~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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 キリトと別行動を取っている以上、第七層の描写は難しくなる。そう判断した筆者でした。


第19話 雨降って地固まる

 いくら仲のいい兄弟でも、どれほど愛し合っているカップルでも、あれほど切磋琢磨してきた親友とでも、互いの意見が衝突し、口喧嘩に発展してしまうことは珍しくない。そしてそれは、息ピッタリで、まさに阿吽の呼吸のコンビでも例外ではなかった。

 

 ユウキ「向かい風の道!」

 

 アルファ「いーや、追い風の道だな!」

 

 お互いに目から火花をバチバチと散らしている二人は、第七層の主街区レクシオから出てすぐにある、二手に分かれた道のどちらに進路を決めるかで言い争っていた。昨日アルファが寝込んでいた間に、第六層がクリアされたらしく、体が全快したアルファとユウキはその翌日にガレ城を出発し、エルフクエストをクリアすることに一日掛けてから、遂に第七層へと足を踏み入れた。主街区で防具屋などを確認してから、いざ攻略へ、と足を進めると、主街区の先へと続く道が二つあったという訳だ。

 

 ユウキ「困難な道にはお宝があるに違いないよ!それで装備を強化するべき!」

 

 アルファ「俺たちは出遅れてんだ。だったら、楽な道使ってさっさと攻略組に追いつくべきだ!」

 

「「ぐぬぬぬ……」」

 

 二人はしばらくの間お互いがお互いを睨めつけ合っていたが、このままでは議論が平行線のまま一日を終えてしまいそうだったので、ある方法で決着をつけることにする。アルファとユウキはほぼ同時に拳を突き出して構えを取った。

 

「「最初はグー、じゃんけんポン!!」」

 

 アルファがパーを、ユウキがグーを出した。結果はアルファの勝ちとなり、追い風の道に進むことに決定する。追い風の道では一キロほど進んでもモンスターに出会うことがなく、手持ち無沙汰なユウキが愚痴を零した。

 

 ユウキ「あーあ、こんな簡単なら、向かい風の道に行った方がよかったじゃん」

 

 アルファ「だからぁー、俺達は二日も遅れたから……」

 

 ユウキ「それはアルファが筋肉痛でへばったからじゃん」

 

 アルファ「はぁ~?あれは元はと言えばユウキがやられかけたせいだろ!」

 

 ユウキ「ボクだって、まだ戦えたのにアルファが割り込んできたんだよ!アルファが邪魔したんでしょ!」

 

 アルファ「あぁ!?」

 

 二人の口論は益々ヒートアップしていきそうだったが、目の前にモンスターが出現したため、一旦モブに集中する。<ヴェルディアン・ポイズンワイプ〉というハチ型のモンスターは、ユウキとのコンビネーションですぐさま撃破された。しかし、それ以来、ユウキとの雰囲気は最悪で、ギスギスしたまま一言も喋ることはなかった。辺りが暗くなり始めた頃に草原を抜けて、一見、主街区よりも大きく見える街に到着した。いくつものかがり火が階段状に連なり、家屋の純白の壁装を照らし出す様子は美しい限りだったが、今はそのような気分にはなれない。

 

 ユウキ「…明日の七時にここね、じゃ」

 

 ユウキは淡白にそう言い終えて、どこかへ向かっていった。アルファは一瞬、ユウキを追いかけようかと思ったが、今はそんなことをしても逆効果になる気がして、思わす足を止めてしまう。やっぱり思い直してユウキの元へ向かおうとした時には、もうユウキの姿は見当たらない。アルファは仕方なく、メインストリートに沿って歩いて行く。道沿いに進んでいくと、質の良い大理石を使用している純白の巨大な建物を見つけた。入り口に立っている衛兵にこの場所について尋ねると「ここはカジノだ」と返ってきたので、アルファは試しに入ってみることにする。

 エントランスホールは大きなシャンデリアで照らされていた。奥の大扉を開けるとゲームセンターやパチンコ店特有の騒音が頭に鳴り響く。アルファは頭が痛くなる予感がしたため、すぐさまその場を離れようとしたが、一際大きな声を聞き、不意に立ち止まった。

 

 「アアアァァ──ッ、なんでだよッ!?」

 

 声の主であろう男は、プレイルームの一角で項垂れていた。アルファは関わるまい、と出口に向かおうとしたが、その男が背中に少し長めの、しかし両手で持つには短めの槍を背負っていることに気が付いた。恐らくあれは片手槍なのだろう。攻略組には片手槍を持っているプレイヤーは存在しておらず、何故片手槍を選んだのかが気になったアルファは、興味本位で話し掛けることにした。

 

 アルファ「おい、アンタ、どうしたんだ?」

 

 「あァ…?ガキかよ…どうしたもこうしたもねーよ。オレはカジノで負けたんだよ!見りゃわかるだろううがァ」

 

 身長は高めで、男の顔つきは真面目そうな顔立ちで、顔のパーツも俺とは違って男らしく整っている。だが、髪型はショートで、綺麗に染められた茶髪、その荒っぽい言葉遣いとドスの効いた低めの声も相まって、顔つきとは反してまるでヤンキーのように見える。年齢は高校生から大学生ぐらいの間に属していそうだった。

 

 アルファ「んなもん知らねーよ。…ところでアンタは攻略組か?」

 

 「ちげーよ、オレは攻略組目指してここまで来たんだ、てめえみてーなガキこそこんな所で何してやがる」

 

 アルファ「…気まぐれで来た。アンタこそ攻略組目指してんなら、こんな所で散財しててもいいのか?」

 

 「…!…少し頭が冷えたぜ。助かった、礼と言っちゃなんだが、晩飯奢ってやるよ」

 

 ──コイツ今カジノで負けてたよな、そんな余裕ないだろ、絶対冷静じゃねえ、とアルファは思ったが、色々と聞きたいことがあったので、その話に乗り、オススメの飯屋に連れて行ってもらうことにした。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 アルファは片手槍使いの男に連れられて、この街のメインストリートから外れた路地裏のような場所にあった、こじんまりとした酒場にやって来た。店の中にはNPCの客しかおらず、二人はカウンター席に腰を下ろす。男はビールみたいなお酒とおつまみを頼んでいたが、アルファは以前にお酒は苦手だということを自覚していたため、見栄を張らず、素直に水と串焼きを注文した。

 

 「なんだァ、お前酒も飲めねえのかよ、ガキにも程があんだろ…」

 

 アルファ「ガキガキうっせーなぁ…。俺はアルファだ、アンタは?」

 

 「オレはオウガだ。…そもそもお前みたいなガキが、なんで七層にいるんだよ」

 

 オウガと名乗った男は注文したビールをゴクゴクと流し込んでから、たいそう疑問そうに尋ねてきた。

 

 アルファ「なんでって…そりゃ七層を攻略するためだろ」

 

 アルファは、さも当たり前かのようにそう答えると、何故かは分からないが、オウガは驚きを隠せない表情になる。

 

 オウガ「ウソだろ!?お前みたいなガキが前線に…!?おい、ガキ、てめえは攻略組なのか?」

 

 どうやら名前を教えたのにガキという呼び方は変えないつもりらしい。

 

 アルファ「あぁ、一層と三層のフロアボス戦には参加した。一応攻略組だ、七層はボス戦に参加しようと思ってる」

 

 アルファは串焼きを口にしてからそう答えた。しかしこの串焼き、イカみたいな食感だな。

 

 オウガ「確かにお前の両手剣には業物感が漂ってやがる…」

 

 オウガは俺の両手剣を見ながら感心そうに呟いてた。俺もオウガに聞きたいことがあったので、質問してみる。

 

 アルファ「オウガは何で片手槍をメインアームに選んだんだ?攻略組で槍系統使ってる奴らは全員両手槍だったと思うんだが」

 

 オウガ「そりゃァ、オレはソロだからな、両手槍なんかは一人じゃァ、やってけねーだろうが」

 

 オウガのプレイヤーカーソルに目を向けると、確かにそこにはギルドマークが表示されていなかった。アルファは続けて質問する。

 

 アルファ「それでも槍系統だったら手前処理が厳しいだろ、ソロも難しいと思うんだが、…見た感じ盾持ちってわけじゃなさそうだし」

 

 オウガ「ハッ、まぁそう思うのも無理はねえよ、コイツを見て驚け!」

 

 オウガは自信満々にそう言って、酒場の空いている空間に向かって拳を突き出した。そのパンチには見慣れたライトエフェクトが付与されている。体術スキル閃打だ。

 

 オウガ「どうだァ、これがエクストラス…」

 

 アルファ「体術スキルか、なるほどなー」

 

 アルファはオウガが言い終える前に答えを言って、自身も閃打を打ち込んだ。そのスピードはオウガよりも速く、オウガは微妙な顔をしている。

 

 オウガ「…ケッ、可愛げのねえガキだぜ…」

 

 それからオウガが攻略組の平均レベルや実際のフロアボス戦がどんなものかなどについて根掘り葉掘り聞いてきたが、ふと、こんな事を言い出した。

 

 オウガ「…なァ、ガキ、お前もギルドに入ってねえってこたァ、ソロなんだろ?どうだ、オレと組まないか?」

 

 恐らく、片手槍使いのオウガが後衛を、アルファが前衛を務めれば、理想的なコンビを組めることは間違いないだろう。だが、俺は既にユウキとコンビを組んでいるので、残念ながら断ることにした。

 

 アルファ「…悪い、俺はもうコンビを組んでんだよ、だからオウガとコンビは組めねえ」

 

 オウガ「なるほどな、了解だ」

 

 しかし、今までは考えてもいなかったが、いや、考えることを無意識に辞めていたのだろう、俺は明日になったらどんな顔してユウキと面と向かえばよいのだろうか。思えば俺の15年の人生の中で女の子と口論になり、気まずい雰囲気なるという経験は一切なかったため、明日からどういう接し方をすればいいのか全く分からない。次第にアルファは思考の海に沈んでいく。

 

 オウガ「おい、なんだァ、そんな浮かねえ顔しやがって」

 

 どうやら知らず知らずのうちに俺は沈んだ顔をしていたらしい。

 

 オウガ「…話ぐらいなら聞いてやるぞ」

 

 どうせこのまま一人で考えていても答えは出ないだろうと思い、オウガに話すことにした。

 

 アルファ「…実はさ、今日、タッグ組んでる奴とちょっと言い合いになって、それで、明日からどんな顔で接していけばいいか分からないんだ」

 

 オウガ「…ったく、このご時世に喧嘩かよ。んなもん自分の悪かったところ謝ればいいんだよ」

 

 アルファ「…そうだよな、サンキュー、オウガ」

 

 俺は明日ユウキに謝ることを決意し、オウガと酒場を出るが、何故か食事代は割り勘になっており、騙された気分になった。オウガに「金に困ってんだよ、奢らされなかっただけありがたいと思えや」と言われ、何だか納得してしまったのも悔しい。…俺は将来、カモられる才能があるのかもしれない。二人で今晩の宿を探すことにし、メインストリートに出て、町の中心にある噴水広場まで歩く。不意に、噴水を眺めると、そこにはいつも一緒に行動している少女が、噴水の前にあるベンチで腰かけていた。

 

 アルファ「…ユウキ…」

 

 そう呟くと、俺の声が聞こえたのか、ユウキがこちらに顔を向けた。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 ユウキ「…はぁ…ボク何やってるんだろ…」

 

 アルファと別れた後、いい感じの宿屋を見つけたので、コルを払って部屋に入り、ベッドに飛び込んで枕に顔を埋めながら、そんな独り言を呟く。ユウキはアルファと喧嘩してしまったことを後悔していた。正直、アルファが追い風の道を選んだ理由は攻略組に速く追いつくためだけではなくて、モブのポップ率の低さを考慮して、安全性を取ってくれていたことも理解していた。しかし、自分の意見のメリットに目を向けずに、完全に否定されてしまったことが気に食わなかった。それで、子供みたいな癇癪を起こしてしまったのだ。

 一応、明日の集合場所は指定しておいたので、その時に謝ろうと考えて、晩御飯を食べられそうなお店を探しに、宿屋を出た。

 

 ユウキ「うわぁ~綺麗だな~」

 

 このウォルプータという街の夜の闇と、それを照らすかがり火、そして炎で照らし出された純白の家々の美しい景観を見ると、ボクの沈んだ心も少しだけ癒される。しばらくメインストリートを歩いていると、海の幸を焼いたような香ばしい匂いが漂うお店を見つけ、今夜の食事はそこで済ませることにする。店内に入って、席に座った後、店員さんに注文をして、料理が届くのを待つ。数分後、ユウキの前に料理が運ばれてきた。いい感じに塩焼きされた海鮮物は、とても美味しくて、バクバク食べてしまう。しかし、ユウキにとっては、それがどこか、美味しさが欠けるような気がした。

 

 ユウキ(アルファと一緒だったら、色々感想言い合ったりできるのにな…)

 

浮かび始めた心が再び沈んでいくのを感じ、ユウキは早々に食事を済ませて店を出る。そのまま宿屋に戻っても良かったのだが、何となく夜風に当たりたかったので、しばらく街を歩き続けた。大きな噴水の前にベンチが二つあるのを発見し、そこに座って、少し休むことにする。ユウキは街を歩き回る最中に何度も、アルファにメッセージを送って謝ろうと思ったが、アルファにメッセージを無視されることが怖くて、行動に移せないでいた。

 

 ユウキ(そもそも、もうボクといるのが嫌になって明日になっても集合場所に来てくれなかったら…)

 

 ユウキの思考はどんどん悪い方向に進んでいき、周りが見えなくなり始めていた。その時、

 

 「…ユウキ…」

 

 聞き慣れた、少し高めの声がどこからか聞こえた気がして、思わず俯いていた顔を上げる。声の方向に従って顔を向けると、頼れるパートナーが立っていた。ユウキは、今ここで謝らなければいけない気がして、すぐさま実行する。

 

 ユウキ「あ、アルファ…その、アルファの気持ちも考えずにボクの勝手な気持ちで怒っちゃって、ホントにごめんね」

 

 アルファの顔を見ると、豆鉄砲を食らったような顔をしていたが、すぐに真面目な顔に戻った。

 

 アルファ「…こっちこそユウキの考えを真っ向から否定したりしてごめん」

 

 まさかアルファが謝ってくるとは思ってなかったので、ユウキも一瞬呆気にとられる。

 

 ユウキ「え…じゃあ明日からもコンビでいてくれるの…?」

 

 恐る恐るそう尋ねるとアルファは苦笑いしながら、「当たり前だろ」と返事をしてくれて、すごく安心した。

 

 「ハァ、ガキのパートナーはガキかよ、まぁこれからは仲良くやれよ」

 

 斜め後ろにいた、見た目が怖めのお兄さんがアルファにそう言うと「わかってんよ」とアルファは返した。ユウキは何者なのか気になったので、アルファに聞いてみると「カジノで出会ったダメダメな男だ」と答えてくれる。すると、お兄さんがアルファに拳骨をお見舞いして、「オレはイイ男なんだよ!」と言い返していた。その一連の漫才のような流れにユウキは思わず吹き出してしまう。

 その後、もう一度お兄さんについて聞くと今度は真面目に教えてくれた。どうやらお兄さんは攻略組を目指しているソロプレイヤーで名前はオウガだそうだ。ふと、ユウキはいいことを思いついたので二人に提案する。

 

 ユウキ「じゃあ、オウガもボクたちと一緒に攻略しようよ!」

 

 オウガ「いや、でもそれはわりぃだろ…」

 

 アルファ「お、ユウキならそう言ってくれると思ってたぜ、オウガ、どうだ三人でパーティー組まないか?」

 

 オウガ「…へっ、このおれがガキ二人のお守りかよ。…いいぜ、引き受けてやる」

 

 ユウキ「なんでオウガが上から目線なんだよー」

 

 アルファ「それもそうだな」

 

 ユウキはアルファと笑い合いながら、新たな仲間を歓迎した。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 現在、アルファ達は攻略組の面子と共にボス部屋の扉の前で立ち尽くしている。オウガをパーティー登録した後、宿で休もうとしたら、アルゴからメッセージが届き、内容はボス戦を始めるから迷宮区タワーまで来てほしいとのことだった。幸い、アルゴの攻略本最新刊には、迷宮区までの道のりについて詳しく書かれていたので、三人とも何の被害も受けずにアルゴたちの元へたどり着けた。片手槍を使うオウガが後衛、小回りの利くユウキが中衛、そして一応受けが成立するアルファが前衛という、それなりにバランスのいい陣形で迷宮区タワーを上り詰めていたが、特に驚かされたのはオウガの戦闘スタイルだ。オウガは片手槍の攻撃範囲をしっかりと理解した上で間合いを取り、一撃離脱でテンポよく戦っていく様はヒットアンドアウェイのお手本だった。アルゴの他にもキリトやアスナ、キズメルに、またアルファの知らないNPCがおり、キリトからこの子を助けるために龍の血が必要だという事情を知らされた。竜とはフロアボスのことらしく、一番活躍した人にはカジノの一等商品をくれるらしい。ディアベル達もそれを聞きつけてここに集まり、攻略組の全員が揃ったところでボスの最終確認などが行われた。

 

 アルゴ「FAの皆はこれを飲んでからボスに挑んでくれよナ」

 

 アルゴがそう言って全員に謎の氷水を振舞ってくれた。すべて飲み干すと、炎耐性バフがつく。恐らく、ボスの使うブレス攻撃に備えるためなのだろう。

 

 アルファ「オウガ、緊張しすぎんなよ」

 

 オウガ「…るせーな、分かってんだよそんなこたぁ…」

 

 ユウキ「オウガの実力は十分だからいつも通りやれば大丈夫だよ!」

 

 少し緊張気味のオウガを励ましていると、攻略組は準備ができたようなので、全員でボス部屋に突入した。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 ディアベル「威圧が来る!レベル20未満は下を向け!」

 

 第七層のフロアボスは<アギエラ・ジ・イグ二アス・ウィルム>というドラゴンであった。アギエラは翼を羽ばたかせる予備モーションを見せた後、その両目を光らせて<威圧の視線>を送ってくる。その光に耐えられるのはレベル20以上のプレイヤーだけであり、攻略組のほとんどはそれに耐えられないため、アギエラが飛び立つ時には、その両目を見ないように下を向かなければならない。

 アルファとユウキはレベルが21、20と条件を満たせているが、オウガはレベル17なので、すぐに床を見た。

 

 ディアベル「次はブレス攻撃だ!タンクはスタンした人を優先的に守ってくれ!」

 

 アギエラは口元から炎を漏らしながら、火炎ブレスを吐いてきた。アルファたちはタンクの最後尾に隠れるが、回り込んできたブレスがその体を焼き付けようとしてくる。対策として、ソードスキルを発動させて、その風圧で炎を振り払った。

 火炎ブレスが止み、攻撃のチャンスがきたので、三人でアギエラの前肢に近づいてソードスキルを決める。アギエラが前肢攻撃を右肢で行ったが、左側に張り付いていた三人は、もう一度ソードスキルを炸裂し、二本目のHPバーを削りきる。順調に体力を半分削っていく中、アギエラの行動パターンが変わった。

 

 ディアベル「ブレス来るぞ!」

 

 攻略組は慣れた手つきでタンクの後ろに隠れてブレスをやり過ごす。例のごとく火炎ブレスが止み、誰もが攻めに転じようとしたその時、アギエラがもう一度ブレスを構えていた。その挙動からして、二連続でブレスを放つようだが、アルファは技硬直で動けない。

 

 ──ユウキ、オウガ、代わりにソードスキルを打ってくれ!

 

 アルファがそんなことを言う前に二人はソードスキルを打って、ブレスを防いでいた。…全く、頼れる奴らだ。そこから更にもう一度ブレス攻撃があったが、今度はアルファがソードスキルでブレスを相殺する。そして、それ以降は問題なく最後の一本までHPバーを削り切れた。

 

 ディアベル「ラストだ!パターンが分かるまではガード主体!」

 

 アギエラが両翼を羽ばたかせたため、威圧がくることが確定し、威圧が強化されている可能性も考慮して、一応アルファとユウキも下を向く。しかし、威圧の光が見えない。

 

 アルゴ「オイ、違うゾ!」

 

 アルゴの声を聞いて顔を上げるとアギエラが天井近くまで飛んでいる。…威圧じゃないのか!?まさかの事態にディアベルも凍り付いてしまい、指示を周りに飛ばせない。突然、アギエラの目が赤く光った、威圧だ。

 

 オウガ「ちきしょうがッ…!」

 

 ほとんどの攻略組が威圧の視線を直視してしまったようで、スタン状態に陥っている。アギエラはここぞとばかりに大きく息を吸い込み、火炎ブレス…いや、火球を放ってきた。

 

 アルファ「ユウキ!オウガの前でソードスキルの空打ちするぞ!」

 

 ユウキ「りょうかい!」

 

 それぞれがソードスキルを発動させた瞬間に火球がボス部屋の中心にぶつかって、爆発を起こした。三人は吹き飛ばされたが、ソードスキルで威力を減少させることに成功し、体力の減少は二割減程に収める。

 

 アルファ(まずいな、体力が二割ほどしか残ってない奴らも大勢いる)

 

 このままでは多くの人が死んでしまいそうな状況だった。アギエラは相変わらず天井付近に居座っているため、攻撃することも難しそうだ。いっそ、両手剣を投げつけようかと考えた直後、後方から赤い閃光が走り、アギエラの左肢と翼を切断する。キリトたちの方から謎のエネルギー刃が発せられた為、もう一度打ってくれることを信じて、落ちてきたアギエラのタゲを取りに行く。

 

 アルファ「ユウキ、オウガ、タゲ取りにいくぞ!」

 

 三人で右肢攻撃し、何とかアギエラがキリトたちの方向に進むことを阻止しようとする。だが、攻撃の重さが足りないらしくアギエラは止まらない。しかし、エギルたちが足止めに参加してくれたことで、STRによる重攻撃に成功し、アギエラの歩みが少し鈍くなる。

 

 キリト「みんな、下がれ!」

 

 キリトの指示に従って、その場をバックステップで離れると、キリトが物凄いスピードでアギエラに接近し、アギエラの巨体を十字に斬りつけてその体を四散させた。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 アギエラを撃破した後、キリトの持っていた謎の剣の詳細について尋ねたい欲求に駆られたが、キリト達はそれどころじゃなさそうだったので、またの機会に取っておくことにする。今回一番活躍したのは紛れもなくキリトだったということで、カジノの一等賞はお預けだとディアベルが宣言した。

 疲れ切った様子のキリトたちをエギル等が護衛すると言い、アルファも手伝おうとしたが、「お前さんには新人がいるだろう、今日はゆっくり休め」と寧ろオウガのことを気遣ってくれる。そのお言葉に甘えて、迷宮区の最寄りの街に気を付けながら戻った。

 

 オウガ「よーし、そんじゃ祝杯を上げようやァ!」

 

 ボス戦の緊張感から解放されたオウガは途端に元気を取り戻して、酒場で勝利の祝杯を上げることを提案してきた。

 

 ユウキ「いいね!じゃあお店を探そっか!」

 

 オウガ「オイオイ、お前は酒いけんのかァ?」

 

 オウガが挑発的にユウキに尋ねる。

 

 ユウキ「ボクはお酒飲めるよ!…どっかの誰かさんと違ってねっ」

 

 ユウキがこちらを見て、笑いながら弄ってきた。が、それは事実なので、なにも言い返せない。

 

 オウガ「へえ、やるじゃねーか。…ユウキ!今日からてめえは名前呼びに昇格だァ!…ガキも早く酒飲めるようになれよォ?」

 

 アルファは思わず苦笑してしまったが、こんな感じの三人旅も悪くはないな、とボス戦の後の少し気だるい体でそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 




 オリキャラの登場です。このままユウキと二人の攻略になってしまうと、毎回甘い展開を描いてしまう気がしたので、ここらで彼にお茶を濁してもらいましょう。

 では、また第20話でお会いしましょう!
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