~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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 スポットライトが当たる人物が四名に増えたことに伴い、少し書き方に修正を加えました。

 一人称が、 俺←アルファ、オレ←オウガ、ボク←ユウキ、アタシ←サツキ、といった感じです。

 では、どうぞ!


第21話 ギルド爆誕

 アルファ「うめええええ──ッ!」

 

 現在の最前線は第十二層、十二層は、ほぼ全域がジャングルのような森林で構成されており、踏破しづらいフィールドとなっている。更に、出現するモンスターが、毒を使ってくる羽虫やジャングルを自由に動き回るサルなど厄介な奴らばかりだ。ジャングル特有のじめっぽい湿気も相まって攻略スピードが今までと比べて落ちている。

 そんな最前線が嫌になったせいか、攻略組である俺達は、第十層の主街区を訪れていた。なぜかというと、俺がアルゴに和食が食べられる店が存在するのかを尋ねたところ、十層主街区のある場所で食べられるという情報を頂いたので、そこで食事をしているという訳だ。

 …もちろん情報料はそれなりにしたが、この世界で和食が食べられるのだ、それぐらいは許容範囲だと思う。

 

 オウガ「たまにはガキも役に立つじゃねーか!」

 

 オウガも和食にありつけて大変満足しているようだ。この店は単品で頼むのではなく、メニューに書いてある定食を頼む方式で、俺たちは、どうせなら一番お高いものを、と考え、メニューの一番上にあった料理を注文した。すると、お刺身定食が出てきた。熱々の味噌汁っぽいものに、正真正銘の白米、小鉢に盛られた和え物に加えて、メインがお刺身の盛り合わせといった内容だ。味噌汁さえ完全再現されていたのなら最高だったのだが、白米が食べられる時点でもう良いだろう。

 

 アルファ「…ユウキ?刺身食べないのか?」

 

 ユウキが何故か、一切刺身に手を付けていなかったので、少し気になって尋ねる。…もしかして、お刺身が嫌いだったりするのだろうか。だったら俺がそのお刺身食べたいんだけど。

 ユウキは途端に気まずそうな顔をした。

 

 ユウキ「……ん~、ボク、お刺身食べたことないんだよね。…だからちょっと抵抗があるっていうか…」

 

 サツキ「へぇ、珍しいな、まぁ試しに食べてみ?」

 

 サツキに後を押されて、ユウキは恐る恐るお刺身を箸で掴み、口元に運んで行った。醬油があれば完璧なお刺身なのだが、そのまま食べるのもまた美味しいはずだ。ユウキはしばらく無言で口を動かし続けたあと、目をキラキラと見開いた。

 

 ユウキ「お刺身ってすっごい美味しいんだねっ!これは食べなきゃ損だよ!」

 

 ユウキはそれからバクバクとお刺身を食べまくっていた。それを見たオウガが面白そうにしている。

 

 オウガ「生もん食べたことねーってお嬢様かよ」

 

 ユウキは突然ピタリと体の動きを止めてオウガの方を見る。

 

 ユウキ「……ボクがお嬢様なわけないでしょ。…もーらいっ!」

 

 突然、ユウキは、俺の温めておいたお刺身をかっさらって一口に食べてしまった。

 

 アルファ「おいっ、それ大事に取ってたんだぞ!」

 

 ユウキ「こういうのは早い者勝ちだよー!」

 

 それを聞いた俺はオウガの皿から刺身を奪い取る。オウガはサツキから刺身を奪おうとしたが、その前に頭をはたかれてた。最後の方はお刺身の奪い合いになったりしていたが、無事に?食事を終えて、締めのお茶を飲む。俺の好きな玄米茶ではないが、緑茶に似たこのお茶も中々美味であった。それぞれが一服着くと、ユウキが口を開いた。

 

 ユウキ「…ボク達四人でギルド結成しない?」

 

中々急な話に驚かされたが、俺はオウガとサツキの様子を見てから、言いたいことを言おうと思い、何も言わずに待つ。

 

 オウガ「おおッ!いいじゃねぇか」

 

 サツキ「……まぁ、ええんちゃう、アルファはどうなん?」

 

 俺はまさか、二人共がギルド結成に賛成するとは思っていなかったので、またしても驚く。サツキは大勢で群れるのは嫌いそうだし、オウガはちょっと尖りすぎなところがあるし…

 

 アルファ「いやー、ギルドのシステムがなぁ。…あれって戦闘で手に入れたコルの一部がギルドマスターにいくだろ?そういうのがなぁ、なんか納得いかないっていうか…」

 

 ユウキ「アルファ…ケチだね」

 

 オウガ「アァ、ガキな上にケチだ」

 

 歯切れが悪い言い分は聞き入れてもらえずに、更には悪口まで言われる始末だ。そこはせめて節約家と言ってほしいものである。

 

 ユウキ「そもそも、四人のギルドなんだから、集まったお金はホームを買うために貯めたらいいじゃん」

 

 アルファ「…なるほど、な。…じゃあギルド立ち上げますか!」

 

 サツキ「…ギルド名はどうするん?」

 

 「「……」」

 

 俺達はサツキにそう言われて沈黙した。俺も色々考えてみるが、この四人に相応しいギルド名は思いつかない。…最も、俺はネーミングセンスも持ち合わせていないのだが。四人の中で一番最初に発言したのはオウガだった。

 

 オウガ「オイ、ガキ、なんかないのかァ?」

 

 アルファ「…熱血ドラゴンズ、とか?」

 

 サツキ「それはないわ」

 

 オウガ「…ネーミングセンスの欠片もありゃしねえとは…」

 

 そんなことは百も承知だ。そもそも、さっきから俺の扱いがひどすぎると思うんだが、気のせいだろうか。いや、きっと気のせいではない。

 

 アルファ「だったらさ、二人はなんかないのかよ」

 

 俺が反撃とばかりに尋ねると、サツキとオウガは押し黙る。十中八九、二人もまだいい案が思いついていなかったり、ネーミングセンスが皆無だろう。例えば、灼熱ファイターズ、とかいう風に考えていたのかもしれない。再び沈黙が続く中、これまで黙り込んでいたユウキが遂に口を開いた。

 

 ユウキ「…スリーピング・ナイツ、とか、どうかな?ボクたちは現実世界では眠ってるけど、ここでは毎日戦ってるわけだから…」

 

 アルファ「…いいな、それ」

 

 オウガ「オレも賛成だ」

 

 サツキ「アタシも結構イカしてると思う」

 

 ユウキ「よし、これで決定だね!」

 

 俺は、案外、ユウキのネーミングセンスが良いことに驚く。店を出る前にもう一度、お茶で一服しようと、コップに手を付けた。

 

 ユウキ「…ギルドマスターは…アルファだねっ!」

 

 アルファ「ゲホッ!……勘弁してくれよ、俺はギルド長なんて御免だぞ」

 

 まさかの発言に、俺はお茶を喉に詰まらしてしまった。吹き出してしまわなかっただけ感謝して欲しい。オウガとサツキに話を振ると、彼らはどちらもギルドマスターになりたがらない。この流れは学校の委員会決めを思い出させてくれる。

 

 ユウキ「…じゃあ、ボクがやってもいいかな?」

 

 俺達は即座にユウキの立候補に賛成する。すると、ユウキは嬉しそうに笑顔を綻ばせた。その喜びようは、まるで最初からギルドマスターになりたがっていたように見え、もしかしたら、ユウキは俺たち三人がギルドマスター就任を断ることを予測していたのではないかと思わされる。もしそうだとしたら、とんでもない策士だ。…まぁ、ユウキに限っては、そんなことはなさそうだが。

 

 ユウキ「では、早速クエストを受けに…」

 

 アルファ「…マスター、待ってくれよ」

 

 俺がユウキの言葉を遮るとユウキは恥ずかし気にこちらを見た。どうやら「マスター」と呼ばれることに抵抗があるらしい。ユウキのあらたな揶揄いポイントを見つけた俺は今後が楽しみになりつつも、言いたかったことを口に出す。

 

 アルファ「ギルドを立ち上げる前に、この中で序列を決めようぜ」

 

 俺は四人で総当たりのデュエルを行うことを提案した。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

ユウキ「次は…アルファとだね」

 

 三人が俺の提案を飲み込んでくれたので、早速デュエル始めた。今のところ、俺はオウガに勝ったが、サツキに負けてしまい、一勝一敗という戦績で、ユウキも全く同じ結果になっていた。たった今、サツキVSオウガのデュエルがサツキの勝利で終了し、オウガが三敗で最下位になることが決定していた。

 

 オウガ「…なんでだよオォォォ──ッ!」

 

 デュエルを始める前のオウガは「オレ様に勝てる奴なんていねえんだよ!」と勝つ気満々で意気込んでいたが、結果は悲惨なものとなってしまった。…オウガは何というか、対人戦に慣れていない感じがしたので、それが敗因なのだと思う。一方、サツキはボス戦で見せたような圧倒的な強さをデュエルでも発揮していた。むしろ、まだまだ余裕があったようにも思える。

 特に驚いたのが、ユウキを打ち負かしたことだ。あの剣捌きの速さに置いていかれることなく、的確にユウキに初撃を決めたサツキは間違いなく、このパーティーの中で最強だろう。俺が思うに、サツキは自分の身体の動かし方を完全に把握しているが故の強さだと思う。俺の目指している形だ。もちろん、俺もサツキに負けてしまったので、今から始まる最終デュエルは二位決定戦である。

 

 アルファ「…今日は負けねーからな」

 

 ユウキ「アルファじゃボクには勝てないよ?」

 

 ユウキは憎たらしい笑顔を向けて俺を煽ってくる。確かに、いつも通りユウキと戦っても、ユウキに勝てる自信はまだない。覚醒術を思い通りに発動できるわけでもないので、やはり俺の負けが濃厚だろう。しかし、俺は今日まで密かに練習してきた、対ユウキ戦法を用意している。これがハマれば、今の俺でも十分ユウキに勝てる勝算があると見ている。

 

 ユウキ「そろそろ始めよっか」

 

 ユウキはそう言って、俺にデュエル申請を送ってきた。不意にユウキを見ると、その顔は先程までの笑顔はなく、至って真剣な表情を浮かべている。ユウキの強さの源は、こういった何にでも全力で取り組む精神から由来しているのかもしれない。俺はデュエル申請を受理し、デュエル開始までのカウントダウンがゼロになるのを待つ。

 ユウキの高速戦闘に対抗するために、小回りの利く片手剣で闘うという手段もあるのだが、今はまだ、手に馴染んでいない片手剣を闇雲に使っても、ユウキには通用しないことは分かっているため、両手剣を背中から取り出す。カウントギリギリまで構えを見せないことで、ユウキに初手を読ませまいとするが、ユウキも全く同じことを考えているようだ。カウントが残り2になったところで二人はそれぞれの武器を構えた。…お互いに下段だ、突っ込んでくる

 そう考えた時にはデュエルがスタートしており、二人は大地を駆けていた。

 

 「「ハァァァァア──ッ!!」」

 

 お互いの気迫がぶつかり合いながら、剣が火花を散らす。ぶつかり合いならば、剣の重量で地の利があると判断し、俺は鍔迫り合いに持ち込もうとする。だが、ユウキはそれを予測し、力を抜いて剣を引くことで、合気道のように俺の重心を崩そうとしてきた。勿論、俺もそこまでは読んでおり、ユウキが突き出してきた閃打を半身でひらりと躱し、その勢いで水月を繰り出す。しかし、ユウキは後方に跳んで攻撃を回避した。

 

 アルファ「やるじゃねーか」

 

 ユウキ「それはこっちのセリフだよ」

 

 今度はユウキがこちらに飛び込んできて、連撃で勝負を仕掛けてくる。俺も負けじと両手剣を振るうが、やはり両手剣では片手剣のスピードにはついていけず、ユウキが剣戟の速度を上げるにつれて、危うく一撃を入れられそうになる場面が段々と増えてきた。ここらが引き際だと考えた俺は乱暴に剣を振って、強制的にユウキとの距離を置く。

 

 ユウキ「逃がさないよっ」

 

 ユウキは俺を狩りきろうと距離を詰めてくる。そのユウキに合わせて俺は両手剣を左手で持ち、思いっ切りユウキに対して突き付けた。ユウキは俺が片手剣を装備し直せることを知っているため、片手剣による攻撃を恐れ、ガラ空きの右半身側に大きく移動してから、最大距離で突きを決めようとしてきた。ユウキの顔には勝利の色が浮かんでいる。だが、ユウキの突きは突然現れた瓦礫によって防がれた。

 

 ユウキ「…えっ?…」

 

 ユウキは訳が分からないといった顔をしている。

 

 アルファ「もらったぁ!」

 

 俺はその隙を逃さずにユウキに一撃を決めた。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 ユウキ「ねえ、あの瓦礫って、なんだったの?」

 

 俺はユウキにキッチリ質問されてしまったので、素直に答えることにする。

 

 アルファ「あれは、瓦礫をアイテムストレージに入れてて、左手で剣を操りながら右手でストレージを開いたって訳だな」

 

 ユウキ「でも、ずっとボクの動きを目で追ってたよね?」

 

 アルファ「あぁ、だから何も見ずにストレージを開いたんだ」

 

 ユウキ「…信じられないや…」

 

 アルファ「相当練習したからな。…ちょっと卑怯かもしれねえけど、今回は俺の勝ちだ」

 

 俺は、今までのユウキとのデュエルで勝利したことは一度もなく、いつか倒してやろうと日々特訓していたのだが、そのうちの一つがストレージを空で開く、といったことだった。これが案外難しく、ボタンの位置を覚えて、且つストレージの一番最初に瓦礫をセットしないと実用レベルにまでは持っていけなかった。適応力の高いユウキのことだ、次からは通用しないだろうし、また明日からは負け続ける日々に戻るのだろう。

 ユウキは納得がいっていないようで、ほっぺを膨らませて俺を睨んでいる。どうしようかと困っていると、サツキが声を掛けてくれた。

 

 サツキ「取り敢えず、お疲れ様」

 

 オウガも俺たちの元にやってきて、お疲れさん、と言ってくれた。サツキは途端に、厳しい顔でオウガに話しかける。

 

 サツキ「…まず、オウガ!アンタは対人戦に慣れてなさすぎる。闘い方が対モンスターやから誰にも勝てへんねん。…次にユウキ!ユウキは反応速度に頼り過ぎて技術が足りひん、もっと技巧を凝らさな。…ほんでアルファ!アルファは考えながら動こうとしすぎや。身体が動きを覚えるところまで鍛えんと…」

 

 サツキが結構辛口の講評を下してくれたが、俺を含むオウガ、ユウキの三人の課題を的確に説明してくれていた。やはり二人にも思うところがあるらしく、真剣に自身を省みている。

 

 サツキ「明日からは毎日デュエルで鍛えてくで!」

 

 オウガ「…確かにサツキは結構対人戦に慣れたからなァ。それにガキまで対人戦に慣れてやがったし…」

 

 オウガが不意にそんなことを言うと、サツキの表情が少し強張ったように見えた気がした。…まぁ、気のせいだろう。

 

 アルファ「俺はユウキと二人でコンビ組んでた時に毎日デュエルしてたからな」

 

 ユウキ「ねえ、今のサツキ、すっごいリーダー感あったよ?ホントにマスターやらないの?」

 

 サツキは自分の発言を思い出したのか、恥ずかしがってそっぽを向いてしまった。

 

 サツキ「アタシには無理や。マスターはユウキ!デュエル全勝特権!」

 

 ──こんなことに特権を使ってしまってもいいのだろうか。俺には特権の使い方が物凄くもったいなかった気がしたが、本人が使ってしまったのだから、それでいいのだろう。俺達は少し休憩した後、遂にギルドクエストの発注元に向けて動き出した。

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 ユウキ「いやー、結構余裕だったねー」

 

 俺達は、涼しい顔で洞窟内を歩くユウキに続いて、主街区に戻ろうとしていた。俺達はまず、ギルド結成クエストを受けるために、第三層の主街区に戻ってバオバブのような巨大樹の頂上にいる町長に会いに行った。その場でありがた~いお話を聞かせてもらった後、盗まれた印章が女王蜘蛛の洞窟にあるということで、それを取り戻してきてくれないか、という趣旨のクエストを受け、しばらく洞窟内を探索していると、地面に光るものが見えて、それを手に取ると目的の印章だった。

 常に前線で闘い続けている俺たちにとって三層の洞窟内のモンスターを相手にすることなど、赤子の手をひねるようなものだった。なので、遊び半分で帰りの道のりで出現したクモ共はデュエル最下位のオウガに任せていた。

 

 アルファ「あれ~、オウガさん?前からクモ来てますよ?さっさとやっちゃってくださいよ」

 

 オウガ「…クソがッ…ぜってえ次は勝つ!…」

 

オウガにとっては屈辱的なことだったらしく、俺の煽りに苛立ちながらも、前方のクモを殲滅しに向かった。ようやく、洞窟の出口が見えてくると、四人は自然と早足になってしまう。やはり人という生き物は陽の光を浴びることで元気に生きていけるのだろう。洞窟から出ると、数人の団体が洞窟に向かっていることに気が付く。

 PK集団である可能性も考えて身を隠そうとしたが、もはや目の前にまで集団が迫ってきていたので、隠れることは諦め、いつでも剣を抜けるように警戒しておく。集団のカーソルはグリーンであることを確認し、人殺しをしているわけではないことが判明して、少し気が休まった。集団の人間は全員が男で、装備を見ると、この辺りの層で活動していることが伺えた。彼らは、何かをそちらで話し合い、その後に、髭を生やした武士のような男が話しかけてきた。

 

 「あのー、そこの綺麗なお姉さん?」

 

 視線の方向からして、サツキに呼び掛けているのが分かった。…ナンパなのだろうか。

 

 サツキ「?…なに?」

 

 「その、腰に下げてる剣ってもしかして、刀、じゃないですかね?」

 

 サツキ「そうやで?」

 

 サツキがそう答えると、顎髭の男は今までの半信半疑といった顔を、途端にまるでアイドルを見つけたかのようにキラキラと輝かせた。

 

 「…なっ。…んじゃ、やっぱり貴女は<伝説の刀使い・サツキ>なんだろッ?」

 

 サツキ「で、伝説!?…確かにアタシは刀使ってるけど、伝説になった覚えはないねんけど…」

 

 謎の二つ名を聞いて、俺は思わず吹き出しそうになったが、何とか堪えた。

 

 「十層のボスとタイマン張ったんだろ?」

 

 サツキ「あー、張ったなぁ」

 

 「まさかこんな美人さんがオレの憧れだったなんてなぁ。…こりゃ運命に違いねえ、オレはクライン、二十四歳独身です!」

 

 クラインと名乗った男は今度は正真正銘のアプローチを仕掛けてきた。後ろで控えていた彼らの仲間たちも、我こそはと自己紹介をし、自分をアピールしている。困り果てたサツキに俺は助け舟を出して、流れでこちらのメンバーも自己紹介をした。ユウキが自己紹介をすると、再びクラインたちがアピールしているところを見て、思わず「女の子なら誰でもいいのか?」とツッコんでしまう。

 クラインたちはギルドクエストの関係でここに来たらしく、今から印章を取りに行くのだと言う。装備的にも、洞窟のボスに鉢合わせてしまうと少し危険な気がしたので、印章が落ちている場所まで付き添うことにした。クラインたちの連携力は素晴らしく、無事に印章を手に入れると、クラインが「なんならこのまま女王グモに挑戦したい」と言ったので、全員で女王グモ討伐に向かった。

 特に危うげはなく、女王グモを討伐出来たので、俺達は本日二回目の洞窟の出口に向かっていた。

 

 アルファ「そういや、なんで女王グモに挑みたかったんだ?別に無理する必要はなかっただろ?」

 

 俺が純粋に疑問に思ったことを訊ねると、クラインは真剣な顔で返事をした。

 

 クライン「…ダチがよぉ、前線で頑張ってんだ。オレも早くそいつに追いつきたくてな」

 

 アルファ「…そうか。ま、焦ってレベリング中に死んだりはするなよ」

 

 クライン「へっ、ンなことわかってるっつーの」

 

 洞窟を脱出した後、そのまま町長の元へ向かい、ギルドクエストを達成した。クラインたちは風林火山という名前でギルドを立ち上げる。俺たちもスリーピング・ナイツという名前でギルドを立ち上げた。クラインたちとフレンド交換し、そろそろ別れようとすると、クラインが呼び止めてきた。

 

 クライン「サツキさん!良かったら連絡先…じゃなくて、フレンド登録してくれ!」

 

 俺はクラインとは今日出会ったばかりだが、いい奴であることは十分伝わってきていたので、フレンドにしてあげることぐらい、いいんじゃないかと思う。──っていうか、フレンド登録ぐらい俺と同じノリでやればよかったんじゃ…。俺の頭にそんな考えがよぎったが、自分が同じ立場なら、そんなことは出来ないとも思った。サツキは一瞬考える素振りを見せてから、返事をした。

 

 サツキ「ん~、…じゃあ、クラインがアタシたち攻略組に追いついてボス戦に参加出来るようになったら、その時にフレンド登録してあげる。アタシのことを美人って分かるってことは一次面接は合格やな」

 

 クライン「よっしゃァァァ!すぐ追いつくから待っててくれ!」

 

 クラインは嬉しそうにガッツポーズを決めて、サツキにそう宣言した。

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 クラインたちと別れてから、四人で晩御飯を済ませて、本日宿泊する宿屋に向かう。いつもは四人とも同じ宿屋で部屋を借りているのだが、今日はたまたま二部屋しか空いていなかったので、俺とユウキがそこを取り、オウガとサツキがそれぞれ別の場所で宿を借りた。故に今は、ユウキと一緒に宿に向かって歩いている。

 

 ユウキ「…なんか、アルファと二人って久しぶりだね」

 

 ユウキにそう言われて初めて、最近は四人で行動することが基本になっていることに気が付いた。今考えてみると、この俺がよく、女の子と二人で長期間行動できたのもだ。素直に自分を褒めておこう。

 

 アルファ「…そうだな、今となっては、俺よりも強いサツキもいるし、俺と攻略に勤しんでた時期よりも、随分安全になったかもな」

 

 オウガもモンスター相手なら俺よりも上手く立ち回れているし、なんだかんだ言ってこのギルドで一番弱いのは俺なのかもしれない。そこからは無言が続いた。遂に宿まで辿り着き、お互いの部屋に入るところまで来る。少し弱気になってしまった自分を振り払い、ユウキに「おやすみ」と言うと、ユウキも「…おやすみ」と返してくれたので、部屋に入ろうとする。

 ドアを開ける寸前に、俺はユウキに服の裾を捕まれて、部屋に入ることを引き留められた。

 

 アルファ「…ユウキ?どうしたんだ?」

 

 しばらく沈黙が続いてから、やがてユウキが口を開く。

 

 ユウキ「……確かに四人になってギルドも結成したりしたけど、…ボクにとっての相棒は…アルファだけ、だから…それじゃ、また明日っ」

 

 ユウキはこちらに顔を見せることもなく、自分の部屋に入って乱暴にドアを閉める。取り残された俺も、しばらくしてから自室に入り、お風呂に入ってから、ベッドで横になった。

 

 アルファ「…相棒、か」

 

 何だか上手く眠れなくて、俺はユウキが先程言ってくれた言葉を思い出す。その言葉は、少々弱気になっていた俺の心を見抜いたかのようなタイミングで掛けられた温かい言葉だった。──俺ももっと強くなって、ユウキの隣りに立てるぐらい──

 俺は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ユウキがSAOに参加してしまった以上、シウネーやテッチ達に出会い、スリーピング・ナイツを結成する暇がなくなってしまったので、アルファ達のギルド名に起用させてもらいました。…マジでカッコイイギルド名が思いつきませんでした。

 では、また第22話でお会いしましょう!
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