~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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第38話 最強を目指す者達 後編

 キバオウ「おのれがそのギルドの頭か」

 

 ヒースクリフ「そうだとも」

 

 キバオウが睨みつけるように、威圧的にそう言ったが、この男は、これまた堂々と平然とした様子で返事をする。ヒースクリフと名乗った男は高身長で鈍い銀色の前髪を垂らした学者のような男だった。ヒースクリフと対峙するキバオウは若干気圧されたかのように半歩引いてから、反駁する。

 

 キバオウ「ボス戦にも参加したことない、新参者にリーダー役を任せられるわけないやろうが!」

 

 ヒースクリフ「ボス戦でも充分に闘えることは、我々の装備を見てもらえば一目瞭然だとは思うが」

 

 ヒースクリフは冷静に、キバオウに答える。確かに、血盟騎士団というギルドに所属しているであろうメンバーの装備品は前線組に負けず劣らず、いや、もしかしたら、前線組の中でトップに躍り出るかもしれないほどの重厚な輝きを放っており、そこから、彼らの装備品の質の高さが見て取れた。ヒースクリフは言葉を続ける。

 

 ヒースクリフ「聞くところによると、最近はボス戦でのリーダー役を下したのだろう?ならば、我々にもリーダー役足る素質があるかどうかを確かめる権利があると言えるだろう」

 

 キバオウ「…まぁ、それはそうや」

 

 キバオウが何も言えなくなった代わりに、リンドが割って入り、言葉を繋ぐ。

 

 リンド「だとしても、キバオウの言う通り新参者が初のボス戦で実力を発揮できるかどうかは別問題だと思いますが」

 

 ヒースクリフ「…それもそうだな。であれば、我々のギルドメンバーと君が闘い、こちらが勝てば今回のリーダー役を、負ければそちらがリーダー役を、というのはどうかね?」

 

 リンド「…あんたが闘う訳じゃないのか?」

 

 ヒースクリフ「私が出るまでもないということだ」

 

 リンド「ッ!…いいでしょう。その勝負に乗ります」

 

 キバオウ「待てや!ワイも参加させてもらうで!」

 

 ヒースクリフがこの場に来てから、一気に流れが変わった。前線組の自分たちこそが最強であるという自負を刺激して、勝負に持ち込んだか。その、場を巧みに操る姿は、学者というよりも魔術師と表現する方が相応しいように感じる。

 …まぁ、この場を最初に凍り付かせたのは、ミニスカートに白タイツを履いているアスナなんだけどな。あれは前線組の野郎どもを釘付けにするには充分だ。まさかヒースクリフは、そこまで計算していたとでもいうののだろうか?だとしたら、間違いなく奴は天才と言える。

 それから、血盟騎士団から選ばれた片手剣と盾を扱う男性プレイヤーとリンド、キバオウがデュエルの初撃決着モードで総当たり戦を行ったのだが、結果は血盟騎士団の全勝に終わった。デュエルの内容も、拮抗した闘いであったというわけではなく、全体的に血盟騎士団側の有利な展開が繰り広げられていた。その為、今回はお試しとして血盟騎士団がリーダー役を担うことになったのだが、なんとびっくり、全体の指揮を執るプレイヤーは言いだしっぺのヒースクリフ、ではなく、副団長になったらしいアスナだった。

 堂々と壇上に登ったアスナは、皆に向かってボス戦に関する情報を提供し、明日に血盟騎士団から偵察部隊を送ること、その結果次第でパーティー単位のメンバーの割り振りを決定すること、明日の午後五時にここでボス戦最終会議を行うことなどを、流れるように決めていった。如何やら、アスナには元からリーダーとしての素質があったようらしい。それと同時に、それを見抜いたギルドマスターであるヒースクリフの力も素晴らしいものだということが透けて見える。一応、ヒースクリフがギルドマスターとして君臨しているものの、表向きには副団長のアスナが血盟騎士団を動かしていて、その裏でギルドを支える参謀役だったりするのだろうか。そんなことを考えていると、本日の攻略会議が終了した。ユウキが途端にアスナの方へ飛び出していく。

 

 ユウキ「アスナっ!凄くカッコよかったよ!」

 

 アスナ「え、えぇ…ありがとう…」

 

 アルファ「しっかし、アスナがそんな派手な格好をするとはな~。みんな魅了されまくってたぜ」

 

 俺がそう言うと、アスナは焦ったように身体を乗り出して、身振り手振りを使って、全力で反論してくる。

 

 アスナ「こ、これは私の趣味じゃないわよ!?ギルドの方針でっ!」

 

 ユウキ「アハハ!アスナの顔真っ赤だよ!」

 

 アスナ「ユ、ユウキ…」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、アスナは周囲をチラチラと確認している。

 

 アスナ「あ、あれ?キリト君、今日はいないのかしら?」

 

 アルファ「あー…、なんかキリトは、今は中層で活動してるらしい。27層でも、ボス戦に参加してなかったからな」

 

 アスナ「…えっ。…そうなんだ」

 

 アスナはこの姿を見られなかったことに対する安心感半分、逆にキリトに見てもらえなかったことに対する残念さ半分、といった様子で大変寂しそうに返事をした。

 

 ユウキ「そんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だって」

 

 アルファ「キリトのことだから、その内ひょっこり前線に戻ってくるだろ。その時はアスナの晴れ姿でも見せてやれよ、な?」

 

 アスナ「べ、別にキリト君のことはどうでもいいけど。まぁ、ちょっとは心配してあげただけだからっ」

 

 顔をそむけて、モジモジと小さな声でアスナは呟いた。今、キリトが何処で何をしているのかは分からないが、アスナのためにも、出来るだけ早く、前線に戻ってきて欲しい。アスナはこれまで、キリトに支えられて来たのだから、きっとこれからもキリトの支えが無いと、いつか心が折れてしまうかも知らないから。

 

 アスナ「じゃあ、ギルドのこともあるから、そろそろ行くね」

 

 ユウキ「うん、またねー」

 

 広場から出て行くアスナの後ろ姿を眺めてから、俺達も広場を出ようとした。だが、不意の後ろからの声に引き留められる。

 

 アルゴ「二人共、かけ金置いて行ってくれよナ」

 

 後ろを振り向くと、第一回リーダー役予想大会で独り勝ちしたアルゴが右手を差し出して、1000コルを求めている。その後ろにはエギルがトホホ、といった感じで項垂れていた。

 

 アルファ「…あんなの八百長だ!ズルだ!裏取引だ!」

 

 アルゴ「勝負は勝負ダロ?…それとも、アー坊はたかが1000コルさえすぐに出せない器の小さい人間なのカ?」

 

 アルファ「…ぐぬぬ」

 

 俺は悔しい気持ちでいっぱいだったが、そういう挑発をされると、乗らないわけにはいかない。俺とユウキは仕方なくアルゴに1000コルをプレゼントしてあげた。

 

 アルゴ「今後のために教えておいてあげよう、知らないのも罪だ、ってナ」

 

 ニャハハーッ!っと愉快に笑いながらこの場を去っていくアルゴを眺めながら、俺は彼女の言葉を胸に深く刻んでおいた。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 ユウキ「スイッチ!」

 

 アルファ「おう!」

 

 ユウキが引き際に蜂型のモンスターをスタン状態にしてくれたので、俺は動かない蜂に対して容赦なく曲刀で斬り刻んだ。俺が使っている曲刀は町の何処にでもあるような武器屋で購入したものであるため、特段強い武器ではないが、それでもフィールドモンスターを相手にするくらいなら、何の問題もない。それを示すように蜂型モンスターはポリゴン片に変化した。

 今、俺達は五時の攻略会議までの時間を使ってレベリング兼熟練度上げを行っていた。カタナスキルを獲得するためには、曲刀スキルの熟練度を上げなければならないので、こうしてわざわざ曲刀を使ってレベリングをしているのだ。

 

 ユウキ「…ねぇ、曲刀ってどんな感じなの?」

 

 アルファ「うーん…。片手剣と比べると、やっぱり癖が強いな。真っ直ぐ振ってるはずなのに、軌道がちょっと丸くなるんだよなぁ」

 

 ユウキ「それは扱いずらそうだね」

 

 と、口を動かすだけでなく、しっかりと手と足も動かして、様々なモンスターを倒していく。その時、一匹の蜂型モンスターがホバリングをし、俺達から距離を取ろうとした。

 

 アルファ「こういう時にはコイツが役に立つな!」

 

 俺は視界では蜂型モンスターを捉えながら、右手で素早く虚空を叩き、武器を曲刀から片手槍にチェンジして、蜂型モンスター目掛けて一気に突き出した。いきなり間合いが変化した俺の動きに蜂型モンスターは付いてくることが出来ず、槍の切っ先がズブリとその体に刺さり、体力を全損させる。

 ブウウウウン、と羽根を羽ばたかせる音を立てながらクワガタのようなモンスターが俺に突っ込んでくるが、俺は即座に片手槍の持ち手を短くし、先端近くを持つことで、ダガーのように扱った。それによって急接近してきたクワガタモンスターの鋭い二本の角による突進攻撃にもしっかりと対応することが出来、姿勢を低くして突進攻撃を躱しながら、甲殻に覆われていない腹の部分を片手槍で削る。クワガタモンスターが急旋回して俺に向かってくる途中に、ユウキがもう一度柔らかい腹部を攻撃してくれたので、そこでクワガタモンスターはポリゴン片に変わった。

 

 アルファ「こういう使い方も出来ますよ、っと」

 

 ユウキ「おぉ~、今のは流石のボクも感動だよ」

 

 アルファ「流石のボク、ってなんだよ…。にしてもこのエリアは、虫系のモンスターばっかだな」

 

 29層は層の中で大きく二つのエリアに分かれていて、主街区からフィールドの中心までは草原が、そこからフィールドの端までは荒原が広がっている。そして、迷宮区タワーはフィールドの中心に位置しているといった感じだ。俺達は現在、草原エリアでレベリングをしており、そこには、蜂やクワガタや蝶、バッタなどをモチーフとした虫系モンスターがわんさか湧き出してくる。

 中でも一番厄介なのは、〈ギフト・モス〉という蛾のモンスターだ。ギフトっていうぐらいだから、ドロップするアイテムがレアだったり、経験値が多めにもらえたりするのかと思い、二日ほど前までは毒粉を撒いてくるモスを苦労しながらユウキとひたすら倒し続けていたのだが、結局、他のモンスターと何一つ変わることなく、普通のアイテムドロップと経験値だった。

 俺達がレアアイテムをドロップ出来ていないだけの可能性もあると考えて、アルゴにわざわざ情報料を払ってギフト・モスについて訊ねてみると、「ギフトってのは英語じゃなくて、ドイツ語で毒を意味するカラ、多分そっちの意味なんだろうナ」という返答が返ってきた。…流石にこれは悪趣味なネーミングだろう。俺はそれを聞いた時、今も何処かから俺達を観察しているであろう茅場晶彦に更なる恨みを抱かされた。そんな訳で、ギフト・モスが大嫌いになった俺とユウキは、奴だけは避けながら、このフィールドで狩りをしている。

 

 アルファ「…そういや、ユウキってレベル40になった時、何のスキルを取ったんだ?」

 

 確か、ユウキが獲得しているスキルは、片手剣、体術、瞑想術、戦闘時回復、料理、索敵、だったはずだ。

 

 ユウキ「じゃあ、情報料をくれヨ?」

 

 ユウキが全然似ていないアルゴの声真似をしながら、手を差し出してきたので、俺は一コル硬貨だけ飛ばした。

 

 ユウキ「…しょっぱい」

 

 アルファ「俺も教えてやっただろ」

 

 ユウキ「…仕方ないなぁ。よく見ててよ?」

 

 ユウキはそう言うと、突然、目の前に生えている巨木に向かって走り出した。何をするつもりなのか眺めていると、なんと、ユウキが巨木を駆け上がっていくではないか。数歩だけ巨木の幹を地面と垂直に登ったユウキはそこで幹を蹴り飛ばし、宙で一回転してから地面に綺麗に着地する。振り返ったユウキは満面の笑みでピースしていた。

 

 ユウキ「いえーい!ボクが選んだスキルは、軽業スキルだよ!」

 

 アルファ「おぉ!軽業スキルめっちゃ良いな!」

 

 俺が次回のスキルスロット更新で、取ろうと考えている第一候補群の一つである軽業スキルは、その名の通り、プレイヤーにフットワークの軽い動きが出来るようにサポートしてくれるスキルだ。具体的には、空気抵抗や重力負荷の緩和や急ブレーキや急旋回などの緩急が付く行動のキレの上昇、更にはプレイヤーのAGIが高ければ高いほどAGIに補正が付くなど、ユウキみたいな高速プレイヤーには相性抜群でもある。このように、軽業スキルを獲得すると、アクロバティックな行動も軽々と行うことが出来るようになる。両手剣使いであるが故、STRにある程度ステータスを振ってしまっている俺には、ユウキ程の恩恵を得られるわけではないだろうが、それでも、モンスターの攻撃により素早く対応できるようになることは間違いない。

 

 ユウキ「ん~、でも、これぐらいなら軽業スキル無しでも出来ることなんだけどね」

 

 アルファ「それはまだ熟練度が低いからじゃないか?これからドンドン上げていけば──」

 

 その時、ユウキが軽業スキルの披露のために利用した巨木が、一際大きく揺れた。

 

 ユウキ「…?」

 

 「「ブウゥゥ────ンッ!!」」

 

 まるで地震が起きたように揺らいだ巨木から、大量の蜂型モンスターが出てくる。彼らは皆、俺達をターゲットとしているようで、一目散にこちらへ向かってくる。…まさか、あの木の何処かにこいつ等の巣があったとでもいうのだろうか。俺は即座にユウキと顔を見合わせて、

 

 アルファ「ユウキ!逃げるぞッ!」

 

 ユウキ「うんッ!」

 

 正に阿吽の呼吸でコミュニケーションを取った俺達は、蜂型モンスターと同様に、主街区目掛けて一目散に逃げ出した。

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 ヒースクリフ「では、諸君達。準備は良いかね?」

 

 ヒースクリフがボス部屋の前でレイドメンバーに語り掛けている。偵察部隊の情報によると、今回のボス戦では取り巻きが出現せず、ボス一体との闘いになるらしい。ここに来るまでの道中、血盟騎士団のメンバーはしっかりと統率の取れた動きを見せて、俺達を感嘆させてくれた。だが、やはり初のボス戦であるということもあってか、血盟騎士団団員の顔つきは強張っている。それは今回初めて指揮を執るアスナも同様であった。

 だが、その中で唯一一人だけ、攻略会議の時と何ら変わらない、平然とした様子でいる男がいた。それは血盟騎士団のギルドマスター、ヒースクリフだ。彼は、右手に長身の片手剣を、左手には人一人分が覆い隠せてしまうほどの大盾を、そして頭以外の全身をアーマーで纏ったタンクだった。その重厚な装備の見た目からしても、彼が鉄壁のディフェンスを誇っていることがビシビシと伝わってくる。

 

 ユウキ「…今回も、指握ってあげようか?」

 

 ヒースクリフを観察していると、ユウキが俺を揶揄うような顔をして、煽ってきた。

 

 アルファ「…もう大丈夫だって」

 

 ユウキ「…そっか」

 

 俺はそんなユウキに対して呆れたような表情を浮かべながら、返事をした。…俺もそろそろ、ボス戦にもある程度落ち着いて挑めるだけの平静を装ることが出来るようにはなってきたが、それでも冗談っぽく俺のことを心配してくれるユウキには感謝してもしきれない。ヒースクリフが「では、行こうか」と言って大扉を開けたのと同時に、俺達も目の前のボス戦に集中し始めた。

 

 ──結果から言えば、圧勝だった。

 

 28層で攻略組に立ちはだかってきたボスは、巨大な二足歩行の蚊型モンスターであった。そのフォルムは筋肉隆々で、繰り出してくる攻撃は非常に重く、攻撃が行われるたびに地面のタイルが割れるだけでなく、まるで隕石が落ちてきたかのようなクレーターを生み出して、近くにいたプレイヤーの足を奪ってきた。また、背中から生えている四枚の羽根を羽ばたかせて、こちらを吹き飛ばしてこようとしたり、逆にボス自身がその風に乗って宙を舞ったりと、軽快な動きも見せていた。更には、蚊特有の非常に発達した鋭利な吸血針でプレイヤーを刺し、そこから吸血することで体力を回復させてきたり、口から移動速度低下のデバフを与える唾を吐いてきたりと特殊攻撃も満載で、このボスとの闘いは普段の攻略組なら、苦戦必至だっただろう。

 だが、アスナのディアベルをも凌ぐ指揮力の高さと、その指揮に遅れず着いて行く血盟騎士団のメンバー達の活躍によってボス戦を優位に進めることが出来ていた。

 しかし、一番注目すべき点はそこではない。この戦いの一番の立役者は誰なのかと言われると、間違いなく、ヒースクリフだ。彼のタンクとしての技術は他のタンクと比べても、圧倒的であり、一時は一人でボスモンスターのタゲを取り続けた程だ。更には、攻撃面でも優秀で、ボスに対して的確にダメージを与え続けていた。今日のボス戦に参加した者達は、血盟騎士団こそ、攻略組最強のギルドであると思い知らされたことだろう。かく言う俺も、これからの攻略組を引っ張っていく存在になるのは血盟騎士団であると思っている。ボス戦が終了し、ボス部屋が歓喜に包まれる中で、俺はそんなことを考えていた。

 

 ユウキ「お疲れ様、今日のアルファ、いつもよりキレのいい動きだったよ」

 

 アルファ「そっちこそ、早くも軽業スキル使い熟してんじゃねぇか」

 

 ユウキ「ふっふっふっ…アルファには負けてられないからね」

 

 こうして、いつも通りユウキと会話していると、少し離れたところから、鎧でカチャカチャと音を立てながら、あの男が近づいてきた。

 

 ヒースクリフ「ボス戦、ご苦労だった」

 

 ユウキ「あ、えっと、ありがとうございますっ」

 

 ヒースクリフは短く、俺達に労いの言葉を送ってくれた。ユウキは、ヒースクリフに緊張しているのか、敬語で返事をした。ヒースクリフと面と向かって話すのはこれが初めてだが、実際に対面してみると、彼の鋭い眼光とそこから醸し出される緊張感ある雰囲気を前にして、キバオウが気圧された理由が少しだけ分かった気がした。

 

 アルファ「アンタこそ、初めてのボス戦なのに、随分と余裕そうじゃないか」

 

 ヒースクリフ「そうでなくては、団長など、務まらないだろう」

 

 ヒースクリフ「…ところで、ユウキ君、だったかな?」

 

 ユウキ「は、はい!」

 

 ヒースクリフ「君の反応速度は素晴らしいものだった。…もしよければ、血盟騎士団に所属する気はないか?私のギルドに所属した暁には、最強足るプレイヤーになれることを約束しよう」

 

 ユウキ「えっと、その…」

 

 ヒースクリフ「聞けば君は、アスナ君とも仲が良いのだろう?ならば、これは良い話だと思うが──」

 

 アルファ「ちょっと待てよ。勝手に話し進めてんじゃねぇ。ユウキはもう、ギルドに所属しているぜ」

 

 突然のヒースクリフから勧誘に、上手く受け答えできていないユウキを見かねて、俺は口を挟んだ。ユウキは、そもそもスリーピング・ナイツのギルドマスターであるし、それ以前に俺とコンビを組んでいる。そんなユウキがどこの馬の骨かも知れないギルドに勧誘されているとなれば、俺が介入することも致し方ないだろう。

 

 ヒースクリフ「…君は確か、アルファ君だったね。…どうせなら君も血盟騎士団に入団するか?最も、君が最強になれるかは保障できないがね」

 

 …ハッキリ言ってくれんじゃねぇか。俺とユウキには絶対的な差があると、ヒースクリフはこのボス戦で理解したのだろう。俺も自覚はしているつもりだが、実際に第三者に指摘されると、少々頭に来てしまう。そんな俺のことは露知らず、ヒースクリフは言葉を続ける。

 

 ヒースクリフ「それに、ある情報によると、君達のギルドは25層にて実質的に瓦解しているらしいじゃないか。…こんな事を言っては悪いかもしれないが、ここで新しくギルドに所属し直すというのも──」

 

 ユウキ「ごめんなさい。ボクにとっては、スリーピング・ナイツは大事なギルドなんです。だから、血盟騎士団に入団することは出来ませんっ!」

 

 ユウキが深々と頭を下げてヒースクリフの熱烈コールを断った。

 

 ヒースクリフ「…まぁ、本人がそう言うなら、仕方ない」

 

 ヒースクリフは一変してあっさりとユウキの勧誘を諦めた。そして踵を返して、血盟騎士団が集まっている場所へ戻ろうとしていく。ふと、足を止めたヒースクリフは、こちらに背を向けたまま、言葉を放った。

 

 ヒースクリフ「…今はそれでいいかもしれない。だが、いずれ君も、自ら血盟騎士団に入団することになるだろう。私はその時を待っているよ」

 

 現時点で最強を名乗る資格をもちあわせているであろう男は、意味深な言葉を残して、その場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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