~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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第35話 託されし者

 窓から朝日が差し込む。空は青天の霹靂。それに対して俺の心は土砂降りの雨模様。以前はあんなに綺麗に見えた朝日と青空も、今の俺にとっては余りにも眩し過ぎて、酷く煩わしいものにしか思えない。太陽が輝きを放ってくることに耐えられず、俺は布団を覆い被って外からの光を遮り、闇の中に閉じ籠る。

恐る恐る、視界の端に表示されるHPバーを確認すると、やはり俺とユウキの二本分しかない。俺は再びこの現実から逃げ出すために、深い眠りにつこうとした。だが、それは、ドアを叩く調子はずれなノック音のせいで邪魔される。

 

 ユウキ「…おはよう。…気分はどう?」

 

 アルファ「…」

 

 …また来やがったか。俺は彼女の登場に心底ウンザリするも、俺の中に残る僅かな自制心、道徳心によって、喉まで押し上がってきた彼女の善意を蔑ろにしてしまう汚い言葉を吐き出すことはなかった。俺は何も言わずに、夢を見ようとするが、彼女はそうはさせてくれない。

 

 ユウキ「…今日はね、26層のフィールドボスを倒しに行くんだ。26層はさ、山と谷の繰り返しでね、すごく起伏が激しくて結構しんどいんだよ?でも、山頂から見える景色は格別なんだ」

 

 アルファ「……」

 

 こいつはいつまで喋り続けるのだろうか。はっきり言って耳障りだ。俺が一人でいたいということぐらい察することが出来ないのか。早く出て行け。俺の中では、そんな、彼女への不条理な不快感が募っていく。

 

 ユウキ「─他にもね、26層で食べられる美味しいご飯が──」

 

 アルファ「…出て行ってくれ」

 

 もう我慢ならず、とうとう俺はそれを言葉にしてしまった。出来るだけ丁寧な、彼女を傷付けないような言葉を選んだつもりが、その口調は冷たく、トーンも低い。

 

 ユウキ「…で、でもっ」

 

 …まだ、喋り続けるのか。その何ともなかったかのようないつも通りの顔でッ…!怒りの沸点に達した俺は、声を荒げる。

 

 アルファ「うるせぇんだよッ!」

 

 ユウキ「…っ。ご、ごめん」

 

 …あぁ、やってしまった。ユウキの申し訳そうな表情を見て、俺の良心が微かに痛んだ。だが、一度爆発した怒りはそう簡単に抑えることのできるものではない。俺の中のちっぽけな良心は、溢れ出す俺の中の激情によって搔き消される。

 

 アルファ「大体何なんだよ!お前は!何でそんな平気な顔してられんだ!」

 

 ユウキ「…」

 

 アルファ「お前には人の心ってもんがねぇのかよ!?」

 

 ユウキ「…ッ」

 

 アルファ「てめえは本当に人か?あぁ?」

 

 一頻り、出したいものを全て出し切ってしまった俺は、ユウキの無表情を見て、己の行為に後悔するも、今の俺にはユウキをフォローする余裕などなく、この現実から逃げ出すために、再びベッドに潜ろうとした。だが、その時、ユウキが哀愁を帯びた微笑を描きながら、言葉を放つ。

 

 ユウキ「…ごめんね。…ボクはもう慣れっちゃったから、さ。」

 

 そして、その悲しげな表情から一転して、芯のある強い信念を抱いたかのような瞳をしたユウキは、張りのある透き通った声で、言葉を口にした。

 

 ユウキ「それでも、ボク達はいつだって前を向いていなきゃダメなんだ!…それが生者の務めだよ」

 

 言い終えたユウキは、また夜に来るね、と言い残して、部屋から出て行った。…俺は最低だな。良くしてくれている人に対して、暴言を吐くだけで留まらず、あんな悲しい顔をさせてしまうなんて。ユウキが消えた部屋で一人自己嫌悪に陥る俺は、少しだけ、冷静に物事を考えることが出来た。

 あの日から、一体幾つもの月日が流れたというのか。凡そ二週間、それだけの月日が、二十五層のボス攻略から経過していた。余り覚えていないが、ボス戦が終了したあの後、心神喪失した俺をユウキ、キリト、アスナ、エギルが支えながら、宿まで送ってくれたらしい。

 結局、あの日の死亡者は12名。レイドメンバーの四分の一が犠牲となった前代未聞のボス戦となってしまった。ユウキが毎日ここに来ては、一人で勝手に喋っていた情報によると、あの日を境に、攻略組は大きく変わった。まず、12名の死亡者うちの9名は、ディアベル率いるホープ・オブ・ナイツから出た。その原因をディアベルのギルド指針のせいにした主力メンバーが各々のギルドを立ち上げたことで、ホープ・オブ・ナイツは事実上の瓦解。そして、次は、アスナが新興ギルドに加入したこと。最後に、それに伴ってキリトがソロで攻略を始めたこと。これまでは曲がりなりにも一致団結して行われてきた攻略が今ではバラバラになってしまっているらしい。

 残りの死亡者の3名の内、2名は、オウガとサツキ。俺達スリーピング・ナイツから出てしまった。原因は全て俺のせいなのだ。俺があの時、臆病風に吹かれずに動けていたら。集中状態を乱さずに回避できていたら。そう思う気持ちはいつまで経っても俺の中から消えず、寧ろ日を追うごとに肥大化していった。

 そして、あの日から数日経過した時、こんな情けない俺はもう、いっその事死んでしまおうか、と自暴自棄になり、外縁部から落下死しようと考えたが、いざ外縁部まで来ると、そこにはアルゴが待ち構えており、自殺することを阻止された。…いや、アルゴよりSTRの高い俺なら、無理矢理アルゴを押しのけることだってできたはずだ。それをしなかったのは、単に俺が誠に命を絶つ覚悟を持たない臆病者だからだろう。

 それに俺は、こんなことが起こるなんて微塵も想像していなかったのだ。俺達なら、誰一人欠けることなくこのゲームをクリアできると、根拠のない自信を持っていた。少しスタートダッシュに成功しただけの凡人の俺が、それを己の強さだと勘違いして、自分は周りよりも優れていると驕り、死に物狂いでみんなを守れるほど強くならなかったが故のこの結末だ。

 そもそも、俺はこの世界がデスゲームであることを、真に理解していなかった。心の何処かでは、遊び半分だったのだろう。…それでも、どうしてオウガとサツキが死ななければならなかったのだ?そんなことはもう分かっているだろう?俺が悪い。俺の考えが、行動が、為すことすべてが甘かったのだから。そんな俺に生きている価値などあるというのだろうか。…頭が、心が痛い。もう何も考えたくない。そう感じた俺は、やはり現実から逃げるようにして、眠りについた。

 

 

 

 

 

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 ふと、窓から差し込む夕日に俺は気が付いた。つい何時間前は涙でぐちゃぐちゃになっていたはずの顔面も寝ている間にすっかり乾いてしまったらしい。ユウキに酷い言葉をぶつけ、涙が涸れるほど泣きはらした俺は、ある意味では心が空っぽになり、いつもよりは落ち着いた気分で窓の外を眺めていた。…もうすぐで日が落ちる。そうなれば、ユウキがこの部屋を訪れることだろう。今の俺では、ユウキに合わせる顔がない。おもむろにベッドから降りた俺は、何日かぶりの外の空気を吸うために、ドアを開けた。

 

 アルファ「…」

 

 宿屋を後にし、街へ繰り出した俺は、夕日に包まれる街並みと行き交う人々を眺めながら、ゆっくりと足を動かし、街中を歩き始めた。現実世界で点滴などの処置がなされているだろうから、この世界では、何も食べなくても生きていくことが出来る。だが、そんな理屈とは裏腹に、お腹が減り、喉は乾く。

 ここ数日間、ベッドから一歩も出ることがなく、飲食さえしていなかった俺は、唐突に耐えがたいほどの飢餓感を感じた。足元がふらつきながらも、音速の速さで屋台を見つけた俺は、屋台のおっちゃんにクレープと飲み物を注文する。口の中から水分が失われていた俺の声は、ガラガラだった。注文したものを受け取った俺は、近くにあったベンチに腰掛けた途端に、クレープに食らい付き、甘酸っぱい味のする飲み物を一気に飲み干す。

 

 アルファ「ふぅ…」

 

 久しぶりの食事を終えた俺は、一息ついた後、そのベンチで暫く休むことにした。空を眺めていると、赤く焼けた色から、深海のような色へと様変わりしていく様子が見て取れる。…俺がしっかりしていれば、今頃は、四人で…。俺の気持ちが深い闇に堕ちようとしたその時、バリトンボイスのあの声が響いた。

 

 エギル「よぉ、アルファ、久しぶりだな。…隣、いいか?」

 

 アルファ「…あぁ」

 

 エギル「よっと」

 

 アルファ「…前線組が、どうして25層にいるんだよ」

 

 成長しない俺は、エギルに対してぶっきらぼうな言い方をしてしまう。しかし、エギルはさして気にする様子もなく、俺の問いに答えた。

 

 エギル「あー、あれだ。ちょっと武器のメンテにな」

 

 アルファ「鍛冶屋は真反対だ」

 

 エギル「…マジかよ」

 

 アルファ「前線組ともあろうものが、街の構造さえ把握できてないのか?」

 

 どうあがいても、今の俺では言葉遣いが荒くなってしまう。その原因は力のない己であるというのに、その行き場のない苛立ちを誰かにぶつけずにはいられない。エギルはそんな最悪の俺を叱りつけるわけでもなく、普通に会話を続けてくる。

 

 エギル「そいつは手痛い指摘だぜ…。心配だからちょっと様子を見に来てやったんだよ。冗談の一つや二つ言えるようになったってことは、アルファはもう立ち直れたのか?」

 

 アルファ「…」

 

 エギル「…何だ?まだ折れたままなのか?」

 

 ──まだ、折れたまま、だと!?エギルの発言に、俺は激怒した。

 

 アルファ「てめぇに何が分かんだよ。誰一人欠けずに、のうのうと暮らしているお前らなんかにッ、俺の気持ちが──」

 

 エギル「そうだ。俺には、お前の気持ちを理解することは出来ねぇし、理解したつもりになるつもりもない」

 

 アルファ「だったらッ!」

 

 エギル「でも、だ!お前はいつまで腐っているんだっ!」

 

 アルファ「ッ!」

 

 俺は腑抜けているだけだと、俺だって心の何処かでは自覚している。

 

 エギル「お前は死んでいった彼らの意思を、想いをも腐らせるのか?」

 

 アルファ「…オウガとサツキは俺のせいで死んだんだ。二人の未来を断ったのは紛れもないこの俺なんだ」

 

 きっと、オウガやサツキにだって、まだまだやりたいこと、やり残したことが幾つもあっただろう。だが、それを壊してしまったのは、俺自身である。改めて、それを口にすることで、俺の心には激痛が走る。

 

 エギル「…彼らの死を、どう捉えるかはアルファ次第だ。だが、彼らがお前に何を託したのか。それをよく考えてみるんだな」

 

 オウガとサツキ、二人がオレに託したもの?俺のせいで死んでしまった彼らに俺を恨む気持ちがあるのは分かる。しかし、そんな俺に託すものがあるというのだろうか。ふと、俺の脳裏に、二人の死に際の言葉が蘇ってきた。

 

 ──ユウキのこと、任せたぜ

 

 ──二人は、この世界を、生き抜いて、な

 

 アルファ「…」

 

 俺が今思ったことは、勝手な独りよがりなのかもしれない。自分を許すための偽りの解釈なのかもしれない。…でも、俺は、生きる者は、死者の意思を受け継いで、前を、未来を生きなくてはならないのだ。ようやく少しだけ、ユウキの言っていたことが理解できた気がする。俺は、もう一度立ち上がらなければならない。それは、オウガとサツキの想いを絶やさないために、だ。ユウキが前線に立ち続ける限り、ユウキが命を散らさないように、俺が彼女を守り続けなければならない。それがオウガとサツキから託された約束だから。

 

 アルファ「…エギル。サンキューな」

 

 エギル「…へっ、いい顔してんじゃねぇか」

 

 アルファ「じゃあ、もう俺は行く」

 

 エギル「おう!次は前線でな!」

 

 エギルと別れた俺は、宿屋ではなく、転移門へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

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 ユウキ「ふぅ…」

 

 目標の数を倒し、今日もフィールドでレベリングを終えたボクは、沈む太陽を見て、主街区のある方向に向かって引き返し始めた。だが、今までとは違って、今のユウキは一人だ。これまで以上に周囲を警戒しながら、帰路を歩んでいく。

 

 ──何でそんな平気な顔してられんだ!

 

 ボクへの怒りと理解不能を混ぜ込んだような声と表情でアルファはそう叫んだ。その言葉がボクの中で渦巻いて離れない。大切な人達が、自分の周りから消えていく。そんなことに慣れてしまったボクは、きっと、普通の人と比べて、立ち直りが異常に早いのだろう。そんな自分は異常者であると、分かっていたつもりだが、実際に第三者からその事実を突きつけられると、心が痛んだ。

 それでも、ボクがアルファの部屋を何度も訪れることを辞めるわけにはいかない。今のアルファは、まるで、少し前までのボク自身を鏡写しにしたように見える。母が、次いで父が死に、そしてしばらくしてから、最後の家族であり、ボクの心の支えであった姉が死に、置き去りにされたボクは、心を壊してしまった。そんなボクを再び再起させてくれたのは倉橋先生だった。どれだけボクが拒んでも、どれほど酷い言葉を掛け続けても、倉橋先生はわざわざ毎日ボクの病室にやってきて、下らない毎日の話をしてくれた。初めはそれをただ鬱陶しいとしか感じなかったけれど、次第にボクは倉橋先生の話を聞くことが毎日の楽しみになっていった。そしてボクはある日、このままではいけないと、奮起し、再び立ち上がったのだ。ボクはそれに一カ月ほどの期間が掛かった。アルファがいつ再起するかは分からないけれど、アルファを見捨てることなんてボクには出来ない…。

 主街区に辿り着いたボクは、その足で転移門へ行き、二十五層にテレポートして、アルファの待つ宿屋へ向かった。宿屋の玄関に入り、階段を登って左に曲がる。奥から二つ目の部屋をボクはノックした。いつも通り、返事はないが、ボクは扉を開ける。

 

 ユウキ「ただいま!……え…」

 

 扉を開けて、明るめの声で帰宅を伝える。だが、その部屋には誰もいなかった。一瞬、部屋を間違えたのかと、確認するが、やはり間違いない。…まさか。アルファが外縁部から飛び降りて、死んでしまう。そんな最悪の想像をしたユウキはすぐさまアルファのHPバーを確認するが、体力は満タンだ。でも、次の瞬間には、アルファの体力が全損してしまうような気がして、アルファがこの世界からいなくなってしまう気がして、ボクは急いで踵を返し、宿屋を後にしようとした。

 

 アルゴ「…アー坊の居場所、知りたいカ?」

 

 ユウキ「っ!?」

 

 ユウキ「は、早く教えてっ。いくらでも払うからっ!」

 

 ふと、宿屋の塀に、もたれ掛かっていた金髪の少女がそう言ってくる。反射的にそう答えたボクの声は、自分でも驚くほど掠れ、震えていた。

 

 アルゴ「アー坊は第一層に向かったヨ。因みに、アー坊はもう立ち直ったカラ、自殺の心配はないヨ」

 

 ユウキ「…よかった」

 

 どうやってそれを知ったのかは分からないが、アルゴの情報にウソはないはずだ。ボクはこれまた自分でも驚くほど、その言葉を聞いて安堵した。…でも、一体誰がアルファを再起させてくれたのだろう。そんな疑問がボクの中で浮かび上がってくる。

 

 ユウキ「アルゴ、あのさ──」

 

 アルゴ「誰がアー坊を立ち上がらせたのか。ここからは有料ダヨ?」

 

 心の内を見透かされた。それでも、一番大切なことは無料で教えてくれたアルゴの優しさにボクは感謝したい。

 

 アルゴ「それよりも、今はアー坊の所に行ってあげなヨ」

 

 ユウキ「そうだね。…アルゴ、ありがとっ!」

 

 アルゴ「…やっぱり、アー坊に、ユーちゃんはちょっと勿体ないかもナ」

 

 ボクの居なくなった宿屋の前で、アルゴはコッソリとそう呟いた。

 

 

 

 

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 何か月ぶりに、ここにやってきただろう。以前と全く変わらない街の姿を見て、俺は、始まりの日のことを思い出した。最近の俺は、あの日からドンドンと強くなっていったと思っていたが、俺の心はずっと、弱いままだった。

 頭の中を駆け巡る様々な思い出に哀愁を覚えながら、犯罪プレイヤーを閉じ込める為に存在する黒鉄宮の前に設置されている、生命の碑の前までやって来た。アルファベット順に並べられた数多とある名前の中から、オウガとサツキの名前を探す。途中、何度も、死亡したことを知らせる白い横線が誰かの名前の上に刻まれているのを目に入った。

 そしてオウガとサツキの名前を確認した時、やっぱり、二人の名前にも、死を表す横線が引かれていた。あの日以来、その事実を決定づけられることを恐れ、ここにやってこなかった俺は、オウガとサツキが本当に死んでしまったという事実を改めて認識し、後悔の念で心が張り裂けそうになる。だが、今日は絶望するためにここに来たのではない、明日を生き抜くためだ。俺は、生命の碑の前で跪き、目を閉じて祈りを捧げた。

 

 アルファ(…オウガ、サツキ、俺の力不足で、二人を死なせてしまって、本当にごめん。悔やんでも悔やみきれない…。二人が俺のことをどんなに恨んでくれても構わない。だけど、二人が俺とユウキに送ってくれた言葉、託してくれた言葉を受け継いで、俺はもう一度立ち上がる。勝手な願いだけど、どうか、そこから俺達を見守っていてほしい。)

 

 ──ったく、仕方のねぇガキだァ

 

 ──ちょっと立ち直るんが遅すぎるなぁ

 

 多分、これは幻聴だろうけど、遠くて近い所から、二人の小言が聞こえてきた気がする。黙禱を終えた俺は、そろそろユウキも宿屋に来ているだろうから、戻らないと、と思い、後ろを振り返った。そこには、俺より少し背の低い女の子が一人立っている。

 

 ユウキ「…あ、アルファ」

 

 きっと、ユウキもオウガとサツキの為に祈りを捧げに来たのだろう。やっぱり、ユウキだってオウガとサツキが死んでしまったことを気にしているのだ。だというのに俺は、ユウキに心に無い言葉をぶつけて、彼女を傷付けた。例え、今から俺がどれほど罵倒されようとも、俺はユウキに謝らなければいけない。そう思った俺は、ユウキに謝罪するべく、頭を深く下げて口を開いた。

 

 アルファ「ユウキ。…今日の朝、ユウキのことを傷付ける言葉を八つ当たりみたいに吐いて、ごめん。…俺のことは許さなくてもいい」

 

 ユウキは何も言わず、俺は頭を下げたまま顔を上げない。そんな状態が暫く続いたが、次第にユウキのすすり泣く声が聞こえてきた。

 

 ユウキ「…別に、怒ってないから、いい。ボクは、アルファに嫌な気持ちになんてさせられてないよ。…ただ、アルファが生きててくれた。それだけで十分だからっ…!」

 

 嗚咽交じりに、ユウキはそう言ってくれた。俺は顔を上げてユウキを見ると、ユウキは、両手で顔を押さえて、涙を流し続けている。

 

 アルファ「…心配かけて、ごめんな」

 

 俺はそんなユウキに近寄り、優しく語りかけた。

 

 ユウキ「…ホントに心配したんだからねっ。アルファが居なくなった時、死んじゃうんじゃないかって…」

 

 アルファ「…大丈夫だ。もう俺はそんなことはしない」

 

 ユウキ「…良かった。……ちょっと、胸貸して」

 

 そう言ったユウキは、突然、俺の胸に飛び込んできて、更に涙を流す。ユウキが落ち着くまで、俺はユウキの背中をトントンと叩きながら、ごめんな、と繰り返し謝る。その時、ふと、

 

 ──ほんま、随分と見せつけてくれるやん

 

 ──おめでたい野郎だぜ

 

 また、二人の声が聞こえてくる。…まったく、幻聴じゃないのか?ホントに死んでも明るい奴らだ。久しぶりに、その口元を歪ませた俺は、少し暖かい気持ちを抱きながら、ユウキが泣き止むのを待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 アルファ、復活ッ! アルファ復活ッッ!!

 では、また第36話でお会いしましょう!
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