~SAO with Yuuki~   作:うずつるぎ

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 本日は読者の皆様に重要なお知らせがあります。筆者は今日と言う日まで、毎日投稿を続けてきたわけですが、ちょっと筆者のリアルが忙しくなってきてしまったので、投稿頻度を落としたいと思います。
 具体的には、理想は二日に一回、恐らく三日に一回、遅くても四日に一回のペースで投稿していくつもりです。(土日祝とかは毎日投稿できるかも…まぁ、あまり期待しないでください)
 もし、毎日この小説が投稿されるのを楽しみにしてくださっていた読者様がいたのなら、ホントーに申し訳ございません。完走は必ずするので、それで勘弁して下さい。

 では、どうぞ!


第66話 踊り躍らせ踊らされ

 ガチャり…と何かが開く音がした。恐らく、ユウキが俺の部屋のドアを開いたと思われる。ギルドホームをユウキが購入した際に、ユウキが俺に購入者と同等の権限を付与してくれた。なのでシステム上、ユウキと俺以外のプレイヤーが俺達のギルドホームに許可なく侵入することは出来ない。

 故に、ユウキがドアを開けられること自体は自然なことではあるが、それでも内側から鍵でも掛けておけば、ユウキは俺の部屋には侵入できないよう設定できる。だが、それでも内側から鍵を掛けないのは、ユウキが睡眠PKを仕掛けてこないと信頼しているからか、それとも朝に弱い俺をユウキが起しに来てくれることを期待しているからか…などと、俺は思考を巡らせているわけだが、目は閉じたままだ。

 目を開ければ、朝が来たことを完全に認識してしまう。それ故俺は眠りから意識を回復させたとしても、目だけは閉じておくことで、自分の世界の安寧を保っているのだ。しかし、それを跡形もなく破壊してしまうのは、俺を起こしに来たであろうユウキである。

 

 ユウキ「アルファ~朝だよ~朝が来たよ~」

 

 アルファ「…」

 

 どうして、こうも朝型の人間は、早起き出来る上に朝からこんなにも元気にいられるのだろうか。俺は、ユウキが来たことに備えて、無言を貫き布団の中にうずくまった。だが、そんな脆い障壁はバサリ、と一瞬にして取り除かれる。布団の中に溜めておいた暖気が拡散して、代わりに外からのひんやりとした朝の冷気が身体に纏わりついて来る。俺は、それでもベッドの上で身体を縮め、最後の抵抗を試みた。

 すると突然、俺の両頬にユウキの手が添えられる。そしてユウキは、そのまま頬を伸ばし始めた。

 

 アルファ「…起きるんでやめてください」

 

 ユウキ「アルファの頬っぺって、柔らかいんだね。すごく気持ちよかったよ」

 

 アルファ「褒めてくれてどうもありがとう?」

 

 ユウキ「今日は朝ご飯作ったから、早くリビングに降りてきてね」

 

 アルファ「了解」

 

 ユウキが、スタスタとリビングへ向かって行くのを眺めながら、俺は自分の頬を抓ってみた。

 …うん、これが柔らかいのかどうなのか、よく分からん。有難くも今日はユウキが朝食を用意してくれたということなので、二度寝の欲望に打ち勝ち、俺は布団を丁寧に畳んでから、自室を後にした。

 …そう言えば、この世界では布団干さなくても、大丈夫なんだろうか…と今更ながらの疑問を抱きながら、香ばしい匂いに惹かれて俺は一階へと降りていく。リビングに到着すると、目の前に広がっていたのは見事なまでの朝食だ。俺はすぐに席に着いて、ユウキと共に合掌してから、食事を頂いた。ユウキの作るご飯は、どれもこれも美味しくて、朝が苦手な俺でも、朝から活力全開でいられる。

 ちょうど、俺もユウキも朝食を食べ終えたその時、ユウキが不意に、団子一個分ぐらいの大きさの赤茶色い丸薬みたいなものを俺に差し出す。

 

 ユウキ「今日の研究で出来たものなんだけどさ、すっごく甘くて美味しいんだ!アルファにもあげるよ!」

 

 アルファ「マジ!?サンキュー!」

 

 ユウキが、笑顔で差し出してくれた丸い何かを、俺は何の疑いもなく口の中に放り込む。

 …ユウキが実験結果を先に教えてくれるなんて、珍しいこともあるもんだな。なんて呑気なことを考えながら、俺はそれを噛み砕いた。その時、ユウキがまるで、してやったり、というような細い笑みを浮かべたのを見て、俺は何かがヤバいと勘づく。

 だが、既に手遅れだった。固形の殻に覆われていた中身は、溶けたチョコのようにドロリとした食感だ。しかし、その味は甘さとは程遠い、この世の辛さと言う辛さを凝縮したようなスパイシーな辛み成分であった。俺は最早、辛みが危険域を通り越し過ぎて、叫ぶことさえ出来ず、固まる。慌ててユウキが差し出してきた緑の液体を一気に呑み込んだ。

 すると、先程までの辛みが嘘のように消え、口の中にはほんのりとザラメのような甘さが残った。…実験結果を偽って伝えるなど、質が悪すぎる。

 

 アルファ「……ユウキ…てめぇ…」

 

 ユウキ「アハハ!今日はエイプリルフールだよ!それに、辛いやつとさっきの液体を混ぜると、ホントに甘くなるんだし、あながち噓でもないけどね!」

 

 アルファ「…まぁ、そうだな…」

 

 ユウキが、楽しそうに笑いながら、今日が四月一日であることを教えてくれた。エイプリルフール、万人が噓をつくことを許されるとかいう、珍しい日だ。去年は、オウガやらサツキやらユウキやらが嘘をつきまくったせいで、カオス極まる状態に陥っていたことを思い出し、僅かに哀愁を感じる。

 …しかし、エイプリルフール、か。やられっ放しと言うのも何だか癪なもんだし、こっちも何か反撃の糸口を見つけないと…。俺がどうやってユウキを騙してやろうかと頭を働かせていると、ユウキが俺を指差しながら、宣言する。

 

 ユウキ「先に言っとくけど、別れよう、とかは冗談でも怒るからね」

 

 アルファ「合点承知の助」

 

 …まぁ、今嘘ついたところで、見破られるのがオチだ。後でユウキが油断してそうなときに仕掛けよう、と思い、ユウキと食器類を片付けていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。インターホンを鳴らされたことなど、今までに一度もなかったわけで、俺は不思議に思いながら、玄関のドアを開いた。

 するとそこには、見慣れた全身黒づくめの人と顔にお髭のペイントを施している人が立っていた。…何故にこの組み合わせ?俺がそう訊ねる前に、アルゴが食い気味に俺に訊ねてきた。

 

 アルゴ「特ダネがあるんだケド、購入するカ?」

 

 アルファ「エイプリルフールだろ?俺はもう引っかからんぞ」

 

 キリト「んなこと言ってる場合か!これは一大事だぞ!?」

 

 アルファ「キリト、演技点は7点だ」

 

 アルゴ「…ま、茶番は置いておいて、ダ。今日一日助手になってくれないカ?」

 

 アルファ「ま、立ち話もなんだし、家入るか?」

 

 アルゴ「そうさせてもらうヨ」

 

 キリト「じゃあ俺も…」

 

 取り敢えず、キリトとアルゴを家の中に招き込んだ俺は、ユウキに二人が来たことを伝える。そしてまたまた取り敢えず、テーブル席に着いてもらい、ユウキが出してくれた烏龍茶っぽい飲み物で全員一息ついた。キリトは何が気になるのやら辺りをキョロキョロと見渡しているが、アルゴは至って平静だ。

 

 アルゴ「なるほど…これがアー坊とユーちゃんの愛の巣、カ…」

 

 アルファ「言い方な…それで、二人揃って今日は一体何の用なんだ?」

 

 キリト「実はだな──」

 

 それから数分、キリトが俺達に事情を説明し、アルゴがそれを補足説明した。その事情、とは、何でも本日四月一日になった途端、あらゆる層の主街区で、迷宮区に行けば黄金の鎧が手に入る、だの、フィールドダンジョンの最深部で三回宙返りをすれば新たなる道が開かれる、だの、フィールドのある座標に向かえば、そこには金銀財宝が眠っている、だの、兎に角、色んな情報を吐き出す鼻の高いピノキオのようなNPCが出現したらしい。

 それに気が付いたキリトが、同じくこの現象に勘づいたアルゴと共に、三十層のピノキオから得た情報をもとに、その情報の真意を確かめに向かったらしいが、それは真っ赤なウソだったらしい。そこで二人はこの現象がエイプリルフールによるものだと確信したのだが、一つぐらいは本物があるのではないかと思い、今から全ての層のピノキオの情報の真偽をチェックしよう、と言うことらしい。

 かなり大変そうな作業となりそうだが、いつもアルゴにはお世話になってるわけだし、ユウキが乗り気でもあったし、そして何より、アタリを引いたら攻略に置いて大きなアドバンテージを得られそうだったのもあって、俺達は二人に協力することにした。

 そういうわけで俺達は、先ずは第十五層のピノキオの下へ向かい、彼から話を聞いたわけだ。

 

 アルファ「…ここで三連撃ソードスキルを発動させれば、この世のものとは思えない花が芽吹く…と」

 

 ユウキ「じゃあ、やってみよっか」

 

 俺達は、ピノキオに言われた通り、迷宮区の前にある花々の前に向かい、ユウキが軽快にソードスキルを虚空に向けて炸裂させた。しかし、予想通りだが、やはり何も起こらない。

 

 ユウキ「…どうやらこれは、噓の情報だったんだろうね」

 

 アルファ「…よし、次行くか」

 

 俺達四人は、アルゴとキリト、俺とユウキの二手に分かれて、情報の真偽を確かめている。俺達は、一層から二十九層までを、キリト達は二十九層から現在の最前線、五十八層までを担当し、各層の主街区を総当たりしている。

 ピノキオが与えてくれる情報なのだから、その全てがウソであっても何らおかしくは無いのだが、それでももしかしたら一つぐらいは真の情報があるのではないか、と思う心は消えない。何故かはわからないが、アルゴが俺達に、必ず午前中の間に全てのピノキオの情報を精査してくれ、と念を押していたので、俺達は急いで三十層分のピノキオに話し掛けに向かった。

 一番下から調査を開始し、まずは第一層、アインクラッド解放軍…通称<軍>のメンバーであろうプレイヤー達が治安維持として律儀に見回りを行っている様子を横目に、ピノキオから得た情報を確かめる。内容は、フレンジーボアを十体倒すと、赤色に燃えるフレンジーボアが出現する。というものであった。素早くフィールドでフレンジーボアを十体倒したわけだが、現れた十一体目は、普段と変わらない青色だ。

 そんな調子で続く二層、三層…と矢継ぎ早にピノキオに会いに向かったのだが、どこもかしこも全てウソだった。内容も、教会の鐘を九回鳴らして地に剣を叩き付けると、魔法の羽が落ちてくる、だの、北ゲートから出て、右に三十三歩、左に六歩、前に十八歩歩いた先にある木をよじ登ると、敏捷ステータスが十上がる、だの、主街区の領主の屋敷の庭で三回逆立ち回りすると、池の中から頭蓋骨が浮かび上がってくる、など、どれも妙に凝った設定だった。毎回ひと味違った情報を与えてくれるのは有難いのだが、それでも一度も本当の情報が無い、となると、単純作業感を感じられずにはいられない。

 そして訪れた第二十八層の情報、主街区で二番目に大きな噴水の中に、金貨を投げ入れると、代わりに銀の指輪が手に入る、というものだ。主街区を走り回って隈なく噴水を探し出してから、二番目のサイズを誇る緑を基調とした噴水の前までやって来た。

 

 アルファ「今度は嘘か真かどっちかなッ!」

 

 俺はアンダーパスをするように、用意しておいた金貨を噴水に向けて投げ込んだ。金貨は、緩やかな曲線を描きながら、ポチャン、と噴水から溢れ出た水の中へ落ちていく。俺はゆらりとそちらへ近づき、水の中に腕を突っ込んだ。そして水中の中から、銀色の指輪を取り出す。

 

 アルファ「おい、今回はマジだったぞ!」

 

 ユウキ「え!?ホント!?」

 

 俺が、水中から取り出した指輪を右手に掲げながら、ユウキにそれを見せつけると、ユウキは驚きながらこちらへ足を進めてきた。見せて見せて!と訴えかけてくるユウキに、俺は笑い掛ける。

 

 アルファ「…なんて、噓だけどな!これは俺がいっつも付けてる奴だ」

 

 ユウキ「…え~…」

 

 露骨に、残念そうな顔をしたユウキを見て、これで仕返しが出来た、と俺は大層満足したわけだが、そんな俺を見て、ユウキが何故かアハハッ!と吹き出す。

 

 ユウキ「そんなウソバレバレだよ~…アルファがあんまり可愛そうだから、わざと引っかかってあげたら、素直に喜んじゃって!」

 

 アルファ「…え?俺騙された?」

 

 ユウキ「そーだよ~」

 

 アルファ「…」

 

 …つまり、俺はユウキに掌で踊らされていたということなのだろうか、ガックシ、と肩を落とす俺の背中をユウキがバシバシ叩いて来る。だが、そんな悠長にしている暇もないだろうと、俺達は残りの二層分のピノキオに会いに向かった。だが結局、二十九層も三十層もウソ情報に騙されただけで、何の収穫も得られなかった。

 …明日から、人間不信ならぬ、NPC不信に陥りそうだ、と心の中で思いながら、キリト達の到着を待つ。四人が再会したのは、午前十一時四十七分、アルゴの指示した通り、午前中に現在解放されている層の全てのピノキオの情報を精査できた。結果は、どの層でもピノキオから得られる情報は誤情報であった、というロマンの欠片もない終わりを迎えてしまった。

 アルゴが手伝ってくれたお礼に、俺達三人に美味し店を紹介してくれた。今はアルゴの奢りで、案内された先の魚のフライが絶品なレストランで昼食を頂いている。キリトが、食事の味付けには満足気に、だが、今日と言う一日には不満げに語る。

 

 キリト「…しっかし、一個ぐらい情報通りのお宝が手に入れられてもいいと思うんだけどなぁ…」

 

 アルファ「キリトの言う通りだ。とんだ空回りだったぜ」

 

 アルゴ「そんな二人には悪いケド、もうちょっとだけ付き合ってくれヨ」

 

 ユウキ「まだ何か調べることがあるの?」

 

 アルゴ「…念のためにもう一回、各層の主街区にいるピノキオを探しに行ってほしいんダ」

 

 アルファ「…なんでそんな面倒なことを?」

 

 アルゴ「お宝の為サ」

 

 「「…?」」

 

 アルゴが当然だと言わんばかりにそう宣言したのだが、俺、ユウキ、キリトの三人はまるでアルゴの意味することが見当つかないでいた。そんな中、午後一時ぐらいに昼食を食べ終えた俺達は、アルゴの指示に従って、もう一度二手に分かれてピノキオ達に会いに向かった。

 しかし、何故だか何処の層に向かってもピノキオ達は姿を消している。一応、主街区を隈なく探しては見たのだが、やはりピノキオは誰一人としていなかった。午前中の約二倍の速さで全ての層を確認し終えた俺達は、三十層の主街区、転移門前でキリト達を待っていると、彼らもほぼ同時に第三十層へと降りてきた。そして、俺が言葉を掛ける前に、アルゴが話し掛けてくる。

 

 アルゴ「こっちは、第三十二層にピノキオが一人いたケド、そっちはどうダ?」

 

 アルファ「こっちは、ピノキオは皆いなくなってたぞ」

 

 アルゴ「ニャるほど…ということは、これが正解だってことなんだろうナ」

 

 ユウキ「…正解?」

 

 キリト「あぁ…取り敢えず、俺達に付いて来てくれ」

 

 そう言って先導してくれるキリトとアルゴに、俺達は付いて行く。すると、第三十二層の転移門広場からすぐの所にある教会の前に、ピノキオらしき少年NPCが立っていた。俺が試しに話を聞いてみると、東ゲートから主街区に向かってオオカミがやって来るから助けてくれ!と懇願されてしまう。

 

 アルファ「…どうせこいつも噓ついてるんだろ…」

 

 俺がアルゴに対して投げやりにそう問い掛けると、アルゴはチッチッチ、と舌を鳴らし、指を振りながら自慢げに答えてくれた。

 

 アルゴ「まだまだ甘いナ、アー坊は…」

 

 アルファ「…どういうことだ?」

 

 俺が不思議とそう訊ね返すと、今度はキリトが答えてくれる。

 

 キリト「…多分、SAOでのエイプリルフールはイギリス式なんだ。イギリスでは、嘘をついていいのは午前中だけ、午後はその種明かしをしないといけない…」

 

 ユウキ「つまり、午後に出現したピノキオの言っていることは、ホントってこと?」

 

 アルゴ「恐らく、そうだナ」

 

 アルファ「…ってことは、俺達は今から、そのオオカミってのを討伐しないといけない、と」

 

 キリト「そういうことだ。ってことで、サッサとオオカミ狩りに出掛けよう」

 

 そういう話に纏まり、俺達が東門から街を出て十数分後、俺達の目の前には、灰色の毛皮に身を覆った、右手に巨大な槍を備えた二足歩行の獣人型モンスター…恐らく、体力バーが四本あることから、ボスに出くわした。

 …レベル差が大きいせいか、ボスのカーソルは黄色だ。これなら俺達四人でも、安全にボス攻略に臨めるだろう。

 

 アルファ「気は抜くなよ!」

 

 キリト「当たり前だ!」

 

 想定通り、ボスとの戦闘は一瞬でケリが付いた。なんせ通常攻撃を決めるだけでも、ボスの体力が三割ほど消し飛ぶんだ。キリトが三連撃ソードスキルを炸裂させただけで、ボスの体力バーが一本分消し飛ぶんだ時には、俺達だけではなく、ボス自身も、呆気に取られていたような気がする。

 十分足らずでボスの討伐を終えた俺達には、経験値とコルが入ってきたのだが、中層ということもあって、やはりその内容はショボい。だが、ドロップしたものは凄まじかった。ユウキは、レアな鉱石を、キリトは各種結晶アイテムを、アルゴは高級そうな毛皮だ。

 そして、幸運にもLAを勝ち取った俺が入手したアイテムは、<真実の眼>という手のひらに収まるサイズの、オオカミの眼が描かれた石版だ。その効果は、アイテムを使用した際に一度だけ、相手の言葉の真偽を確かめられる、というものだ。

 …まったく、どのタイミングで使うべきなのかが想像もつかないわけだが、一体どうしろと言うのだろうか…。…どうせなら俺も、皆みたいに分かりやすく嬉しいものが欲しかった…と一人落胆していると、アルゴが声を掛けてくる。

 

 アルゴ「そう言えば、アー坊たちは今日の夜、DDAのギルドホームお披露目会には呼ばれてるのカ?」

 

 アルファ「…あ~…そんなんあったな…」

 

 ユウキ「ボクとアルファは一昨日に招待してもらったよ」

 

 DDAとは、ディヴァイン・ドラゴンズ・アライアンスの略称…つまりは聖龍連合の英語名なわけだ。英語がチンプンカンプンな俺からすれば、何でもかんでも英語表記にする傾向は、是非ともやめていただきたい。

 DDAはつい二日前、第五十六層にギルドホームを構えることになったらしい。そのギルドホームのお披露目に攻略組のメンバーでパーティーを開こう、と言う計画をDDAは打ち立てたらしく、それが今日、四月一日に行われるというわけだ。

 こんなにウソの情報で塗れた一日を過ごしていると、何だかそのお披露目パーティー事態が、DDAの壮大なるウソのような気がしてくるが、まさかそんなことは無いだろう。因みに、俺達は一昨日に最前線の主街区にてDDAのメンバーに声を掛けられたわけだ。なので俺達は、この後の夜の時間帯にはDDAのパーティー会場にいるだろう。

 

 アルファ「アルゴも誘われたんだろ?」

 

 アルゴ「オレっちの日々の貢献度を考えれば、当然の帰結ダヨ」

 

 ユウキ「勿論、キリトも…」

 

 キリト「…」

 

 ユウキに話し掛けられたキリトは、俯いたまま何も言い出さない。

 …キリトは誘われなかったとでもいうのだろうか。もしそうだというのなら、流石の俺も少し苛立たざるを得ない。キリトは、攻略組の中でも屈指のダメージディーラーとして活躍しているのだ。そんなプレイヤーを呼ばないというのは、些か不合理な話だろう。

 だが、俺の心配は杞憂だったようだ。キリトは、苦笑いしながら答える。

 

 キリト「…まぁ、俺もおこぼれ程度に招待してもらえたよ…」

 

 アルゴ「謙遜する必要はないヨ。キー坊は充分頑張ってるんだからナ」

 

 アルファ「…じゃあ、パーティーまでの残り時間、四人でレベリングにでも行くか?」

 

 俺がそう提案すると、キリトとアルゴはその提案を飲んでくれた。なので、久しぶりに四人パーティーでで最前線のフィールドに出て、現状最高効率のフィールドダンジョンにてレベリングを図った。陽が暮れ始めた頃、俺達は、一旦主街区へ引き返し、そのまま第五十六層に転移する。

 その転移広場から広がる視界には、主街区の奥に、小高い丘の上で聳え立つ、幾本もの白いピナクルが突き出た、雄大なるギルドホーム…いや、まさしく西洋城が出迎えてくれる。俺達は皆、その巨大な城を眺めながら、DDAのギルドホームにまで足を運んで行った。

 ギルドホームの前には、門番のように敷地の左右で仁王立ちするDDAのメンバーがいた。俺達の名前を確認すると、敷地の中へ通してくれる。転移門前から見ただけでも有り得ないほどの大きさだったというのに、目の前までやって来た今はその威圧的な存在感に緊張が走る。

 

 ユウキ「…すっごく綺麗だね…」

 

 アルファ「…あぁ、厳つい城って感じだな…」

 

 アルゴ「そこはユーちゃんの方が綺麗だよ、って言わないとダメだヨ?」

 

 キリト「対女性スキルの欠ける俺にもそう感じたけどな」

 

 アルファ「…てめぇらは黙ってろ」

 

 ここぞとばかりに俺を煽り立ててくるアルゴとキリトに対して、俺は辛辣なコメントをしておく。するとアルゴ逃げるようにその場から去って行った。その場に残ったキリトには、ご褒美として空手チョップを喰らわしておいてやる。俺達三人で遂にギルドホームの中へと足を踏み入れた。

 俺達を出迎えてくれたエントランスホールはアホみたいに広く、その内装も金色のシャンデリアに大理石のホール、中央には大きな階段、と外見通りの西洋城を模しているようだ。パーティー会場はここエントランスホールらしく、既に大勢のプレイヤー達が集まっていた。

 西洋城に普段と変わらない装いで来てしまったのは、何とも場違い感が否めない気がしていたが、よくよく周りを見て見ると、どのプレイヤーも基本的に普段と変わらない恰好をしていた。なので俺達も、必然的にその雰囲気の中に溶け込めているというわけだ。

 招待されたプレイヤーの中には、クラインやエギル、ノーチラスやユナもいた。そして遠くの方には、血盟騎士団のメンバーと共にいるアスナもいる。彼らと軽く談笑をしていると、DDAのリーダーがパーティー特有の初めの挨拶をして、そこからは運び出されてきた豪華な料理や飲み物を飲んだり食ったり大騒ぎしたりと、パーティーらしい雰囲気を存分に楽しんだ。

 …キリト、クライン、エギルが滅茶苦茶飯にがっついていたが、一体どこにあれだけの料理を詰め込める胃袋があるというのだろうか。ここで出された料理は、料理スキルの熟練者が作り上げてくれたものらしく、味も当然高品質で、俺は舌を巻いたわけだが、やはりユウキの作ってくれるご飯の方が美味しいと感じてしまう。…これは贔屓なのだろう。

 因みにだが、今はパーティー会場では軽いオークションやゲーム、挙句の果てには一発芸などが行われていることだろう。何故俺が、だろう、と予想形式で発言してるかと言うと、俺は今、パーティー会場から少し離れて、バルコニーにて夜風に当たっているからだ。

 パーティー会場のああいった熱狂的な雰囲気も好きではあるが、ずっとああいう空間に居続けると、少し気疲れてしまう。俺は右手に持つオレンジ色の液体の入ったグラスを揺らしながら、ぼんやりと半月を眺めていた。すると、後方から足音が聞こえてくる。

 

 ユウキ「こんな所でどうしたの?」

 

 アルファ「夜風に当たってる、って奴だ」

 

 ユウキ「…オレンジジュースを持ちながら、そんなこと言われても何にもカッコ良くないよ…」

 

 アルファ「残念、コイツはみかんジュースだ」

 

 ユウキ「屁理屈だね」

 

 アルファ「いいや事実だ」

 

 そんな押し問答を繰り返しながら、ユウキが俺の隣に寄り添う。ユウキの左手に持つ赤い液体が入ったグラスはきっとアルコール飲料なのだろう。それを呷るように飲み干したユウキは、俺に語り掛けてくる。

 

 ユウキ「…あそこ見てよ、キリトとアスナがダンスしてる」

 

 アルファ「ほ~ん…キリトもやるな」

 

 バルコニーから城の内側へと視線を向けると、幾人かのペアが楽しそうに社交ダンスを踊っており、その中には千鳥足で踊っている奴もいたが、ユウキの言う通りキリトとアスナが中央で踊っていた。

 キリトもアスナも穏やかな表情でダンスを楽しんでいる。動きの様子から見て、アスナがキリトをリードしているのだろう。

 

 アルファ「…俺達も、踊ってみるか?」

 

 ユウキ「え!?で、でもボク、社交ダンスとかしたことないから…」

 

 アルファ「んなもん気にしなくていいんだよ。俺がリードしてやる」

 

 ユウキ「…ん、分かった…」

 

 俺はユウキの両手を掴んで、バルコニーにて二人だけの舞踊会を開催した。ユウキがたたらを踏まないように、ゆっくりとステップを踏み、腕を揺らす。ユウキは物覚えが良いのか、すぐにその動きを把握し、実践し始めた。

 そして遂には、社交ダンスでありがちな、クルクルクルっとその場で回転し、綺麗にお辞儀までして見せる。おお~と俺が純粋な感嘆の声を上げると、ユウキは少し恥ずかしそうにしていた。

 

 アルファ「流石はユウキだな」

 

 ユウキ「アルファがリードしてくれたお陰だよ…にしても、アルファって社交ダンスなんて出来たんだね」

 

 アルファ「小っちゃい頃に習わされてな…まったく、こんな技術身に付けたって、何の役にも立たないってのに…」

 

 ユウキ「何言ってるのさ、こうしてボクをリードしてくれたんだよ?役に立ったでしょ?」

 

 アルファ「…まぁ、それもそうか」

 

 ユウキ「…フフッ…さ、そろそろパーティー会場に戻ろうよ!」

 

 アルファ「そうだな。たらふく食っときたいしな!」

 

 俺を見て微笑んだユウキに腕を引っ張られながら、俺は再びパーティー会場へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次の投稿は恐らく土曜日になりそうです。

 では、また第67話でお会いしましょう!
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