近頃は、最前線の攻略ペースが速い。それは、二十五層でのボス戦が原因で多くのトッププレイヤーが亡くなったことや当時の攻略組の中心的存在であったホープ・オブ・ナイツの分裂などで、攻略のスピードが著しく低下していた時期のマイナス分をゼロにするどころか、プラス方面にまで持っていく程である。
その要因となっているのは恐らく、血盟騎士団の台頭であると思われる。特に、攻略組の中でも一線を画すタンクとしての実力を持つヒースクリフの圧倒的強者感によるカリスマ性もあるだろう。そして、以前よりも苛烈に攻略に勤しんでいる血盟騎士団の副団長、アスナのリーダーシップにもその要因があるのは間違いない。最近は、その異常なまでに素早い攻略に拘る姿から、攻略の鬼、と二つ名を付けられるほどだ。
そして、それだけでも攻略組全体の士気が高まり、攻略ペースが速まってきているというのに、火に油を注ぐようにして、更なるペースの加速を呼び起こした人物がいた。それが、最近、前線に戻って来たキリトである。キリトもこれまたアスナのように、ひたすらレベリングを繰り返し、ひたすら攻略だけに熱意を注いでいる。このデスゲームに巻き込まれた一万人のうちの一人としては、攻略のペースが速まり、一日でも早く現実世界に帰還できる時が近づいてくること自体は嬉しいのだが、今回ばかりはそう手放しに喜ぶことは出来なかった。
今のキリトは、目が死んでいる。それはもう、生き急ぐように、死に急ぐように、フィールドや迷宮区タワー、ボス戦に身を投じるのだ。あれでは近いうちに、キリト自身の身を滅ぼしてしまうかもしれない。俺は、そんなキリトの様子を見てそう危機感を募らせていた。それ故に、俺はある禁じ手を一つ、使わせてもらうことにしたのだ。
アルゴ「時間ピッタリだナ」
アルファ「とーぜん」
そう、禁じ手とは、アルゴの力を借りることだ。アルゴの情報収集能力の高さを持ってすれば、キリトに何があったのかを知ることぐらいお安い御用だろう。
ただ、本人の許可なく、第三者のプライベートな情報を手に入れようとするのは、倫理的に問題ありかと思っているので、出来るだけこの手段を使いたくはなかったが、流石にあの状態のキリトを放っておくわけにもいかない。アルゴの都合に合わせて、第28層の主街区で待ち合わせをしていた俺達は、時間丁度に落ち合うことが出来た。
アルゴ「それで、今日の要件はなんダ?」
アルゴがそこら辺の出店で買ったであろう、おかずクレープを頬張りながら、俺に問い掛けてくる。
アルファ「…キリトが、どうしてあんな様子なのか、教えてくれ」
アルゴ「…」
俺がそう答えると、アルゴはクレープを口に運ぶのをピタリと止めて、黙り込んでしまった。しかし、そのあとすぐに、アルゴが話し始める。
アルゴ「…オレっちも、良くは知らない。…でも、キー坊が所属していたギルドが壊滅した。それだけは確かダ…」
アルファ「なッ…」
正直言って、信じられない。あのキリトが付いていながら、ギルドの全滅など、有り得るというのか。俺がその事実に衝撃を受けている間にも、アルゴは続ける。
アルゴ「…オレっちもキー坊の様子を見に行ったことはあるケド、無駄だったヨ…」
アルファ「…そうか」
アルゴ「…それに、最近はアーちゃんの様子もおかしいナ。最近のアーちゃんは、悪い意味でこの世界で生きていない、現実に帰ることばかりに躍起になっているヨ…」
アルファ「…となると、アスナにキリトを何とかしてもらうのも、無理そうか…」
アルゴ「…そうだナ」
どうやら、攻略組の内情は、俺の思っていた以上に深刻な事態に陥っていたようだ。俺は、アルゴに礼を言ってから、情報料を払い、その場を去ろうとする。
アルゴ「情報料はいらないヨ。これは、一友人としての会話だからナ」
アルファ「そりゃあ助かるぜ」
アルゴに渡した硬貨が数枚返却されたので、俺は今度こそ、その場を去ろうとする。だが、アルゴが再び呼び止めてきた。
アルゴ「そう言えば、最近アー坊とユーちゃんが最前線の町で泊ってる所、見かけないケド、どこで泊ってるんダ?」
…どうしてだろうか。俺は最近、未来が見えるようになった気がするんだ。この後の展開が取るように分かる。だが、俺はアインクラッド一の情報屋を相手にして、適当にはぐらかすという最悪の選択を選んだ。
アルファ「…ま、適当な場所に、だ」
アルゴ「いい宿屋でも見つけたのカ?だったらオレっちも、アー坊に着いて行ってみるとしようカ」
所詮は素人の言い訳、やはりアルゴには通用しなかった。アルゴは明らかに俺の嘘に感づいた様子で、意地悪を言ってくる。俺は、諦めて白状することに決める。
アルファ「…ギルドホームを買ったんだよ。だから寝泊りはそこだ。余計な金が掛からなくて、便利だろ?」
アルゴ「…ほうほう、オネーサンの知らないところでそんなことが起きていたんですカ」
アルファ「なんだよ」
アルゴは顔をニタニタと歪ませながら、何やらストレージからメモ帳を取り出す。
アルゴ「アー坊とユーちゃんは一つの屋根の下で同棲しました、と」
アルファ「…まぁ、そうだけども」
アルゴ「結婚はいつなんダ?」
アルファ「いいか?俺達が購入したのは、ギルドホームだ!」
アルゴ「…だったら、そのうち二人専用のホームも買うってことカ?」
アルファ「そういう仲でもないだろっ!」
アルゴ「ハイハイ、今はまだ、そういうことにしておいてあげるヨ。そんじゃ、またナ!」
アルファ「…はぁ」
アルゴは自分の言いたいことだけ言って、何処かへ走り去っていった。俺もアルゴに釣られて、少し疲れたような気が…ホームに戻ってゆっくりしよう。そう決意した俺は、転移門へと向かって歩き始めた。
────────────────
アルファ「─とまぁ、そういうわけで、キリトの様子がおかしいらしいぜ」
ユウキ「…そっか」
ギルドホームまで帰宅した俺は、椅子に座りながら、ユウキにアルゴから聞いた話を包み隠さず伝えた。…最後の方のおふざけは、もちろん伝えていない。
アルファ「俺の時みたいに、何とかできないか?」
ユウキ「…ちょっと、難しいかも…」
アルファ「条件は似ているとは思うけど?」
ユウキ「あの時のアルファは、まだ立ち上がれてすら出来てなかったから、ボクのやり方が通用したんだ。話を聞く限り、キリトは良くも悪くも立ち上がっちゃってるから、何を言っても無駄だと思う…」
立ち上がれてすらいない、なんて面と向かって言われると、少し胸が痛い。
アルファ「…マジか。…まぁ、難しいのとやらないのとは違うからな。試すだけは試してみようぜ」
ユウキ「そうだね。じゃあ、明日の攻略会議の終わり際に、声掛けようか」
アルファ「あぁ、そうしよう」
話が一段落ついた俺は、安楽椅子で揺られながら、吞気に時を過ごし、ユウキはお風呂場に向かって行った。…キリトには、声を掛けることは決まったけれど、アスナの方はどうしたものか。アスナにキリトを何とかしてもらうのが、一番うまくいきそうな気もするんだが、肝心のアスナも何らかの理由で、心に余裕がなくなっているらしいし、今回ばかりは俺達で何とかするしかないのか。
ギルドの壊滅。そして、キリトだけが生き残った。…例えそれが、どれだけキリトが原因で起こったものではなかったとしても、キリトは絶対に自分のせいにしてしまうはずだ。それは、アイツが人一倍優しい性格の持ち主であるが故なのだ。キリトが周囲のプレイヤー達に蔑まれる原因となった第一層での出来事で俺は深く思い知っている。
俺の場合は、もちろん完全に俺の力不足のせいで、オウガとサツキを殺してしまった。その罪には、何の言い訳もできないし、するつもりもない。だが、キリトは、俺よりも強い。しかも、所属していたギルドは中層プレイヤーのギルドだ。ならば、キリトの力不足で、全滅になることなど有り得ない。きっとギルドが壊滅したのは、キリトのせいではないのだろう。
であれば、どんな言葉を掛けるべきか。キリトは悪くない?…そんなことを言っても、キリトの性格上聞き入れてはくれない。アスナと二人でゆっくりデートでもしてみたらどうだ?…軽い出来事なら、それでも良いだろうが、今回はそんな軽々しい事ではない。時間が傷を癒してくれるぜ?…事態は深刻だ。そんな他人事みたいな言い方をされたら、本人は不快に思うだろう。
俺は、キリトに掛けてやれる言葉を見つけられないまま、安楽椅子を前後に揺らす。すると、お風呂から上がってきたユウキが、リビングに戻って来た。
ユウキ「空いたよ~」
アルファ「ん」
一旦、湯船につかって体をリラックスさせれば、良いアイデアも思い浮かぶかもしれない。そう思った俺は、腰を上げて、早速風呂場へ向かおうとする。しかし、俺がリビングを後にする直前に、ユウキが話しかけてきた。
ユウキ「…アルファって、いつもその服装だね。部屋着とか、持ってないの?」
アルファ「…持ってないな」
ユウキ「…ふ~ん」
部屋着など、面倒くさくて購入していない俺は、寝る時と活動する時の違いは、コートを羽織っているか否かぐらいの違いしかない。そもそも俺の装備自体がユウキのように金属装備が付いていないものだけで構成されていることもあり、特段気にすることなく、俺は毎日同じ服を着ている。
…別に、この世界では、汚れが付着したりしても、ハンカチとかで拭えば、綺麗さっぱり取れてしまう。いつだって新品状態なのだ。故に着替えを持つ必要などは無いのだ、と自分の中で言い訳しながら、脱衣所に入った。それから、装備を解除して、体を洗い、湯船に浸かって、一日の疲れを癒す。
お風呂を上がって、しばらくキリトに掛ける言葉を考えながら、ユウキとお休み、と言い合い、部屋に入ってベッドで横になって、俺は眠りについた。
────────────────
「なので、今回のボス戦では─」
最近、俺は前線に復帰した。攻略組の間では、あぶれ者であることは自覚しているが、ボス戦に参加する以上、攻略会議には出席しなければならない。俺が前線から退いている間に、攻略組の様態は大きく変わっていた。
俺が攻略に参加していた当時、攻略組の中心的存在であったホープ・オブ・ナイツは無惨にも崩壊し、その代わりに、血盟騎士団なるギルドが中心的存在として君臨している。そして、そのトップに立つのはヒースクリフという男だ。奴は攻略組を率いる血盟騎士団のギルドマスターであるというのに、指示命令の類のものはほとんど出さない。しかし、そのタンクとしての圧倒的な堅さが、攻略において、大きく影響を及ぼしている。
あの堅さを見せられると、俺は自然と、…俺にあの堅さがあれば、彼らを死なせることは無かったのだろうか、などと淡い妄想と深い後悔を味合わせられる。だが、そんなものは本当に妄想でしかない。…俺が彼らを殺したのだから。俺の弱さと慢心と不遜が彼らを殺したのだから…。
ふと、目の前に意識を戻すと、攻略会議が終わりを迎えようとしていた。…皆の前に立って攻略会議を主導するアスナは水を得た魚のように、生き生きとその場を取り仕切っているように思える。…やはりアスナは、ビーターの俺なんかと一緒にいるのではなく、リーダーとしての実力を発揮できるポジションに着くべきだったのだ。思えば、俺がアスナとコンビを組んでいた期間も、あれは偏に、俺がアスナの優しさに甘えていたのだろう。俺が彼女に甘えて、彼女が活躍できる機会を奪うべきではなかった。俺は、誰かに関わる資格なんて、持っていなかったのだから…。
とうとう、明日に控えるボス戦の最終確認も終了し、攻略会議もお開きとなる。一瞬、アスナと目が合った気がするが、恐らく気のせいだろう。俺はフィールドに向かうために、早々にその場を発とうとした。だが、背後から声を掛けられる。
アルファ「もうとっくに日は暮れてんぞ。明日に備えて、今日は休んだらどうだ?」
キリト「…アルファか。何をするのかは、自由だろ」
俺は周囲の人間に対して、威圧的な雰囲気を醸し出して、出来るだけ話し掛けられないようにしているのだが、偶に、こういう奴もいる。
アルファ「明日はボス戦なんだ。ちょっとは息抜いとけ」
キリト「ボス戦だから、それに備えてレベリングに向かうんだよ」
アルファ「夜のフィールドは危険だろ?」
…少し前に、アルゴにも同じ事を言われた気がする。だが、危険だからなんだというのだ。俺は段々、アルファのことが鬱陶しく感じ始めていた。
キリト「レベリングは、最優先事項だ」
アルファ「確かにそうだけど、心と身体の健康にも気を配れ」
キリト「…レベリングよりも、そっちのほうが大切だって言うのか?」
アルファ「…そうだ」
キリト「ッ!」
俺はその答えを聞いた瞬間、──お前の弱さが原因で、お前の仲間は死んでいったんだぞッ!という決して口にしてはいけないであろう言葉が俺の喉まで昇って来ていた。しかし何とか、ギリギリのところで、それを堪える。
俺は、誰に嫌われようとも構わないが、自分から相手を傷つけるようなマネはしたくない。俺の良心がそう言っているのだ。…良心?馬鹿を言え。そんなものが俺の中にあったというのなら、彼らに情報を惜しみなく分け与えれていたはずだ。
これ以上、アルファと話すことは無いと判断した俺は、彼に背を向ける。
キリト「…俺は、俺の思うようにやるだけだ」
忠告を聞き入れない俺に呆れたのか、アルファはもう何も言ってこなかった。俺は、そのことに対して、特に何も思うことなく、夜のフィールドへ向かって行った。
────────────────
ユウキ「…ダメだったね…」
アルファ「…あぁ」
キリトの説得に見事失敗した俺は、ユウキと共にギルドホームに向かって歩いていた。
アルファ「俺には、人の心を動かす才能がないのかもな…」
ユウキ「そんなことないよ。ボクがやっても、きっと駄目だった」
アルファ「…やっぱり、アスナじゃないと無理か?」
ユウキ「…そうかもね~、でも…」
アルファ「そうだよなぁ…」
キリトの説得に失敗した後、すぐさまアスナの元へ向かった俺達は、何とかアスナを呼び止めることが出来た。アスナは攻略に一点集中し過ぎているとはいっても、俺とユウキとは、これまで通りの仲の良い関係を維持している。ただ、会話の所々で、一刻も早くこのゲームをクリアすることに注視しすぎている面が見え隠れしていたが、それを除けば、至って正常な状態を保っていた。
だが、俺がキリトに関する話題を持ち出した瞬間、アスナの態度が急変し、俺の話をろくに聞かないまま、血盟騎士団のメンバーと共に、その場を去ってしまった。
…あの様子を見る限り、こんな事態になる前にキリトとアスナは大喧嘩でもしてしまったのだろうか。アスナという最後の希望にすら縋れなくなった俺には、もう二人が仲直りして、現状を回復してくれるという無理な希望に頼ることしかできない。
ユウキ「…気分転換に、デュエルしよっか」
俺の気分が下がっていることを察してくれたのか、ユウキがそう提案してくれる。
アルファ「…よし、今日は負けねぇからな!」
ユウキ「お、乗り気だね。今日も勝たせてもらうよ!」
アルファ「俺の操る四つの剣についてこられるかな?」
ユウキ「アレはまだまだ練度が足りないんじゃない?」
それから俺達は、適当な場所を探して、デュエル申請を行った。先程までは、軽口を叩き合っていたはずなのに、カウントダウンが始まる頃には、俺達は真剣そのものだった。
俺は、扱う武器が多い為、ユウキよりも引き出しは豊富だ。だが、最初に投げピックを投擲して、ユウキに牽制攻撃を仕掛けようものなら、俺が二つ三つと投げ終えないうちに、懐にまで潜り込まれてしまう。それ故に、ユウキとデュエルをする際には、片手剣、片手槍、両手剣、曲刀、の四つの武器をうまく使いこなす必要があると、今の俺は判断している。カウントダウンが残り1となった時、ユウキは、姿勢を低く構えた。そして俺も同じく姿勢を低く構える。
デュエル開始の合図が鳴った時、俺達は既に、中心にて激突していた。俺が最初に構えていた武器は両手剣、こういうパワー勝負なら、片手剣を使うユウキよりも俺に分がある。ユウキは俺の剣の重みに耐えられず、後ろへバックステップを踏むも、俺は、投げナイフを投擲して、その処理に手間を取らせた。その隙に、片手槍に持ち替えた俺は、ユウキが届かない間合いから、攻撃を繰り出す。腕を伸ばし切ると、手元に戻すタイミングにズレが生じて、その隙にユウキに攻撃を決めかねられないので、コンパクトな動きで突きの連撃を仕掛けていく。
ユウキはかつてのサツキがやっていたように、片手剣で槍の軌道を逸らしながら、俺へと迫ってきた。丁度良い間合いになった瞬間、俺も即座に武器を曲刀に切り替える。片手剣ではなく曲刀を選んだ理由は、ユウキのスピードに着いて行くためには、より軽い方の武器を選択しなければならないからだ。ユウキとの剣戟が開始されるが、まともにやり合えば負けることが確定しているので、要所要所で体術スキルを織り交ぜていく。
そして、遂にユウキの高速剣に耐えられなくなった時、俺は弦月の態勢を取った。ユウキは、それを警戒するが、俺の取った行動はブラフだ。弦月のモーションを模倣することで、ユウキの警戒と、ソードスキルの終わりに生じる硬直時間に必ず止めを刺せるという確信を与えた。まんまとそれに引っかかったユウキは、俺にとどめの突きを繰り出してくる。
だが、俺はそれを紙一重で躱して、逆にユウキに突きを放った。──決まるッ!俺は確信と共に、俺の持てる最高峰の速さで剣を突き出した。しかし、ユウキは、そんな俺の最高速度を悠々と上回るようにして、俺の突きを回避し、俺の脇腹を斬り付けた。
ユウキ「…ふっふーん。今日もボクの勝ちだったね」
デュエル終了のお知らせを見ながら、ユウキが得意げに剣を振り回して、そう言ってきた。
アルファ「…また、か」
ユウキ「これで何連勝だろうね~?」
アルファ「…八連勝…」
ユウキ「やっぱり、ボクの方が強いんだよ?…あれっ?もしかして、拗ねちゃった?」
アルファ「…拗ねてないっ!」
俺のユウキとのデュエルの勝率は三割と、以前と比べて、随分と落ちてしまった。別に、俺の成長が遅くなってきていたり、止まっているわけではない。
俺の成長スピードをユウキの成長スピードが大きく上回りすぎているのだ。どれだけ俺がユウキに追いつこうと努力しても、ユウキは一歩も二歩も俺の先を行く。最近は、ユウキの全速力に対応するために、小細工を仕掛けなければならないほどに、だ。その内、ユウキは俺の手の届かない領域にまで足を踏み入れることを俺は直感的に感じ取っていた。
…それでも、俺はユウキの隣に立てるように、死に物狂いで努力し、進み続けなければならない。と、決意を確固たるものにしながら、ギルドホームまでの道のりにある、ある出店に俺達は立ち寄った。
ユウキ「トロピカルスムージー下さい!」
「あいよっ!」
ユウキの注文により、色鮮やかなスムージーが提供された。お代を出すのは、…俺だ。
ユウキ「ん~、美味し~!…いつもありがとねっ」
アルファ「そういう気持ちがあるんなら、自分で買ってくれよ…」
ユウキ「でも、そういう約束だもんね~」
そう、ギルドホームに引っ越してきてからも、俺達は毎日変わらずデュエルをしているのだが、変わった点が一つあった。それは、商店街にて、デュエルの勝者は、敗者に何か奢ってもらえるというシステムだ。因みに、ギルドホームを購入してから、まだ一度も俺はユウキに勝てていない。…絶対明日は負かしてやる、俺は明日のデュエルに向けて、脳内で作戦会議を行いながら、ユウキと一緒に帰路に着いた。
アルファ君とユウキちゃんが吞気に過ごしてる間に、キリト君は原作通り大切なものを失いましたよ、と。
では、また第47話でお会いしましょう!