ユウキ「…アルファ、助けに入ろう!」
そう言って、今にも内壁の上部からボス部屋に飛び降りようとするユウキに、俺は右手を出して、それを抑止した。
アルファ「…待ってくれ」
ユウキ「なんでッ!?」
ユウキは、俺の行動を理解できないようで、目を見開かせて、俺の服をぶんぶん振り回しながら、俺に問い詰めてくる。
アルファ「見たところ、今は順調にボス攻略が進んでるだろ?…曲がりなりにも、あのプレイヤー達だって攻略組を目指して、最前線に出て闘ってるんだ。勿論、彼らが窮地に立たされたら、俺も助けに入るつもりだけど、そうならない限りは、彼らの経験の為にも、見守るべきだと思う」
ユウキ「…確かに、そうかも…それに、これぐらい何とかできないと、節目のボス戦は厳しいだろうしね…」
ユウキは、俺の言い分に納得してくれたようで、もうその場から飛び降りようとはしていなかった。ボス部屋には、合計二十人前後のプレイヤー達がそれぞれ、己の役割を果たして、上手く連携プレーを取っている。所属しているギルドがバラバラなことから、即興のパーティーであることが伺えた。
血盟騎士団所属と思われる青年プレイヤーが周りのプレイヤーに上手く指示を通しながら、見る見るうちにボスの体力を削っていく。最近勢い付いている風林火山のメンバー二人がいることも大きいか。ボスの体力が、レッドゾーンに突入した。ここは一旦、ボスの行動パターンを把握し直すのがセオリーだ。だが、俺の予想に反して、彼らは攻撃を続行した。
ユウキ「あれじゃあ…ッ!」
アルファ「…」
ユウキの懸念と共に、ボスモンスターは行動パターンを変えてきた。左右の鉄格子から、ボスの取り巻きが計15匹、出現した。そして彼らは、ボス戦の経験が浅いせいか、一瞬、動きを止めてしまう。その隙をボスに突かれ、ボスを相手取っていたプレイヤー達は範囲攻撃に襲われて、数人が動けなくなったようだ。取り巻きに対処していた6人のプレイヤーも、数の暴力に押され、壁際まで追い詰められてしまう。沈黙デバフまで喰らってしまい、結晶を使うことが不可能になった。
一気に形勢が悪い方に傾く。判断を急がなければ、彼らは全滅だ。
ユウキ「ボクはもう我慢できないッ!」
アルファ「ユウキは、取り巻きの方を─」
ユウキが、今度こそ、その場から飛び降りようとする。俺もユウキに急いで指示を出そうとしたその時、ボス部屋の中心から、透き通った歌声が聞こえてきた。俺もユウキも、その想定外の出来事に、思わず足を止めてしまう。
歌声の根源は、白を基調とした女性プレイヤーだ。女性プレイヤーが歌いながら、ボス部屋の空きスペースへ駆けていく。そして、その華麗なる音色に釣られた取り巻き達が女性プレイヤーを囲い始めていた。─挑発系のスキルか!?俺がそう気づいた時には、もう既に取り巻き達が女性プレイヤーに向けて、その身を抉るようなギザギザとした鋸刃を振りかぶっていた。
そして、その光景を見た俺は、本能的にその場から飛び降りていた。
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ユナ「…返事が来ない…」
エーくんにメッセージを送ってから、今日で丸二日経つ。なのにエーくんは一向に私にメッセージを返してくれる気配はなかった。いつもなら、どれだけ忙しくても、その日には返してくれるのに…。エーくんが心配なのが三割、私のメッセージを無視したことに対する怒りが二割、そして、単純にエーくんに会いたい気持ちが……三割で、合計十割の私がいる。
今日は、第四十層のフロアボス討伐戦だ。きっと、それに選ばれたエーくんは、ちょっと緊張しすぎて、メッセージを返す余裕さえないのかもしれない。だけどそんな調子で、ボス戦でヘマをやらかしてしまっては良くないと私は思う。
激励の意味も込めて、私はフロアボス討伐戦の集合時間である午後一時より少し前の時間帯に第四十層の主街区へ行くことに決めた。
ユナ「すっごい人だかり…」
まだ一時になる五分前だというのに、主街区は人混みで溢れていた。…これでは、エーくんの雄姿が見届けられないではないか。そんな危機感を感じた私は、人混みの最前列に出ようと考えた。だが、その必要は無さそうだ。
人混みの最後尾に、いつもとは少し違った装備をしたエーくんがいる。…もしかして、あれでカモフラージュ出来ているつもりなのかな?少し、それを見て微笑んだ私は、出発し始めた攻略組に釘付けのエーくんの前に、そっと現れて、声を掛ける。
ユナ「やっ!」
するとエーくんは、驚きで硬直しながら、どうしてここにいるのか、と訊ねてくる。
ユナ「エーくんがしょげてる気配がしたからね!」
ノーチラス「べ…別に、しょげてなんか」
ユナ「エー…じゃなくてノーくん一昨日から全然メッセージ返してくれないんだもん」
おっと危ない。ついつい昔からの癖で、本名をもじったあだ名を呼んでしまっていた。
ノーチラス「う……」
ユナ「そりゃ何かあったと思うじゃない」
ノーチラス「…フレンド追跡すれば、街にいることは解るだろ…」
言葉に詰まるエーくんに私はここぞとばかりに問い詰める。これは、私のメッセージを二日間も放置した罰だ。
ユナ「街中でも絶対安全とは言えないんだぞって、いつも言ってくるのはノーくんでしょ?」
ノーチラス「……」
ノーチラス「…返事しなくて、ごめん……ちょっと……」
このへこみ具合はレベル十だ。症状は相当深刻らしい。…それでも、返事をしなかったことを謝ってくれるエーくんはやっぱり優しいな。
どうにかして、エーくんを元気づけてあげたいと思った私は、ついこの前知った、この街の美味しいお店を案内することにした。
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「頼む…誰か……助けてくれェ!」
エーくんに半分こしてもらったクロックムッシュを美味しく頂きながら、エーくんとの楽しい時を過ごしていたというのに、それは突然現れた、満身創痍の男性プレイヤーの絶叫によって終わりを迎えてしまった。エーくんはその男性プレイヤーの方へ、直ぐに駆けていく。私も、エーくんの後を追いかけて、その場に急行した。そして、その男性プレイヤーに貴重な回復結晶を使ってから、事情を説明してもらう。
話によると、フィールドダンジョンの内部で、仲間がモンスターに追い掛け回されているらしい。事態を重く見たエーくんが周囲に集っていたプレイヤー達と救助隊を結成した。そして、エーくんが血盟騎士団のユニフォームを纏うと、周囲の士気も上昇する。
…今回はボス討伐戦にあぶれちゃったけど、やっぱりエーくんは凄いプレイヤーなんだ…。恐らくそのせいで、酷く落ち込んでいたはずのエーくんの今の顔つきは、真剣そのものだった。
ノーチラス「…ユナ、君はここで待っててくれ」
ノーチラス「大丈夫!すぐに助けて戻ってくる」
ユナ「…」
…どうして、どうしてエーくんはいつもそうやって、全て自分で抱え込もうとするのだろうか。私だって、エーくんの隣で闘えるんだ。私だって吟唱スキルで攻略組までのし上がれるんだ。そう思っているのに、エーくんは一向に、私がフィールドに出ることを快く思ってくれない。
だから私は、この機会を利用して、私も前線で闘えることを証明しようと思ったのだ。
ユナ「…私も行く」
ノーチラス「えっ……?」
私は決意を言葉にして、羽根つきの純白のシルクハットを被り、左の腰にはメインアームの短剣を、そして、右手には吟唱スキルをサポートする為のギターを装備する。
ユナ「私、剣は使えないけど、歌で皆を援護できる」
ユナ「絶対に足手まといにはならない!」
エーくんは私が言ったことを判断しかねている様子だった。だが、エーくんが何かを言い出す前に、周囲のプレイヤーがざわめきだした。
「う…歌……?」
「あ……まさか…」
「最近うわさになった吟唱スキルか……!?」
「おおっ」
周囲のプレイヤーに向けて、私は静かに頷くと、救助隊の士気はさらに向上する。吟唱スキルとは、エクストラスキルの一種であり、その名前の通り、歌声を武器に変えるものだ。
私が吟唱スキルを発動させて、歌を披露すれば、私の歌声が聞こえる範囲であれば、全てのプレイヤーに様々なバフを掛けることが出来る。故に、私の吟唱スキルがあれば、救助のスピードも大きく加速するはずだ。
ユナ「行こう、エーくん」
ノーチラス「……あぁ」
未だに迷いの残ったエーくんの顔を見て、私は、強くそう言った。するとエーくんは、私の左手を強く握りしめて、言葉を返してくれる。…少し、恥ずかしい気持ちはあるけれど、今だけは…。私達救助隊は、フィールドダンジョンへと駆け出した。
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ノーチラス「…よし!もう少しだ!みんな頑張ろう!」
私の初のボス戦は、以外にも順調に進んでいった。私の吟唱スキルによるバフのお陰もあるが、それはエーくんと風林火山のメンバー二人がボスの体力をドンドンと削って行ってくれたことが大きい。特にエーくんはこのボスの行動パターンを熟知しており、皆に指示を出しながら、的確にボスの攻撃を捌いていた。
ボスの体力もレッドゾーンに突入し、これまでの傾向から、同時攻撃が後二回決まれば、ボスを倒せるという所まで来た。
ノーチラス「ラスト集中していくぞ!」
エーくんが周囲のプレイヤーを鼓舞しながら、ボスの攻撃を受け止めようとしたその時、ガゴンッ!と何処かの鍵が開く鈍い音がした。そして、ギギギギギッ、という鉄錆が軋むような音を立てながら、これまでは閉じたままだった左右の鉄格子から大量の取り巻き達が出現する。
エーくんはその様子を見て、一瞬指示を出すのが遅れてしまった。その隙を突くかのように、ボスが範囲攻撃を仕掛け、ボスを囲んでいたエーくん達は、それをモロに喰らった。一気に、あちらの流れに持っていかれたことに、私は一瞬怯んでしまうも、気を取り直して取り敢えず、近くに倒れているプレイヤーに麻痺ポーションを投げ渡す。
─エーくん、どうする…!
私は目配せで、エーくんにそう問い掛けるも、エーくんは何も必死に頭を働かせているようで、こちらに気が付かない。取り巻きを相手にしていたプレイヤー達も沈黙を喰らってしまい、結晶アイテムを使えなくなってしまった。
…今なら、私とエーくんだけでも、虎の子の転移結晶でこの場を脱出できる。私自身、他の誰がどうなろうとも、エーくんとここから逃げ出してしまいたいという衝動に駆られた。…でも、私の理性は、それではダメなのだと言っている。私は、このボス戦で思い知ったのだ。今の私では、攻略組には露も及ばないと、そして、エーくんを始めとしたその他のプレイヤー達は、私よりも攻略組に近い存在なのだと。私とエーくん達の間には、絶対的な差があるのだと。
ならば、私の取るべき選択は、エーくんと二人でここから逃げ出すという私の醜い欲望に従ったものではなく、私以外のプレイヤー達を生還させるというものだった。そして、私にはそれを可能にする手段もある。私は、メニューウインドを開いて、ギターを装備した。
ノーチラス「…ユ─」
ユナ「エーくん…」
ユナ「お願い…ボスを倒して、みんなを助けて!」
ノーチラス「む…無茶だ!やめろユナっ!!」
きっと、エーくんも、私とこの場所から逃げ出すことを考えていたのだろう。彼の手の内には、転移結晶が握られていた。一瞬、蘇ってきた強い衝動を抑え込み、私は、吟唱スキルを発動させる。
吟唱スキルには、周囲のプレイヤーにバフを掛けること以外に、もう一つ能力が…いや、デメリットが存在する。それは、挑発スキルのように、周囲のモンスターを誘き寄せてしまうこと。私が全力で、歌を歌うと、予想通り、ボス部屋にいるモンスター達全員が、私の方へ向かってきた。次々と私を取り囲むモンスター達が、武器を振りかぶっている。
…本当は、ずっとエーくんと一緒に居たかった。まだ支えていたかった。でも、それはもう叶わない。…せめて、エーくんの中で、私が生き続けてくれるようにと、私は形見として、飴の詰まった瓶をエーくんに投げた。
─エーくん…ごめんね。もう元気づけてあげられない
─泣きたくなったら、それを舐めてがんばって
─エーくんなら、きっと大丈夫だよ……
エーくんは、何故か身体を硬直させて、不自然にその場から動かなかった。…きっと、エーくんが悩んでいたのは、この症状のことだったのかもしれない。
結局、最後まで、胸の内に秘めたことは、伝えられないかった。悔いの残る結果だけど、エーくんが生きていてくれるなら、それで─
だけど、私に止めを刺す剣は、私の身体に届く前に、突如として空から降ってきた何かによって、防がれた。
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アルファ「うおおお────ッ!」
内壁の上部から飛び降りた俺は、その勢いに任せて、女性プレイヤーに迫る鋸刃に向かって、ライトエフェクトと共に両手剣を横に薙ぎ払った。回転系のソードスキル<サイクロン>だ。
その落下重力によって増幅した両手剣の重攻撃に耐えられるはずもなく、女性プレイヤーの目の前に集まっていた取り巻き達の前方部分を一気に吹き飛ばす。だが、それだけでは包囲網は崩れない。
アルファ「ユウキ!突進系だッ!」
ユウキ「分かってるッ!」
僅かに俺に遅れて、内壁の上部から飛び出してきたユウキに、俺は指示を出した。しかし、ユウキは俺と同じことを考えていたようで、俺と女性プレイヤー目の前を、煌めくライトエフェクトを纏いながら、突き抜けていく。恐らく、突進系ソードスキル<ソニックリープ>だろう。
ユウキの一閃によって、包囲網に穴が開いた。ちょうどそのタイミングで技後硬直が解けた俺は、啞然とする女性プレイヤーの手を引いて、包囲網から抜け出した。取り巻きは、後14体ほどか…。
アルファ「回復手段はあるか?」
「は、はいっ、大丈夫です」
助け出した女性プレイヤーにそう訊ねると、女性プレイヤーは慌てて返事をしてきた。ちらりと奥を見ると、ボスに対して風林火山のメンバー二人とユウキが猛攻を仕掛けていた。
…ユウキがいるなら、あっちは大丈夫そうだな。俺は、近くにいた血盟騎士団の青年プレイヤーに声を掛ける。
アルファ「アンタ、この女性プレイヤーの事任せてもいいか」
「あ、あぁ…」
アルファ「向こうの奴らがこっちに駆けつけてくれるまで、防戦でいいから、命を大事に、だ」
「…分かった。ユナのことは任せてくれ」
アルファ「おう」
流石は血盟騎士団といった所か、ユナ、と呼ばれた女性プレイヤーをサポートしながら、取り巻き達の攻撃を凌ぎ続けている。
俺もそれに負けじと、取り巻きに猛攻を仕掛けていくが、相手は最前線のフィールドダンジョンのモンスターだ。そう思うようには、ドタバタと倒れてはくれない。俺は出来る限り取り巻きを倒しながら、増援が来るのを待った。
ユウキ「アルファっ!」
ユウキが遠くから声を掛けてくる。それがボスを倒した、という合図だと悟った俺は、四連撃ソードスキル<フェーニエンス・ストライク>を放つ。地面と水平な角度で繰り出された四連撃に及ぶ範囲攻撃を使用することで、目の前に迫っていた三体の取り巻きを一気に撃破した。
しかし、大技故に少し長めの硬直時間が生じ、その後ろに居た取り巻き達が俺に迫ってくる。だが、
ユウキ「ハァッ!!」
完璧なタイミングで、俺の前に躍り出たユウキが、取り巻き達に向かってシャープ・ネイルをぶちかました。俺達の突然の攻撃パターンの変化に、取り巻き達は着いてこられない。ユウキのソードスキルが終わるころには、俺の硬直時間も終了し、残り僅かとなった取り巻き達の体力を、自らの剣技で葬る。そして、風林火山のメンバー二人とその他のプレイヤーが、残りの取り巻き達を殲滅し終え、ボス戦は終了した。
一瞬、大きな歓声が上がったが、すぐにダンジョンを脱出して、フィールドに出た。聞きたいことは山々だったが、取り敢えず主街区へ戻ることを優先すべきかと思い、俺とユウキも彼ら達と、主街区までの道のりを共にした。
数分後、主街区に到着した俺達は、ようやく一息つく。そして、シーフのプレイヤーが皆の前に出る。
「俺達を助けてくれて、本当にありがとうございました!」
彼の仲間だと思われる数人も、頭を下げていた。…なるほど、他のプレイヤーは彼らを救助しに、ダンジョンに向かったという訳か。主街区を訪れていた人々が、拍手喝采をし、救助に向かったプレイヤー達も満更ではないような顔をしながら、一件落着ムードを漂わせていたが、血盟騎士団所属の青年プレイヤーの顔つきは険しい。
そして、この俺も、決して柔和な顔はしていなかったと思う。この和やかな雰囲気に水を差すのは悪いが、これだけは聞いておかなければならない。
アルファ「…なぁ、アンタら、どうしてダンジョンでヤバいことになったんだ?」
俺がそう訊ねると、シーフの男は申し訳なさそうに、答えた。
「…実は、ダンジョンに沈黙デバフを掛けてくる奴がいるなんて、思ってなくて…」
アルファ「…アルゴの攻略本には、目を通さなかったのか?」
「…はい、少し面倒くさくて…」
アルファ「…折角、アルゴが俺達の為に、わざわざ無料配布してくれてるんだ。次からは、絶対に目を通せ」
少し、キツめに言い過ぎてしまったかもしれないが、それで今後、アルゴの攻略本にしっかり目を通すようになるのなら、それでいい。
「はい、すいません…」
アルファ「…オブトラとカルー、だったよな」
オブトラ「あ、あぁ…」
俺は、今度は風林火山のメンバーに声を掛けた。
アルファ「二人共、どうしてボスの体力がレッドゾーンに落ちたのに、様子見をしなかった」
カルー「…あんまり調子よく、ボスにダメージを与えられてたもんだから、つい…」
アルファ「…言い方が悪いかもしれないが、俺とユウキが居なかったら、全滅だってあり得たぞ」
オブトラ「…」
アルファ「どれだけ勢い付いても、絶対に油断するな。…ボスはいつでも俺達の想定を超えてくる」
カルー「…分かった。忠告ありがとな」
アルファ「分かったならそれでいい。次からは気を付けてくれ」
そして、最後に、俺は血盟騎士団所属のプレイヤーに話し掛ける。
アルファ「アンタも、だ。ボスの行動パターンが変化しないと思ったのか?」
「…一昨日に、同系列のボスと闘ったんだ。それで、そいつと同じ行動パターンだと思った…」
アルファ「同じ種族のモンスターでも、行動パターンはそれぞれ別個だ。それを忘れるな」
俺が、心地よい雰囲気を崩してまで、彼らに対してお灸を据えたのには理由があった。いくら即興パーティーだからといっても、あの程度のプレーでは、正直なところ、レイドメンバーとして入って来て欲しくはない。あんなプレイヤー達がレイドメンバーになれば、間違いなくこっちの害になる。
彼らのボス戦における考え方は、あまりに未熟で、あまりに楽観的過ぎた。ボス攻略とは、死者を出さないで遂行しなければならないのだ。死者が出てしまえば、それは攻略とは言えない。彼らが勝手に死んでいくのは、それこそ彼らの自由だが、彼らが足を引っ張ったせいで、他の誰かまで死なれては本当に困るのだ。だから、攻略組として活動していきたいのなら、今日の反省点はしっかりと改めてもらわなければならない。
ユウキも、俺の考えていることは分かっていたようで、俺の辛口に何も言わずにいてくれた。…多分、この中には、俺のことを空気の読めない奴だと、心の中で非難している奴もいるだろう。俺はこれ以上この場所にもいる必要はないので、何処かで昼飯でも食べようと、ユウキに声を掛けようとしたが、その寸前に、血盟騎士団の青年プレイヤーに呼び止められた。
「…すいません」
アルファ「ん?」
「…僕のことを、鍛えてくれませんか!!」
血盟騎士団のプレイヤーはそう言って俺に頭を下げてきた。
オリキャラは死亡させ、月夜の黒猫団も救わないというのに、ノーチラスとユナは生存させる筆者って一体…。