EVANGELION -夢の後にあるセカイ- 作:KYON-
アスカとテーブルを挟んで座る、彼女と同い年の青年、石狩ジン。クールで優しくて、そんな雰囲気を醸す彼の前には、全く不釣り合いなチョコレートパフェが鎮座していた。彼が頼んだものだった。
アスカは目を輝かせ、幼児のように喜ぶ石狩を細い目で見ていた。
「アンタ、そんな物好きなの?」
「意外かい?」
ソースを絡ませたアイスを口に運び、満面の笑みをたたえて石狩は訊き返す。
「意外に決まってるでしょ、学校ではあんなに猫被って静かなのに」
「猫被って静か? 一度会話しただけで陰気って決めつけるの?」
「じゃあ逆に、アンタ学校でもそんな顔見せるの?」
「…見せないな」
やけに会話が弾む。
会話しながら、目の前でパフェに夢中になっている同年代の男を見て、アスカはどこか安心感を感じていた。
先ほどヤンキーたちから助けてもらったことも、その思いの原因にあるかもしれない、だがアスカの抱いたその感情は、もっと奥深いところから湧き上がってくるものだった。
「おっ、ここのパフェは果物が美味しい…」
石狩のパフェはアスカが奢ってやったものだ。助けてもらった後に「何か礼をさせて」と願うと、コンマ一秒も空けずに彼が即答したのがそれだった。
アスカはどんだけはしゃいでるのかと、苦笑いを浮かべる。
「アンタねぇ、子供じゃないんだから。そんなに慌てて食べるとこぼすわよ」
石狩にそう言ってから気づいた、自分はこいつの母親か恋人か!? と。
確かにはたから見れば、喫茶店に二人で入ってる年頃の男女なんて、恋人同士にしか見えない。この状況をクラスメイトにでも知られれば…。
彼女は頭を振って、唐突に飛び出た妄想の霧を振り払った。
そして肩を落とす。
「どうしたの、アスカ」
「なんで下の名前で呼ぶのよ、馴れ馴れしい」
石狩はしばらく真顔でアスカを見つめていたが、やはり幼児のようにパフェに戻る。これじゃあ恋人同士ではなく、やはり保護者と被保護者の方がお似合いだろう。
そうこうしているうちに、石狩がパフェを食べ終える。
「ご馳走様、惣…式波さん」
携帯に目線を落としていたアスカは、その言葉に視線を石狩へ向ける。器から落ちんばかりに盛り付けられていたアイスや果物は、跡形なく消えていた。空の器の奥には、笑顔の石狩。
「美味しかったよ」
「それは良かったわね…てかアンタ、クッキーの欠片がほっぺについてるわよ。全く、どんな食べ方をしたのやら」
石狩は頬に手を当てて欠片を探す。だがなかなかとらえられない。
「ああっ、もう不器用ね。ここよ」
アスカは彼の頬を欠片を取るふりして、思いっきりつねってやった。予想以上に柔らかかった彼の頬は容易く歪む。
「い、いふぁい! あにすんだよ!」
「パフェ奢ってやった分、少しいじったって問題ないでしょ?」
「あんだよ、助けてあげたのに~」
痛がるジンの顔。アスカはそれを可愛いと思ったのかは知らないが、突然目を出す悪戯心があった。それも、男を焦らせる方の。
「はい、取ってやったわよ」
しぶとく残っていたクッキーの欠片をつまむと、アスカはそれを彼女自身の口に運ぶ。
「意外に美味しいわね、今度頼んでみようかしら」
そう呟きながら、石狩にウィンクをしてみる。すると予想通り、彼の頬はみるみるうちに赤く染まっていった。
「顔、赤いわね」
「うるさい! つねられたからだよっ!」
恥ずかしそうな表情をするジンを横目に見ると、彼女は席を立つ。
「会計は済ましとくから、じゃあね~」
手を振るアスカに、ジンは小さな仕草で答えて歩行者天国へと姿を消す。
――面白い奴もいるもんね…
彼女の頬が、少しピンク色に染まった。
テスト勉強に追われながらの執筆ですので、なかなか内容が…。
暫く平和な感じが続きますのでご了承を。