~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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最終話 明日を生きる意味

 「──瀬戸内や近畿、東海地方にも雲が流れ込む可能性が──」

 

 薄型長方形の大型機器から、本日の天気予報の解説が聞こえてくる。それを聞き流しながら、慌ただしく朝の支度を行っていく。無造作に投げ捨てられたネクタイを手に取り、少しくたびれた春物のスーツを身に纏った。

 朝食に使った皿を片付け、歯磨きを始める。洗濯物をベランダに干して、鞄を手に取った。鏡を確認することもなく家を発とうとするも、最後にテレビを消すことは忘れない。

 いつの間にか天気予報は終了しており、トレンドコーナーなどというものが始まっていたが、そんなものに気を取られるわけもなく画面を暗転させておいた。そう言えば、今日の空模様がどうなっているのかを聞き忘れていたが、そんなものを今更気にしても仕方がないだろう。どうせこの心模様はもう二度と、青空を見ることはないのだから。

 

 そんな自虐的な思考を浮かべつつも、玄関ドアを閉め、駐輪場へと足を向ける。黒い自転車に乗り込み、駅へとペダルを漕ぎ出した。

 辿り着いた駅構内は、超満員の押し合いへし合いだ。そんなことはこの街では日常茶飯事ではあるが、どれだけの歳月が経過しようとも、それに慣れることは終ぞ無かった。目的の電車が到着するのを待っていると、その路線で人身事故があったとのお知らせが飛んでくる。

 …どうせまた、くだらない動機での自殺だろう。まるで命の無駄遣いだ。その命、果たして名も知れぬお前になんの意味があったのだろうか。そんな風に使い捨てるぐらいならば──。

 と、毎日のように飽き足らず、心の片隅で同じようなことを考え始める。だがすぐに意識をこちらへ取り戻した。妄想の世界はぐしゃぐしゃと乱暴に丸めて、ゴミ箱に放り込んでおいた。

 計画は変更だ。早足にロータリーへと向かう。携帯でタクシーを呼び寄せ、運転手に目的地を告げる。

 数十分後、縦長の構造物が、天をも貫く勢いで立ち並ぶエリアに降り立った。その摩天楼の一つに足を踏み入れ、エントランスをつかつかと歩いていく。今日の受付嬢に挨拶を交わされ、適当に返事をしておいた。

 階段を何度かぐるぐる登って、やがてシンプルだが小洒落たオフィスに到着する。まだ誰も来ていないようだが、取り敢えず割り当てられた席へと向かうと、入口の方から低い声が響いた。

 

 「一井、早いな」

 

 「あぁ…おはようございます、部長。今日は電車で人身事故があったらしいので、タクシーで来たものですから」

 

 「タクシーで出社か、お前も随分と偉くなったもんだな」

 

 「いえいえ、部長のお力添えがあってこそですよ」

 

 「ハハッ、そう言ってくれると、俺も嬉しい。まぁ一井なら、すぐに俺の席も奪ってしまうだろうがな」

 

 「いや、まさか」

 

 「お前は異例のスピードで出世してるんだ。このペースで行けば、三十代前半で課長になってもおかしくないと思うぞ」

 

 などと会話を交わしているうちに、ぞろぞろと同期や先輩、後輩がオフィスに到着し始める。彼ら彼女らとも他愛もない言葉の投げ掛け合いをしつつも、早速今日の仕事に取り掛かり始めた。次の大型案件に向けた準備を進めたり、後輩の企画書をチェックしたり、或いは先輩の相談事に乗ったりと、一日が目まぐるしく過ぎ去ってゆく。

 

 俺も今はもう、二十代後半に突入していた。そんな俺の役職は、係長。三十代前半辺りに係長へとステップアップすることが多いらしいこの会社では、俺の昇進はかなり早い方らしい。なんでも、それは俺の優秀さによる結果のようだが、果たしてそれが何になると言うのだろうか。

 部署内の仲間たちと協力して仕事に取り組み、食堂で昼食を摂りながら気安い会話に花を咲かせたり、或いは、業務時間中に休憩がてら小話をしたりと、間違いなくこの生活は満ち足りているのだろう。だが俺の心は、満足には遠く飢え続けていることも、また理解してはいた。

 

 気が付けば、今日も定時になっていた。皆ぞろぞろと職場から出ていくが、家に帰っても特にやりたいこともない俺は、余計なことを考えず、ただ仕事だけに集中するために、それからもうしばらく残り続ける。

 しかし、残業時間が多過ぎると、それはそれで問題になるわけだ。区切りの良いところで暇つぶしを終えた俺は、夕陽が消え入るオフィスの中で一人帰宅準備を行い、その場を後にしようとする。

 不意に、仕事場の前に佇んでいた部長に声を掛けられた。てっきりもう帰ったと思っていたんだがな。部長は俺を見やると、複雑そうな面持ちで口を動かした。

 

 「一井、お前もうちょっと息抜きしたらどうだ?毎日毎日残業ばっかり、偶には皆と飲み会にでも行けばいいだろう」

 

 「大丈夫ですって。別に俺は、残業で無理してるつもりはありませんから」

 

 「…そうか。なら、いいんだがな…」

 

 「それじゃあ、俺はもう帰らせてもらいますね」

 

 こうして部長に気を遣われるのは、これで何度目だろうか。だが俺とて、嫌々残業をしているわけではない。寧ろ残業でもしていないと、俺の頭の中に思い浮かぶことはたった一つしかなかった。なれば、そのことを出来るだけ考えたくはない俺が、どうして残業をしないでいられるだろうか。

 部長に別れを告げた俺は、そのままエレベーターへと足を向ける。しかし部長が、もう一度俺を呼び止める。

 

 「一井、一ついいか?」

 

 「どうしました?」

 

 「お前もそろそろ、身を固めたらどうだ?うちは高給取りだし、お前は若手ながら役職にもついている。別にもう、家計が圧迫するほどの月給でもないだろう?家庭を持てば、今みたいにワーカホリック気味になることも無いはずだ」

 

 家庭、結婚、夫婦…どれも俺の嫌いな言葉だ。脳裏にかつての記憶がチラつき、胸が何かに押さえつけられる。

 

 「……」

 

 「一井の周りには、お前に好意を寄せている社員だっているだろう。もしあの子たちがお前のタイプじゃないって言うなら…お見合いとか、合コンとか…まぁ、一井なら引く手数多──」

 

 「──いえ、俺は……結婚には、余り興味が無いので、家庭を持つことは無いと思いますよ」

 

 「…まさか、そんなことは無いだろ。良かったら俺がお見合い相手探してやっても良いぞ。一回だけでも、会ってみたりしたらどうだ?」

 

 「そんなに気を遣ってくれなくていいですって。…独身貴族だって、悪い物じゃないですから」

 

 部長の厚意を悉く拒絶した俺は、再び身を翻し、今度こそ歩みを進めた。エレベーターに乗り込み、エントランスを通り抜け、夕闇に包まれるオフィス街を歩き始める。こうして何も考えることなくただ茫然としていると、それが頭の中を反響する。俺を底無しの暗黒へと引きずり込み、蝕み、苦しめる。

 

 ──幸せになってください。

 

 君が俺に遺した最後の願い。俺はそれを叶えるためだけに、君の居なくなったこの世界を生き続け、しかし俺は未だその願いを果たすことが出来ていなかった。

 もう君がこの世界から消えてしまってから、十年近くの時が過ぎ去ってしまった。十年という歳月は、君と過ごした四年間の倍以上の月日ではあるが、俺にとっては君と過ごした四年間の方が、より美しい輝きを放っていたように思える。

 この十年は、中身がスカスカの灰色であった。しかし、十年という歳月は、確かに長きに渡っている。それを示すように、俺は君との大切な記憶を、徐々に徐々に、上手く思い出せなくなってきていた。

 勿論、俺の記憶が完全に失われ得ることはないのだとは思う。頭のどこかには、色褪せてしまおうとも決して消えることなきあの豊かだった日々が、確かに残っているはずなのだ。

 だが思い返せなければ、俺にとってはなんの意味もない。君と過ごしたあの日々が、思い起こせる記憶として、次第に頭の中から薄れゆくこの感覚は、俺にはどうにも恐ろしいものでしかなかった。

 毎日毎日君との記憶を思い返そうとして、しかし確実に記憶の空白が増えていくことに、俺は今この瞬間も怯え続けている。もう君との物語は創り出すことが出来ないというのに、この世界は、君だけでは満足せず、俺からその記憶をも奪い去ってしまおうというのだろうか。

 

 けれども、俺があの日から、一度たりとも忘れ去ることの出来なかった記憶も、また一つ存在していた。

 それこそが、君の願いであった。君が遺した手紙を目にし、そして知ることとなった最後の願い。それを叶えることだけが、俺が君に出来る最後の愛であると、俺は信じて疑わなかった。

 だからこそ俺は、君の後を追って死ぬことはなかった。あの手紙さえ見てしまわなければ、俺はもうすぐにでも自ら命を絶っていただろう。君のいない世界を生きていくことなど、俺には地獄以上の苦痛でしかなかったのだから…いや、それは有り得ない、か…。

 もし俺が自殺したら、君はきっと悲しんでしまうだろうからな。君を悲しませたくない俺には、例え生き地獄で道に迷うことになったとしても、手ずから命を絶つことは出来なかっただろう。

 

 そして俺は、君が旅立ったその年から、ひたすらに勉学に打ち込み続けた。無論当時の俺には、何かに夢中になっていなければ、どうしても君のことを思い出してしまい、生活がままならなくなるからといった理由もあったのだろう。

 二年間、延々と学業だけに全てを捧げた俺は、アスナと同じ有名難関大学に進学した。と同時に燃え尽きた。

 アルバイトに精を出すでもなければ、サークルに入会したわけでもない。かと言って学業に専念して院生を目指したわけでもなく、資格勉強に励んだこともなかった。

 卒業単位を取れるよう最低限の勉強だけを行い、学友とは表面上だけ仲良くしておきながら、決して知り合い以上の関係を築くことはなかった。

 君はもうこの世界から旅立ってしまい、俺の隣であの笑顔を浮かべてくれることは二度と無い。そんなどうしようもない現実だけが、受験勉強という都合の良い存在に逃げ込んだ俺に、今一度突き付けられた。残酷でしかない事実が、俺の虚ろな心をボロボロに風化させるまで吹き抜けた。大学生活の半分ほどは、そうして流れゆく毎日をただ茫然と見過ごしながら、淡々と無気力な生活を送り続けた。

 だがそれでも、酒や煙草、ギャンブルや薬物などに溺れてしまうことはなかった。それは、俺に残されていた僅かながらの自制心故だろうか。それとも、君と過ごしたあの四年間、酒の苦手意識を拭うことが出来ないでいた、当時の俺のままで在りたかったからだろうか。それが、俺と君をまだ繋ぎ止めてくれていると、そう縋り信じられずにはいられなかったからだろうか。

 

 がしかし、そんな適当な学生生活を送り続けていたとは言え、有名企業に入社せねばならないという強迫観念は、まだ俺の中に残っていた。故に、夏のインターンが近づくにつれて、俺もまともな受け答えが出来るよう、一応普通の大学生ぐらいには舵を切り直した。

 また、中身良し外見良しのアスナが、学内で悉く俺に話し掛けてくることも、俺が平凡な学生にまで成り上がれた理由だろう。アスナが俺に話し掛けてくるせいで、俺とアスナの関係があることないこと囁かれて始めて…もし俺が、このまま余りにずぼらな日常生活を送り続けていたら、他学生からみれば、アスナはダメ男が趣味なのかと勘違いされる気がした。アイツの為にもアスナの評判を落とすまいと、俺も仕方なく外見だけは清潔に保っていた。

 

 そのせいなのか、一般的に比較すると、外見は良いらしい俺の元にも、異性が近寄ってくることはあった。他にも、キリト達からすると、俺は余りに哀れな人間に見えたのだろう。時々、女友達をそれとなく紹介されることもあった。

 だが俺はその全てを拒否し続けた。君以外有り得なかった。俺に近寄る奴らは、俺の外見ばかり見ていた。心の一端にさえ触れてこなかった。時折、キリト達から遠回しに俺の事情を知らされていた人も居たが、そいつ等から掛けられる上辺だけの慰めなど、俺の神経を逆撫でするだけであった。そんな奴らと俺の心をも包み込んでくれた君、どちらを選ぶべきかなど、一目瞭然であろう。

 キリト達もそんな雰囲気を感じ取っていたのか、好意を持ってきた女性を俺が幾度となく冷たくあしらおうとも、何も言うことはなかった。とは言え、毎度毎度キリト達の友人を無下に扱うのも、それはそれで悪いかと思った。だから俺も、極稀に、そんな異性と、せめて見かけだけでも仲良くしようと努めたこともあった。

 しかし、俺がそうして他の女性と仲良くしようとすると、必ず君が脳裏に過った。そしてその度に、目の前にいる別な女性は、君の代わりにはなってくれないことを深く理解させられた。何度も心の奥に刻み込まれた。

 俺はとうとう、大学卒業に至るまでに、一度たりとも恋人を作ることはなかった。そしてそれは、今もなお同じである。

 

 就職活動は、実に上手くいった。そんなものでいいのかと思うぐらい、適当な返答を続けていれば、すぐに内定が出た。勿論、超一流企業の中には幾つか落ちたところもあるが、俺は見事、第一志望群のトップ企業に入社することが出来たのだ。

 そしてその会社で俺は日々成長を続け、こうして今に至るという訳である。

 一流企業となれば、年収も福利厚生も手厚い。職場の風通しも良くて、休みだってすぐに取れるし、寧ろ取らないと怒られる。あがろうと思えば定時であがれるし、残業だって突発的なことが起こらない限りしなくていい。才能のある者を早急に昇進させつつも、年功序列式を採用することで、完全能力主義の弊害も除去出来ている。俺の就職した会社は、まさにパーフェクトと言えるだろう。

 

 そんな今の俺は、顔は良くて、お金も潤沢にある。でも金稼ぎの為に無理して働く必要もないし、たっぷりと余暇だってある。誰がどう見ても、俺は幸せな人間そのものだろう。そして、君の願いを叶えるべく俺が目指した幸せも、またこうであった。

 ……だが、俺は決定的に見落としていた…いや、違うか。わざと気が付かないようにしていた。ずっとバカなフリを続けていたかった。気が付きたくなかった。でも結局は、それを認識せざるを得なかった。それでは…君が…君が俺に望んだ幸せには、あと1ピース足りていないことに。それすなわち──。

 

 ──ボク以外の人の為に、生きて欲しいんだ。

 

 ……無理だった。そんなの無理に決まっている。君以上の人なんて、もうこの世界のどこを探しても見つけられるわけが無いだろう!?

 

 俺は君の為だけに生きていくはずだったのに、そんな君が俺に託した最後の願いは、君以外の人の為に生きて、俺が幸せになること。だからこそ俺は、客観的には幸せに溢れた輝かしい人に至ろうとも、君の願いを果たすことは出来なかった。

 

 そこで俺はようやく気が付いた。幸福とは、誰かと比較するものではないということに。幸せは、主観的に得られる幸福感以外に有り得ないということを。

 だがそんなことを言ってしまえば、俺はもう二度と、幸せになることは出来ない。君の願いを叶えることだけが、俺に残されたたった一つの生きる意味だ。だが君が願ったのは、君以外の為に生き、その末に俺が幸せを手にすること。それは俺の意思と相反するものでしかなかった。

 そうして君の願いは、いつからか俺を縛り上げた。俺の幸せを手に入れるために、君の願いを忘れ去ってしまうのか。それとも、君の願いを叶えるために、俺の幸せを見て見ぬふりするのか。どちらを選ぼうとも、そこに幸せなどありはしなかった。

 

 俺は結局、幸せにはなれないのだ。君が願わなければ、俺はこんな気持ちに苦しみ喘ぐ必要などなかっただろう。なのに君は願ってしまった。であれば、俺は君の願いを叶えずにはいられない。だがそれはどうしても出来ない。

 二律背反の行動原理が、一つの身体に宿り続ける。きっと俺の自我はいつの日か、完全に壊れてしまうのだろう。そしてその時、俺はもう俺で居られなくなるだろう。そこに生きる者は、俺の皮を被った「何か」だ。

 それは数年後か、一年後か、それとも明日なのか。君の純粋な願いは、俺にとっての呪縛であり、解除する術の失われた時限爆弾と化してしまった。

 …いや、本当は、そんなことは無いのかもしれない。単に俺が、最愛の人を失った悲劇のヒーローであることに酔っているだけなのかもしれない。折角、俺に良くしてくれる人たちの厚意と好意を冷酷に跳ね除けている以上、実際にそうなのだろう。

 俺は自分で自分に酔いしれ、幸せを掴めないと嘆き、自ら破滅の道へと突き進んでいるだけに違いない。でも、もう何でもいいのかもしれない。俺をまだこの世界に繋ぎ止めてくれているのは、君だけなのだから。

 

 そんな、心のどこかで生まれた、己へと向けられた嘲笑を嗤い声にすることはもう無く、俺は代わりに短く息を吐き出した。いつの間にか辿り着いていた最寄り駅構内を機械的に歩き、駐輪場へと向かっていく。

 その時不意に、携帯が震えた。相手が誰かを確認すると、彼である。電話で連絡を取ってくるのは珍しいなと思いつつも、俺は彼との通話を開始した。

 

 「どうしたんだ、キリト」

 

 「やっと出てくれたか。俺、何回も電話したんだぞ?」

 

 「悪い、残業と電車で、携帯鳴らないようにしてた」

 

 「あぁ、そりゃお疲れさん…って、それは置いといてだな。急いで伝えないといけないことがあるんだ」

 

 「ん、なんだ?」

 

 「実は今日で、ALOのサービスが終了するんだ」

 

 「!」

 

 「お前にも…残しておきたいものあるだろ?だから、忘れずにな、ってことだ」

 

 「…助かった」

 

 「そういや、いまALOで話題になってることがあってさ、なんでもぜ──」

 

 「…キリト?…切れたか…」

 

 キリトが俺に向けて何か話題を振ろうとしていたが、電波の調子が悪かったのか、その途中で通話が終了してしまう。まぁ、掛け直す程のことでもないだろうと、そう結論付けた俺は、そこからは自転車を漕ぎ始めた。

 普段は余り電話のやり取りをしない俺達だが、今日ばかりはキリトに感謝しなければなるまい。あれ以来めっきりゲームで遊ぶことのなくなった俺は、ALOがサービス終了することなど、知る由もなかったのだから。

 こうしてキリトの声を聞くのは、実に一カ月ぶりぐらいであろうか。あいつはあいつなりに、自分の突き進みたい道を選び、見事そこへと至った。それだけじゃない。二年ほど前には、キリトはアスナと、遂に現実世界でもゴールインした。

 自らの道を切り開き、最愛の人との永遠を誓い合う。まるであいつは、この世界の主人公だった。対する俺はどうであろうか。自ら選んだ道で途方に暮れ、最愛の人とはもう二度と会えない。やっぱり、俺では主人公にはなれなかったのだろう。

 

 …いつからかだろうか、俺はキリトから、距離を置くようになっていた。勿論、表面上は上手く取り繕えているはずだ。だが心の距離は確実に開いている。別に、あいつらのことが嫌いになったわけではない。寧ろ嫌いになったのは、俺自身のことであった。

 君が居なくなってから、キリトがアスナと一緒にいる所を見ていると、その度に俺はどうしても、心のどこかで思ってしまったのだ。

 …なんでお前らは、幸せになれるんだよ。どうして俺達は、不幸にならなきゃいけなかった。お前らも、悲しみに呑まれちまえ。俺達だけなんて、おかしいだろ…と。

 キラキラと輝くキリトとアスナの二人を見る度に、俺はその心に羨望を浮かべながらも、同時に片隅では浅ましい感情を抱いていた。これ以上彼らの近くに居れば、いつかそれを言葉にしてしまいそうだった。共にあの城を生き抜いた戦友に、そんな悪感情を抱いてしまう自分自身が、何よりも憎かった。これ以上になく情けなく思えた。

 だから俺は、少しずつ少しずつ、彼から心の距離を離していったのだろう。

 …君が隣に居てくれなくては、俺はこんなにも醜悪な人間だったのか。君が隣に居てくれるからこそ、綺麗な自分であろうと、俺は努力出来ていたのだろう。やっぱり君が居ないと、俺はネガティブ思考ばかりに溢れている。

 

 そんな悲観的自己分析を打ち出してから、辿り着いた駐輪場に自転車を停めて、エレベーターに乗り込み、上層にて降りる。そこから少し歩いた先にある扉の鍵を開けて、俺は自宅に戻って来た。

 昨日と同じようにネクタイを投げ捨て、スーツをハンガーにかけてから、手洗いうがいを済ませる。洗濯機を回して、干していた洗濯物を取り込み、そして次は、いつもなら晩御飯を適当に作るのだが…今日は違う。

 埃の被った円盤機器を、部屋の奥深くで見つけ出した俺は、それを拾い、電源ボタンを押した。青いライトが灯り、起動してくれることに安堵しつつも、ソファに腰掛ける。

 久しぶりに魔法の言葉を唱えると、俺は何年振りかに仮想世界へと移動した。だが今はもう、君と過ごしたVRルームを訪れることは出来ない。それが訳もなく、俺の心にジクジクと疼きを与える。

 

 あれから十年の時がたった今、メディキュボイドは医療現場に台頭し、医学は大きく進歩した。手術の失敗による事故死は格段に減ったし、QOLだってうんと質の高いものになった。身体が動かない人、視覚や聴覚に異常がある人、そんな人たちもメディキュボイドを使えば、仮想世界で身体を存分に動かせるようになった。いつの日か誰かが語っていたように、メディキュボイドはまさに、人々に夢を与える機械となったのだ。

 …だが、その夢を与えてくれたのが誰なのか、彼らは知っているのだろうか。一体誰がメディキュボイドの臨床試験に臨み、研究データを迅速に提供したのか、彼らはきっと知らないのだろう。

 …なぜ…何故多くの人に夢を与えた君が、最後には不幸にならなければならなかったのか!?その夢を甘受した多くの人は、君のことを知ることもないままにメディキュボイドを使う資格など無いだろう!!

 …いや、それは流石に、俺の私情が混ざり過ぎているか…。別に君以外にも、臨床試験に申し出た人は居たのだから。別に君じゃなくても、この夢を多くの人に届けられたのだろう。それが合理的な物の見方だ。だがそれでも、俺はそう考えることをやめはしないのだろう…。

 途端に荒れ狂う激情が溢れ出してくるも、十年もの歳月を、この酷く冷たい世界で過ごし続けてきたもう一人の冷めた俺が、熱に呑まれた心に冷や水をぶちまけた。だが最後に俺の心を決めたのは、どちらであっただろうか。

 

 やがてALOへと降り立った俺は、数年ぶりに我が家で目を覚ます。アバターの身体は成長しない。故に俺の姿形は、高校時代と変わらないままであった。だが変わってしまったのは、俺達の家に住む住人は、もう俺しかいないことだろう。

 眼前に広がるリビングルームには、あの日とよく似たオレンジ色の夕焼けが差し込んでいた。夕陽の輝きが、木のテーブルやソファ、キッチン、暖炉を淡く照らし出し、溶け込んでいる。

 記憶の中だけでは、段々と思い出せないことが増えてきていた俺でも、こうして君と過ごした空間を眺めていると、その日々がありありと思い出された。君との記憶の残り火が、また俺の心を少しだけ温めてくれた気がする。

 さて、俺が久し振りにALOの世界にやって来たのは、何も思い出に浸る為ではない。本日23時59分を以て、ALOの世界がサービス終了し、全データが消去されてしまう前に、大切なものを確保しに来たからである。

 その方法は、律儀にもALOの運営体が準備してくれた。簡単なことだ。用意された切り離しソフトを使って、アイテムをALOとは別の空間に送り込むというものである。流石に我が家を転送できるほどの容量はないらしいが、それでも君が俺に託したあの剣技や、まだ数ページしか綴られていないとはいえ、俺にとっては大切なアルバムなどを転送する分には、全く問題無いはずである。

 一度、我が家でゆっくりと最後の時を過ごすことをやめた俺は、時間に追われないようまずは転送済ませてしまおうかと、メニューウインドウを開ける。

 

 「……ん?」

 

 そして、違和感に気が付く。ウインドウの上から五番目。クエスト関連のタブに、覚えのない新着クエスト発注ログが残っていた。数年前にやり忘れたクエストか何かだろうかと、何気なくそれをタップしてみると、クエストの目的が書かれた一文が現れた。

 

 『君にとっての思い出の地へ向かえ』

 

 全く、不可解である。これでは余りに、抽象的過ぎるであろう。

 もう何年もゲームをしていない俺ではあるが、やはりあの頃にクエストを大量攻略した経験から、クエストに関するある程度のことは、もう算数の公式のように覚えていた。

 クエストの目的は基本的に、「具体的に何々しろ」と言った指示が出されるものである。とは言え時折、ぼやけた表現をした指示が出されることもあり、そう言った場合の多くは、NPCへの聞き込み調査等で新情報を得ていくのがセオリーなのだが…こうしてプレイヤーに働きかけてくるクエストは、俺もこれまでに見たことがなかった。

 それは、単に新手のクエスト手法だったのかもしれない。がしかし、アイテム転送以外にやることのなかった俺は、ほんの出来心で、そのクエストに触れることにしたのだ。

 

 とは言え俺とて、本気でクエストをクリアするつもりはなかった。ただ、久し振りにゲームをプレイして、いつの間にか失われていたはずの君から移された好奇心が、俺の中でほんの少しだけ湧いていた。

 本当に思い付きだ。もしその一文の趣旨通りに、俺自身にとっての思い出の地に行けば、何かクエストが発生したりするのだろうかと僅かに気になった。それ故に、そんな突発的な行動を起こしたのだ。

 そうと決めた俺は、すぐにアクションを起こした。我が家にはあとでもう一度戻ってくることに決めてから、玄関ドアを開ける。そのまま何処かへ行こうかと思うも、一度その場で振り返り、我が家の全体像を眺めた。

 

 …こうして改めて眺めてみると、この家は本当に、君の住んでいた現実世界の家とよく似ている……気が、する。俺がそう断言できないのは、もう君の家は、随分と前になくなってしまったからだ。故に俺は今、君の家を鮮明に思い出すことが出来ないでいた。

 …あれは本当に、突然の出来事であった。君が居なくなったその後も、俺はお墓参りの帰りに、度々あの家を眺めに行くことがあった。君が居なくなって、大体二カ月後ぐらいだろうか。いつものように俺が君の家の前へとやって来たその時、君の家はグチャグチャに壊されていた。

 黄色いショベルカーが緑色の屋根を引き裂き、純白の壁は無惨にも剥がれ落ちていく。中の骨組みが無骨に露出していて、君の家の中にあった家具などは、業者らしき人達がせっせと運んでいく。それは見るも無残な光景であった。

 当時の俺は、その惨い現状を受けて腸が煮えくり返り、思わず業者の人に激昂した。一体何の権利があって、この家を壊しているのだと、この家は大切なものだから、破壊して良いわけがないだろうと。

 対する業者の人は、意味が分からないといった表情を浮かべながら、この家を取り壊して更地にすることが自分たちに与えられた仕事だと、そう淡々と述べた。納得がいかず喚き続ける俺に対して、契約書らしきものまで見せてくれた。

 そんなものを見ても、果たしてこの破壊行動が正当な事由によるものなのかは判別がつかなかったが、俺にはただ、君の家が失われていく様を眺めていることしか出来なかった。俺という人間は、これほどにまで無力なのかと、そんな絶望感をひしひしと実感した瞬間だった。

 結局、君の家の跡地は、コンビニに生まれ変わった。それ以来、俺はそこを訪れていない。もう見たくなかった。君が、君の名残が、君の大切なものがこの世界から消えていくことを、俺は受け入れたくなかったのだ。

 きっと今は、またあのコンビニで、新たな生活の営みが紡がれているのだろう。もしそれを君が知れば、家がなくなったことを悲しむだろうか。それとも、誰かに役立てたことを喜ぶだろうか。

 

 それはもう、俺には分からない。

 だって、俺は君を、どこまでも強い人だと信じていた。でも君からの手紙に綴られていた真実は、俺と同じく終わりを怯える君の姿だった。

 俺は何も気が付いてやれなかった。君のことはなんでも分かっていると思っていたのに、実際は何も分かっていなかった。その癖最後の最後で、俺は自分の化けの皮を剥がしてしまった。君は最後までメッキを貼り続けていたのに、その虚栄を溶かしてあげられないまま、君を終わらせてしまった。

 俺は最低だ。どうしようもない人間だ。君が居なくなった後の世界で、何度もそう思った。だが全ては後の祭りだった。途方もない後悔と下らない『もしも』だけが、俺の頭を支配していた。

 だが、それを考慮しようとも、やっぱり君は強かったと思う。何せ、俺とは違って君は、終わるその時まで演じることをやめはしなかったのだから。それを悟らせさえしなかったのだから。

 

 …さて、少し思い出に耽り過ぎたか。取り敢えず、ここはクエストの言う思い出の地ではないらしい。であれば、我が家以外で、俺にとっての思い出の地と言えるような場所は…何処だろうか。

 色々候補地は浮かんできたもののが、俺はやはり、そこだと思った。それは決して良い思い出とは言えないが、ALOにおける思い出の地とは、そこが一番色濃く俺の心に根付いていた。

 数年ぶりに翅を展開した俺は、しかし案外手間取ることなく、以前のように空を舞い始める。当時と比べて、アインクラッドが物凄く閑散としているように思えるのは、もしかしたら、アインクラッド以外にも冒険出来る場所が沢山増えたからなのかもしれない。

 黄昏時の世界を飛び続け、外縁部まで移動する。外部からしばらく上昇して、またアインクラッドに突入した。黄金の光を反射する水面を眺めながら、小さな島を目指していく。

 …君がこの世界で、最後の時を過ごしたあの場所。それが、俺にとっての思い出の地であった。もうこの世界も今日で終わってしまうというのならば、最後ぐらい、もう一度あそこで感傷に浸るのも、今の俺には悪くはないと思えた。

 今日だけは、君の願いも、俺の幸せも、そんなしがらみは全て忘れ去ってしまって、ただ君との記憶を振り返り、ほんの少しだけでも心を満たせる気がした。

 やがて俺は、小島の近くまで辿り着く。瞬間、水面に輝く太陽光が強く反射し、俺から視界を奪い去った。その強烈な乱反射に、俺は腕で光を遮る。島の全体像が上手く見えなくなるが、感覚で大地に降り立つ。

 

 ──そして俺は、それを目にしたのだ。

 

 穏やかな風に靡く大樹が、木の葉のさざめきを創り出している。厚く茂った大樹の木漏れ日は、黄金色のベールのように差し込んでいた。大樹の麓には、色鮮やかな草木がそよ風に揺れている。

 そして──そのちょうど真ん中。小さな人影が、そこにはあった。長く伸びたストレートの髪は、艶やかなパープルブラック。胸部を覆っているであろう黒曜石のアーマー、その下のチュニック、風にはためくロングスカートは全て青紫色に統一されており、腰には黒く細い鞘。後姿でも僅かに見える肌は、闇妖精の特徴である、影部分が紫がかった乳白色。

 もうそれだけで、俺はほぼ確信まで至っていた。ゆっくりとこちらに身体を向けた彼女は、穏やかな表情を俺に向けている。顔は小造りで、えくぼの浮かぶ頬、つんと上向いた鼻の上に、くりくりとしたアメジストの如き輝きを放つ大きな瞳。そして何より……その真っ赤なヘアバンド。

 

 「……ぇ……ぁ……」

 

 上手く、言葉が出てこなかった。今すぐに君の名前を呼びたいのに、喉がきゅっと締まり、全身は小刻みに震えて、言葉を放つことが出来ない。ただ言葉を失ったままに、落ち着いた笑みを向ける君を、俺は眺め続けることしか出来なかった。

 ……だって…だってだってだって、そのアバターの持ち主は……そのヘアバンドは、かつて俺が君にプレゼントしたもので……つまり今、俺の目の前にいる君は──。

 ふらり、ふらりと、俺は君へと距離を詰めていく。徐々に、徐々に、俺と君との距離は縮まっていく。次第に俺は揺れる手を君へと伸ばし、そして遂に、君に触れるまであと数歩に迫ったその時だった。

 彼女は、腰に帯刀していた黒曜石の如く黒き剣を素早く抜刀し、半透明の切っ先を俺に向けたのだ。反射的に斬られると予感し、ピタリと動きを止めた俺は、そこでようやく、君に言葉を放つことが出来た。

 

 「……ゆ……ユウ──」

 

 しかし、俺が君の名前を呼ぶ寸前で、目の前の彼女は、俺にハッキリと言った。

 

 「──絶剣。ボクの名前は、絶剣。……さぁ、ボク達の闘いに、決着を付けよう」

 

 「………は………」

 

 ……意味が、分からない。いま俺の目の前にいる彼女は、君では無いのか?…いや、そんなわけが無い。全く同じアバターが生成されるわけが無いし、あのヘアバンドは間違いなく俺が贈ったもののはずだ。それにその柔らかな声だって、間違いなく君の声ではないか。

 だが彼女は、己を「絶剣」と名乗った。それは事実だ。

 …彼女に聞きたいことが、言いたいことがたくさんある。彼女が俺に向ける有無を言わせないその瞳は、確かに君のものであって、そして何よりも、「闘いの決着」。彼女がそう言うと同時に、俺の目の前に表示されたデュエル申請、「全損決着モード」。これが何を意味するのか、それを理解しているのは、俺と君以外に有り得ないのだ。

 しかし彼女は、それ以上は何も言うことなく、口を固く結んだまま俺との決闘を望んでいる。そして、君から受け取ったデュエル申し込み窓の名前部分は、酷く文字化けしていた。果たして目の前にいる彼女が、本当に君なのか。今の俺には直感以外では判別がつけられなかったけれど、きっと、ぶつかれば、伝わってくるはずだ。

 

 彼女との決闘に挑むことを決意した俺は、その申し込みを受諾し、久し振りに背中から剣を引き抜く。カウントダウンが進んでいく中で、かつて毎日のようにそうしていた自分が俺の意識とリンクし、思考が戦闘一色に研ぎ澄まされていく。

 そして、デュエルが開幕したその時。俺と彼女は既に、一合目を斬り結んでいた。続けて二合目、三合目と、お互いの剣がぶつかり合い、キン、キンッ!と、甲高い金属音と火花を散らし合う。足は流れるように大地を駆け巡り、お互いに一瞬の隙も見せない。翅も魔法も使わずに、ただ剣技のみで決闘に望むことは、最早暗黙の了解であった。

 俺が足技を繰り出せば、君は拳で俺を打ち付け、君の剣が俺の頬を掠めれば、俺の剣は君の肩を浅く切り裂く。まさしく一進一退。どちらも譲らぬ攻防が、十分以上は続いた。

 お互いに決定的な隙を見出すことが出来ず、ソードスキルによるとどめの一撃放てない。一歩も遅れを取れない闘いに極度の緊張感を感じ取り、お互いに呼吸が乱れる。培った剣技と反応速度のみが、この勝負を左右していた。

 だが、何故だろうか。この時の俺は、君に負けない反応速度で、剣戟を繰り広げることが出来ていたのだ。

 お互いの体力がグリーンからイエローへ、更にはイエローからレッドへと、剣が掠め合う度に、ジリジリと決着の時は近づいていく。

 そして、お互いの体力が丁度、あと一強打入れば削り切れるとなった刹那。俺と彼女の動きは、完全にシンクロした。

 

 絶剣「やぁっ!!」

 

 「ハァッ!!」

 

 お互いに漲る気合いを咆哮し、全身全霊を賭けた最後の大勝負の幕が上がる。

 俺は剣に青紫色の輝きを纏わせながら左上に剣を引き戻すと、彼女もまた全く同じ動きを取っていた。そのままほぼ同時に、左上から右下へ、或いは右上から左下への五連突きが解き放たれる。その全てが点と点でぶつかり合い、お互いに剣で相手の身体を貫くことはない。

 今度は右上にぎゅんと剣を引き戻し、やはり彼女も同じ動きを見せる。次は先程とは反対の方角から、エックス字を描くように五連突きを繰り出すも、またお互いの攻撃は完璧に相殺される。

 そして最後の一撃。ここで遂に、技の師である君を超えた俺が、ほんの一瞬だけ早く、剣を中央に引き戻すことに成功する。この時ばかりは、俺も君に打ち勝つことだけに集中していた。

 

 そしてそのまま、俺はシステムアシストに身を任せて、君の胸を貫く……はずであった。

 

 ──ギャリンッ!!

 

 突如として、俺の剣は、綺麗に宙へと打ち上げられたのだ。何が起きたのか、さっぱり分からなかった。だが次の瞬間、全てを理解した。彼女の剣が纏うライトエフェクトが、青紫色から真紅へと移り変わっていたのだ。

 それすなわち……彼女が発動させたOSSは、「マザーズ・ロザリオ」ではなかったということである。俺の放った十一連撃目を、彼女は斬り上げ攻撃で上手く防御し切った。

 そこで技後硬直に襲われた俺に対して、しかし彼女は今なお剣を動かし続ける。斬り上げた剣を手首を返しながら、今度は斬り降ろすように、ズバッ!と俺の身体を一閃した。

 その瞬間、彼女から、声が聞こえた気がしたんだ。

 

 ──十二連撃OSS<ロマンス・ラブ>──

 

 ……やっぱり、俺じゃ、君に勝てなかったか…。

 

 どこか満足感に溢れた敗北感を味わいながらも、体力はゼロへと至り、身体が爆散する瞬間を、俺はただ待ち望み続けた──のだが、どういう訳か、どれだけ時間が経っても俺がリメインライトに変化することはない。

 そこで気が付く。よくよく見てみると、君の放った最後の一閃は、俺の身体の一ミリほど前を通過している。故にダメージ判定となっていないのだ。呆ける俺に対して、「アイ、リザイン」と短く呟いた君は、してやったりと言った笑顔で、俺にこう告げた。

 

 絶剣「これで、二勝一敗一分け…。ボクの勝ち越しだね!」

 

 相変わらずの魅力的な笑顔で、君に元気よくそう言われて、俺はもう、自分を抑え切れずに訊ねる。

 

 「……やっぱ、ユウキなんだろ…?…何が絶剣なんだよ…」

 

 俺が堪らずそう言うと、君はふいと少し悲しそうな表情を浮かべながら、俺に答えた。

 

 絶剣「ううん、ボクは絶剣だよ。…ユウキじゃない。絶剣なんだ」

 

 …どうして君は、そんなことを言うのか。君がユウキじゃなければ、俺は誰をユウキだと信じればいいというのだ。間違いなくあの剣技はユウキの物であったし、その笑顔だって、語り口だって、何もかもユウキではないか。君が望み通りに答えてくれないことに、俺は少し表情を曇らせながらも、言葉を続ける。

 

 「……なぁ、言ってくれよ……ユウキだって、俺に言ってくれよ…」

 

 まるでいつかの日の如く、駄々をこねるように君に縋った俺に対して、少し考えるような素振りを見せた君は、俺にまた答えた。

 

 絶剣「そうだね…ボクが絶剣であって、ユウキじゃない理由、ちゃんと説明してあげるよ。…簡単に言うとね、ボクは、ユウキの残滓。あの日この世界で死んだユウキの魂が、強い想いに因ってこの世界に残っちゃった存在なんだ。だからボクは、ユウキであった頃の記憶は持ってるけど、それ以上は何も無い。あの日から世界がどう移り変わったとしても、ボクはそれに影響されない。ボクは言わば、ユウキの情報が書き残されたメモみたいなものなんだ。白紙がいっぱい詰まってる本物と違って、ボクはメモ用紙だからさ、もうこれ以上は何も蓄積出来ないし、何か変化することも出来ない。肉体を捨て去って、電子に魂を書き写すって言うことは、つまりはそう言うことなんだよ。人としての成長が、そこで終わっちゃうってこと。だからね、ボクはあの日から何も変わることの無かった、かつてのユウキの名残ってわけ──」

 

 君が長々と、己が如何なる存在であるのかを説明してくれるも、俺はもう堪えられず、強く強く、君を抱き寄せた。

 君の優しい香り、柔らかな身体、そして俺の心に染み渡る温もり…何をとっても、俺の目の前にいる彼女は、君でしかなかった。君以外だとは思えなかった。

 …俺はもう、何でも良かった。今この瞬間に、目の前に君が居てくれるなら、それだけで充分であった。俺はもう二度と離すまいと、必死になって君を抱き締め続ける。でも君は、その小さな両腕で、俺を抱き締め返してくれることはない。だから俺は君の耳元で、何度も何度も囁き続ける。

 

 「──じゃあ、ユウキじゃねぇかよ…。…お前は、俺の知ってるユウキなんだろ…?俺と生きてくれた、ユウキなんだろ…?だったらお前は、やっぱりユウキなんだ。俺がお前をユウキだって、そう、信じてるから…」

 

 俺はそうして、君の温かさを全身で感じながら、君に言葉を掛け続けた。

 すると君は、少しだけ困ったような声色で…しかしそこで不意に、俺の背中に腕を回して、俺に言ったのだ。

 

 絶剣「……そう言ってくれるなら……アルファの前だけでは、ボクは…ユウキ……ボクは、ユウキだよ…」

 

 …やっと君が、俺を抱き締めてくれた。そして君は、ユウキであると名乗ってくれた。俺の名前を呼んでくれた。たったそれだけで、十年もの間乾き続けていた俺の心に、豊かな潤いが波紋していく。。

 俺は一層君を強く抱き寄せながら、この十年間、ずっとずっと心の中で詰まり続けていた想いを、声を震わせながら吐き出し続けた。

 

 アルファ「……勝手に、どっかにいかないでくれよ…。…俺はずっと、寂しかったんだぞ……ユウキのいない世界は、すごく退屈だったんだ……」

 

 俺の心からの気持ちを聞いた君は、かつてのように俺の背中を優しくさすりながら、穏やかに相槌を打ってくれる。

 

 ユウキ「…うん、ごめんね…アルファ。突然居なくなっちゃって…ごめんね…」

 

 アルファ「もう…何処にもいかないでくれ…。ずっと、俺の傍に居てくれ…」

 

 ユウキ「……大丈夫、ボクはきっと、アルファの心の何処かに居るから…何処にもいったりなんか、しないよ…」

 

 そして暫くの間、俺達はお互いを抱き締め合いながら、その場に佇み続けた。途中からはお互いに言葉を発することはなかったが、もう俺達に言葉は不要であった。ただ今だけは、十年越しの再会の時に、幸せを甘受し続けた。

 そしてその末に、一度抱擁を解いた俺とユウキは、お互いに満ち足りた顔を見合わせ、そして君が言った。

 

 ユウキ「アルファ、百層に行こっか。きっといい眺めだよ」

 

 アルファ「あぁ、行こう」

 

 俺は君の言葉に同調し、君の小さな左手を取った。するとその小さな手は、俺の右手をしっかりと握り締めてくれる。久し振りにユウキから感じる温かな愛を思い出しながら、俺も同じようにぎゅっと君の手を握り返し、二人でゆっくりと翅を羽ばたかせ始める。

 二人並んで飛翔し、二十四層の外縁部へと向かい、一度アインクラッドの外側へと飛び出る。とそこで君との記憶を一つ思い出した俺は、その場で一度ホバリングした。

 不思議そうにこちらを眺めてくるユウキに、俺は急接近し、そのまま両腕で君を横抱きする。

 

 ユウキ「ひゃ!?」

 

 俺の不意打ち攻撃に対して、ユウキは当然驚きを示した。そんな彼女を見て、俺はまた久し振りに、心の底から口角を上げながら、こう告げた。

 

 アルファ「ユウキさ、お姫様抱っこ、もっとしたいって言ってただろ?だからな?」

 

 俺がそう言うと、ユウキはあの頃と変わらず少々恥ずかしそうに、俺から目線を逸らし答えた。

 

 ユウキ「…もう、アルファは相変わらずだなぁ…」

 

 そんな君の照れたような表情を見て、心中に満足感を覚えた俺は、再び飛翔を開始する。アインクラッド全体は、先端に向かうにつれて、徐々に先細りしていく。俺とユウキが到達した最高地点である七十五層を瞬く間に通過して、ぐんぐんとアインクラッドの頂を目指していった。

 そしてやがて、俺達はそこに辿り着いた。俺とユウキが、遂には見ることのできなかった第百層。第百層に存在するのは、ラストダンジョンに相応しい荘厳な城のみであった。その城の頂点は、一つの尖塔に集約されている。

 俺は尖塔の小さな円形テラスへと降り立ち、そこに君を下ろした。全天、真っ赤な夕焼けに包まれている。こんなに素晴らしい景色が見られるというのに、第百層に他のプレイヤーが見当たらないのは、俺には少々不思議なことに思えた。

 テラスの中で佇み、その美しい情景を眺めていると、隣に寄り添う君が、俺に言った。

 

 ユウキ「アルファはさ、ボクが居なくなった後、どんな人生を送ったのかな。ボク、気になるな」

 

 アルファ「…そうだな。…ほんとに、色々あったんだ…」

 

 君に催促され、俺はその空白とも言える十年間を、一つずつ丁寧に話し始めた。あんなに薄っぺらかったはずの十年だというのに、君に話すとなると、どれだけ時間があっても足りない。際限なくあれこれ話したいことが溢れ出てくるのだ。俺が夢中になって告げるその十年を、君はうんうんと相槌を打ちながら、嬉しそうに聞き続けてくれた。

 しかし、そう悠長に話していられるほどの時間はないことも、俺は分かっていた。出来るだけ簡潔に十年を話し終え、区切りを作る。そして俺は、遂にそれを訊ねた。

 

 アルファ「……実はさ、この世界は、今日で消滅するんだ。……ユウキは…どう、なるんだ…?」

 

 俺が君にそう問い掛けると、君は少しだけ名残惜しそうに笑みを浮かべながら、答える。

 

 ユウキ「……ボクも、今日でお終いなんだ…」

 

 アルファ「…ALOの運営体が用意してくれた、別空間に移動することは出来ないのか…?」

 

 ユウキ「…うん。…でも、今日だけでもアルファにもう一度会えて、ボクは凄く楽しかったよ。ありがとね、アルファ」

 

 …最後の希望は、最早断たれた。君がこの世界と共に消えてしまうことが、もうどうしようもない事であるのは、君の語り口があの日とそっくりであることから、嫌と言うほど実感させられた。

 まるで最後のお別れでもするかのように、君が俺に言葉を送ってくるのを受けて、俺は……仄かな笑顔で、君に笑い掛ける。対する君は、少しだけ意外そうに眼を丸めてから、くすりと笑みを零した。

 

 ユウキ「今日は、泣かないんだね」

 

 アルファ「涙はとっくに枯れちまったからな」

 

 俺がそう言うと、また君は少し笑った。笑顔を浮かべる君を見て、俺もまた嬉しくなって笑みをこぼしてしまう。

 その時、世界が轟音に包まれた。次いで大きく揺れる。何が起こったのかを正確に知っているわけではないが、恐らく、最下層から徐々に徐々に、この浮遊城が崩壊を始めたのだろう。

 もう終わりの時は近い。俺とユウキが再び引き離されるその時が、そこまで迫ってきている。そのはずなのに、俺の心はどうにも落ち着いていた。

 すると君が、ふと俺に訊ねたのだ。

 

 ユウキ「アルファってさ、ボクの残したお手紙、読んでくれたかな?」

 

 俺は君に、こくりと頷き返す。

 

 アルファ「あぁ、読んだ。ちゃんと全部読んだ。何回も読んだ」

 

 ユウキ「じゃあ…アルファはちゃんと、幸せになってくれたかな?ボクはそれだけが、唯一の心残りなんだ。…アルファが幸せになれるかどうか、それがどうしても気になって、こうやって化けて出てきちゃったんだよ?」

 

 アルファ「……」

 

 君は可愛らしくオバケのポーズを取ってくれたけれど、その問い掛けに俺は即答出来なかった。

 俺はそれを、君にどう答えればいいのだろうか。君の願いを叶えると、俺は永遠に幸せを手に入れられないと叫べばいいのか、もう掴めない俺の幸せをどうにか掴もうと藻掻けば、君の願いを叶えることは出来ないという真実を伝えればいいのか、俺には分からなかった。

 

 ……だけど同時に、ようやく、俺は気が付けたのだ。今の俺が、ユウキに伝えられる最高の愛とは何なのかを。

 

 なればこそ俺は、君の正面に身体を向け、背中からゆっくりと剣を引き抜く。左ひざを地につけ、片膝立ちの態勢を取った。剣を両手で頭上に持ち上げ、それを君に捧げるポーズを取る。

 そして俺は、君の瞳をしっかりと見据える。少しばかり緊張した身体に活を入れて、ハッキリと、俺は真剣な表情で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルファ「俺はユウキを、愛しています。俺と……結婚してください。俺には、ユウキ以外を照らすことは出来ない。ユウキだけの太陽で在りたいんだ。俺と、結婚してくれ」

 

 それは誓い。愛の誓いだ。俺は君を見つめ愛の言葉を伝えると、君は僅かに瞳孔を大きく開いた。

 

 ユウキ「……っ……」

 

 システム的な婚約を申し込んだわけでもなければ、結婚指輪を渡したわけでもない。だがこの心は、俺の放った言葉は、紛れもなく本物であった。だからこそ俺は、誓いを立てる為に、己の半身である剣を君に捧げ、愛を言葉にしたのだ。

 暫し俺の瞳を眺め続けていた君は、やがてその瞳を滲ませると、声を震わせながら、途切れ途切れに答えた。

 

 ユウキ「……遅いよ…遅過ぎるよ……ボクは…ボクはずっと、待ってた、のに……っ…」

 

 アルファ「…遅くなって、ごめん…。ユウキ、俺の愛を、受け取ってくれるか?」

 

 君は俺にそう言いながら、その大きな瞳からほろりと二筋の光を煌めかせた。そして俺は、再び君に愛を伝える。

 すると君は……震える両手で俺の剣を受け取り、剣の腹を俺の首に添えあてると、満面の笑みで応えてくれたんだ。

 

 ユウキ「…ボクも、アルファを愛してるよ。これまでも…これからも…ずっと…。…ボクを選んでくれて、ありがとう…」

 

 そう言った君に対して、俺が笑みを浮かべ頷くと、君は俺に剣を返してくれた。そして君は、今度はその表情を微笑みに変えて、俺にそれを告げる。

 

 ユウキ「……ボクは今から、アルファに酷いことを言うね…。…それはもう、二度と解けない、永遠の呪いの言葉……」

 

 そう告げる君の声色は、呪詛などではなくまるで福音のようであった。俺はただ、君に掛けられる永遠の言葉を、待ち続けた。

 

 ユウキ「……ボクだけの為に、生きてください……ボク以外の人を、愛さないでください……ボクと一緒に、幸せになってください……それが、ボクの心の底からの、ホントの本当の、最後のお願いだよ……」

 

 それを聞いた瞬間、とっくの昔に枯れたはずの何かが、俺の目からはらりと零れ落ちた。だが溢れたそれは、やっと心の奥底が満たされたからこそであった。全身が幸福感で満ち溢れ、俺は満足に笑みを浮かべながら、何故か震えている声で、君に伝える。

 

 アルファ「…何が、呪いだ…。俺はその言葉だけを、ずっと待ってたんだ……っ…。俺は、ユウキの為だけに生きる。それが俺の、今も変わらない、生きる意味だからっ……」

 

 その時、俺とユウキの踏み締める尖塔に、大きく亀裂が入った。もう俺達に残されている時間が、ほんの僅かしかないことは言わずもがなであった。

 俺とユウキもお互いに何を言うでもなく、固く身を抱き寄せ合い、熱い口付けを交わした。程なくして、尖塔が…浮遊城が、完全に崩壊した。浮遊する力を失った城は、遥か彼方の大地へと墜ちていく。

 俺とユウキもまた、お互いに決して抱擁を解くことはなく、気の遠くなるような…それは永遠に続いていきそうな、ゆるりとした自由落下に身を任せた。世界が燃えあがるような夕焼けに呑まれている中で、俺は…そしてユウキは、ふと思った。

 …まるで、かつて君と終わりを迎えた、浮遊城での時みたいだなと。でも、今日は一つだけ違うところがある。

 それは、あの日は二人の終わりであったけれど、今日この日は、二人の新たなる門出であることだ。

 そうして二人は、世界が終わるその瞬間まで…いや、世界が終わりを迎えようとも、魂を、混ぜ合い続けた。

 

 その日、世界では、二人の妖精が夕日の逆光を浴び、何処か未来へと飛び去っていく姿が、幻想的に映し出されたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界がこんなにも美しく見えるのは、いつ以来だろうか。

 

 一夜ばかりの幸せな微睡から醒めたその翌日。俺は昼下がりに、自然の残る街を一人歩いていた。

 仕事は偶然有休を取っており…いや、これはもう、必然であったのかもしれない。春の暖かな太陽光を受けながら、俺は君の眠る地へと歩みを進める。通り過ぎていく街の営みは、全てが見慣れたものであるはずだというのに、今日の俺には、とても新鮮なものに映った。

 そして辿り着いた、君の待つ霊園。そこまで来てしまうと、やはりもう君はこの世界に居ないのかと、そんな現実を認識させられる。だが今の俺は、それを必要以上に悲しむことはなかった。君と共に、君の為にこれからを生きていくことが、俺の幸せであり、また君の幸せであると、君に愛の誓いを立てられたのだから。

 君のお墓の前へと移動し、君に似合うであろう可愛らしいお花を添え、祈りを捧げる。心の中で色々なことを君に伝えてから、やがて黙祷を終えた。

 その場を去ろうとする前に、俺は君に…今度は声に出して、もう一つだけ言葉を贈った。

 

 アルファ「…俺はまだまだ、ユウキのところに行くのは先になりそうだけどさ、辛抱強く待っててくれよ?…俺はそれまでに、たくさんたくさん、ユウキに話したいこと、蓄えておくから。それはもう…ユウキがうんざりしちゃって、もう飽きたって言わせてやるぐらいにだ…」

 

 …さぁ、明日会社行ったら、長期休暇の申請でもしよう。それで、君が見られなかったこの世界を隅々まで見て回って、色んなものを食べて…君の為に、溢れるほどのお土産話を用意するんだ。いつか君の待つ場所に辿り着いたその時は、もう何百年だって、俺はそうして君を引き留め続けよう。そしてそれからは、また二人で色んな場所に冒険して…あぁ、そんな感じでいい、うん、そんな感じがいいな。

 

 アルファ「…んじゃ、また来るから」

 

 俺がそう言い残し、君の元から踵を返そうとしたその時だった。

 ふわりと、世界に春風が靡いた。

 そしてその穏やかな風は、俺を優しく包み込む。

 瞬間、俺は春風と共に、誰かに背を押された気がした。

 それに気が付いた俺は、口元を仄かに綻ばせ、ありがとうと呟く。

 

 俺は君に導かれるようにして、明日への第一歩を、確かに繰り出した。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~FIN~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 「先の短いことを理解しているユウキが、それでも誰かを愛してしまったら、二人はどうなるのか」
 
 ちょうど去年の今頃、筆者はそんな妄想に憑りつかれました。そのうち消え去るだろうと思っていたのですが、妄想は膨らんでいくばかりで…思い立って、それを形にすることにしました。そうして、筆者はなんの知識も持たないまま、筆を執り始めたのです。
 …なんて、自分語りはここらで終わりにしておきましょうか。

 それでは、本話をもちまして、この物語を完結致します!長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございましたとでも言うと思ったか(迫真)
 
 え~、次回の投稿日は、三月三十日の水曜日となります。

 では、また次話でお会いしましょう!
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