輝日東高校にうつろいゆく光   作:こなひー

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 気づくと空はすっかり暗くなり、街灯や店の明かりが人だかりを照らしていた。加えてちらほらと雪が降り始めていた。

 

「ホワイトクリスマスなんてベリーグッドね!」

「そうですね」

 

 去年は家の窓からしか見なかった暗い中の雪だった。それが今年の雪は凄く華やかなものに見えていた。一部の店が販売を終えて店じまいを始めている。

 

「そろそろこの時間も終わっちゃうね」

「……みたいっすね」

 

 こんな特別な時間も、過ぎてしまえばあっという間だった。これで終わりになってしまう事に寂しさを感じていた。

 

(変わらずにはいられない、っていうのはこういう事なんだろうか)

 

 楽しいと思えていた事も時間も、いつか終わりが来てしまう。失いたくないと思うと、楽しむ事さえも怖くなってしまう。

 

 歩いていくうち、クリスマスで賑わう街が少しずつ離れていく。最初は鬱陶しく感じていた騒がしさも、いざ減っていくと名残惜しいものだ。感傷に浸りながらしばらく歩き続けた。

 

「これから夜の学校に忍び込みます!」

「え?」

 

 気がつくと校門の前にいた。考え込んでいるうちに街からだいぶ離れた学校まで来てしまっていたようだ。戸惑っていると、先輩は既に校門の上に跨がって乗り越える最中だった。

 

「これ大丈夫なのか……?」

「だらしないよ不良君! これくらい平気平気!」

「俺はそういうタイプの不良じゃないんで」

「細かい事は気にしない! ほら、いくよ!」

 

 少々気が引けるが、仕方ない。今日はこの手を離さないと約束してしまっている。左手で先輩の手を取り、門を乗り越えた。昇降口に着く前に、先輩が話し始める。

 

「本当はね、今日は私の両親と会う予定だったの」

「いや、それ初耳なんすけど」

 

 それはかなり重要なイベントなのだが、全く知らされていなかった。それがキャンセルになって、少しホッとしてしまった。

 

「でもこの雪で飛行機が到着できないって、キャンセルになっちゃった」

「はあ、それで何故学校に?」

「それはね……君と二人きりになりたかったの」

「っ! ……別に街のどこかでも良かったんじゃ」

「そうかもしれないけど、……ここが良かったの」

 

 少し先を歩く先輩の表情は見えない。忍び足のまま昇降口についた、が。

 

「やっぱ鍵しまってますね」

「そうだね」

 

 まあ予想通りではあった。

 

「でも大丈夫、目的地は学校の中じゃないから」

「えっ?」

 

 先輩はそう言って別の方向に歩き出す。俺もそれについていく。

 

「あぁ、ここは……」

「そう!」

 

 そこは普段人気が無い校舎の裏側。そして、この場所は。

 

「私たちが初めて会った場所!」

 

 そうだ、俺たちはこんな何気ない所から始まったんだ。

 

「そうだったな……」

「この時私たちお互いの名前も知らなかったのよねー」

「俺確か覗き君って呼ばれましたね」

「あははっ、そうだったね!今思うとおかしいわー」

「しかも他人からの告白現場なんすよね、ここ」

「そうだったわね!」

 

 あの男子生徒は完全に忘れられていた。

 

「そう、あの時は君の事全然知らなかった」

 

 俺に背を向けて語り始める。

 

「君も、私の事全然知らなかったんだよね?」

「……そうっすね」

 

 そう、お互い何一つ知らずに出会った。話していく中で勘違いやすれ違いもあった。でも、今は違う。

 

「今は、君が本当は優しい子だって知ってる」

「……俺も、先輩が真っ直ぐな人だって事を知ってます」

「うん、でも全部じゃない。きっとまだ知らないことがたくさんあると思うの」

 

 俺たちはまだ会ってからあまり長く時間を共に過ごしていない。まだまだ知らないことがあって当然だ。

 

「君にはまだ言って無かったけど……私ね、欲しがりなの」

「欲しがり?」

「そう、君の事が欲しくなっちゃった。もっと知りたいし、もっと知って欲しいの」

 

 こちらに向き直し、手は繋いだまま真っ直ぐ俺の目を見る。

 

「朋也君、私の恋人になってください」

 

 これまで先輩を見てきた中で一番真剣な表情だ。手に力が入って震えているのがわかる。俺の答えは、とっくに決まっていた。

 

「よろしくお願いします、……はるか先輩」

 

 気がつくと俺達は抱き合っていた。お互いに気持ちは何となくわかっていたが、ようやく言葉にして繋がることができた。嬉しくなって、お互いに笑いあっていた。

 

 その後はなんだか慌ただしかった。校内を見回りに来た警備員から逃げたり、先輩を家まで送る道中に美也とばったり遭遇したり、冬休み明けには既に付き合ってる事が学校中に知れわたっていたり、とにかく嬉し恥ずかしな事ばかりだった。はるか先輩は塚原先輩に「良かったわね」と労いを受けていた。春原は俺にしつこくガンを飛ばされていたが、棚町に窘められてすぐに止めていた。

 

 以前の俺は親父との喧嘩以来、何に対しても気力を持てなくなっていた。俺から周囲に興味を持つことも無ければ、周囲から興味を向けられることも無いと思っていた。そんな俺が、変わっていく事に期待を持てるようになった。これからお互いの事をもっと知っていくのだろう。そこに不安はあまり感じていない。

 

 今いるこの場所も、人も、何もかも変わらずにはいられない。けど先輩と二人でなら、これから楽しいことや嬉しいことを見つけられるだろう。俺たちは、二人で歩んでいけるのだから。




森島はるか編はこれで終了となります。
自分で思っていたよりもUAが増えてて嬉しいです。

(最初の描き終わり段階だと24000字だったのが修正を重ねた結果36000字位に伸びました。
勢いって怖いね)

次は委員長編です。
こちらもある程度描け次第投稿を開始していきます。
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