~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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 今日は少し早めの投稿です。

 では、どうぞ!


第12話 女王グモの洞窟

 アルファとユウキは転移門で第三層の主街区ズムフトに移動した後、有難いことに道具屋で委託販売されていた、3層について書かれたアルゴの攻略本最新刊を読破し、例によってレベリングを行っていた。

 3層はフィールドのほとんどが森に覆われている。テーマは森林といったところだろう。攻略本には森のどこかで、9層まで続くというアインクラッド初である大型キャンペーン・クエストが受けられるらしいが、ユウキがこの層からボス戦に参加出来るようにレベリングに専念したいことから、このクエストを現時点で受注することは諦めていた。

 

 アルファ「ユウキさん?…ちょっといいですか?」

 

 ユウキ「…は、はい…」

 

 アルファが呆れた様子でユウキにそう話し掛けると、ユウキは反省した様子で、しょんぼりと項垂れた。

 

 アルファ「攻略本に書いてましたよね?「この森は迷いやすいから道から外れないようにしましょう」って」

 

 ユウキ「す、すいませんでした」

 

 アルファ「よし、次回からは気を付けるように」

 

 そう、現状アルファとユウキは、完全に森の中で迷子になっていた。その訳は、この層にポップし、少しレアな強化素材を落とす<トレント・サプリング>なるモンスターを追いかけるうちに、ユウキがフラフラと道に逸れて行ったのだ。

 それを見たアルファも、流石に最前線のフィールドでユウキを一人孤立させるわけにもいかず、慌ててユウキを追いかけた。

 何とかユウキとははぐれずに済んだものの、まるで富士の樹海を想起させる、この森特有の霧のせいで引き返す方角が分からなくなってしまったのだ。こうなってしまっては、もうどうしようもないので、ユウキとはぐれないように気を付けながら、闇雲に森の中を歩いていく。

 襲い来るモンスターを相手にしながら歩き続けていると、森が開けた場所に出た。目の前には洞窟がある。

 

 アルファ「たぶん女王蜘蛛の洞窟だ。…どうする?入ってみるか?今の俺たちのレベルなら遅れを取ることはなさそうだぜ」

 

 ユウキ「そうだね、ここぐらい攻略出来ないと、ボス戦なんて夢のまた夢だよ」

 

 どうやらユウキはやる気満々のようだ。今の二人のレベルは、アルファが14、ユウキが12と、日々のほとんどをレベリングに費やしてきたおかげで、ユウキは前線組と同じぐらいのレベルにまでステータスを向上させた。

 ボス戦の適正レベルはフロア×3ぐらいなので、その計算式でいけば、実は2層からボス戦に参加できたのだが、1層でボス戦の厳しさを味わったアルファはしっかりとレベルを上げることに専念し、2層のボス戦は見送ったというわけだ。

 二人は洞窟の暗がりを恐れることなく、洞窟に足を踏み入れた。

 

 

────────────────

 

 

 

 ユウキ「やあッ!」

 

 気合の籠った掛け声と共に、ユウキの鋭い剣技が、蜘蛛型モブである<ハシリグモ>目掛けて突き出される。名前の通り素早い動きを見せたハシリグモは、8本の手足を使って器用にユウキの攻撃を回避したが、その先に回り込んでいたアルファの剣がハシリグモを捉え、その体を叩き潰した。

 

 アルファ「…俺も片手剣にすればよかったなぁ」

 

 ユウキ「ボクはこの状況まで予想して片手剣を選んだんだよ?」

 

 アルファ「分かりやすい嘘をどうもありがとう」

 

 ユウキ「アハハ~、流石にバレちゃうか~」

 

 洞窟の中では松明やランタンなどの灯りが必須となるが、両手剣使いを筆頭に、両手が武器で埋まってしまうプレイヤーは、松明を持つ度にいちいち武器を納めなければならず、その度に臨戦態勢を取れなくなるので、甚だ不便なのだ。

 今はユウキが空いた左手で持っている松明で何とかなっているが、これがもし一人だったら、と考えると気が引けてくる。しばらく洞窟を進んでいくと、地下二階へと続く階段を見つけたので、周囲に気を付けながら慎重に降りていく。奥へ奥へと進んでいくと、少し広い空間の先に宝箱を発見した。

 

 ユウキ「!あれ宝箱だよ!早く開けようよ!」

 

 おそらく、ユウキは宝箱を見るのが初めてなのだろう。ワクワクを隠し切れず、今すぐにでも宝箱を開けようとしている。しかし、アルファはそれを制止した。

 アルファも初めて宝箱を見つけた時には、大興奮したものだが、いざ宝箱を開けると、どうでもいいアイテムだったりと、期待が大きい分、ハズレを引いた時のガッカリ感も大きかった。

 

 アルファ「待て、トラップの可能性もある。…でも、どうやらその宝箱は、もう誰かが開けたあとっぽいな」

 

 洞窟の闇で隠されていた宝箱はよく見ると少し口が開いており、それは宝箱が開封済みであることを知らせるものだとアルファは知っていたので、それに気が付く。

 

 ユウキ「…なーんだ、先越されちゃったのか…」

 

 アルファ「そんな悲しそうな顔すんなよ…前線組になれば、迷宮区に誰よりも早く突入出来て、宝箱も取り放題だろ?」

 

 ユウキ「そっか、そうだね!」

 

 アルファ「もう行き止まりだし、洞窟から脱出して主街区に戻ろうぜ」

 

 ユウキ「りょーかーい!」

 

 その時、二人の目の前に青いガラスの欠片が集合していき、それは巨大なモブの形を創り上げた。

 

 「キシャシャア─ッ!!」

 

 アルファ「なに!?」 

 

 ユウキ「!?」

 

 現れたのは巨大なクモのモンスターだった。HPバーは二本あり、固有名があることから、おそらくこの洞窟の主だろうとアルファは判断する。

 モンスターが一方通行の退路にポップしてしまったので、逃げ道がないことを悟ったアルファは、すぐさま女王グモの右横腹を切り裂く、ユウキに指示を出そうとしたがユウキも同じ結論に至ったらしく左横腹を斬り裂いていた。HPバーの減り具合からして防御は柔らかい方であることが分かる。

 

 アルファ「ユウキ!ここはやるしかねえぞ!」

 

 ユウキ「わかってるよ!こんな所で終わるつもりはないんだから!」

 

 女王グモが右足を震えさせているのに気が付いたアルファは、すぐさま後ろにステップし、その直後に繰り出された踏みつぶし攻撃を回避する。しかし、追い打ちをかけるようにして二本目の足が飛んでくる。

 アルファはそこまで予想しておらず、回避が間に合わないので両手剣を盾にして防御する。その瞬間、アルファにだけターゲットが集中し、女王グモに僅かな隙が生まれた。それを見逃さなかったユウキがソードスキルを発動させ、体力を大きく削る。

 途端に怒りの咆哮を上げた女王グモは、天井近くまでジャンプした。その様子を見て、二層の迷宮区にいるトーラスを重ねたアルファは、ナミング系の攻撃が来ることを予測し、それを瞬時にユウキに伝える。

 

 アルファ「ナミング系来るぞ!タイミング見てジャンプ!」

 

 ユウキ「!」

 

 アルファの予想は的中し地面に繰り出された衝撃波を二人は躱した。またもや隙の生まれた女王グモに対して二人でソードスキルを打ち込む。

 相手がどんな行動を取ってくるかわからない以上、連撃系のソードスキルを使わずに、一撃離脱を繰り返すユウキの判断力は素晴らしものだ。女王グモの残りの攻撃パターンは、嚙みつき攻撃と粘着液をまき散らす攻撃だけであり、他のクモのモブと変わりなかったので慌てることなく対処していく。

 アルファとユウキはそのまま戦い続け、あと二回ぐらいソードスキルを決めれば倒せるであろう所まで女王グモを追い詰める。

 

 ユウキ「!?あっ…」

 

 その時、ユウキは外の光が入ってこない洞窟という不慣れな環境のせいで、少し見えずらくなっていた足元に、粘着液があることを把握出来ていなかった。その粘着液をガッシリと踏みつけてしまったユウキは、身動きが取れなくなる。

 女王グモはそれを好機と見たのか、ユウキに突進しながら嚙みつき攻撃を繰り出そうとしてくる。しかし、

 

 アルファ「させるかよッ!」

 

 アルファが女王グモとユウキの間に割って入り、女王グモの足にソードスキルを打ち込む。戦闘が始まって以来、執拗に足に攻撃を決めていたことが功を奏したのか、女王グモの足は切断され、バランスを保てなくなった女王グモはその場に倒れ込んだ。

 だが、アルファは女王グモの巨体に吹き飛ばされ、洞窟の壁に激突し、体力をイエローゾーンまで落とす。動けるようになったユウキは、あと少し残っている女王グモの体力を削るべく、その場から突進系ソードスキル<ソニックリープ>を発動させた。

 ソードスキルのモーションに含まれる素早い移動を巧みに使うことで、女王グモとの距離を瞬間的に詰め、女王グモを撃破したのだ。

 

 ユウキの視界にはLAボーナス獲得のメッセージが流れており、本来ならばそれに大喜びしているのだが、今はそれどころではなく、急いでアルファの元へ駆け寄った。

 

 ユウキ「…な、なんであんな事したのさ!ボクの体力なら一発受けても大丈夫だったんだよ!?」

 

 ユウキの言う通り、あの状況で攻撃を受けても死ぬことはなかった。むしろ結果的には、不安定な体勢で攻撃を受け止めたアルファの方が、ダメージを受けてしまったのだろう。

 だが、アルファにとっては、仲間が傷つく瞬間は自分が傷つくことよりも恐ろしいものだと、キリトの一件を通して実感していた。それに耐えられなかった為、あのような行動に及んだのだ。

 そんなことを言うのは恥ずかしかったが、ユウキは真剣に怒っているように見えたので、正直に伝えることにする。

 

 アルファ「悪かった……仲間が…ユウキが傷つくのを見たくなかったんだ」

 

 ユウキは一瞬、キツネにつままれたような表情を見せたが、やがてプイっと向こうを向きアルファに聞こえないぐらいの声量でこう呟いた。

 

 ユウキ「……バカ…カッコつけすぎだよ」

 

 アルファはユウキが何かを言ったことには気が付いたが、しかし内容まで聞き取ることが出来ず、洞窟の闇でその表情も見れなかったが、どうせ、お小言かなんかだろう、と思い、気にも留めやしなかった。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 夕方5時、この時間にズムフトの一角で第三層の攻略会議が開かれる予定のため、アルファとユウキは集合場所へと足を運んでいた。集合場所に到着すると、前方から巨漢の男が近づいてくる。

 

 エギル「おお、アルファ!一層以来だな」

 

 アルファ「…!エギルさんですか、お久しぶりです」

 

 エギル「タメでいいぞ。しっかし、お前さんほどの腕の持ち主がどうして二層のボス戦に出なかった?心配したぜ?」

 

 俺のことなんかを心配してくれていたとは、やはりエギルは相変わらずのナイスガイだ。エギルの、敬語は無くていい、という言葉にアルファは甘えることにする。

 

 アルファ「あぁ、悪かったな。ちょっと後続組の育成を手伝っててよ。…紹介する、今コンビを組んでるユウキだ」

 

 ちょうど俺の後ろに居て、エギルからは死角になっていた位置からひょっこり現れたユウキにエギルは面喰っていた。

 

 ユウキ「エギル…だよね?よろしくね!」

 

 エギル「おう、よろしく頼むぞ!」

 

 エギルはなぜか生暖かい目をこちらに向けてきた。…何となく想像は付くが、彼の考えているような関係ではないので、悪いが気が付いていないフリをさせてもらおう。

 

 エギル「にしてもお前さんは、俺たちが苦労して二層を攻略している間に、女の子をたぶらかしていたとは…」

 

 何の反応も見せなかったのに、わざわざ追撃してくるとは…。前言撤回しよう、エギルはナイスガイなどではなかった。ただのゴシップ好きなおじさんだ。

 

 アルファ「そんなんじゃねーよ、第一ユウキは滅茶苦茶つえーからな。後から腰抜かすんじゃねぇぞ」

 

 エギル「そいつは楽しみだ…」

 

 ユウキ「ボ、ボク、頑張るよ!」

 

 それからしばらくエギルと談笑していると、遠くにディアベルの姿が見えたので、今回からボス戦に参加しようとしている新参者のユウキが、ボス戦に参戦しても問題ないかを聞きに行くことにした。

 

 アルファ「ディアベル!久しぶりだな」

 

 ディアベル「アルファ君、久しぶりだね」

 

 アルファ「…今度のボス戦から一人参加させたい奴がいるんだが、いけるか?レベルは12だ」

 

 ディアベル「…12なら十分だよ。それにアルファ君の紹介なら信頼できるからね」

 

 アルファ「りょーかい。サンキュー!」

 

 ディアベル「じゃあ、そろそろ会議を始めることにするよ」

 

 そう言ってディアベルは壇上へと向かっていったので、アルファも適当な位置で座ることにした。エギルとおしゃべりを終えたユウキも隣に座ってディアベルの言葉を待った。

 

 ディアベル「今日も会議に集まってくれてありがとう!後続組の人たちも良かったらオレの話を聞いていってほしい─」

 

 その言葉を皮切りにディアベルが攻略会議を始めた。内容は、今日、フィールドボスを倒し、迷宮区までの道が開かれたこと。アルゴの攻略本での、迷宮区の道中と迷宮区に出現するモブの注意点や危険なところについてのおさらい。今のところアルゴの攻略本は<信用できる二次情報源>という扱いらしい。…攻略組の敵意がアルゴに向かなくて本当に良かった。

 そして一番大きな発表だったのが、ディアベルがギルドを立ち上げたことだ。名前は<ナイツ・オブ・ホープ>今の所、前線組では一つしかないギルドであり、新人はレベル9から募集しているらしい。次の会議は迷宮区の最上階をマッピングし終えたら開くことに決定し、お開きとなった。

 

 キリト「アルファ…ちょっといいか?」

 

 攻略会議が終わると、やけに神妙な顔をしたキリトが、アスナと共にやって来て俺に大事な話があると言ってきた。ユウキはアスナとは初対面だが、すぐにアスナと打ち解け、女子トークが盛り上がっている感じだった。

 大事な話を始める前に、キリトが何もない空間に向かって「いるんだろ?キズメル」とか言い出したので、ビックリしたが、本当にそこに綺麗な女性がいたので、更に驚かされる。

 キズメルと呼ばれた人物もユウキたちの方へ向かっていったのを確認してからキリトが俺に尋ねてきた。

 

 内容は共に行動しているキズメルがNPCとしてのスペックを超えていて、キリトはそこに命があるように思うが、アルファどう思う?というものだった。

 

 アルファ「俺も生きてると思うかな、さっきの感じ見ると」

 

 確かに、あそこまで自立した行動を取るNPCは他には見たことがない。だが、自他共に認める天才、茅場晶彦が一肌脱げば、命のあるNPCを誕生させることぐらい朝飯前なのかも知れない、というのが俺の考えだ。

 

 キリト「ず、ずいぶんあっさりと納得するんだな」

 

 アルファ「俺は人智を超えたものを肯定する派だからな」

 

 キリト「そうなのか…」

 

 アルファ「じゃ、アスナたちのとこ行こうぜ」

 

 俺とキリトはアスナたちが待っている場所に着いた。しかしなぜだろう、アスナから殺気が向けられている気がする。キズメルは何故か俺に憐みの目を向けていた。…あれは明らかに心が、感情がある表情だろう。

 すると、こちらに気が付いたユウキが、悪びれた様子もなくこう言う。

 

 ユウキ「あ、アルファ!…アスナってアルファから聞いてた感じと、ぜんっぜんイメージ違うね~」

 

 そこでアルファは、ようやく事の重大さに気が付いた。

 

 アルファ「ユ、ユウキ…まさかお前アスナに話したのか…?」

 

 ユウキが再び話し出す前に、ニッコリとした笑顔でアスナが喋り掛けてくる。

 

 アスナ「アルファ君?ユウキちゃんに何を教え込んだのかなぁ。私それ聞いて凄いびっくりしたんだー」

 

 何もアルファはユウキに、アスナは怖い人だよってことを教えただけなのだ。そんなにまずかっただろうか。うん、それりゃぁ不味いだろ。今のは完璧な反語だ。

 

 アルファ「キ、キリトッ!助けてくれ!あれはヤバい!!」

 

 キリト「お前なにしたんだ…あんなアスナ俺でも見たことないぞ…」

 

 アスナの鬼の剣幕を見たキリトは自然と俺から距離を置いて、暗に何のフォローもするつもりがないことを示してきた。

 

 「そんな、薄情なっ…」

 

 「はい、こっち行こうねー、ここだと邪魔になるからねー」

 

 「い、いやだ───ッ!」

 

 その後アスナ、もといアスナさんにしっかりと絞められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ちょっとそれっぽい雰囲気を描いてみました。早々にブラックコーヒーが必要になるほどの展開に持っていく予定は無いです。

 では、また第13話でお会いしましょう!
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