理由は、このまま書き続けて、プログレッシブのこの先の展開と食い違いが起きてしまうのが嫌だからです。…本当は、プログレッシブのネタバレ防止のためにあまり詳しくは言いませんが、プログレッシブ最新刊で起きた波乱万丈な展開を、筆者の力では修正できない気がしてきたからです。
これは完全に筆者の力不足です。本当にすいません。
ユウキ「…なにこれ」
アルファ「…さぁ?」
アルファ達は今夜、第6層の主街区スタキオンに構えている宿屋の一軒を訪れていたのだが、訪れた宿屋の扉には、妙なパズルが仕掛けられていた。街のど真ん中にナンバープレートが設置されてたので、ゲームらしい奇妙な街だとは思っていたが、ここまでくると、最早奇怪である。
本日は、クエストの消化と武器防具の強化素材を集めるという、中々ハードな日だったので、今すぐにでもベッドに飛び込みたいというのに、目の前に現れたパズルによって、二人はそれを阻まれていたのだった。宿代も払ってしまったが故、今晩はここに泊まるしかないだろう。
アルファ「…解く…か」
ユウキ「……うん…」
二人は何度も寝落ちしそうになりながら、何とかパズルをクリアし、各々の部屋に辿り着くことができた。明日からは拠点を移そう、アルファはそう決意しながら、眠りに落ちた。
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安眠を貪り、すっかり体力を全開させた俺達は今日、主街区の残りのクエストと、次の町のスリバスで受けられるクエストを攻略しようと考えていた。
まずは、主街区から受けられる、連続クエストに挑もうと思い、領主の館に向かったのだが、何故か領主がいなかったので、取り敢えずウルバスの町のクエストをクリアしに向かう。
そこで受けられるクエストは予想以上に数が少なく、すべてが単発ものだったこともあって、時間が予定よりも大幅に余る結果となった。なので計画を変更し、午後からはエルフクエストを攻略するために、その通り道にあるダンジョンへと足を踏み入れたのだ。
アルファ「フン…ッ!」
アルファは洞窟の出口を目の前にして、二体の敵と相対していた。モブの名前は<マンティス・オブ・ケイヴ>和名だと洞窟カマキリといったところだろう。マンティスは洞窟の壁と、保護色によって同化し、プレイヤーに奇襲を仕掛けてくる厄介なモンスターだ。出口目前で壁の両側から躍り出てきたため、即座にアイコンタクトし、ユウキと一体ずつ相手にすることにした。
アルファはマンティスが振り下ろしてきた大鎌をしっかりと回避して、マンティスの腕を両手剣で斬り込む。マンティスはその攻撃に臆すことなく、こちらに向かって羽を広げて飛んできたが、逆にアルファも距離を詰めて、至近距離で体術スキルを直撃させた。それをモロに受けたマンティスは身体をガラス片に変化してしまう。
このような戦法を取れるようになったのも、ユウキとの日々のデュエル特訓のお陰だろう。ストレージを確認すると、<マンティスの腕肉〉というアイテムがドロップしたので、ちょっとユウキを揶揄うことにした。
アルファ「カマキリの肉って、旨そうだよなー」
ユウキ「そうだね!ボクも一回は試してみたいよ!」
アルファ「……え…?」
ユウキ「ん?どうしたの?」
アルファ「…いや、何もない」
アルファは、ユウキのまさかの回答に思わず呆気に取られてしまったが、食の楽しみ方など、人それぞれだろう、と結論付けて、それ以上追及することはしなかった。
洞窟を出て道なりに歩いていくと、アラーロの町という場所に到着した。そこでポーションなどの補給をしてから、ダークエルフの城<ガレ城〉を目指して、再びフィールドに赴いた。
ガレ城までの道のりも、二人が高レベルなせいか、さしたる苦戦もなかったが、荒野が迷路のように入り組んでいたせいで、道中、何度か道に迷ったりした。そして苦節数十分、とうとう城門の前まで辿り着いた。第5層で手に入れた推薦状を門番に見せると、城門が重々しい音を立てて、ゆっくりと開いていく。
ユウキ「…うわぁ…」
アルファ「おぉ…」
二人はガレ城を見て、思わず感嘆の声を漏らした。ガレ城は、煌びやかさこそ第四層主街区のロービアなどには劣るが、その岩壁を繰り抜いて作り上げられた、彫刻のような芸術性が溢れる様には、また華やかさとは違った、自然と調和した美しさを誇っているように思えた。
そのまま二人で城主に謁見すると、客室を用意しておいた、自由に使ってくれ、とのことなので、今日はここに泊まることに決定する。
ユウキ「お城の中、探検しようよ!」
城内は自由に行動してもいい、との許可を城主から得たユウキは、子供のようにお城の中ではしゃいでいる。
…そういう俺自身も、お城という空間に、少し興奮しているのだがな。大食堂や霊樹などを観光?しつつ、次は目の前の図書室に入室した。
ユウキ「あのおじいちゃん、気持ちよさそうに寝てるね」
図書室の一角に、安楽椅子にもたれてぐーすかと眠っている老人…いや、老エルフがいた。
アルファ「まぁ、年取ったら、あぁ、なるんだろうな」
アルファがそんなことを言うと、突然、静寂なる図書室に、大声が響き渡る。
「カアアアアァァ────ッ!!ワシは足腰立たぬ老いぼれなどではない!」
途端の出来事に、ユウキは肩をビクつかせていた。…そもそも、そこまで暴言吐いてないんだけど…。
「最近の若いもんは失礼じゃのぉ……もっと老人をいたわ…!!」
老人は何かを言いかけたが、俺の手の方を見て、急激に真剣な表情に変わる。
「何故、人族がその指輪を持っておる…それはフォールどもに伝わるまじないが掛かった指輪のはずじゃ。返答次第ではただでは済まさんぞ…!」
老人の目を見る限り、本気の目をしており、誤魔化しが利かなそうだったので、俺は噓偽りなく正直に答えることにした。
アルファ「…これはフォールンエルフの隊長格の者を倒したときに見つけたもんだ」
流石にNPC相手に、ドロップという言葉を使う気になれなかったので、そこは比喩的に説明しておく。これは誤魔化しでは無いだろう。
「…ふむ、ワシは言葉の真意を読み取ることができるが、噓はついておらんようじゃな」
──良かった、噓つかなくて。
「…お主らは相当な実力者のようじゃな、よかろう明日の午後1時にここに来なさい。大賢者であるこのワシが<覚醒術〉を授けてやろう」
そう言った老人の頭にクエストマークが表示された。それを見て、俺は何かしらのスキルが得られることを理解する。しかし、どんなものかも、分からないままでクエスト受けるのは不安だったため、老人に尋ねてみる。
アルファ「覚醒術?何ですか、それ?」
「ふん、全ては明日に説明すると言ったじゃろ!」
どうやら答えてはくれないようだ。…しかもそんなこと言ってなかったし…。しかし、大賢者様なのだから、れっきとした理由があるのだろう。
ユウキ「え~、ボクも気になってたのに…」
「お~そうかそうか!覚醒術とはのぅ──」
──こいつは大賢者などではない、ただの女好きだ。ユウキにそう言われて、掌返しのように覚醒術に関する説明を始めた老人を見て、アルファは何だか、この老人に失望させられた気がした。
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ユウキは賢者様から覚醒術について教えてもらった後、まだ探索していなかった地下一階に向かった。長い廊下の先に、茶色の美しい髪をなびかせた女性がいたので、声を掛ける。
ユウキ「!…アスナ!久しぶり!」
アスナ「ユ、ユウキ!?四層以来ね」
そこにはなんと、キリトやキズメルもいた。そしてしばらくの間、ユウキは女性陣と談笑していた。アルファはキリトと、武器やおすすめのクエスト、前線組の進度についての情報を共有している。そして勿論、キリトを冷やかすことも忘れずに、だ。キリトは少し間をおいて、真面目な表情でアルファを見つめて、話し出した。
キリト「実はだな……第六層でPKされかけたんだ…」
アルファ「なに!?」
驚く俺に対して、キリトは事の顛末を話してくれた。攻略組の中にもPK集団がいること、主犯格の黒ポンチョの男がいること、奴らがフォールンエルフと手を組んでいる可能性があること。
…女性陣が話を切り上げそうだったので、キリトは最後に「気をつけろよ」と言葉を残してから、ユウキとすれ違って、アスナたちの方へ足を運んだ。
そこから、ユウキと共に廊下を進んでいくとその先に、白い湯気が出ている扉を発見したのだ。
アルファ「これは…風呂だ!風呂に違いないっ!!」
ユウキ「そ、そうだねー…」
ユウキがなぜか若干引いていたが、俺は大して気に留めることもなく、扉の向こうへ移動する。そこには入り口が二つあった。恐らく、男性用と女性用で分かれているのだろうと思い、ユウキと二手に分かれる。
装備をストレージに収納し、お風呂場に足を踏み入れた。この世界では体を洗うという行為が簡略化されているので、アルファはすぐに天然温泉のような白乳色のお湯に浸かった。
アルファ「はぁ~……いい湯だ」
ガレ城までの砂っぽい大地を歩き、砂ぼこりの掛かった、疲れ切っている体に温泉というのは、実に最高だ。霊樹の根で出来た天然のドームに入って、そこで根にもたれかかりながら、アルファは目をつぶって温泉を満喫していた。
しばらく湯に浸かっていると、突然、体の前方に何か柔らかいものが当たった気がした。正体を確認すべく、アルファは閉じていた目を見開く。すると、そこには何故か、あられもない姿のユウキが、同じようにこちらを見て絶句しているではないか。
アルファ「……は?…え?…なん…」
──なんでここにユウキが!?
アルファは余りに突然の出来事のせいで、上手く言葉を発せなかった。その時、大浴場の入り口の方から、焦燥に駆られたアスナの大声が響く。
アスナ「ユウキッ!そこ混浴よ!だからこの水着を…」
しかし、アスナの言葉は最後まで続くことなく、大浴場にてユウキの絶叫が響き渡った。
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ユウキ「……」
アルファ「……」
──気まずい。
俺は只々そう思っている。いや、勿論、不可抗力とは言え、ユウキの裸体を見てしまったのだから、気まずい雰囲気になるのも仕方ないのかもしれない。…ホントは湯気でそんなに見えなかったのだが。
兎に角、それ以来ユウキは無表情を貫いている。あの後、温泉を出てから、大食堂へ晩御飯を食べに行ったが、いつもなら「ん~、美味しい~っ!」と、食事に感激しているユウキが、一言も発しないまま、黙々と食事を口に運んでいたのだ。その様子からしても、相当怒っているのだろうと、推測が付く。
とうとう、二人は一切会話をしないまま、城主に与えられた客室に辿り着いた。だが、ここで問題が発生した。与えられた客室が、一つしかないのだ。アルファが部屋の前で立ち往生してると、ユウキが無表情で手招きした。アルファはそれに従って客室に入室する。やはり部屋の中には、ベッドも一つしかなかった。
アルファ「…あー、俺はそこらへんで寝とくから、ユウキがベッド使っていいぞ」
アルファは、ユウキをこれ以上怒らせまいと、いつもの冗談めいた様子で「これ、俺のベッドだから!」などと、ちょっかいを掛けることを我慢した。
そして、出来る限りの配慮をして、取り敢えず、椅子に座ろうと移動する。しかし、ユウキが目の前に立ちはだかり、数十分ぶりに話しかけてきた。
ユウキ「…見たよね」
──多分、お風呂の件だよな、アルファは何とか誤魔化そうと思考を巡らせる。
アルファ「い、いや、…」
ユウキ「見たよね」
──ここは修羅場なのか!?ユウキの真顔を見て、アルファは一瞬現実逃避してから正直に答えることにした。
アルファ「…は、はい…で、でも、湯煙でほとんど見えなかったぞ!これは本当だ!!」
ユウキ「ふぅ~~ん、まぁ信じてあげる」
どうやら信じてもらえたようだ。アルファは一安心した。
ユウキ「あと、ベッドは大きいから、二人で使おうよ。アルファもソファだとゆっくり休めないよね」
いつものアルファなら、何かしらの言い訳をして即刻断っていただろうが、今日は色々あって疲れていたことに加えて、ユウキの有無を言わせない表情と、一応、ユウキの裸体を許可なく見てしまったという罪悪感から、ユウキの言葉に甘えることにした。実際、ベッドは大きく、二人一緒に寝てもまだ余裕があるぐらいであった。
アルファは、ベッドに入ってから中々寝付けなかった。それもそのはずで、同じベッドで女の子と寝るなどということは、今までに一切したことがなかったのだ。
…ユウキはもう寝たのだろうか、不意にそれが気になって、ユウキの方を見ると、ユウキもまだ起きていたらしく、ユウキと目が合う。
ユウキ「…さっきはごめんね…ずっと無愛想にしてて…」
突然の謝罪に驚きつつも、別にどちらかのせいというわけではないので、ユウキをフォローする。
アルファ「いや、大丈夫だ、あれは俺が悪かった」
ユウキ「ううん、あれは仕方なかったから、アルファは悪くないよ」
アルファ「…今度からは混浴かどうか確かめてから入浴しようぜ」
ユウキ「そうだね、…そろそろ、眠くなってきたよ…おやすみ」
アルファ「あぁ、おやすみ」
ユウキは大きく欠伸をしてから、向こうを向いてしまった。ユウキの欠伸が移ったのか、アルファもだんだん眠くなってきた。
…ユウキとも仲直りできたし、明日からも普段通りにやっていけるだろうな。アルファはそこまで考えて、ふと、ユウキとコンビを結成した理由が、攻略組に追いつく、というものであったことを思い出した。
正直なことを言うと、今のユウキは攻略組の中でもトップクラスの力を持っている。つまりは、既に当初の目標が達成されていることに、気が付いたのだ。
アルファ(ユウキとのコンビもそろそろ終わり、か)
アルファはそんなことを考えていると、何故か心にポッカリと穴が開いたのような感覚に陥ったが、襲い来る眠気に抗えず、アルファは思考を放棄して、眠りに落ちた。
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ユウキ「……んん……」
ユウキは、窓から差し込む朝日によって目を覚ました。光の強さ具合から七時頃だと考え、そろそろベッドから降りようとする。しかし、隣で気持ち良さそうに眠りこけているアルファを見ると、何だか眠くなってきた。
もう少し寝ようかな、と思ったが、アルファより後に起きるのも何だか癪だったので、しっかりと起き上がることにした。
────寝顔、かわいいなぁ
ユウキは、アルファの顔をまじまじと観察しながら、そんなことをぼんやりと考えていた。昨日は無愛想に接してしまったが、今日は気持ちを切り替えていきたいとユウキは思う。
何もユウキは、アルファに裸を見られて、気分を害した、とかいう訳ではなくて、単純に裸を見られたことが恥ずかしくて、どう接したらいいのか、分からなくなっていたのだ。あの時、アルファが色々と気を使ってくれていたことを思い出して、急にアルファに対して申し訳なくなり、軽めの自己嫌悪に陥る。
アルファの顔を見ていると、自然と、その柔らかそうな頬を触りたいという欲求に駆られた。ユウキはちょっとぐらいいいかな、と考えてユウキはアルファのほっぺをつねる。予想通りアルファの頬は柔らかく、つい、夢中になって触りすぎてしまった。
アルファ「んっ……」
アルファは目は覚めたが、まだ完全に脳内が覚醒しきっていないようだ。ユウキはアルファより少しだけ先に起きた特権を使ってこう言う。
ユウキ「おはよう…アルファはお寝坊さんだねっ」
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アルファとユウキは食堂で朝食を食べた後、大賢者の指定してきた時間帯まで、少々退屈だったので、ガレ城の中庭でデュエル特訓と行っていた。何戦か勝負したが、全てアルファの負けで終わり、近くで見回りをしていた衛兵には
「ほう…そこの淑女、素晴らしい腕だな、是非、私とも手合わせしてもらえんかね」
と声を掛けられ、ユウキVS衛兵、という面白い状況が生まれたりもした。その間にアルファは、手の感覚だけでアイテムストレージを開く特訓をする。衛兵との立ち合いも決着がついたようなので、アルファも特訓を終了した。
大賢者の元へ行く前に食堂で、メインディッシュが魚の昼食を美味しくいただいている時に、ユウキがアルファに質問をしてきた。
ユウキ「アルファの指輪ってどんな効果なの?」
ユウキに聞かれたのはエリートナイトからドロップした指輪のことだろうと思い、その指輪を見せて、これ?、と尋ねるとユウキは首を縦に振った。
アルファ「この指輪の効果は……」
アルファが真剣な表情でユウキを見つめると、釣られてユウキも真面目な顔をする。
アルファ「……秘密だ!」
ユウキにブーブー文句を言われたが、これはユウキにデュエルで勝つための秘策なのだから、今は話すことができない。
不意に食堂の中央に掛けられた大きな時計を見ると、午後一時が迫っていたので、慌てて最後まで取っておいた魚のフライを口に放り込む。
アルファ「そろそろ一時になりそうだな。あのじいさん、時間に厳しそうだから早く行こうぜ」
そう言ってアルファは、ユウキを置いて食堂から図書室目掛けて走り出す。朝に寝坊とか言ってきたお返しに、遅刻でも揶揄ってやろう。
ユウキ「あ、待ってよ!」
ユウキも素早くパンを食べ終え、アルファの後を追って走り出した。
というわけで、今回のお話で出て来たアルファの持つ指輪については、是非是非、皆さんで様々な予想を立てておいて下さい。
ヒントは、プログレッシブのアスナです。
では、また第18話でお会いしましょう!