ユウキ「ボク達ってさ、一応ギルドやってるじゃん」
アルファ「まぁ、そうだな」
今日も一日の攻略を終えて、適当な店で晩御飯を食べていると、突然ユウキが何の脈絡もなく、そんなことを言ってきた。
ユウキ「それで、ボクがギルドマスターなわけじゃん」
アルファ「…あ~、だから、今日のご飯代は持ってくれる、と」
ユウキ「違うよ。普通に自分の分は自分で払おうね」
アルファ「…はい」
駄目でしたか。…別にお金には困ってないので、奢ってもらう必要もないわけだが、人とは、誰かに奢ってもらえると凄く得した気分になれる生き物なのだ。
ユウキ「それで、話を戻すけど、ギルドってシステム上、ギルドマスターにお金が入ってくるよね」
アルファ「確か、戦闘毎に得られるコルの一部が、強制的にギルドマスターに奪われるよな」
ユウキ「その言い方、悪意しか感じないよ。…兎に角、そのシステムのお陰で、ボクは結構なお金持ちなんだ」
アルファ「…自慢?」
ユウキ「ちーがーう!」
と、まぁ、一頻りユウキで遊んでから、俺は本題を訊ねる。
アルファ「それで、話が全く見えてこないんだけども」
ユウキ「そろそろボク達も、ギルドホーム買おうよ!」
アルファ「…はぁ、しかしいきなりどうして?」
ユウキの余りに唐突過ぎる提案に、俺は理由を訊ねてしまう。
ユウキ「…昔さ、ボクの片手剣のインゴット集めに行った時のこと、覚えてる?」
アルファ「あぁ、しっかりと覚えてるぜ」
ユウキ「あの時、みんなでギルドホームの話してたじゃん。昨日それを思い出してさ…」
あの時はまだ、オウガとサツキが生きていた頃だ。…確かに、ギルドホームがブラック企業やなんやらの話で盛り上がっていた。彼らのことを思うと、ギルドホームを構えるのも悪くはない気がする。
アルファ「…そうだな。ギルドホーム、探すか」
ユウキ「うん!じゃあ、早速明日、探しに行こうね!」
アルファ「りょーかい」
それから俺達は、食事処を後にして、宿屋に向かった。…明日は忙しい一日になりそうだ。そんな風に思った俺は、その日はいつもよりも早目に寝床に着いた。
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ユウキ「─それで、何処見に行こっか?」
翌朝、しっかりと時間通りに目覚めた俺は、既にやる気満々の様子で宿の外で待っていたユウキと落ち合った。腹が減っては戦は出来ぬということで、まずは腹ごしらえに朝食を食べている。ユウキは目玉焼きを頬張ってから、俺にそう言ってきた。
アルファ「…一層から順番に、全部見て回るのはホネが折れそうだし、取り敢えず、候補地を上げないか?」
ユウキ「…候補地かぁ…。う~ん…」
ユウキはしばらく悩み続けていた。それもそのはずで、この世界はまだ半分も踏破されていないというのに、どこもかしこも魅力的過ぎるのだ。同じ層の中でも、街が違えば雰囲気がガラッと変わるところもあるので、一概に第何層、と決めるわけにもいかない。
どの町に絞り込むか、そんな贅沢な悩みを抱えているうちに、俺達は、朝食を食べ終えてしまった。ふと、良いアイデアを思い付いた俺は、ユウキにそれを提案する。
アルファ「なぁ、こういう時は先人の知恵を借りてみようぜ?」
ユウキ「先人の知恵?」
ユウキが疑問そうに俺に聞き返す。店を出た俺達は、そのまま転移門を使って第十層まで移動した。この道を往復するのはもう慣れたもんで、ユウキも俺の考えていることに気が付いたようだった。俺達は例のお店の前までやって来て、引き戸を開ける。すると、落ち着いた声で店主が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ…あぁ、アルファ君とユウキちゃんでしたか」
ユウキ「タイラさん!おはようございます!」
先日、俺が今も装備しているコートを買った時に、彼の名前がタイラ、であるということを本人から教えてもらった。一見さんとしてこの店に訪れた時は、それはもう最悪な人間関係の状態でスタートしていたが、生命の碑で邂逅して以来、タイラとは仲良くさせてもらっている。
コートを購入した日に本人が、死んだ息子と同じぐらいの年齢だから、良かったら偶には顔を出してくれると少し心が楽になる、と言われたので、それぐらいならお安い御用と、度々この店を訪れさせてもらっているのだ。
しかし、いつの間にか俺よりもユウキの方がタイラと親しくなっていた。…年齢が近ければ、性別は問わないのか。などと、とても口にするわけにはいかないジョークを心の中で唱えてから、タイラに話し掛ける。
アルファ「…タイラ、良い物件探してるんだけど、良さげな場所ないか?」
タイラ「物件?」
ユウキ「…ボク達、ホームを購入しようと思ってさ!」
タイラ「またそんな唐突に…ついに結婚したんですか?」
ユウキ「ふぇ!?」
アルファ「違うぞ。正しくはギルドホームを購入するつもり、だ」
タイラ「…そうですか」
アルファ「おい、なんでそんな残念そうな顔してんだ」
タイラの店に通うようになってから数日経過したある日、不意にタイラの口から、アルファ君とユウキちゃんはお付き合いしてるんですか?とかいうトンデモ発言が発射されたのだが、その時に見せてしまった俺達の慌てぶりが完全に病み付きになってしまったらしく、それ以来、時たまこうして俺達を揶揄おうとしてくる。
…どうして俺の周りには、揶揄い好きな奴らばっかり集まってくるんだろか。…そうか。俺も揶揄うことが好きだからか。類は友を呼ぶって奴だろうな。タイラはユウキの動揺ぶりを見て、目を細めていた。
タイラ「…良物件と言っても、何を基準に考えればいいんでしょうか?」
アルファ「やっぱりそこに落ち着くか…ユウキ、金額に上限とかあるのか?」
ユウキ「……あ、えっと、取り敢えず上限は無しでいいかな」
放心状態のままだったユウキは少ししてから、再び現実世界へと意識を取り戻した。
タイラ「金額を気にしないなら…タフトの街とか、ロービアの街、それに、ウォルプータの街、シャリアの街、なんてどうでしょう?」
タフトの街は第十一層の主街区で美しい街の作りで、ロービアは第四層の主街区で水の都としての素晴らしい景観で有名だ。ウォルプータの街は第七層の主街区の次にある街で、カジノやビーチ、飲食店など、日々の生活を豊かにする施設が整っている。シャリアは第二十四層の主街区で、イルミネーションや色とりどりに光る街灯など、眠らない町という異名があるぐらい、とにかく煌びやかな街だ。
価格の高いエリアを上げるのなら、他にも、如何にも中世ヨーロッパの王宮貴族達が住んでいそうな第三十三層の主街区ロゼッタ、ロービアの西欧風の水の都とは対照的な、寝殿造を想起させる日本風の水の都である第十四層の主街区ヘイアンなども候補に挙がってくるだろうか。
しかし、毎日ホームに戻ってくる手間を考えると、ウォルプータの街は候補から外れてくるだろうか。
タイラ「のどかな雰囲気の場所が良ければ、第三十五層のミーシェとか八層のフリーベンも良さそうじゃ…あぁ、そういえば二十二層には、ログハウスが販売されているらしいですね。あそこなんかもゆっくりとした雰囲気でいいと思いますが」
アルファ「…ユウキ、どうだ?シックリきそうな所はあったか?」
ユウキ「…う~ん…アルファは?」
アルファ「…俺は、二十二層のログハウスとかミーシェだろ…。後は、ロービアと、ヘイアンなんてどうだ?」
ユウキ「…取り敢えず、そこから見に行ってみよっか」
タイラ「まぁ、後はもう二人の好みになってくるでしょうし、ゆっくり悩んできたらいいと思いますよ」
ユウキ「うん!じゃあまた来るね~」
そうして俺達は、タイラの話を聞いて気になったところから、しらみつぶしに見に行くことになった。まずはロービアとヘイアンを見に行った。どちらも素晴らしい美しさを孕んでいて、甲乙つけがたい。次に二十二層のログハウスを、この層はモンスターが出現しないことからか、森を抜けた先に、ポツンと幾つかのログハウスが販売されていた。
そして三十五層のミーシェは、雰囲気自体はのどかであるはずなのだが、最前線に近い層ということもあって、中々に騒がしい街と化していた。それから思い付きで色んな層を見て回ったが、これといってビビッと来る場所に出会えないまま、そろそろお昼時になってきたので、俺達は、ある喫茶店で休憩していた。
ユウキ「なかなか難しいね…アルファは良さげなホーム見つけられた?」
アルファ「…俺は、22層のログハウスが結構気に入ったけど、ユウキはどうだった?」
ユウキ「…あそこは、ボクはちょっと嫌かな…」
アルファ「マジで?」
俺は、自然の緑を感じられて、凄く落ち着いた気分に陥ったんだが…。ユウキにその理由を訊ねると、少し遠慮気味に答えてくれる。
ユウキ「うん…ちょっと層全体が、静かすぎるから。ボクは人が多い所とか、活気のある所にホームが欲しいかな…ごめんね?」
アルファ「いや、気にすんな…それに、活気が良いって言ったら、やっぱりミーシェなんじゃないか?」
人が多い、という条件だけなら、はじまりの街なんかも良さそうだが、あそこには活気というものが全く感じられない。最近、キバオウ率いるアインクラッド解放軍が人的資源の不足から、最前線から身を引いて第一層を拠点としたらしいが、今のはじまりの街はどういう風に変化しているのだろうか。
俺達も毎日第一層に降り立つとはいえ、生命の碑にしか行かないので、はじまりの街の実情についてはよく知らない。
ユウキ「ミーシェは今は最前線に近いから、人の出入りが多いだけかもしれないし…」
アルファ「……そうだ!俺達まだ行ってないところ、あったじゃねぇか!十五層の主街区!」
ユウキ「…あ!そっか!あそこは結構好きかも!」
アルファ「よし、じゃあ今から見に行こうぜ!」
ユウキ「うんっ!」
俺達は、思い立ったが吉日といった具合で、喫茶店から飛び出して、転移門まで走っていった。
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俺達が降り立った第十五層の主街区イナキアは第三十五層の主街区ミーシェに負けないぐらいの活気と人混みで溢れていた。十五層のという前線から二十層も離れた下層がこんなにも活気と熱気で溢れかえっているのなら、今後ここが閑散とした雰囲気になってしまう恐れを抱く必要はないだろう。
イナキアはアインクラッド一の商業都市という設定であり、右を見れば露店商が、左を見れば押し売りが、後ろを見れば怪しい武器を売っているお店が、とNPCからプレイヤーまで、どこもかしこも商業を担う者たちの巣窟となっている。しかし、この街にプレイヤーが集う最大の理由はそこにはない。この街では、週に二度、ここから少し離れた広場にて、オークションが行われるのだ。その度に、あるプレイヤーは自分に必要のないレア物を高く売って、己の私腹を肥やそうと、あるプレイヤーはレア物を競り落として、己の強化に努めようとそれぞれの思惑を巡らせながら、この街に集うのだ。
活気だけではなく、熱気があるというのは、それが一つの原因だったりする。だが、俺はこの、昔ながらの商店街のような雰囲気が気に入っていた。後はユウキがどういう反応を見せるのかで全てが決まるのだが…。
ユウキ「ここ、いいね!ホーム探しに行こーよ!」
ユウキ的にも、ここは大当たりだったようだ。俺達は意気揚々と商店通りをグイグイと切り抜けて、プレイヤーが購入できるホームを探しに行く。商店通りにも空き家は幾つかあったが、流石にそこらは将来、物売りとして店を構えるプレイヤー達に残しておくべきだという話に纏まり、スルーしておいた。
しばらく、商店エリアを歩いて行くと、住宅街のような場所までやって来た。住宅街とは言っても、合間合間に店があったり、露店商が居たりと、アインクラッド一の商業都市という名前に相応しい様子だった。住宅街に露店商が居るのを見ると、小さい頃に、家の近くに来た焼き芋屋さんから焼き芋を買うことを楽しみにしていた日々を思い出して、なんだか少し懐かしい気持ちになった。
それからユウキと共に、ここは立地が微妙だとか、このホームは狭すぎるとか、色合いが好みじゃないとか、色々難癖をつけながら、理想のホームを探し求める。しばらく住宅街を歩きながら、曲がり角を右に曲がると、左手に、緑色の屋根と白いタイル張りの壁で出来上がった、何ら特別なものではない、ありふれたホームを見つけた。
…少し、小さすぎるかもな。俺が頭の中でそう判断し、ユウキにそれを告げようと、隣に居るユウキの方を見やった。するとそこには、目の前のホームを吸い込まれるように見つめているユウキが居た。
ユウキ「……うそ」
それは短く、とても小さな声で、それこそ魔法をその目で見たかのような、驚きを孕んだような呟きだった。
アルファ「…ユウキ?」
俺が呼び掛けるも、ユウキは、一ミリたりとも白いホームから目線をずらすことなく、何の反応も見せない。たっぷり一、二分の間、固まり続けたユウキは次の瞬間に、俺にこう言った。
ユウキ「……決めた。ホームはここにしよう…」
特にユウキの提案に対して異議はない。だが、俺には気になる点が一つだけあった。
アルファ「いいけど…どうしてここを選んだんだ?似たようなホームなら今までにもあっただろ?」
ユウキ「……現実世界で、ボクが住んでた家とそっくりだから…」
アルファ「…そうか」
珍しく哀愁を漂わせながら、現実世界の話をしてきたユウキに俺は返す言葉を見つけられないでいた。
ユウキ「…ママとパパと姉ちゃんとボクの四人で……懐かしいなぁ…」
アルファ「…奇遇だな。俺も、姉貴と親父と母さんの四人家族なんだ。…早くこの世界から脱出してやらないと、心配してるだろうからなぁ」
ユウキ「………」
アルファ「…ユウキ?」
ユウキ「……そうだね。…じゃあこのホームの権利書を買い取りに行こっか。番地はCの27、だって!」
一瞬、ほんの一瞬だけ、表情を曇らせたユウキは、次の瞬間にはいつも通りの元気良さを取り戻していた。俺は今度もまた何も言えずに、ユウキに相槌を打つことしかできない。
アルファ「…あぁ、誰かに先越されたら、堪ったもんじゃないからな」
ユウキ「じゃあ、走って行くよ!」
アルファ「お、おいっ!」
敏捷ステータスに身を任せて、全速力で来た道を引き返していくユウキを俺は必死に追いかけながら、不動産仲介店まで駆けて行った。
────────────────
ユウキ「やっぱり、内装まではそっくりじゃないか~」
音速の速さで、不動産仲介店まで到着した俺達は、店内に入るや否や、Cの27番地だ!と叫び、仲介人を驚かせてしまったのだが、それ以外には何の問題もなく、権利書を購入することが出来た。こじんまりとしたホームであったことから、お値段は200万コルとホームにしては安い値段だ。
…まぁ、ホームの相場とかは全く知らないんだけどな。何とか今までの、塵積って山となるコルの徴収が活きて、ピッタリ200万コルを支払い終えた俺達は、本日から我らスリーピング・ナイツの根城となったホームへ向かう前に、ソファやテーブル、椅子などを用意しようと、そこらの店で内装品を購入してから、満を持してギルドホームへ足を踏み入れた。
残念ながら、新築特有の匂いを感じることは出来なかったが、それでも、自分の家を買う、ということの楽しさというか、達成感を味わえた。…親父が苦労して、家を購入した時の感動が少しは理解できた気がする。
ホームの間取りは、一階は、キッチンとリビングにお風呂場。階段を登って右手に部屋が二つ、左手に二つ、とオウガとサツキの分の部屋までしっかりとある。…というか、それが無ければ何のためにギルドホームを買ったのか、という話になってきてしまう。
取り敢えず、ソファやテーブルなどを並べようと、ここじゃない、そこでもないと、ユウキとソファとテーブルの配置に悪戦苦闘しながら、内装を整えていった。次に自分の部屋を選ぶ所になって、俺が右手の部屋を選び、ユウキはその隣の部屋を選んだ。ベッドはもちろん二人分買っているので、各々がそれぞれの部屋の内装を試行錯誤しながら、決めていく。
…引っ越し先の内装決めとか、インテリって結構楽しい物なんだな。一足早く内装を決め終えた俺は、リビングのソファーで寛ぎながら、ユウキが内装を決め終えるのを待っていた。
アルファ「おっ、部屋のメイキング終了したんだ」
ユウキ「ソファ、半分分けてよ」
アルファ「え、やだ」
ユウキ「…」
二階から降りてきたユウキが、このホームに一つしかないソファに寝そべっている俺に対して、ソファの領地を明け渡すことを要求してきたが、少し、新居で調子に乗っていた俺は、子供みたいにユウキの要求を断った。
アルファ「フハハ!貴様の軟弱なSTRでは、この俺を動かすことは出来ぬぞ!」
少々、いや、完全にテンションが上がりきっていた俺は、どこぞの魔王のような喋り口で、ユウキを煽り立てた。だが、ユウキは想定外の行動を取ることで、俺の支配するソファの領地をいとも簡単に奪ってきた。
ユウキ「上に座ればいいだけだもんね~」
アルファ「んなっ!?」
ユウキは、ソファに跨る俺のふくらはぎの上にお尻を下ろしてきた。完全に、ユウキの策に嵌った俺は、もはや白旗を上げることしかできない。
アルファ「…えーっと、もう退きますので、一旦そこ、退いてもらっていいですか?」
ユウキ「…」
アルファ「ユウキさん?」
ユウキはこちらに視線を合わせてくれるが、全く何の返事も返してくれない。俺のSTRなら、無理矢理ユウキを押しのけて、ソファから降りることも出来るのだが、そんな乱暴なことをする気にもなれないし、ユウキのその何かを求めるような視線を見ると、そういう訳にもいかなかった。
ユウキ「この前さ、ボクを守る、だなんて言ってたよね」
アルファ「…あぁ、そうだな」
タイラに向かって送った言葉の中で、そんなことを言った気がする。しかし、本人に直接確認されてしまうと、なんだか小恥ずかしい。俺はユウキから少し目線を逸らして、返事をした。
ユウキ「…忘れないでよね。アルファがボクを守るのと同じで、ボクもアルファを守るんだから。……だから、ボクを置いて、ボクを独りにして、何処かに行かないでほしい…」
アルファ「…」
ユウキが珍しく、俺に弱音を吐いた。俺の前では、気丈に振舞ってくれていたけど、やっぱりユウキも、オウガとサツキが居なくなったことで、心に傷を負っていたんだろう。
ユウキを独りにしない。その願いは、俺にとっては無理難題に等しいものだった。俺は、オウガとサツキの為にも、ユウキを守り切らなければならない。それは、俺の命を犠牲にしてでもなのだ。つまり、どうしようもない事態に陥ってしまった時には、俺はユウキの身代わりになる決意はもう出来ている。
だが、もしそうしてしまえば、スリーピング・ナイツに属する者はユウキを除いて死に絶え、ユウキはこの世界にたった一人で取り残されてしまうのだ。それ故に、オウガとサツキの遺志とユウキの願いというものは、相反するところに位置しているわけだ。
…それでも俺は、ユウキの願いも叶えて見せたい。俺は、欲張りなんだ。
アルファ「…まぁ、善処させてもらう」
ユウキ「煮え切らないね」
アルファ「手厳しいな。でも、俺は、ユウキを独りにはさせたくないって思ってるのは事実だぜ?」
ユウキ「…ありがと」
しばらく、無言の時が続いたが、それは居心地の悪いものではなかった。そこから更にしばらくして、ようやくユウキが、俺のふくらはぎから立ち上がってくれた。ふくらはぎには、まだ彼女の温かさが残っている。
ユウキ「…そろそろ、夜ご飯でも食べに行こ?」
アルファ「…そうしようか。はい、焼き鳥屋さん希望で!」
ユウキ「アルファは焼き鳥好きだね~。ま、ボクも好きなんだけどね」
すっかりいつもの調子に戻ったユウキと俺は、晩御飯を食べに、夜の商店エリアへと繰り出していった。
アルファ君がユウキちゃんの中で渦巻く気持ちに気が付く日は来るのだろうか…。
では、また第46話でお会いしましょう!