EVANGELION -夢の後にあるセカイ- 作:KYON-
季節は巡り、五月の初頭。
学生たちにとっては休みの続く、歓喜のゴールデンウィークが始まる。だが受験生にとっては、ただの自主学習に追われる日々でしかない。
だが学年で成績トップを行くアスカには、かなりの余裕がある。勉強に追われる周りを哀れに思いつつ、彼女は久々に歓楽街へと出かけた。
「ここも見ないうちにすぐ変わるわねぇ~」
最後に来た時から約一か月。様々な店が置き換わっていて、どことなく自分の知らない場所に来てしまったという不安感さえ抱く。
――誰か連れてくりゃよかった
メールなり手紙なり直接なり、デートに誘ってくる男子は星の数ほどいるのだから、そいつらをガード代わりに呼べばよかったと後悔する。だが後悔は後には立たない。
ガラの悪い、しかし自分よりも可愛くないギャルたちと何人すれ違っただろうか。彼女は行きつけの喫茶店に着いた。いつもより歩く距離が長く感じた彼女は取り敢えず、不慣れな雰囲気から一瞬抜け出したかった。
テーブル席に座ると、すぐに店員がオーダーを取りにやってくる。アスカはいつも頼んでいるコーヒーを一杯、注文した。
店員が離れると、アスカは溜息をついた。鞄から携帯を取り出し、コミュニケーションツールを開いたものの、誰からもメッセージは届いていなかった。
――みんな勉強してるのに…わざわざ居心地の悪いとこに来ることもなかったな
デパートに少し寄って、すぐ帰ろうと思った。その時。
ギシッ
同じテーブルの木製の椅子が軋んだ。はっとして画面から顔を上げると、ヤンキー風な、少し年上と思しき男が三人いる。一人は金髪でピアスをあけ、もう一人は側頭部に剃りこみを入れ、もう一人はオールバックの髪形に、首筋にタトゥーを覗かせている。
タトゥーの男が話しかけた。
「よぉ、姉ちゃん。お一人かい?」
どんな人間でも、この状況はヤバいと本能が騒ぐだろう。アスカもその例外ではなく、背筋に電気が走るような緊張を覚えた。
黙って席を立ち、逃げようとするアスカ。だが彼女の細くて白い、可憐な腕は、男のゴツゴツした汚い手に掴まれた。
「離してください!」
「釣れねぇなぁ~。ちょっとぐらい良いじゃねぇかよ~」
「俺らと一緒に楽しいことしようぜ、一人なんてつまんねぇだろうから」
アスカの脳裏を、友人から聞いた話がよぎった。
同じ高校の生徒がヤンキーにつかまって、散々暴行された挙句に河原に捨てられてたそうだ、と。別の学年と聞いたからそれ程興味を持たなかったのだが、それを思い出してこんな所に一人で来るんじゃなかったと後悔する。
彼女は絶対にそんなことにはなりたくないと、必死に腕を振りほどこうとした。加えて叫び声も上げようとした、しかし声が出ない。
周りの客たちは薄々気づいてる様子だったが、厄介ごとに巻き込まれたくないと知らないふりをしている。アスカはそんな客たちを、泣き出しそうな目で見ていた。
「さぁ、行こうぜっ。外人風情のカワイコちゃん」
彼女の腕を掴んでいる男が席を立ち、強引に彼女を連れて行こうとする。
――ヤバい、誰か助けてっ!!
心の中の叫びは虚しく、誰にも届かなかった。客の態度も変わらず、店員も気づいていない。絶望に体の力が抜けそうになった、その時。
「その子を放してもらえませんか」
静かな、しかしまっすぐな力強い救いの声が聞こえた。
いつの間にか落としていた視線を上げると、身長180cm程の男が立っていた。涙で曇って顔は見えなかったが、短い黒髪と優しい雰囲気は感じることができた。
「部外者が入ってくるんじゃねぇ、俺たちは友達なんだよ」
「一部始終を見させてもらいましたけど…それ犯罪っていうんですよ。しかも、友達な訳ないですよね。明らかに雰囲気が違いすぎる」
男は挑発めいたような言葉をヤンキーに浴びせる。ちっともヤンキーを怖がっていない。
一方挑発されたヤンキーの方は、イライラが募り、小さな堪忍袋がはじけそうな表情だ。
「とりあえず、警察に…」
男がポケットから携帯を取り出そうとした瞬間だった。
「ちくしょう、調子に乗りやがって!」
とうとうヤンキーが殴り掛かった。アスカは思わず叫び声を上げる。
だが男は素早く携帯をポケットに戻すと、拳を避けながら何か呟いた。
「いつもの……カなら………てくれたのに…」
男は身をかがめたまま、素早くヤンキーの一人の懐に近づく。ヤンキーの方も近づかれまいと拳を繰り出し、膝蹴りを喰らわせようとしたが、すべて止められるか避けられる。コンマ数秒のうちに何度かそれがあった後、男は隙を突いてヤンキーの鳩尾に拳をねじ込む。
ヤンキーは口を押えて地面に転がった。おそらく、胃の内容物が圧力で上がってきたのだろう。男はそれを横目で見ると、なおも攻撃の手を緩めない。テーブルや他の客に迷惑をかけないよう、相手をコントロールしつつ、残りの二人も一瞬で倒してしまった。
「まだやりますか?」
殴り合いの後とは思えない爽やかな笑顔をヤンキーは見た。そして一目散に退散する。
「覚えてろ、この借りはゼッテー返してやるからな」
「ふん、どうだか」
男は鼻で笑うと、地面に膝をついてしまったアスカの脇にしゃがんだ。
「大丈夫? 立てる?」
「はい、ありがとうございます」
アスカは男の手を借りて立ち上がった。涙を拭いながら、頭を下げる。
「本当にありがとうございました、出来ればお名前を」
「いや、名前は…知ってると思うよ…」
――ヘッ? そういやこの声…
アスカは泣き顔を驚きの物に変えて上げた。自分よりも高い身長の男の顔を見上げると、そこにはこの前やりこめられた…あの顔があった。
「アンタ!!」
学校とは全く雰囲気の違う、石狩ジンがそこにはいた。
連日の投稿です、自分には珍しく超ハイペースとなっております。
勉強の後の限られた時間でやっておりますので、間違い等ありましたらご指摘よろしくお願いします。
話は変わりますが、エヴァ二次を久々に書き出したこともあって、エヴァの勉強をし直さねばと最近ちょくちょく解説動画を見始めました。
抱いた感想は…やはりエヴァは難しすぎる。に限ります。
こんなに難解で、ファンに考察をさせてくれるアニメも珍しいと思いました。
新劇場版は特に謎が深まっていて、新劇場版をベースにするこの作品の向かう方向も、最終作次第では大きく変化しそうです。
自分はシン公開の年は大学受験なので見れるかどうかは分かりませんが…やっぱり楽しみですね。
次回投稿時期は未定です、何せテスト週間に突入しましたから…。
ではまた