空気が重く、湿気が体に纏わりついてくる。薄暗い洞穴の中に生息する、少数のヒカリゴケは僅かながら光源として機能しているが、それだけでは視界を確保できず、腰に付けたランタンが辺りを照らしている。
ユウキ「…流石に疲れるね…」
今、俺たちが探索している場所は、現在の最前線、第十四層の大山脈内部にあるドワーフの地下城だ。洞窟の内部がアリの巣のように複雑に入り組んでいるせいで、必然的に探索時間が伸びてしまう。その上、先の見えない暗闇が人間の原始的恐怖を呼び起こし、更には高い湿度が、全身を襲ってきたりと、天然のトラップも満載だ。あのユウキが根を上げるほど、精神的に疲労しやすいダンジョンである。
オウガ「さっさとクエ終わらせちまおうぜ」
今回、このような場所に赴いた理由は、ユウキのメインアームを更新するために使う鉱石を探しているからだ。この層では、いい感じの片手剣がクエスト報酬で手に入るのだが、ユウキはどうしても今使っている剣をインゴットにして受け継ぎたいらしい。
目的の青く輝く鉱石はランダム生成されるらしいが、この地下城は無数に穴が広がっているせいで、見つけることが難しく、かれこれ二時間ほど同じような景色の中、洞穴を彷徨っていた。
地下城ダンジョンには虫系のモンスターが頻出し、でっかい幼虫や、ミミズみたいな奴、ダンゴムシもどき等々、如何にも土の中で生息していそうなモンスターたちが登場する。中でも、最も出現しやすいモブは軍隊アリの集団である。この地下に広がる大量の穴は彼らによって作られたのかもしれない。
サツキ「…また、行き止まりやな…」
何十回目かの行き止まりを前にしてサツキは呆れたような声を出した。正直なところ、俺も落胆を隠せない。鉱石は地底湖の傍に出現するようだが、そもそも、地底湖さえ見つけられないままなのだ。
ただ、文句を言ってもしょうがないので、俺達は何とか気持ちを切り替えて踵を返す。
「ゴッ…ゴゴゴゴゴゴ……!」
その瞬間、洞窟全体がまるで地震にあったかのように大きく揺れた。
ユウキ「……だいじょうぶかな?…ッ!?」
洞穴にヒビが入り始め、瞬く間に俺たちの周囲にも亀裂が走る。突然、ユウキの足元が大きく崩れ、近くにいたオウガ諸共、底の見えない奈落に飲み込まれていくではないか。
アルファ「ユウキ──ッ!」
それに気が付いた俺は、闇に飲まれていくユウキに手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
────────────────
オウガ「う、うおおおおお──ッ!」
オレは只今、落下中だ。事の発端は、ダンジョン全体で大振動が発生した後、洞窟の底が急に抜けやがって、それに巻き込まれたって感じだ。どれほど先に地面があるのかは見当もつかないが、打ち所が悪ければ、即死ってこともあり得るだろう。最大限空中で姿勢を整えながら、衝撃に備える。…ってか、底とかなくてこのままゲームオーバーって可能性も全然あるんだよなァ。
ユウキ「オウガッ!ボクに捕まって!」
オレが現実逃避していると、ユウキが壁に剣を突き刺して、落下スピードを緩めようと努力していた。その華奢な腕でよく頑張ってるもんだ。オレはユウキの手を取ってから、自分の片手槍をユウキと同じく側面に突き刺すことでスピード減速に努める。幸い、緩やかに落下は止まっていった。
しかし、オレたちは足場もない空中に取り残されてしまい、支えは二人の武器だけとなってしまう。下方は闇に包まれていて、地面までどれぐらいの距離があるのかを計ることができない。
ユウキ「…どうしよっか…」
流石のユウキにもこの状況を打破する案は思い浮かばないようだ。オレも少ない脳みそで必死に打開策を考える。…別にオレはアホなわけではない。学力で言えば、中堅大学に合格できるぐらいだ。同年代人口の五十%よりは上だ。そんなことよりも、早くしないと武器の耐久値が心配だな。
オウガ「…おっ、いいこと思いついたぜ」
オレはアイテムストレージから、サブウェポンの片手槍を具現化し、放り投げた。片手槍と地面がぶつかり合う音が思ったよりも早めに聞こえてきたことから、底が近いことを把握する。これぐらいなら、飛び降りたとしても死ぬことはないだろう。オレの行動に驚き顔を見せたユウキに事情を説明すると、今度は感心したような顔になる。ユウキのコロコロと表情を変える様子は中々面白い。
覚悟を決めて二人で闇の中に飛び込み、少しの落下ダメージがあったものの、無事に着地できた。辺りに光源が見当たらなかったので、オレ達はランタンで明かりを確保する。
ユウキ「…何とかなったね。取り敢えず、道なりに行こっか」
このゲームの仕様上、ダンジョンの中ではメッセージによるやり取りが不可能になっている為、アルファやサツキに助けを呼ぶことはできない。マップを見ると前方に細長い空間が広がっていることが確認できたので、そちらに移動する。
しばらくの間、歩き続けたが、モンスターがポップする様子は全くない。オレは一応、周囲を警戒しながらユウキと談笑しつつ、更に奥へと向かった。
ユウキ「でね、その時アルファが──」
ユウキはスリーピング・ナイツを結成する前の、アルファと二人だけで攻略に励んでいた日々を語ってくれた。オレはアルファとの冒険譚を楽しそうに話すユウキを見て、少しアルファが羨ましくなった気がした。──ン?なんでこのオレが、ガキなんかを羨んでんだ…?
ダンジョンの中だというのにオレは一瞬、周囲を警戒することを忘れてしまう。そしてその一瞬の隙を狙われたかのように、洞窟の側面が盛り上がった。
オウガ「!?」
ユウキはその違和感に上手く反応し、その場から離れることができたようだが、オレは神経伝達が遅れ、その場から動くことができなかった。
ユウキ「!…避けてっ!」
膨らんだ側面から大量の軍隊アリが飛び出してきた。軍隊アリに勢い良く激突されたオレはその場に倒れこみ、スタン状態になる。身動きの取れないまま、立て続けに軍隊アリ共に踏みつけられ、HPを大きく減らすだけでなく、麻痺状態にまで陥ってしまった。
麻痺状態とはソロプレイヤーにとって最も避けなければならないデバフランキング第一位である。ソロプレイヤーが行動不能になるということは死に直結するのだ。オレは軍隊アリの大群に四肢が食い千切られ、HPがゼロになることを悟った。
ユウキ「ハァァァ──ッ!」
その時、軍隊アリの大群に単騎で突撃する少女が現れた。彼女はその素晴らしい反応速度と美しい剣捌きで次々と軍隊アリを撃破していく。オレは今更ながら、今の自分は寂しいソロプレイヤーではないことを思い知らされた。
思えばオレは、7層でユウキ達とパーティーを結成してから今日に至るまで、ユウキの、このくそったれな世界を誰よりも懸命に生きている姿を見て、自身の日々を生き抜く糧にしていた気がする。ユウキはいつだって全力で人生というものを楽しんでいるかのような、言葉では言い表せない魅力を持っているのだ。特にオレは──
ユウキ「ふう…貸し一つねっ!」
オレが物思いに耽っている間、にいつの間にか大量の軍隊アリ共は全滅していた。ユウキが笑顔で喋り掛けてくる。
そう、オレはこの太陽のように眩しい笑顔が好きだ。
──……アァ、そうか、オレはユウキのことが──
ユウキ「どうしたの?」
ユウキが心配そうに眺めていることに気が付き、オレは何の問題もないことを示すために立ち上がって、身体に付いた土埃を払う。
オウガ「…なんでもねえよ、サッサと先に進もうぜ」
オレ達はまだ終わりが見えない、しかし、確実に闇が広がっている洞窟の先へと足を運んだ。
────────────────
サツキ「取り敢えず落ち着き!」
アルファ「落ち着いていられるか!ユウキがッ、オウガが死ぬかもしれないんだぞ!」
俺はユウキとオウガが落下していった後すぐに、彼らが消えた巨大な穴に飛び込もうとしたが、サツキに手足を取り押さえられて身体を自由に動かすことができなかった。俺の方がSTRが高いはずなのに、何故かどれだけ暴れてもサツキの拘束から逃れることができない。
サツキ「落ち着けてへんから言ってんねん!HPバー見てみ!何の問題もあらへん!」
そう言われて、俺は視界の端にあるユウキとオウガのHPバーを確認すると、一ミリも減っていないことに気が付き、胸をなでおろした。そこで俺は今まで自分が冷静さを失っていたことに気が付き、サツキに謝罪する。
アルファ「…悪かった、取り乱し過ぎだったな」
サツキ「…普通はそうなるから。気にしんとき…」
サツキは何故か遠くを眺めながら、そうフォローしてくれた。俺がこれからどうするのかを訊ねると、サツキがロープを取り出して、それを俺の持っている瓦礫に繋いで安全に穴を下ることを提案する。俺はその案に乗ることに決め、瓦礫ごと穴に落ちてしまわないようにロープを少し離れた場所に設置しようと、二人でその場から離れた。
アルファ「…ここらでいいよな。……ッ!?」
俺とサツキが立っていた場所が突然、崩壊し始めて、ユウキが落ちていったように、俺達二人も暗闇に落下していく。多分、さっきの地震で地盤が弱まったのだろう。そんなことを一瞬考えてから、俺はサツキの腕を掴んで、もう片方の腕で両手剣を壁面に突き立てることで落下死を免れた。
アルファ「…ロープってまだある?」
サツキにそう訊ねると、俺のやろうとしていることを察したのか、何も聞かずにストレージからロープを取り出してくれた。ロープを受け取った俺はロープを両手剣に括り付けて、簡易的な滑り棒のようなものを制作し、それを伝って穴の底に辿り着いた。着地先には光源がなく、黒色に染まっていたので、すぐに明かりを点ける。
アルファ「…これは…ヤバいな…」
サツキ「…やるしかないで」
ランタンの明かりで洞窟内は明るくなるはずだったが、何故か辺り一面黒に覆われたままであった。その正体は無数の軍隊アリの黒光りする全身だ。こちらに気が付いた軍隊アリたちは既に臨戦態勢を取っている。俺たちも戦闘態勢に入り、突撃してくる軍隊アリを次々に迎撃していく。軍隊アリは数で攻めてくるタイプのモンスターである分、装甲は柔らかく、一体一体は比較的撃破しやすい。
もちろん、これだけの数を相手にすることは一般的には自殺行為だが、俺とサツキは特に取り乱すこともなく、冷静に軍隊アリを迎え撃つ。数分かけて軍隊アリを全滅させると、辺りからモンスターの気配がしなくなった。周囲の安全が確保できたと踏んだ俺達は、奥へと進んでいく。途中、何度かユウキとオウガの体力が減るところを見て、俺も身体に緊張が走ったりした。
サツキ「…アルファってギルメンのこと。…特にユウキのことになったら冷静さ失うよな」
アルファ「…そんなことはねえよ」
確かに、サツキの言う通り、俺はサツキやオウガ、ユウキのことを大切に思っているのは事実だ。しかし、ユウキを贔屓して大切にしているとは思いたくない。…だって、それじゃ俺がユウキを好きみたいじゃないか。いや、俺はユウキのことを好きなだろう。だが、それはloveではなくてlikeだし、その理論で行けば、俺はオウガやサツキだって好きだ。思考の海に溺れていた俺はサツキの言葉で現実に引き上げられた。
サツキ「…まぁ、言いたいこととかは早めに伝えときや。アタシらはいつ死んでもおかしくないからな」
俺の心を見透かしたような一言を投げかけてきたサツキに驚愕しつつも、このまま言われっ放しなのは、なんだか癪だったので俺はサツキへの褒め言葉を探した。
サツキは誰かに褒められることや感謝されることに慣れていないようで、いつもユウキやオウガにそれを利用され、小馬鹿にされている。普段の俺はサツキが少し可哀想に思えていたため、そういうことは悪ふざけでやらなかったが、今回は別件だ。
アルファ「…いやー、俺もサツキみたいな強さが欲しいな~」
これはいつもの傾向から考えても、揶揄いに成功しただろう。そう思ってサツキの恒例の、反応に困っている様子を拝もうとサツキの顔を確認する。しかし、俺の目に映ったサツキの横顔は普段からは想像できないような厳しい表情を浮かべており、その表情には何処か寂しさも感じ取ることができた気がした。
サツキ「……それはオススメできひんな。…アタシみたいになるのわ…」
サツキはそこで言葉を止めてしまった。俺としては理由が気になったが、聞き出せるような雰囲気ではなくなってしまったので、洞窟内のマッピングに集中することにした。しばらくの間、軍隊アリの群れを壊滅させながら歩き回っていると遠くに明かりが見える。
アルファ「…おい、あれって…」
サツキ「一応警戒しときや」
俺は長い間、自分たちのランタン以外の光源を見ていなかったせいで、まるで遭難者が人を発見した時のような高揚感に襲われたのだが、こんな時もサツキは冷静にトラップの可能性を考慮している。一体どうしてサツキはこんなにも頼りになるのだろうか。
俺はサツキに言われた通りに周囲を警戒しつつ、光源の方へ向かう。…気のせいだろうか、なんだか明かりがどんどんこっちに近づいてきているような…。
オウガ「オォ、ガキじゃねーか!」
アルファ「!オウガだったのか!」
光源の正体はオウガが腰に付けていたランタンだった。俺はオウガの後ろが一際輝いていることに気が付き、その方向に顔を向けた。
ユウキ「アルファとサツキじゃん!」
サツキ「みんな無事やったんやな」
ユウキは久々の全員での再会に喜びを隠せず、サツキの胸元に飛び込んでいた。サツキもユウキが抱き着いてくることには慣れたもんで、驚きもせずにしっかりと受け止めていた。クールビューティなサツキもユウキに抱き着かれている瞬間は表情筋がほんのわずかに緩んでいる。
ユウキ「当たり前でしょ!ボクたちは少数精鋭なんだから!」
オウガ「確かに、風通しもいいからなァ」
サツキ「…それはブラック企業やろ」
アルファ「…そのうち、ギルドホーム買ったら、アットホームにもなるかもな」
ユウキ「…?」
ユウキはブラック企業ネタがイマイチ理解できなかったようで、頭にクエスチョンマークを浮かべていた。話を聞くと、ユウキたちが通ってきた道は途中で二手に分かれていたらしく、俺達は四人は、分岐点まで引き返して、もう片方の道を進んでいく。
しばらく進んで行くと青色に輝く何かを見つけので、近くに寄ってそれを確認するとお目当ての鉱石だった。すぐ傍には地底湖が存在しており、周囲に点在する鉱石が放つ青い光が水面を反射して、幻想的な光景を生み出している。少しの間、美しい景色を楽しんだ俺達は、鉱石を取れるだけ取ってから、恐らく、出口に繋がっているであろう洞窟の続きへ進もうとした。
「ゴゴゴゴゴゴ…ッ!」
その時、再びあの地響きが洞窟内に鳴り響いた。先ほどよりもその振動源かなり近いようで、思わず地面に手をついてしまう。その時突然、地底湖の水面が盛り上がり、巨大な影が俺たちを覆った。だが、その瞬間は地響きが止まっていたこともあって、自由に身動きが取れるようになった俺達は、影に押し潰されることがないようにその場から後退する。
地底湖の水際辺りに降り立った影は、今までよりも更に大きい地響きを引き起こした。謎の巨体のカーソルを確認すると、<ジ・アサレイシャン・キャットフィッシュ>と表示される。名前の上部は俺の知識では解読不可だったが、後半部分はナマズを表すことが分かっていたので、コイツがこれまでの振動の原因であることはすぐに理解できた。
オウガ「アレはヤベェだろ…」
巨大ナマズのカーソルは真紅に染まっており、フィールドボス級のモブであることを教えてくれる。幸運にも、ナマズは俺達に攻撃してくることはなく、強者の余裕といった様子でこちらを見つめていた。だが、その場から逃げ出そうとすれば、即刻攻撃を仕掛けてきそうだ。
アルファ「やるしかないよな…」
俺達は巨大ナマズと闘う覚悟を決めて、それぞれ武器を構える。向こうもこちらの意思を理解したのか、地底湖の水面が波立つ程の咆哮を上げた。ナマズは水中生物だからなのか、地上では動きが遅く、ヒレをバタつかせて周囲に衝撃波を生み出す攻撃と、ヒゲを鞭のように操る攻撃しかしてこなかったので、こちらが一方的にダメージを与え続けられた。オウガのソードスキルで体力を残り半分のところまで追い詰める。
オウガ「このまま押し切れそうだぜ…!」
オウガがそう言うと、ナマズは口を大きく開く、という、これまでに一度もなかった行動パターンを取ってきた。俺はジッと地を踏みしめて、来たるべき攻撃を待ち構える。ナマズの口内の奥がキラリと青く輝いたように見えた瞬間、俺の体に衝撃が走り、その勢いで洞窟の側壁に激突した。
アルファ「ガッ…!」
俺は何が起こったのか全く理解できなかったが、胴体に強烈な不快感を感じ、その正体を確かめるように自分の腹部に視線をずらす。するとそこには、胸の少し下にポッカリと穴が開いている様子が見えた。
アルファ「……あ?」
俺は、最初は自分の状態を受け入れることができなかったが、次第にその傷がナマズの攻撃によるものだということ把握した。この世界では痛覚が特有の不快感に変換されるため、このように身体に穴が開こうとも、激痛に苛まれて動けなくなったり、のた打ち回ったりすることはない。しかし、不意を突かれた一撃や強烈なダメージを喰らうと、少しの間、怯んだりしてしまうこともある。
ユウキ「ア、アルファ!?だ、だいじょうぶだよね??」
何故かユウキはナマズの元を離れて、青ざめた顔で俺がいる洞窟の壁際にまでやって来た。
アルファ「バカ!敵に背を向けんな!」
ユウキよりも、更に奥に位置していたナマズがさっきと同じように、口を開いてこちらを見据えている。その場に留まったままだと、さっきの二の舞になることぐらいは分かっているため、俺は状況に気が付かずにその場に立ち尽くしているユウキの手を引いて、素早く横に移動する。
その時、ユウキが元々いた場所に衝撃波がぶつかった。よく目を凝らして見てみると、それは高速で打ち出された鉄砲水だ。オウガとサツキは一回目の鉄砲水でその攻撃パターンを把握していたらしく、攻撃に移っている。
アルファ「俺は大丈夫だ、だからユウキは攻撃に参加してこい」
俺がそう言うと、強く頷いたユウキがナマズに向かっていく。そんなユウキを眺めながら、鉄砲水によって半減してしまった自身のHPバーを回復させるためにポーションを一気飲みした。人間の慣れというものは恐ろしく、最近はこのポーションの薬のような味にも慣れてしまい、なんの抵抗なく喉を通っていく。
腹部に開いた穴が継続的に不快感と出血ダメージを俺に与えてくるが、こればかりはどうしようもないので、アインクラッドの青いミカンっぽい味がする止血剤を服用して、止血を行った。体力が九割ほど回復した頃にはナマズの体力が残り僅かになっており、最期のあがきで身体をジタバタさせている。そんな近づくには危険なナマズ相手に、三人は近寄れずにいた。
チャンス!と思った俺はコッソリとナマズの側面に移動して、最近取った投剣スキルを横腹にヒットさせてナマズの命を刈り取った。
オウガ「オイ、横取りとはいけすかねぇなァ…!」
ユウキ「ボクがLA取るつもりだったのに~!」
サツキ「…LAボーナスは無いやろうけど、なんかドロップしたん?」
俺は戦闘が終わるや否や、三人に詰問される。俺も実際にドロップしたアイテムを確認してみると、……うん、まぁ、そっかぁ。
アルファ「…ナマズの肉、ヒゲ、ヒレ、尾っぽ、やったわ、誰か食べるか?」
俺はドロップ品の余りのショボさに、思わずサツキの関西弁が移ってしまう。幼少期に一瞬だけ関西に住んでいたせいもあるかもしれない。オウガとサツキはげんなりした顔でナマズを食すことを拒否していたが、ユウキは好奇心を露わにした顔でアイテムの提供を求めてきた。…そのチャレンジャー精神は高く評価したい。
アルファ「取り敢えず、洞窟から脱出しようぜ」
洞窟を道なりに進んで行くと、外にしては薄暗いが、外に繋がることを示す、風が吹いてくる出口を見つける。いざ、脱出してみると、フィールドは既に月明かりに照らされた夜になっていた。俺達が朝方に洞窟に入ったことを考えると半日ぐらい洞窟に迷い込んでいたことが分かる。
鉱石を入手したユウキは早足で、今のところ一番の腕の鍛冶屋であるドワーフのNPCのところへ向かった。ユウキの新たな武器の製作は大成功し、この層にしては壊れスペックな片手剣が爆誕する。一方、余った鉱石で片手槍の製作に挑んだオウガは、中々強い片手槍を入手することに成功したのだが、やはりユウキの片手剣を見た後だと、少々見劣りしてしまう。
オウガ「…なんでだよォ…」
サツキ「日頃の行いちゃう?」
オウガの日頃の行いは悪いわけではないのだが、確かに、俺のことをガキだと呼んでいたりするところが、今回の武器製作にマイナス効果をもたらした可能性もあるのではないだろうか。
オウガ「こうなりゃヤケ酒だァ!お前ら!飯食いに行くぞ!」
オウガは一人で先先と繫華街に進んで行く。俺達は近頃、何かと理由をつけて、毎晩のように晩餐会を楽しんでいる。戦闘面での安定性が上がるだけでなく、こうやって複数人で盛り上がれるのも、ギルド及びパーティーのいい点だろう。
新たな武器を入手したことで笑顔のユウキが呆れ気味のサツキの手を引きながらオウガに追いつこうとしているようすを見て、俺は改めて、デスゲームと化したこの世界で、こんな和やかな雰囲気を作り出してくれる皆に感謝ながら、三人の後ろ姿を追いかけた。
…いったいどうしてこんなことになってしまったのでしょうか?甘々展開を避けるために四人組にしたのに、実質的な、三角関係みたいな展開を作り出してしまいました。
いったいどこの誰のせいなんだっ!(筆者です)
……ま、まぁ、最初からこのつもりでしたし、ぜ、全然大丈夫ですけどね?
では、また第23話でお会いしましょう!