよ」

 

 アルファ「へぇ…ユウキって…見た目に似合わず物知りなんだな」

 

 俺が思わずツッコミを入れてしまうと、ユウキが何気なく雑学を披露してくれた。ユウキの博識に感心した俺は、思ったことを何の含みもなくそのまま言葉にすると、ユウキは眉をひそめる。

 

 ユウキ「…それどういう意味? ボクはこれでも読書家なんだからね!」

 

 ユウキが自慢げにそう語ってきた。夏休みの宿題である読書感想文を書く時ぐらいにしか、図書館で本を借りようとさえ思わないアルファとしては、読書をこよなく愛する人々の気持ちは全く推し量れない。

 読書量の多さが人生を豊かにする、とはよく言ったものだが、別に本を読まなくたって人生を楽しむことは出来るのだ。本で知識を増やせば、人生の楽しみの幅も大きくなるかもしれないが、本人が現状に満足しているのなら、それでいいではないか。

 そんな醜い言い訳を頭の中で重ねていると、未だにトレンブル・ショートケーキに手を出さないユウキが話し掛けてきた。

 

 ユウキ「…さすがに一人で食べるには大きすぎるから、半分こしよっか」

 

 ユウキの言う通り、一人で食べきるには、些か量が多すぎる。…ユウキにデザートを半分こ出来る気概があるのなら、ご飯代も半分こに出来るのでは?そう思ったアルファは、それをすぐに訊ねようと試みるが…

 

 アルファ「…じゃあ金額も割り勘に…」

 

 ユウキ「これはこれ、それはそれ、だよ!」

 

 呆気なく提案を退けられてしまった。その後、二人は絶妙な甘さ加減とくちどけの良いクリーム、そしてふんわりとしたスポンジケーキを値段以上にしっかりと堪能した。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 アルファとユウキは、トレンブル・ショートケーキを楽しんだ後、早速迷宮区に向かってレベリングを行っていた。今、相対しているモブは<レッサートーラス・ストライカー>というハンマーを得物にしたモンスターだ。

 トーラスがハンマーを振り下ろしてきたので、アルファはしっかり回避してからハンマーを弾く、その隙にユウキがソードスキル<ホリゾンタル>を打ち込んだ。トーラスは僅かに残った体力で、再びハンマーをユウキにぶつけようと振りかぶるが、ハンマーを振り降ろす前にアルファが通常攻撃を決めて、戦闘を終えた。

 このモブの厄介なところは、ハンマーの特殊攻撃でプレイヤーを麻痺させることができる点だが、そんなものは発動させないのが吉なので、それを放たれる前に倒している。

 

 アルファ「まるっきりミノタウロスだよな」

 

 周囲にモンスターが居なくなったことを確認してから、少し気を抜いてユウキに話し掛けた。

 

 ユウキ「そうだね~。そう言えば、ミノタウロスがギリシャ神話に出てくる怪物って知ってた?」

 

 アルファ「いや、知らねぇ。どんな感じの話なんだ?」

 

 ユウキ「んーとね、クレタ島の地下ダンジョン、ラビリントスに住む怪物で勇者テセウスに退治されたんだ」

 

 さっきのショートケーキに関する雑学と言い、神話に関することと言い、何かと物知りなユウキは、まるで21世紀から来たネコ型ロボットのように、一家に一台あると嬉しい存在に感じる。

 

 アルファ「…なんか、ユウキって便利だな…」

 

 ユウキ「あ、ありがと?…それより、良かったの?2層のボス戦に参加しなくても」

 

 アルファが2層のボス戦を見逃したのには二つ理由があった。一つはユウキの強化を優先したかったから。今はまだ、レベルが前線組と比べて低く、ボス戦に参加できそうにないが、レベルが安全マージンにまで達せば、間違いなく即戦力になるであろう強さだ。

 そしてもう一つは、単純に前線組と関わりたくないという、アルファの子供みたいなわがままだった。しかし、いつまでもそんなことは言ってられないのでユウキが参加する初のボス戦から自身も再びボス戦に参加しようと考えている。

 

 アルファ「気にすんな…今はユウキのレベルを上げることが最優先だからな。順調に行けば次の層からはボス戦に参加できそうだし」

 

 ユウキ「ホント!?よーし、レベリングがんばるぞー!」

 

 ユウキは嬉しそうな顔でそう言いながら、狩りのペースを上げていった。キリよく一つレベルが上がったところで迷宮区から脱出し、タランの村へ戻る。

 すると、行き交うプレイヤー達から3層がアクティベートされたとの情報を耳にしたので、アルファとユウキはダッシュで転移門がある主街区のウルバスに戻り、3層へと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回からは、第三層に入っていきます。

 では、また第12話でお会いしましょう!
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